2013入門講座 佐藤レジュメ 全体構造 - LEC東京リーガルマインド

弁理士
2013入門講座
佐藤レジュメ
全体構造
0 001312 120158
ML12015
全体構造 第1回
全体構造 第 1 回レジュメ
1
勉強を始める前に
①
勉強時間 → 従来3000時間
→ 現在1500時間程度は必要
②
どのように時間を作りだすか
→
③
勉強は止まらないことが重要 → 繰り返し何度でも聴く
必要な資料
・法令集
・法律学小辞典(有斐閣)
→ 法律の文言は最初は難しい
1乃至5というのはどういう意味か
物権・債権とは何か
兄弟姉妹・競売 → 法律家はどのように読むのか
④
1年間で合格するための学習 → WEBと生の有効活用
→ 渋谷本校と他校との違い
知識 → 2年目以上のものは必要
観察力 → 論文では必要だがこれを有している合格者はいない
文章表現力 → 論文では必要だがこれを有している合格者はいない
↓
知識のみで合格している(論文)が昨年度以降から変化あり
↓
短答と論文は知識の両輪 → 短答問題集の使い方が知識をかためる素地
論部は過去問の徹底理解 → 論基礎の生はこれを講義素材とする
2
①
短答試験の学習方法
法律は要件・効果 →
原則・例外から成り立つ
→ この点の理解
②
何故その解答になるかのアプローチ → 必要性 + 許容性
-1-
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③
何故その短答の問題を出題してきたかを考える
→
問題の所在の発見(論文
に生きる)
↓
これを完璧にやれば(50点)論文合格はたやすい
3 論文試験
①
問題文の読み方 → 冒頭からは読まない
②
解答の出し方 → 論文基礎完成でやる → 瞬間的に解答は出る
③
書き方を教える講座は司法試験を含めてない
→ だから項目羅列の答案になる → 今後の試験では合格は困難
4 口述試験
①
知識不足から不合格が大半
②
コミュ二ケーション能力不足 → 口頭式のゼミで訓練
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-2-
全体構造 第1回
第 1 章 知的財産権
1
知的財産権とは何か
物権
有体財産
債権
財産権
産業財産権 → 様々な法律がある
無体財産
(知的財産)
不正競争防止法
著作権
【全体図1】
≪例≫
LECとの間でDVDオプションでDVDが送られてきた
→ 有体財産 → 顧客に帰属
→ 知的財産 → LECに帰属
2
知的財産の種類
①
人の創作により生みだされるもの(創作物 → 創作法 → 特許・著作権)
②
識別標識(創作物ではない → 選択物 → 商標)
③
上記の補完的性質を有するもの(不正競争)
3
知的財産権について
①
知的財産権法という法律はない → 学問体系
②
体系が似ている → 比較しながらの学習が必須
4
産業財産権と知的財産権
①
【全体図1参照】
法目的(1条の相違)の違い
産業財産権 → 究極目的は産業の発達
不正競争
→ 究極目的は国民経済の健全な発展
著作権
→ 究極目的は文化の進展
-3-
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②
管轄官庁
産業財産権 → 経済産業省の外局たる特許庁
不正競争
→ 経済産業省の本省管轄
著作権
→ 文部科学省の外局たる文化庁
5 弁理士試験の範囲
①
法令 → 法律・命令(後述)を指し審査基準は入らない
②
審査基準の出題は弁理士法違反であるが出題している
→
審査基準の勉強方法
→
審査基準は特許庁の法令解釈の手法である
→
但し何故そのような手法を
採用しているかは規定なし
→
③
単に暗記だけでは専門家としては不充分
審査基準をそのまま侵害訴訟の基準として記載してはいけない
6 国内法の体系【全体図2】 有体財産
憲法(憲法98条)
↓
←
条約(特許法26条)
法律(特別法・一般法)
↓
命令(政令・省令)
7 知的財産権法の位置付け
一般法 → 誰にもどの場合も適用される法規
特別法 → 特定の者に特定の場合に適用される法規
①
知的財産権法
→
特別法(民法・行政法・刑法等)
→
登録前 → 完全に特別法
→
登録後 → 一般法を修正(占有が出来ない財産権 → 模倣などが容易)
②
特別法は一般法を破る
→
特別法と一般法の規定が祖語する場合 → 特別法の世界では特別法適用
∵
通常の法規では処理できないから設けられたから
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-4-
全体構造 第1回
③
一般法で処理できる場合は特別法に規定なし
→
特許権侵害の場合の損害賠償(民法709条)
→
権利化後は一般法の理解が前提
8
条約の勉強と特徴
①
国と国との文章による合意 → 精緻ではない
ポイント
規定されていないこと
・国内法 → 類推解釈
・条 約 → 類推は不可
→ 決まっていないことは各国の自由
②
正文はフランス語か英語 → 訳が明瞭ではない
③
国内法は条約の下位規範
→
④
国内法から条約を見る(条約内容が具体的に見える)
条約 → パリ条約(一般条約)
その他の試験に関係ある条約(特別条約)
パリ条約内の体系
イ)属地主義 → 内国民待遇 → 4条以下
ロ)パリ条約は改正条約 ∵ 改正の頻度が産業財産権は早い → 改正困難
→
パリ19条(特別取極がある)
↓
PCT・マドプロ
→
TRIPSはパリ条約の特別取極ではないが最低限パリ条約を順守
-5-
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第 2 章 知的財産法の学習
1 知的財産法を学習する際の視点
①
有体財産と同じように考えられない場合が多い
→
占有できない
→
権利化まで審査をなす部分が多い
②
知的財産法という法律はない → 学問体系
→
産業財産権法の特許法と商標法が基礎
特許法 → 創作法の基本法
意匠法 → 両者の中間に立つ
商標法 → 協業法の基本法
③
手続法・実体法
手続法(7~8割)→ 何度も繰り返して全体の流れをつかむこと
実体法(3~2割)→ 個々の論述が要求される箇所
④
不正競争防止法(特許法・商標法・意匠法の補完的法律)
↓
上記法律の理解があれば容易に理解可能
⑤
著作権法
→
産業財産権法とは体系が異なるが創作法という点では特許法の
理解から比較しながら考えると理解が容易
2 各法律の概要
≪産業財産権法≫
①
特許法 → 産業財産権法の中核 → 他法は特許法の多くを準用
★
他の法律では特許法とは違う点、規定上は同じでも解釈が異なる点を中心
に問うてくる
②
実用新案法
→
特許法と近似
→
実体審査しない点で他の産業財産権法
と違う
★
無審査主義からくる弊害をどういう規定でうめるかが問題
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-6-
全体構造 第1回
③
商標法 → 創作法ではない → 特許等とは違う形で産業の発達を図る
④
意匠法 → 創作法(特許に近い)
物品の形状は商標に近い形で機能(商標に近い)
↓
どちらに軸足を置くかで説が異なる(基本的事項から説の対立がある)
≪不正競争防止法≫
産業財産権法の補完的法律
→ 産業財産権の理解が出来ていれば理解容易
≪著作権≫
産業財産権法とは別の体系で且つ条文数が多い
→
但し知的財産権法という枠では共通
→
創作法である → 特許法と比較対比して講義をする
≪条約≫
①
極めて抽象的 → 訳文であるので文章的に変
②
国内法との関係で読む
→ 体系的理解が重要
-7-
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第 3 章 産業財産権法
1 産業財産権法の目的
①
法目的の重要性 → 全ての規定は法目的達成のためにある
→ 1条が理解できればその法の大まかな理解が可能
②
法目的 → 特許・実用新案・意匠 → 産業の発達が目的
→ 商標 →
産業の発達 + 需要者の利益保護
ポイント
上記からも特許と商標が両極にある法ということが判る
2 各法と法目的達成との関係
⑴
①
特許・実用新案
特許・実用権が付与 → 独占排他権が付与(国家が保証してくれる)
・独占権 → 特許・実用権者のみが当該特許発明を実施できる
・排他権 → 独占性を害するものを排斥する
≪結果≫
創作意欲の増大(新規発明を生み出す)
出願をし、権利取得をなそうとする → 独占的に市場をコントロールできるから
↓
出願公開されそれを起点として更なる改良発明を生み出す
【全体図3】
1年6月経過
出
願
出願公開
≪結果≫
発明完成までの費用の回収の必要 → 独占的実施により回収
新規技術内容が実施 → 社会活動が便宜 → 産業の発達
⑵
①
意匠
創作物としてみた場合と産業の発達との関係 → 特許のような説明は不可
→ 需要増大機能に求める
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-8-
全体構造 第1回
② 商標と似たようとしてみた場合 → 競業秩序の維持に求める
↓
第1条の箇所でこれだけ考え方が違う以上、法全体のとらえかたも考え方が異なる
⑶
商標
①
商標がなければ → 迅速な商取引が出来ない
②
商標 → 他の産業財産権と同様独占排他権
→ 競業秩序の保持がなされる → 産業の発達がなされる
→ 需要者は間違って品物を購入しない → 需要者の利益も保持
3
産業財産権制度の概要(詳細はテキスト) → 問題点のみ
⑴
特許・実用新案法
①
特許と実用新案の保護対象はほぼ同じなのに何故、両制度があるのか
②
実用新案法はライフサイクルが短いものを保護
→
→ 無審査登録主義
何故、基礎的要件の審査が必要なのか
【全体図4】
方式審査
③
⑵
基礎的要件の審査
登 録
評価書の請求により権利の濫用が防止できるといわれるが何故か
意匠法
①
何故、意匠は物品性が必要なのか → 図のみで意匠とならないのは何故か
②
存続期間のカウントが特許・実用新案と異なるのは何故か
【全体図5】
出願日
登 録
終
始 期(独占権)
期
20年
-9-
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ポイント
審査期間の長短で独占権の期間に差異がある
・
審査期間が出願から1年 → 特許権は19年
・
審査期間が出願から19年 → 特許権は1年
技術は積み重ね → 基本的権利が長期間となると問題あり
【全体図6】
出願日
登 録
始期(独占排他権)
終期の始点 → 20年(意匠)
→ 10年(商標)→更新
ポイント
意匠は趣味性に富む → 積み重ねはほとんどない
商標は使用するほど保護価値が増す → 保護の必要性あり
商標は使用されるほど識別力が強くなる → 第三者の取り違いはなくなる
↓
更新制度が存在する
③
効力の差異
・特許・実用新案 → 同一性に独占排他権
・意匠 → 同一・類似範囲に独占排他権 → 創作は抽象的で幅がある
→
物品性が不可欠
→
同一では狭く財貨的価値が完全に保護さ
れない
・商標 → 同一の範囲 → 独占排他権
類似の範囲 → 排他権のみ
④
特殊制度がある
関連・組物・秘密・動的・部分意匠制度(カン・クミ・ヒ・ドウ・ブ)
→ 当該制度からの出題が大半 → 短答・論文とも
⑶
①
商標法
保護対象
形式的 → 文字・記号・図形等の商標
実質的 → 業務上の信用
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-10-
全体構造 第1回
ポイント
商標自体は創作物ではない
→ それ自体に財貨的価値なし
商標は選択物 → 文字3文字の商標を考えれば組み合わせのパターンは有限
②
商標権の効力
意匠と違い、創作物ではない → 幅を認める必要はない
↓
但し排他権の範囲を同一の範囲だけならば、出所の混同が生じる
↓
類似の範囲まで排他権を与える必要がある
【全体図7】
(東京リーガルマインド)
(第三者)
LEC(登録)
レック(使用・出願)
需要者
東京リーガルマインドが第三者の使用を禁止出来ないと取り違いが生じる
→ 取引秩序の混乱 →
産業発達が害される
→ 重要者の取り違い → 需要者の利益が害される
③
更新制度
長く使えば使うほど→財産的価値が高くなる → 保護の必要性増す
→薔薇の包み → 高島屋を直感
→ ライオン
需要者利益にも資する
→ 三越を直感
↓
更新制度が採用
《考えてみよう》
商標は更新制度ではなく、永久権としていないのは何故か
-11-
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全体構造 第 2 回レジュメ
⑷
不正競争防止法
1
何故、不正競争防止法が必要とされたのか?
⑴
パリ条約の同盟国となるため(パリ条約10条の2⑶)
パリ条約10条の2⑶ → 禁止する → 差止を意味する
差止が認められるためには→その対象が物権(所有権・特許権等)でなけれ
ばならない。
↓
物権は物権法定主義(175条)より勝手に作れない。
↓
物権ではないが、差止を認めるという必要性が出てきた
↓
不正競争防止法の創設(近時、不正競争の対象が増加しているのも差止をし
たい、という産業界からの強い要請によっている所が大きい)。
⑵ 不正競争となる行為(特許等でいうならば侵害に当たると考えれば理解容易)
①2条1項1号
→
商標に類似した規定
→
意匠法に類似した規定
②2条1項2号
③2条1項3号
④~⑨ → 営業秘密に関する規定(3つの基準さえ押さえれば簡単)
⑩~⑪
→
コピー防止のスクランブル記述を解除する装置等を流通におく
行為
⑫
→ ドメインの取得・保持・使用を禁ずるもの → 商標に近い
⑬
→ 最近問題の産地や品質偽装の行為
⑭
→ 競業者の信用棄損行為
⑮
→ 代理人等の不正使用行為 → 商標に近似した規定(商53条の2)
⑶
不正競争となった場合
①
民事上 → 差止や損害賠償可能
②
刑事上 → 違法性の範囲の強いもののみが刑罰の対象
∵ 刑法の謙抑性(この点が画一的な特許や商標と異なる。)
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-12-
全体構造 第2回
⑷
①
その他 → 不正競争ではないが、刑罰の適用のみ受けるもの
外国の国旗等の使用(パリ6条の3要請)
《試験問題との関連性》
パリ条約上最も読むのが難しい規定とされている。
↓
不正競争防止法16条、17条に詳細な規定があるのでこちらから逆に条約の文
章を読み込んでいくと理解が容易。
②
外国公務員に対する利益供与(日本人公務員でない点)
-13-
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⑸
1
著作権法
特徴 → 権利関係が複雑で判りにくい
著作権(著作財産権)
著作権の権利
(著作者の権利)
著作者人格権
著作権法
人格権(実演家のみ)
著作隣接権
(利用する者の権利)
財産権
物権的権利
(狭義の著作隣接権)
債権的権利
2
人格権と財産権
財産権(狭義の著作権) → 移転可能も(相続等も)
著作権法
人格権 → 一身専属的権利 → 移転不可
↓
従って、人格権と財産権が分属する場合があり、調整規定が必要となる。
展示権(財産権)
乙
公表権(人格権)
×
甲
この点は特許も同様であるが、特許では人格権があまり強い権利として機能
してこないので問題とならないだけ。
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-14-
全体構造 第2回
3
財産権の内容
1つの権利
特許権(物の発明)
生産・使用・譲渡等・貸し渡し等
複製権
演奏権
著作権
公衆送信権
その支分権をいくつ何を持つか
でできることに違いが生ずる
支分権の束
譲渡権
貸与権
頒布権
4
特許権との違い
⑴
権利内容 → 独占排他権(相対的独占権)
↓
従って、侵害者に対しては特許権と同様の措置が(民事・刑事上の措置)が可能。
⑵
権利の発生 → 特許と異なり、無方式(文化庁に対し書面等の提出不要)
甲
乙
乙
乙
(別個)
A
× A
A
A
×
創
作
創
作
出
願
出
願
甲がこの時点で実施(特許)
利用(著作)
-15-
産業財産権
著作権
侵害
非侵害
絶対的独占権
総他的独占権
公示(公報)必要
公示不要
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⑹
条約
WIPO
GATT
TRIPS協定
(全く関係なし)
×
パリ条約(18条で改正困難/19条)
特別取極
特許協力条約
(PCT)
マドリッド協定議定書
ポイント
TRIPS協定はパリ条約と何らの関係性もないが、TRIPS協定2条1項
の規定よりパリ条約を最低限の保護として保証する旨の規定がある。
《理由》
① パリ条約は世界の大半が加入しているため、世界での共通ルールとなっている
② パリ条約違反を国際的に制裁することは事実上不可能
これに対し、TRIPS協定違反については国際的に制裁を加える旨の定めあり。
↓
パリ条約の大半の同盟国がTRIPS協定に加入
↓
パリ条約違反を国際的な場で制裁を加えることが可能
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-16-
全体構造 第2回
<パリ条約>
1 パリ条約締結前まで → 各国毎、勝手に手続規定や実体規定を設けることが可能
(属地主義)
X国ではX国の国民はAの要件のみで権利可能。そして、権利期間は20年。
↑
↓
これに対し、在外者(主に外国人)はAとBの要件を具備して権利。
そして、その権利期間は10年とする。
《理由》
在外者はX国内で実施(物を生産したり、使用)したりしない。その一方で、国
内で実施しているX国民に対し権利行使を行う。
↓
産業の発達のためには、なるたけ権利取得させたくないと考えるのは当然。
↓
しかし、これでは内外人間の不均衡が生じることから、何とか是正しなければ
ならなかった。
《属地主義のイメージ》
地理的差異
言語的差異
(内国民以外)
(内国民)
-17-
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2
パリ条約締結までの経緯
パリで開催された万国博覧会を契機に、工業所有権についての国際的ルール作
成が必要となってきた。
↓
当初は、世界統一法、世界特許庁構想
↓
しかし、各国の利害対立が激しく上記の達成は困難
↓
そこで、属地主義を留保しつつできる限りの妥協の産物として出来上がったも
のがパリ条約である。
属地主義
3
第1修正
内国民待遇
第2修正
4条以下の規定
第1修正である内国民待遇の原則
日本では内外人問わず、同一の発明については、同一の登録要件で最初に日
本語で出願した者に同一内容の権利を与える。
《内国民待遇のイメージ》
地理的差異
言語的差異
(内国民以外)
(内国民)
スタートライン
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-18-
全体構造 第2回
《内国民待遇の利点と問題点》
・形式低には内外人問わず最低限平等に取り扱わなければならないという点では、
内国民待遇以外を形式的にも不平等としてきた属地主義よりもよい
↓
しかし、これだけでは実質上、内外人間の不均衡の是正は図れない。
∵
地理的・言語的差異
↓
そこで、4条以下の規定が生まれることになった。
《試験問題との関連性》
① 内国民待遇を考えるときは先ず、属地主義を完全に貫いたらどうなるか考える
↓
不均衡
↓
そこで内国民待遇
②
4条以下の規定を考えるときは必ず、内国民待遇ではどうかを考える。
↓
実質上内国民以外の者に不均衡
↓
そこで、その実質上の不均衡を是正すべき4条以下の規定
《4条以下の規定のイメージ》
地理的差異
言語的差異
台
(内国民以外)
(内国民)
スタートライン
-19-
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4
優先権
日本では内外人を問わず、同一発明については、同一の登録要件で最初に日
本語で日本国に出願した者に同一内容の権利を与える
↑
上記内容は、①:属地主義には
→ 反しない
②:内国民待遇には
→ 反しない
↓
しかし、上記内容は実質上、地理的・言語的差異を有する外国人(主に在外者)
にとって一方的に不利益となる。
(甲)
フランス人
イ
(乙)
日本人
イ
(甲)
(乙)
(甲)
イ
イ
イ
発明
発明
出願
(フランス)
出願
(日本)
出願
(日本)
×
別個独立
∵
翻訳に手間取る
優先権
①
本来なら日本国で最先の出願は(乙)なので(乙)に権利を付与するのが原則
↓
しかし、翻訳に手間取りどうしても日本での出願が遅延してしまう
↓
②
第1国と第2国の間に生じた理由で、第2国出願(甲の日本出願)は不利な取
扱いを受けないと規定
→
その結果、甲の出願が日本で特許権付与される結
果となる。
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-20-
全体構造 第2回
5
特許独立の原則
日本では、内外人の特許権を問わず同一内容の外国での特許権が消滅した場
合には、併せて我が国の特許権も消滅する。
⑴
属地主義
→ 反しない
⑵
内国民待遇 → 反しない
∵ 内外人問わずとしている
↓
しかし、実質上の不利益を被るのは内国民以外の者(主に外国人)
∵
内国民(日本人が大半)は必ずしも外国に同一内容の特許権を取得していると
は限らない
これに対して、内国民以外の者(主に外国人)は先ず自国で出願をしてから先述
した優先権を主張して日本に権利取得する場合が通常。
↓
従って、このままでは内国民以外の者(主に外国人)の方が、上記の不利益な規
定の適用を受けてしまう。
↓
これは、問題である。そこで、各国の特許権の発生、変更、消滅は従属性がな
く独立したものである点を条約上明確に定めた。
-21-
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<PCT(特許協力条約)>
1
外国への出願の態様
⑴
通常ルート
→
時間的利益の享受もなし
⑵
パリ優先権ルート →
時間的利益の享受はあり
↓
但し、いずれの類型も以下の問題点を有する
甲
米国
方式審査
出願公開
実体審査の為の調査
実体審査
仏国
方式審査
出願公開
実体審査の為の調査
実体審査
独国
方式審査
出願公開
実体審査の為の調査
実体審査
露国
方式審査
出願公開
実体審査の為の調査
実体審査
中国
方式審査
出願公開
実体審査の為の調査
実体審査
ポイント
それぞれの言語/方式で出願 → 方式審査も出願公開も各国毎
《問題点》
・出願の件数も各国毎
→
出願人の不利益大きい
∵
ほとんど書面の記載内容に変化なし。しかし、翻訳文は各国毎の言語で
しなければならない。
・出願公開/調査も各国ごと
→
各国特許庁の負担増大
∵
出願公開の内容等同一(費用負担各国)
調査する資料もほぼ同一(世界レベルで見れば同一のことを各国で)
・出願公開が各国毎でなされると
→
第三者の技術調査当に不便
∵
各国により公開の言語、時期が異なる
↓
第三者が知りたいのは同一内容がどこの国に出願されているかの事実
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-22-
全体構造 第2回
2
PCTルート
書面の内容がほぼ同一/調査対象もほぼ同一ならばそれらの手続を統一して
行なってしまえばよい(PCT)。
・出願の体の有無(PCT11条)→各国に出願したことにある
(国際出願日)
甲
受理官庁
・方式審査
(出願書類1通)
コピー(2通)
国際事務局(国際公開
∵
情報の集中拡散)
国際調査期間(国際調査報告・国際調査見解書)
出願人
各国の特許庁
(指定国)
○
×
△
移行手続
断念
19条補正(A→B)
移行したX国で
国際予備審査
実体審査
(オプション)
予備審査報告
・種々の権利
移行断念
移行可能
Y・Z国
移行後、各国で実体審査
-23-
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<TRIPS協定>
1
条約の位置づけ → パリ条約の特別取極でないことは保護対象から明らか
パリ条約
→ 工業所有権法
TRIPS協定 → 知的所有権(著作権等も含まれる)
2
何故、最低限パリ条約の規定を遵守することとされているのか?(2条1項)
∵
① パリ条約は工業所有権の最低限の保護基準とされている
②
世界の大多数の国がパリ条約には加入している
③
パリ条約違反を国際的な場で処分したい
★
パリ条約 → 5条の5:意匠は、すべての同盟国において保護される
《問題点》
・意匠の定義なし
→ 各国でどうにでも意匠の定義可能
・意匠の保護機関に定めなし → 1年にするか20年にするかも各国の自由
・意匠の権利内容定めなし
TRIPS協定 → 25条
3
→ 権利内容をどうでも決められる
具体的な規定がある → 各国は遵守義務
何故、パリ条約とTRIPS協定との内国民待遇の規定に多少の相違がある
のか?
⑴
時代の違い
→
パリ条約でも内国民以上の保護を与えら得ることを禁じら
れていたわけではない。
↓しかし
内国民と同等の保護以上の保護をそれ以外の者に与えるこ
とは1883年という時代では考えられなかった。
最大の保護は内国民と同等の保護を与えること。
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弁理士
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全体構造 第2回
⑵
各国の国に対する登録要件は全てそろう
《例》X国で特許権を取得
内国民
A+B
Y国民
A+B
Z国民
A+B+C ×(内国民待遇に反する)
E国民
Aのみ(別に問題ないが当時は考えられなかった)
しかし、時代の変化により内国民以上の要件で保護を
認める国が生じるに至った。
内国民
A+B
Y国民
A+B
E国民
Aのみ
差異
→
差異が生じないようにする為には一番
いい条件に合わせる
↓
Aのみの要件でよい(最恵国待遇)
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