TX テクノロジー・ショーケース in つくば 2009 農林水産 P-54 除菌効果の高い「乳頭清拭装置」の開発 ■ はじめに 乳頭清拭は、搾乳時にティートカップを乳頭に装着 する前に、乳頭表面に付着したふんや乳房炎原因菌等 の汚れを除去するとともに、乳牛に催乳刺激を与え搾 乳をスムースに行うため実施する作業です。慣行の手 作業では、布での拭き取りや、乳頭を薬液に浸漬して から拭き取るプレディップ法が行われますが、作業の 仕方や作業者の技量によって清拭効果が不十分な事例 も少なくありません。 そこで、生研センターでは、「どんな乳頭にも適応 でき、誰にでも高い清拭効果が安定して得られること」 をねらいとして、オリオン機械㈱と共同し、道立根釧 農業試験場の試験協力を得て、洗浄液と清拭ブラシを 用いた乳頭清拭装置を開発しています。 ■ 研究内容 1. 乳頭清拭装置の概要 乳頭清拭装置は、清拭カップ、洗浄水供給部、汚水 回収ケース及び制御部で構成されています(図 1) 。 り、清拭カップから常時、吸引排出するようになって います。洗浄液は、バケツの容器に溜めておき、チュー ブポンプで吸い上げます。制御部は充電式バッテリを 電源とし各部駆動を制御しています。 2. 清拭効果 乳牛を供試した清拭試験において、4 乳頭に対し 1 巡目の予備洗浄 +2 巡目の本洗浄(約 30 秒/頭)をし た場合、変法ミネソタ法(70 ∼ 90 秒/頭。薬液浸漬 後、汚れの溶解を図るために乳頭マッサージし、丹念 に脱水タオルで拭き取りを行う清拭方法。)の場合と 同等以上の除菌効果がありました。なお、洗浄液とし ては 40℃程度の温湯に乳頭洗浄剤を 0.2% 添加した溶 液を用いました。 3. 酪農現場での利用試験 繋ぎ飼い農家と根釧農試のミルキングパーラーでモ ニター試験を行いました。乳牛、作業者ともに本装置 での清拭にすぐ馴れ、円滑に作業ができました。酪農 家からは、汚れ除去効果が高く手作業より楽である、 乳頭刺激がタオル清拭より適切で搾乳がスムースであ る等、実用性が高いとの評価を得ました。また 1 ケ月 経過時点で、乳頭損傷等は観察されず、衛生的乳質の 低下も認められませんでした。 図 1 清拭装置(右)と清拭カップ(左) 清拭カップの手元スイッチを押し、乳頭を挿入する と、洗浄液が噴射され、乳頭の大きさや形状に応じて 変形・密着できる清拭ブラシ(根元、側面、先端ブラ シ)が縦軸回りに正逆回転し、乳頭表面を擦りながら 汚れや細菌を洗い流します。さらに、再汚染防止のた め、洗浄後の汚水は汚水回収ケースの吸引ファンによ 代表発表者 所 属 問合せ先 図 2 繋ぎ飼い農家での清拭作業の様子 ■ おわりに 今後は、本装置の改良を進め、飼養管理や衛生管理 の異なる牧場において長期連用する過程で実用上の課 題を解決し、市販化を図る予定です。 後藤 裕(ごとう ひろし) ■キーワード : (1)酪農 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター 畜産工学研究部 〒 331-8537 さいたま市北区日進町 1-40-2 TEL: 048-654-7096, FAX: 048-654-7134 [email protected] – 56 – (2)搾乳 (3)乳頭清拭 (4)ブラシ (5)清拭効果
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