通信<第2号>意匠国際出願の話 (1)

通信<第2号> 平成27年5月 意匠国際出願の話 平成27年5月13日より、我が国において意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定に基
づく国際出願(以下、意匠国際出願という。)ができるようになり、ジュネーブ改正協定の締約国において、
意匠の国際登録制度を利用した意匠の保護を受けることができるようになりました。 主な締約国としては、日本の他、欧州、米国、韓国、シンガポールなどがあり、これらの国に単一の出願で
意匠の保護を図ることも可能になりました。また、国際意匠分類の同じ類に属するものであれば、一出願に1
00意匠まで含めることができ、一括して出願することができます。 欧州などは実体審査をせずに意匠登録する無審査国(機関)であるため、現地代理人を介せず意匠登録が可
能になり、また、米国、韓国などの審査制度がある審査国においても、拒絶理由が発せられない場合は、現地
代理人が不要であるため、費用の低減を図ることができます。 日本に直接出願する場合と比較して異なる点は、日本語では出願できない、維持年金を5年分毎に納付しな
ければならない、権利の承継等の手続きはWIPO国際事務局に対して行わなければならない点などが挙げら
れます。 なかでも、意匠国際出願は、国際登録日(出願日)から原則6月後に国際公表される点が日本に直接出願す
る場合と大きく異なります。よって、秘密意匠の請求をすることはできません。拒絶査定(審決)になった場
合でも公表されてしまうことになります。しかし、国際公表する日を国際登録日から最大30月まで延期をす
ることができます。但し、この公表の延期は指定する国によって30月延期できない場合があります。例えば、
シンガポールは公表の延期を認めてないため、シンガポールを指定国として含めた場合は延期できず、原則ど
おりとなります。早期に公表されたくない場合は、この点に注意する必要があります。 直接出願するか意匠国際出願するかの選択ができるようになりましたが、どちらにもメリット・デメリット
はありますので、状況に応じてこれらを使い分け、適切な意匠保護を図れるように検討する必要があります。 また、意匠国際出願は、外国に意匠出願するだけでなく、日本のみを指定国として出願することもでき、以
下のような、活用方法が提案されています(1)。 『関連意匠の出願可能期間の延長』 日本のみを指定国として出願する場合、国際公表する日を国際登録日から最大30月まで延期することがで
きます。日本のような審査国では国際公表後に審査が開始されます。よって、日本において審査が開始される
のは国際登録日から30月以降になります。 関連意匠は、本意匠の出願日以降、その本意匠の登録公報発行日前までに出願をすることができます(意匠
法第10条)。そのため、公表日を延期すれば少なくとも出願日から30月間は関連意匠の出願をすることは
できます(直接出願した場合は、6~12月間程で登録公報が発行されます(平成27年5月時点))
。 よって、出願後にデザイン変更がなされるおそれがある場合は、意匠国際出願をして先願権を確保しながら
審査開始時期を先伸ばしておき、デザインが確定したときにその意匠を関連意匠として出願すれば、現に実施
する意匠を登録することが可能になります。費用的には直接出願するよりも割高になりますので、その点はご
注意を! 文責:弁理士
栗原
弘 参考文献 (1)特許庁「平成 26 年度 意匠の国際登録制度に関する説明会テキスト」 (2)特許庁総務部総務課制度審議室編「平成 26 年特許法等の一部改正
産業財産権法の解説」発明推進協会