報 告 日本語学習者の依頼におけるポライトネスストラテジー -日本語学習者の母語と日本語の比較- 和 田 由 里 恵 1), 堀 江 薫 1)2), 北 原 良 夫 1)2), 吉 本 啓 1)2)* 1)国際文化研究科,2)高等教育開発推進センター 1 .はじめに 日本語の依頼表現を使用する際,学習者の母語がどの 日本語学習者と日本語で会話をする際,流暢である ように干渉するか,(Ⅱ)明らかな上下関係が自分と にもかかわらず不適切,場合によっては不快な感じを 聞き手の間にある場合,対等な場合と比べてどのよう 受ける表現を耳にする場合がある.その原因としては な発話の違いが見られるか,の 2 点が明らかになると 様々なことが考えられるが,大きく関わってくる原因の 考えられる. ひとつに「ポライトネス」という人間関係を円滑にす るための言語ストラテジーがあると考えられる.特に, 3 .依頼表現 日本語学習者の語彙や文法能力が高くなればなるほど, 3 . 1 .依頼表現の定義と構造 コミュニケーション能力の中でも待遇表現やポライト 蒲谷・川口・坂本(1998)は,「依頼表現」を,自 ネスに関する語用論的知識が必要となってくる.確か 分の利益になることを相手が行動し,決定権を相手が に,日常のコミュニケーションにおいて,伝達内容そ 持つ表現であると捉えている. のものも大切であるが,それを相手にどのような言語 「依頼表現」は,前置き・本題・終結という構造を持つ. 表現で伝えるかということも重要である.このことから 前置きには,「よびかけ」「謝罪」「状況説明」「理由説 日本語におけるポライトネスの知識を身につけコミュ 明」などがある.日本語母語話者の場合,この前置き ニケーションを図ることが日本語学習者にとって極め の部分で,相手の状況を探ったり,本題に入る前のポ て重要であると考えられる.そこで,この調査では, ライトネスストラテジーを使っていると考えられる. 日本語学習者の依頼表現の使用例をポライトネスの観 点から分析し,外国人への日本語教育に役立てること 3 . 2 .ポライトネス を目的として,依頼表現データの収集と分析を行った. ポライトネスに関して詳細に検討した Brown & Levinson(1987)によると,依頼という行為は相手の 2 .研究目的 「面子(face)」を脅かす行為の最も典型的な例として 本研究では,日本語母語話者と日本語学習者におけ 挙げられている.この「面子」という概念を用いて依 る依頼表現の話し言葉を調査比較したいと考える.特 頼行為がどのようにして行われるかを考察すると,次 に,依頼表現について,日本語学習者の発話において の 2 点の特徴が観察される.第一に,依頼は自分の利 母語と日本語とで違いはあるのか,また,依頼する相 益のために,他者の領域を侵害して,他者に行為をさ 手(上下・親疎関係)によって表現の違いがあるのか せようとする行為である.そのため,依頼は,Brown を母語と日本語で比較・分析し解明したい.これらの & Levinson の「消極的面子(negative face)」,すな 研究目的を達成することにより,少なくとも,(Ⅰ) わち他者に邪魔されたくないという欲求を脅かす行 *)連絡先:980-8576 宮城県仙台市青葉区川内41 東北大学高等教育開発推進センター ─ 293 ─ 為である.第二に,依頼がなされた場合,依頼を受 母語と日本語における相違点を明らかにする.調査手 けた側はそれを引き受けないと依頼者に嫌われてしま 順は概ね以下の通りである. うのではないかと感じる.つまり,依頼には,Brown 調査対象は,中国人日本語学習者18名,韓国人日本 & Levinson がいうところの「積極的面子(Positive 語学習者 6 名の計24名である.調査対象を中国語母語 face) 」 ,すなわち,他者に受け入れられたい,好かれ 話者と韓国語母語話者としたのは,異なる母語をもつ たいという欲求を脅かすという側面もある. 学習者の間でどのような母語の転移があるかを比較す このように二つの側面で相手のフェイスを脅かす依 るためである.一般に,韓国語の文法は日本語と最も 頼という行為においては,なるべくその「面子を脅か 近く,中国語は遠いとされている.これらの言語の, す行為 (Face Threatening Act) 」 を和らげようとして, 日本語との言語距離が異なることから,母語の影響に さまざまな配慮がなされる.そのため,日本人母語話 よるか否かの検証が可能である. 者は多くの場合,直接的な依頼表現ではなく間接的な 調査内容は,話し言葉における依頼の際の発話を回 依頼表現を用いる,または,前置きをして相手に気を 答してもらうというものである. 使わせない,自分の状況を察してもらう,断りやすい 5 種類の状況を設定し,その状況においてどのよう 表現を使う, といった方法を用いて,自分と相手のフェ に発話するかを記入してもらう. イスを調節・維持しようとする. 相手への負担度が小さいものから大きいものへ 5 つの ポライトネスストラテジーは言語によってどのよう 状況を設定した. にちがうのか,またその母語のストラテジーは第二言 A 1 ペンを借りたい 語学習にも影響するのか.第二言語を習得する場合, A 2 借りる相手が使うかもしれない本を借りたい すでに学んだ言語(母語)に関する規則,発音,文 A 3 携帯電話を借りたい 法,言語行動などがそのまま持ち込まれることが多々 A 4 お金を借りたい ある.敬語表現をもち文法的に近いといわれる韓国語 A 5 紹介状を書いてほしい(先生のみ) を母語とする人と,文法的にも遠いといわれる中国語 上記の設定において を母語とする人の間に違いがあらわれれば,母語の影 B 1 対等な関係で親しい 響があると考えられる. B 2 対等な関係だが親しくない B 3 上下関係であるが親しい 4 .研究内容 B 4 上下関係であり親しくない 山岡・李(2004)によれば,日本語母語話者は,負 という 4 つの上下・親疎関係を想定して回答してもらう. 担の度合いにかかわらず上下関係にある場合や,あま 回答の依頼文を文の構造により,前置き部分,本題, り親しくない相手に対しては, 「依頼」を言い出す前に, 終結部分にわけ,前置き部分と本題の順番や表出方法 「突然ですが」 「急にすみませんが」などの「お詫び・ について分析する. 謝罪型」表現を前置きとして使用し,突然依頼用件を C 1 本題 言われた被依頼者への配慮を表す傾向がある.このよ C 2 謝罪,本題 うな依頼の表現は,上下関係に表現の違いがある韓国 C 3 状況・理由説明,本題 人日本語学習者は習得しやすいが,上下関係に表現の C 4 謝罪,状況・理由説明,本題 違いのない中国人日本語学習者は習得が難しいのでは C 5 状況・理由説明,謝罪,本題 ないかと考えられる. C 6 前置き・本題 の 6 つの形にそれぞれを分類する. 5 .研究方法 山岡・李(2004)によれば,日本語母語話者の場合, 前節で述べた研究目的を達成するために,本研究で 依頼の際に前置き部分で,まず相手に依頼をすること は,話し言葉における依頼の際の表現に焦点を当て, に対する謝罪表現をし,次いで状況説明または,理由 ─ 294 ─ 説明をし相手への配慮を表現してから本題に入る場合 くし,本題に入っている. が多いが,中国人日本語学習者や韓国人日本語学習者 A 5 「紹介状を書いてもらいたい」の場合,親疎関 はどのような順番や配慮表現を使用して依頼の本題に 係に関わらず,「お願いしたいことがあります」とい はいるのか.また,相手への配慮として前置きで謝罪 う前置きの次に状況説明などをして,本題にはいる 表現を使用するのか. ケースが60%であった. 上記の調査を行うことにより,日本語学習者が依頼 表現を使用する際に,どのような表現を使用するか, 6 .1 .2 .日本語による依頼 および母語とどのような相違点が見られるかが,ある 同じ状況で,韓国人日本語学習者が日本語で A 1「ペ 程度確かになると予想される.また,これにより,日 ンを借りたい」という依頼を行う場合, 「すみませんが」 本語母語話者が日本語学習者と会話をする際に違和感 や「悪いんだけど」といった謝罪のあとで本題に入る を感じる原因を明らかにすることができる. ケースが49%になり,謝罪を述べずに依頼本題に入る ケースは17%に減少した.また対等であまり親しくな 6 .結果と考察 い相手や上下関係にある相手に対しては,母語と同様 6 . 1 .韓国人日本語学習者の場合 の数値が得られた. 6 .1 .1 .母語による依頼 A 2 「相手が使うかもしれない本を借りたい」の場 韓国語母語による依頼において,相手への負担度の 合,「もし使っていなかったら本を貸してほしい」と 低い A 1 「ペンを借りたい」の場合,対等な相手に対 いう表現が最も多く60%だった.また,謝罪のあと しては, 「ペンをかして」と,すぐに本題に入るケー に状況説明をし,本題にはいっているケースが40% スが66%と最も多い.しかし,あまり親しくない場合 であった.この場合状況説明のあとに謝罪という形も や,上下関係にある場合には,「すみませんが」のよ あった. うな謝罪のあとに本題に入る場合が66%~83%と多く A 3 「携帯電話を借りたい」の場合は,対等で親し なり, すぐに本題に入るケースが10%台に減っている. い相手に対しては,すぐに本題に入っているケースが A 2 「相手が使うかもしれない本を借りたい」の場 40%と多く,次いで,謝罪の言葉のあとに依頼本題, 合には, 対等で親しい相手に対しては, 「すみませんが」 または,状況・理由説明のあとに依頼本題というケー などの謝罪はなく,すぐに本題に入るケースが60%と スが20%程度ずつであった.そして,対等であるが親 最も多く,対等で親しくない相手や上下関係にある相 しくない相手に対しては,「すみませんが」などの謝 手に対しては本を借りたい状況にあることを説明し 罪のあとに依頼本題が最も多く,60%であった.しか て,依頼の本題に入っている場合が40%以上となる. し,上下関係にある場合,親しい相手に対しては詳し この場合,説明の長さに差はあるものの上下・親疎関 く状況を説明しているケースが60%で親しくない相手 係に関わりなく同様の依頼の仕方であった. に対しては20%であった. A 3 「携帯電話を借りたい」の場合は,対等で親し A 4 「お金を借りたい」の場合には,韓国語での依 い場合,いきなり本題に入るケースか状況を説明して 頼の場合,状況説明のあと本題にはいるケースが60% 本題に入るケースに分かれていた.しかし,上下関係 と多かったが,日本語での依頼の場合,謝罪をいれる にある場合には,はじめに謝罪,次いで状況説明をし ケースが多くなっている. 本題に入っているケースが60%と増えてくる. A 5 「紹介状を書いてもらいたい」の場合,韓国語 A 4 「お金を借りたい」の場合,対等な関係の場合 での表現とほぼ同様で, 「お願いしたいことがあります」 には親疎関係に関係なく,謝罪表現はなく,状況説明 という前置きにつづいて状況・理由説明をし本題に入 をし本題にはいっているケースが60%になっている. るケースが60%であった.このように見てくると,韓 上下関係にある場合,特に親しくない上下関係のとき 国人日本語学習者は,母語の表現とほぼ同様の表現で には,全員が丁寧に謝罪のあとの状況・理由説明を長 日本語でも依頼表現を使っているようである.唯一異 ─ 295 ─ なるのは,母国の対等で親しい友人という設定の場合 葉,状況・理由説明のあとに依頼本題に入るケースが で,謝罪の言葉のあとに依頼という形は,少ないよう 56%~75%と大多数を占めた. である. A 5 「紹介状を書いてもらいたい」の場合には,上 下関係で親しい相手に対しては,はじめから依頼本題 6 . 2 .中国人日本語学習者の場合 に入るケースが25%,状況・理由説明の後に依頼本題 6 .2 .1 .母語による依頼 に入るケースも25%,そして謝罪の言葉,状況・理由 中国語母語による依頼において,相手への負担度の 説明,依頼本題に入るというケースが若干多く31.4% 低い A 1 「ペンを借りたい」の場合,対等で親しい相 であった.しかし,上下関係で親しくない相手の場合 手には,はじめから「ペンを貸して」と本題に入る場 には,謝罪,状況・理由説明のあとに依頼本題に入る 合が68. 8%と最も多く,対等でも親しくない場合には, ケースが50%で最も多かった. 依頼の本題の前に「すみませんが」などの謝罪の言葉 を述べる場合が62.5%と多い.また,上下関係がある 6 .2 .2 .日本語による依頼 場合には,親疎関係に関わらず,謝罪の言葉のあとに 中国人日本語学習者が,日本語で A 1 「ペンを借り 状況・理由説明をし本題に入る場合が最も多く50%程 る」用件を対等で親しい相手に依頼する場合,前置き 度になっている. がなく本題に入るケースがほとんどで62.5%あった A 2 「相手が使うかもしれない本を借りたい」の場 が,親しくない相手に対しては,謝罪の前置きのあと 合でも対等で親しい相手の場合には,はじめから「本 すぐに本題に入るケースが56.3%と最も多い.また上 を貸して」 と本題に入るケースが50%と最も多かった. 下関係にある相手の場合は,親疎に関わらず,謝罪の しかし, 対等でも親しくない場合には, 「すみませんが」 あとに状況・理由説明をし本題に入るケースが43.8 % のような謝罪の言葉を述べたあとで依頼本題に入る ~50%と多い.しかし,親しい先生の場合は,いきな ケースが37.5 %で,また謝罪の言葉の後で状況・理 り本題に入るケースも18.8%と多く見られた. 由の説明を行ってから依頼本題に入るケースが31.3% A 2 「本を借りる」依頼においては,対等で親しい とほぼ同数見られた.上下関係においては,親疎関係 相手には,状況説明をし本題に入るケースが56.3%と に関わらず,謝罪,状況・理由説明のあとに依頼本題 最も多い.対等でもあまり親しくない相手に対して に入るケースが最も多く,40%に近い数字であった. は,謝罪してから本題に入るケースが37.5%で謝罪し A 3 「携帯電話を借りたい」の場合には,対等で親 たあとで状況説明をし本題に入るケースの31.3%と同 しい相手の場合,状況・理由説明をして依頼本題に入 様の数字となった.上下関係にある場合は,親疎に関 るケースが最も多く37.5%で,対等で親しくない相手 わらず謝罪,状況説明,本題というケースがほとんど の場合は,謝罪,状況・理由説明,そして依頼本題に で50%以上であった. 入るケースが75%であった.上下関係にある場合,親 A 3 「携帯を借りる」依頼の場合は,対等で親しい 疎に関わらず謝罪,状況・理由説明のあとで依頼本題 相手へは,いきなり本題に入るケースが25%,状況説 に入るケースが45%前後と多かったが,状況・理由説 明して本題にはいるケースが37.5%と合計すると多数 明のあと依頼本題に入るケースも35%前後と多かっ を占めた.対等で親しくない相手へは,謝罪,状況説 た. 明,本題というケースが43.8%と最も多かった.上下 A 4「お金を借りたい」の場合,対等で親しい場合は, 関係のある場合は,親疎関係に関わらず,謝罪,状況・ 状況・理由説明をし,依頼本題に入るケースが最も多 理由説明,本題というケースが43%~50%と多数を占 く56. 2%,対等で親しくない場合は,「すみませんが」 めた. のような謝罪の言葉の後に,状況・理由説明をし,依 A 4 「お金を借りる」依頼の場合,対等で親しい相 頼本題に入るケースが最も多く56.3%であった.上下 手の場合,状況・理由説明をして本題に入るケースが 関係にある場合には,親疎関係に関わらず,謝罪の言 最も多く37.5%であった.対等で親しくない相手の場 ─ 296 ─ 合と上下関係にあって親しくない相手の場合は,謝罪, せんが」を多く使用している. 状況・理由説明の後本題に入るケースが50%~62.5% と最も多かった.上下関係にあって親しい相手の場合 7 .今後の課題 は,謝罪,本題と状況・理由説明,本題と謝罪,状況・ 今回のアンケートでは,日本語と母語の表現を同時 理由説明,本題のケースにばらつきがあった. に記入してもらったため,日本語の表現が母語に影響 A 5 「紹介状を書いてもらう」の場合,上下関係の を与えてしまっている可能性がある.そこで,次回は, 親疎に関わらず,本題から入るケースが18.8%見られ 母語による表現だけのアンケートを行いどのような違 た.また全体的なばらつきが見られるという特徴が いがあるかを再調査したいと考える.また今回は,日 あった. その中でも他に比べ若干数値が多かったのは, 本語学習者の母語と日本語の依頼表現の比較を行った 「お願いがあります」ではじまる場合で,30%前後の が,この後,日本語母語話者にも同様のアンケート調 数値であった. 査をし,日本語母語話者の依頼における表現と日本語 以上のことから,中国人日本語学習者は,日本語に 学習者における依頼の表現の違いを分析する.また, おける依頼の際には,母語よりも丁寧な表現を多く使 状況・理由説明の中で使われる文体についても詳しく 用していることがわかる.また依頼の際には,謝罪の 調査し日本語教育に役立てたいと考える. 言葉がない場合でも,状況説明をする場合が多いこと 謝辞 が観察された. 本研究の調査は,東北大学高等教育開発推進セン 6 . 3 .韓国人と中国人の母語による依頼の比較 ター,平成19年度高等教育の開発推進に関する調査・ 韓国語で依頼の際にもっとも注意をしていると感じ 研究経費(研究課題名「日本語学習者の作文誤用例デー た点は,上下関係であった.親疎関係については,親 タベースの構築」)の支援を受けて行われております. しい相手も親しくない相手も同様の依頼表現をしてい るが,上下関係がある場合には,丁寧に謝罪の言葉を [ 参考文献 ] 述べ,次いで状況・理由の説明についても詳しく述べ 蒲谷宏・川口義一・坂本惠 (1998) 『敬語表現』大修館書店 てから依頼の本題にはいり,依頼本題のあとにもお礼 山岡政紀・李奇楠(2004)「依頼表現の日中対照研究」北 や再び謝罪の言葉を発話する場合が多い. 京大学日本文化研究所・創価大学文学部(編)『日本語 逆に中国語の場合には,あまり上下関係による差は 言文化研究』第 5 集,p.131-160,北京学苑出版 なかった.ほとんど同様の表現が使用されており,ど 山下みゆき(2000)「日本語学習者の意見文における前置 ちらかというと依頼の負担度が高いと感じられる依頼 き表現の使用の実際」第 8 回国立国語研究所国際シンポ の際に上下関係にある相手への説明が長くなっている ジウムにおける口頭発表.国立国語研究所,東京 ようであった. Blum-Kulka, S., House, J. and Kasper, G., eds., (1989) CrossClutural Pragmatics: Requests and Apologies, Norwood, N. 6 . 4 .韓国人と中国人の日本語による依頼の比較 J. : Ablex 韓国人日本語学習者は,日本語での依頼の際の発話 Brown, P. & S. C. Levinson (1987) Politeness: Some は,母語である韓国語とほぼ同様の発話になっている Universals in Language Usage. Cambridge: Cambridge ようである. University Press それに対して,中国人日本語学習者は,日本語での 依頼の際には,母語での依頼よりもより丁寧な表現を Second Language Kasper, G. (1992) `Pragmatic Transfer.’ Research, Vol. 8, No. 3, 203-231 使っている場合が多いようである.また,母語では, 「す みませんが」などを使用しない依頼の場合でも,日本 語での依頼の際には,「すみませんが」「申し訳ありま ─ 297 ─ 付録 韓国語母語話者における依頼 対等で親しい 対等で親しくない 上下関係で親しい 上下関係で親しくない 韓国人日本語による依頼ー本題 韓国人母語による依頼ー本題 100 100 80 80 60 60 40 40 20 20 0 0 ペン 本 携帯電話 お金 紹介状 ペン 韓国人母語による依頼ー謝罪、本題 本 携帯電話 お金 紹介状 韓国人日本語による依頼ー謝罪、本題 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 100 80 60 40 20 0 ペン 本 携帯電話 お金 紹介状 ペン 韓国人母語による依頼ー状況・理由説明、本題 本 携帯電話 お金 紹介状 韓国人日本語による依頼ー状況・理由説明、本題 100 100 80 80 60 60 40 40 20 20 0 0 ペン 本 携帯電話 お金 紹介状 ペン 韓国人母語による依頼ー謝罪、状況・理由説明、本題 本 携帯電話 お金 紹介状 韓国人日本語による依頼ー謝罪、状況・理由説明、本題 100 100 80 80 60 60 40 40 20 20 0 0 ペン 本 携帯電話 お金 紹介状 ペン ─ 298 ─ 本 携帯電話 お金 紹介状 韓国人日本語による依頼ー状況・理由説明、謝罪、本題 韓国人母語による依頼ー状況・理由説明、謝罪、本題 100 100 80 80 60 60 40 40 20 20 0 0 ペン 本 携帯電話 お金 ペン 紹介状 本 携帯電話 お金 紹介状 韓国人日本語による依頼ー前置き、本題 韓国人母語による依頼ー前置き、本題 100 100 80 80 60 60 40 40 20 20 0 0 ペン 本 携帯電話 お金 ペン 紹介状 本 携帯電話 お金 紹介状 中国語母語話者における依頼 対等で親しい 対等で親しくない 上下関係で親しい 上下関係で親しくない 中国人日本語による依頼ー本題 中国人母語による依頼ー本題 100 100 80 80 60 60 40 40 20 20 0 0 ペン 本 携帯電話 お金 ペン 紹介状 本 携帯電話 お金 紹介状 中国人日本語による依頼ー謝罪、本題 中国人母語による依頼ー謝罪、本題 100 100 80 80 60 60 40 40 20 20 0 0 ペン 本 携帯電話 お金 ペン 紹介状 ─ 299 ─ 本 携帯電話 お金 紹介状 中国人日本語による依頼ー状況・理由説明、本題 中国人母語による依頼ー状況・理由説明、本題 100 100 80 80 60 60 40 40 20 20 0 0 ペン 本 携帯電話 お金 ペン 紹介状 本 携帯電話 お金 紹介状 中国人日本語による依頼ー謝罪、状況・理由説明、本題 中国人母語による依頼ー謝罪、状況・理由説明、本題 100 100 80 80 60 60 40 40 20 20 0 0 ペン 本 携帯電話 お金 ペン 紹介状 中国人母語による依頼ー状況・理由説明、謝罪、本題 本 携帯電話 お金 紹介状 中国人日本語による依頼ー状況・理由説明、謝罪、本題 100 100 80 80 60 60 40 40 20 20 0 0 ペン 本 携帯電話 お金 ペン 紹介状 本 携帯電話 お金 紹介状 中国人日本語による依頼ー前置き、本題 中国人母語による依頼ー前置き、本題 100 100 80 80 60 60 40 40 20 20 0 0 ペン 本 携帯電話 お金 ペン 紹介状 ─ 300 ─ 本 携帯電話 お金 紹介状
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