社団法人 電子情報通信学会 THE INSTITUTE OF ELECTRONICS, INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS 信学技報 TECHNICAL REPORT OF IEICE. MIMO-OFDM システムにおける Carrier Interferometry を用いた伝搬路推定方式に関する検討 横枕 一成† 三瓶 政一† 原田 博司†† 森永 規彦††† † 大阪大学大学院 工学研究科 通信工学専攻 〒 565–0871 大阪府吹田市山田丘 2–1 †† 独立行政法人 情報通信研究機構 〒 239–0847 神奈川県横須賀市光の丘 3–4 ††† 広島国際大学 社会環境科学部 情報通信学科 〒 737–0112 広島県呉市広古新開 5–1–1 E-mail: †[email protected], [email protected], ††[email protected], †††[email protected] あらまし 次世代移動通信システムの候補として検討されている DPC-OF/TDMA(Dynamic Parameter Controlled - Orthogonal Frequency and Time Division Multiple Access)システムは,OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式と 1 セル繰返し TDMA(Time Division Multiple Access)をベースとし,64 サブキャリア毎に分割され た複数のサブチャネルブロックを端末の規模やサービスに応じて複数同時に使用することで,種類の異なる端末を同 時に収容することが可能なシステムである.この場合,最小制御単位である 64 サブキャリアでインパルス応答の推定 だけでなく,セルサーチ,MIMO(Multiple-Input Multiple Output)システムを導入する際の各送信アンテナからのイ ンパルス応答の推定(アンテナ識別)をできる必要がある.特に,MIMO システムを導入する場合には,各送信アン テナからの伝搬路推定の誤差が信号検出の際の干渉成分として伝送特性に影響を与えることから,各送信アンテナか らのインパルス応答をいかに高精度に推定できるかが最重要課題となる.そこで本検討では,時間軸上の直交性を用 いて時間軸上にインパルス応答を多重し,各受信アンテナで時間窓をかけることで各送信アンテナからのインパルス 応答を推定する CI(Carrier Interferometry)を用いた MIMO-OFDM システムのための伝搬路推定方式を提案する. キーワード DPC-OF/TDMA システム,MIMO-OFDM システム,Carrier Interferometry,時間窓 A Study on Channel Estimation Technique using Carrier Interferometry for MIMO-OFDM Systems Kazunari YOKOMAKURA† , Seiichi SAMPEI† , Hiroshi HARADA†† , and Norihiko MORINAGA††† † Graduate School of Engineering, Osaka University 2–1 Yamada-oka, Suita-shi, Osaka, 565–0871 Japan †† National Institute of Information and Communications Technology 3–4 Hikarino-oka, Yokosuka-shi, Kanagawa, 239–0847 Japan ††† Department of Information Technology, Faculty of Infrastructural Technologies, Hiroshima International University 5–1–1 Hirokoshingai , Kure-shi, Hiroshima, 737–0112 Japan E-mail: †[email protected], [email protected], ††[email protected], †††[email protected] Abstract This paper proposes a channel estimation technique for the multiple-input multiple-output (MIMO) - orthogonal frequency division multiplexing (OFDM) systems based on the dynamic parameter controlled - orthogonal frequency and time division multiple access (DPC-OF/TDMA) systems. In the proposed scheme, to estimate the channel state information (CSI) with high accuracy, we employ the carrier interferometry (CI) which has the orthogonality in the time domain as a proposed pilot signal. Moreover, we descriminate the inpuluse response from each transmit antenna branch using the time-domain-multiplexed CI signal and the time window. Computer simulation confirms that the proposed scheme can estimate the CSI with high accuracy by averaging it over three pilot signals. Key words DPC-OF/TDMA systems, MIMO-OFDM systems, carrier interfeormetry, time window —1— 近年,高いピークユーザレートが達成可能な次世代移動通信 システム(B3G:Beyond Third Generation)の検討が既に開始さ れており,1 本ずつの送受信アンテナでデータ伝送を行う SISO (Single-Input Single-Output)における 100 Mbit/s 以上の高速伝 送だけでなく,さらなる高速化手段として,複数の送受信ア ンテナを用いて周波数帯域を広げることなく 1 Gbit/s 程度の 伝送レートを実現するための MIMO(Multiple-Input Multiple- TDMA frame (2.5 msec) 1 slot (0.25 msec) 1024 subcarriers =16 subchannel blocks 1. ま え が き 8 slots (2 msec) frame guard (0.25 msec) FCMS MDS MDS MDS FCMS MDS MDS MDS 64 subcarriers = 1 subchannel block FCMS MDS MDS MDS FCMS MDS MDS MDS 図 1 フレーム構成(下り回線) Output)システムの導入も検討されている.このような B3G システムの候補として,我々は,1 セル繰返し TDMA(Time からのインパルス応答を干渉なく分離している.さらに,伝搬 Division Multiple Access)と OFDM(Orthogonal Frequency Di- 路特性の推定精度を向上させるために,下り回線でパイロット vision Multiplexing)適応変調方式(AMS:Adaptive Modulation 信号は全端末で共有されているものとし,各スロットで推定し Scheme)[1] をベースとした DPC-OF/TDMA(Dynamic Parame- た伝搬路特性を複数のスロットにわたり平均化することで伝搬 ter Controlled - Orthogonal Frequency and Time Division Multiple 路特性の推定精度を向上させている. Access)システム [2] を提案し,検討している.このシステムで 計算機シミュレーションにより提案方式の特性を評価した結 は,システム帯域全体を 64 サブキャリアからなる複数のサブ 果,所要 Eb /N0 の劣化を 1 dB 程度に抑えられ,高精度に伝搬 チャネルブロックに分割し,端末の規模やサービスに応じて複 路特性を推定できることを確認した. 数のサブチャネルブロックを同時に使用することで,様々な種 類の端末を同時に収容可能なシステムとなっている.したがっ て,本システムを実現するためには,最小制御単位である 64 サブキャリアでインパルス応答の推定だけでなく,セルサーチ, および複数のサブチャネルブロックを使用する場合の拡張法, さらには,MIMO システムを導入する際にはスロット構成を変 更することなく各送信アンテナからの希望信号の伝搬路特性を 推定できる必要がある. これに対する手法として,スペクトル拡散技術を用いて各基 地局,各送信アンテナに異なるコードを割り当てて推定すると いう方法が考えられるが,この場合,拡散率 64 で互いに自己 相関および相互相関特性に優れたコードを少なくとも隣接基地 局数 × 送信アンテナ数分用意する必要があることからコード不 足という問題が発生するだけでなく,このような多数のコード を多重した上でこのような小さな拡散率で各基地局および各送 信アンテナからの伝搬路特性を高精度に推定することはコード 間干渉等の影響により事実上困難となる. そこで我々は,64 という小さな拡散率でこれらの要求を満た しつつ高精度に伝搬路特性を推定する手法として,文献 [3] にお いて,コードによる識別を基地局のみとし,時間軸上での直交性 を用いてアンテナ識別を行う CI(Carrier Interferometry)[4]- [6] をベースとしたパイロット信号,および伝搬路推定方式を提案 しており,SISO においては良好な特性が得られることを示し た.一方,提案方式を MIMO に適用する場合,伝搬路特性の 推定誤差が他の情報系列に対する干渉成分として伝送特性に影 響を与えることから,いかに高精度に各送信アンテナからの伝 搬路特性を推定できるかが最重要の課題となる. そこで本検討では,この CI を用いたパイロット信号を前提と 2. DPC-OF/TDMA システム DPC-OF/TDMA システムは,OFDM 適応変調方式(OFDM AMS)と 1 セル繰返し TDMA をベースとし,IP(Internet Protocol)レイヤとの接続性を重視し MAC(Medium Access Control) レイヤを重点的に設計したシステムである.図 1 に,DPC- OF/TDMA システムの下り回線におけるフレーム構成を示 す [2].ここでは,全サブキャリア数を 1024 とし,同図に示さ れるようにシステム帯域全体を 64 サブキャリアからなる複数 のサブチャネルブロックに分割し,端末の規模やサービスに応 じて複数のサブチャネルブロックを同時に使用することで,種 類の異なる端末を同時に収容することができるシステムであ る.この場合,各端末は最小制御単位である 64 サブキャリア の整数倍のサブキャリアを使用することになることから,本シ ステムを適切に動作させるためには,最小制御単位である 64 サブキャリアで,1) インパルス応答の推定,2) セルサーチ,3) MIMO システムを導入する際のアンテナ識別,さらに,複数の サブチャネルブロックを使用する場合には 4) 複数のサブチャネ ルブロックを使用する場合の柔軟な拡張法,が必須項目となる. これに対し,文献 [3] では,64 という小さな拡散率で高精度に 伝搬路特性が推定できるようコードによる識別を基地局のみ とし,時間軸上での直交性を用いてアンテナ識別を行う CI を 用いたパイロット信号が提案されている.1),4) に関しては文 献 [3], [7],2) に関しては文献 [8] ですでに評価されており,良 好な特性が得られているものの, 3) に関しては未検討である. 次節では,提案方式のベースとなる技術である CI について説 明した後,CI を用いた MIMO-OFDM システムのための伝搬路 推定方式について述べる. し,MIMO-OFDM システムにおける伝搬路推定法を提案する. 提案方式では,CI 信号のインパルス性を利用し,各送信アンテ ナ毎に異なる傾きの直線位相オフセットを各サブキャリアに与 えることでインパルスのタイミングを想定される最大遅延時間 分だけずらし,受信側で時間窓を用いることで各送信アンテナ 3. 提 案 方 式 3. 1 Carrier Interferometry 図 2 に,CI の概念を示す.CI は,OFDM の全サブキャリア —2— CI symbol duration B (Hz) IFFT Frequency 0 Time Frequency IFFT FFT IFFT Frequency Linear phase offset Nt Time -2π Ntk Nsub Time IFFT 図 2 Carrier Interferometry の概念 Frequency 2Nt Time の振幅と位相を一定にした上で,各サブキャリアに直線位相オ -2π 2Ntk Nsub フセットを与えることでシングルキャリアと同じ信号が生成で きる信号生成法であり,マルチキャリア方式でありながらシン グルキャリアと同等の性質を持つ信号である.CI 信号は,次の 図 3 直線位相の傾きを変化させた場合の CI 信号の概念 ような性質を持つ. a ) 高いインパルス性 ち,他のサンプル点で 0 になる,つまり,時間軸上で直交す CI 信号は,全サブキャリアの振幅,位相を同一にすること るということを意味し,送信時にはインパルスを送信する で,ロールオフ率 0 のシングルキャリアとみなすことができ, ことと等価になるため,インパルス応答を推定することがで 時間波形は次式のように sinc 関数で表されることから,シング きる.さらに,各サブキャリアに傾き (−Nt ) なる直線位相オ ルキャリアと同等の信号となり,サブキャリア数が多いほどイ フセットを与えた場合の周波数軸上での送信信号ベクトルを ンパルスに近づく. S = [1 e B 2 s(t) = − B2 1 · e j2π f t d f = B sin(πBt) = Bsinc(πBt) πBt N − j2π N t sub (N −1) − j2π Nsub sub ... e ]T とすると,時間軸上での送信 信号ベクトル s は,次式で表される. (1) s = FH S = [0 . . . 0 1 0 . . . 0]T ただし,B は全帯域である. Nˆt (5) b ) タイミング変更が容易 次式で表されるように,各サブキャリアに直線位相オフセッ 式 (5) は,各サブキャリアに (−Nt ) なる直線位相オフセットを トを与えることで,フーリエ変換の時間シフトの公式から,イ 与えた場合の時間波形は,1 OFDM シンボル内で Nt サンプル だけインパルスの位置がずれるということを意味する.図 3 に ンパルスのタイミングを容易に変更可能である. B 2 − B2 e−2π f τ e j2π f t d f = B 2 − B2 その概念を示す.このように,CI 信号は,各サブキャリアに与 e−2π f (t+τ) d f = s(t − τ) (2) える直線位相の傾きを変更するだけでインパルスの位置を変更 することができ,この特徴を提案方式では MIMO システム導 入時のアンテナ識別に利用する. これらの特徴を考慮し,一般のディジタル信号における CI の概念を説明する.サブキャリア数を N sub とし,各サブキャ リアの振幅と位相を表す周波数軸上での送信信号ベクトルを S = [1 1 . . . 1]T とすると,時間軸上での送信信号ベクトル s は, さらに,提案方式では,スペクトル拡散技術を適用する.一 般に,スペクトル拡散技術は,送信側で自己相関および相互相 関特性に優れた拡散系列を情報信号系列に乗積し,受信側で 逆拡散することでユーザの識別や干渉の抑圧を行うことを可 能にする技術であり,拡散された信号系列は逆拡散処理により s = F S = [1 0 . . . 0] H T (3) ただし, F は,N sub × N sub の FFT(Fast Fourier Transform)行 列であり,次式で与えられる. 1 F= √ Nsub ⎡ ⎢⎢⎢1 ⎢⎢⎢ ⎢⎢⎢ ⎢⎢⎢1 ⎢⎢⎢ . ⎢⎢⎢ . ⎢⎢⎢ . ⎢⎢⎣ 1 1 ··· − j2π N1·1 sub ··· .. . e − j2π e .. . (N sub −1)·1 N sub ··· ⎤ ⎥⎥⎥ 1 ⎥⎥⎥ 1·(N −1) ⎥⎥⎥ − j2π Nsub sub e ⎥⎥⎥ ⎥⎥⎥ .. ⎥⎥⎥ . ⎥⎥⎥ ⎥⎦ (N sub −1)·(N sub −1) ⎥ − j2π e 元の情報信号系列に戻るという特徴がある.提案方式では,こ の特徴を利用し,周波数軸上での拡散系列を基地局固有の PN (Pseudo Noise)系列とすることで,セルサーチに利用する [8]. また,このように周波数軸上で拡散することで各サブキャリア の位相がランダムになるため,PAPR(Peak-to-Average Power Ratio)の低減も図ることができる. (4) N sub 式 (3) は,1 シンボル内の先頭のサンプル点にのみ値を持 3. 2 伝搬路推定方式 図 4 に,提案方式における伝搬路推定を行うための送受信機 構成を示す.同図では,簡単のため送信アンテナ数を 2 本,受 信アンテナ数を 1 本としている.提案方式では,CI 信号はイ —3— ただし,Il,m は,送信アンテナ l から受信アンテナ m における Tx Antenna 1 1 伝搬路の最大遅延時間,hil,m は,送信アンテナ l から受信アン pilot signal from antenna 1 GI Add. IFFT S/P p(k) テナ m における伝搬路の i 番目のパスにおける伝搬路利得であ る.また,νm (n) は,受信アンテナ q における雑音成分,L は送 信アンテナ数である. このように受信したパイロット信号は,ガードインターバル GI Add. IFFT S/P 1 p(k) Tx Antenna 2 e -j2π 0Nt Nsub e -j2π pilot signal from antenna 2 が除去された後,周波数領域に変換され,送信側と同一の拡散 系列を用いて逆拡散される.このときの k 番目のサブキャリア (Nsub-1)Nt Nsub の受信信号を Rm (k) とすると,Rm (k) は次式で表される. ⎛ L ⎞ ⎟⎟⎟ (l−1)N k p∗ (k) ⎜⎜⎜⎜ − j2π N t sub Rm (k) = H (k)p(k)e + η (k) ⎜ ⎟⎟⎠ l,m m ⎝ 2 |p(k)| l=1 (a) 送信機構成 received pilot signal GI del. t p*(1) p*(Nsub) |p(1)|2 |p(Nsub)|2 L time window [0,Ng] FFT FFT channel state from antenna 1 FFT channel state from antenna 2 IFFT time window [Ng,2Ng] t t ) ) e impulse responce impulse responce from antenna 1 from antenna 2 e j2π (l−1)N k − j2π N t sub Hl,m (k)e + ηm (k) (10) l=1 ただし,∗ は複素共役, Hl,m (k) は k 番目のサブキャリアの伝搬 路特性,ηm (k) は周波数領域での雑音成分であり E[|νm (n)|2 ] = ∗ p (k) E[|ηm (k)|2 ] = σ2 を満たす.また,式 (10) において, |p(k)| 2 ηm (k) 0Nt j2π Nsub t = は再び ηm (k) と置き換えた. (Nsub-1)Ng Nsub 式 (10) は,周波数軸上において直線位相の傾きが異なる複数 (b) 受信機構成 の CI 信号の重ね合わせであることから,再び IFFT により時間 図 4 提案方式を適用するための送受信機構成 波形に変換するとそれぞれの受信信号は各送信アンテナからの ンパルス応答そのものを推定でき,時間的なオーバラップさえ なければ 1 シンボル内に複数の CI 信号を多重しても受信側で インパルス応答が干渉なく時間多重されるという考え方に基づ き,送信側で各サブキャリアに対して,送信アンテナ毎に異な る直線位相オフセットを与えることでインパルスのタイミング を変更した上で,受信側で時間多重された各送信アンテナから のインパルス応答に時間窓をかけることにより抽出している. インパルス応答となる.つまり,このようにして得られた周波 数軸上での受信信号に再び IFFT を施すことで,時間的なオー バラップさえなければ時間軸上で時間多重された各送信アンテ ナからのインパルス応答となる.受信アンテナ m における時間 多重されたインパルス応答を hˆ m とすると, L Il,m −1 hˆ m (n) = l=1 図 4(a) において,まず,送信側では,各送信アンテナの各サ ブキャリアに対し,想定される最大遅延時間だけインパルスの hil,m δ(n − i − (l − 1)Nt ) + νm (n) i=0 I1,m −1 = I2,m −1 hi1,m δ(n − i) + i=0 タイミングがずれるよう直線位相オフセットを与える.送信ア hi2,m δ(n − i − Nt ) i=0 IL,m −1 ンテナ l におけるパイロット信号の k 番目のサブキャリアの送 +··· + 信信号 S l (k) は, hiL,m δ(n − i − (L − 1)Nt ) + νm (n) (11) i=0 (l−1)N k − j2π N t sub S l (k) = p(k)e (6) と表される. 次に,このようにして得られた時間多重されたインパルス と表される.ただし, p(k) は,k 番目のサブキャリアに乗積さ 応答に対し,時間窓をかけることにより各送信アンテナから れる基地局固有の拡散系列, Nt は,想定される最大遅延時間で のインパルス応答を分離する.時間的なオーバラップがない ある.したがって,離散時刻 n における時間波形 sl (n) は次式 (Il,m < Nt )場合,式 (11) におけるインパルス応答は時間的に重 で表される. sl (n) = √ なることはないので,送信アンテナ l からの伝搬路のインパル 1 Nsub N sub −1 (l−1)N k − j2π N t sub p(k)e e j2π Nkn sub (7) k=0 図 4(b) において,受信側では,送信アンテナ l から受信アン hˆ l,m (n) = Il,m −1 hil,m δ(n − i) (8) i=0 と表すものとすると,受信アンテナ m における受信パイロット 信号 rm (n) は次式で表される. L I p,q −1 rm (n) = hil,m s(n − i) + νm (n) l=1 i=0 ばよい.分離された送信アンテナ l から受信アンテナ m におけ る伝搬路のインパルス応答 hˆ l,m (n) は, Il,m −1 テナ m における伝搬路のインパルス応答 hl,m (n) を, h(n) = ス応答を推定するためには,[(l − 1)Nt , lNt ] なる時間窓をかけれ (9) hil,m δ(n − i − (l − 1)Nt ) + νl,m (n) (12) i=0 と推定することができる.ただし,νl,m (n) は時間窓がかけられ た雑音成分であり, ⎧ ⎪ ⎪ 0 (0 < ⎪ = n < (l − 1)Nt ) ⎪ ⎪ ⎪ ⎨ νl,m (n) = ⎪ νm (n) ((l − 1)Nt < ⎪ = n < lNt ) ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎩ 0 < n < Nsub ) (lNt < = (13) —4— 表 1 シミュレーション諸元 1 TDMA slot (25 OFDM Symbols) 250μsec OFDM Symbol Rate Useful Symbol Duration Guard Interval Num. of Subcarriers 100 ksymbol/s 8 μsec 2 μsec 64 Convolutional Coding FEC (r = 1/2, K = 7) Modulation QPSK Num. of Tx Antennas 4 Num. of Rx Antennas 4 Exponentially Decaying 8-spike Rayleigh Path Model (rich-scattering) Max. Doppler Frequency 20 Hz r.m.s. Delay Spread 200 nsec Pilot/Data Signal Power Ratio 0 dB TPC command pilot RMLI 10μsec (l−1)N k 8μsec 10μsec 1 Nsym = 1 Nsym = 2 Nsym = 3 Bit Error Rate 0.1 0.01 -3 10 Perfect -4 10 -5 (l−1)N k j2π N t sub 10 -2 (14) と推定される.ただし,ηl,m (k) は νl,m (n) のフーリエ変換であり, j2π N t sub ηl,m (k)e Data (19 OFDM Symbols) 図 5 スロット構成 を補償することで各サブキャリアの伝搬路特性を推定する.し たがって,k 番目のサブキャリアの伝搬路特性 Hˆ l,m (k) は, = Hl,m (k) + ηl,m (k) 10μsec 2μsec このようにして推定したインパルス応答を再び FFT により周 + ηl,m (k) e 190μsec 40μsec GI Useful Symbol OFDM Symbol 波数領域に変換し,各送信アンテナ固有の直線位相オフセット (l−1)Nt k N sub Slot Guard Preamble (5 OFDM Symbols) と表される. − j2π Hˆ l,m (k) = Hl,m (k)e Data (OFDM Symbol) 0 2 4 6 8 10 Average received Eb/N0 per receive antenna [dB] 図 6 BER 特 性 は再び ηl,m (k) と置き換えた. このように,提案方式では 64 という小さな拡散率で高精度 ンブル部,続く 19 シンボルはデータ部,末尾の 1 スロットは に伝搬路特性を推定するために,スペクトル拡散技術を用いて スロットガードである.ここで,プリアンブル部の 5 OFDM シ 各送信アンテナからのインパルス応答を推定するのではなく, ンボルにおいて,提案するパイロット信号は先頭 1 シンボル 受信 CI 信号がインパルス応答となることと各サブキャリアの に配置される.また,続く 4 シンボルは変調パラメータ情報 位相を制御することでインパルスのタイミングが変わることを (MLI:Modulation Level Information)を通知するための RMLI 積極的に利用し,各サブキャリアに直線位相を与えることでイ (Requested MLI),および,送信電力制御(TPC:Transmit Power ンパルスのタイミングを想定される最大遅延時間だけずらし, Control)を行うための TPC コマンドの通知を行うためのプリ 受信側で時間窓をかけることで,他の送信アンテナからの干渉 アンブルとして用意されているものであるが,本検討では提案 の影響を受けることなく各送信アンテナからのインパルス応答 方式による伝搬路推定精度を評価することを目的としているた を推定することができる. め,OFDM 適応変調および送信電力制御は採用していない. 4. 計算機シミュレーション 4. 1 シミュレーション結果 図 6 に,実際に推定した伝搬路特性を用いて信号検出を行っ 表 1 に,シミュレーション諸元を示す.本シミュレーション た場合のビット誤り率(BER:Bit Error Rate)特性,および図 では,変調方式として QPSK(Quaternary Phase Shift Keying), 7 に,スロット誤り率(SER:Slot Error Rate)特性を示す. こ 誤り訂正符号(FEC:Forward Error Correction)として符号化率 こで,横軸は受信側における受信アンテナ 1 本当たりの平均受 1/2,拘束長 7 の畳み込み符号を用いた.また,パスモデルとし 信 Eb /N0 であり,縦軸はそれぞれビット誤り率,スロット誤り て平均遅延スプレッド 200 nsec の 8 波レイリー指数減衰モデル, 率を示す.また,N sym は,伝搬路特性を平均化するスロット数 最大ドップラー周波数を 20 Hz とし,パイロット信号とデー であり,下り回線における各スロットのパイロットチャネルは タ信号の電力比は 0 dB とした.さらに,本検討では 4 × 4 の 全端末共通であることから,各スロットで推定した伝搬路特性 MIMO-OFDM システムとし,その信号検出法として受信アン を N sym スロットにわたり平均化したものを推定された伝搬路 テナ数分のダイバーシチオーダーが得られる MLD (Maximum 特性として復調に使用した場合の特性である. Likelihood Detection)[9], [10] を用いて信号検出を行い,伝搬路 まず,図 6 において,伝搬路特性を既知とした場合,ビッ 推定精度を評価した.また,パイロット信号の電力とデータ部 ト誤り率 10−5 を達成するための所要 Eb /N0 が 5.3 dB である の電力の比は 0 dB とした. のに対し,提案方式におけるパイロット信号の所要 Eb /N0 は, 図 5 に,スロット構成を示す.本システムでは,各スロット Nsym = 1 の場合 8.2 dB,Nsym = 3 の場合 6.5 dB 程度となり,3 は 25 OFDM シンボルから構成され,先頭 5 シンボルはプリア スロットで伝搬路特性を推定すればビット誤り率 10−5 において —5— とした場合には所要 Eb /N0 が 6 dB であるのに対し,N sym = 1, 1 Nsym = 3 の場合の所要 Eb /N0 はそれぞれ 9 dB,7 dB となり,3 Slot Error Rate スロットで伝搬路特性を平均化すれば所要 Eb /N0 の劣化を 1 dB 程度に抑えられ,高精度に伝搬路特性を推定できていることが Perfect 分かる. 0.1 したがって,提案方式により高精度に伝搬路特性を推定でき るものといえる. 5. ま と め Nsym = 1 Nsym = 2 Nsym = 3 0.01 -2 0 本検討では,DPC-OF/TDMA に MIMO システムを導入する 2 4 6 8 際,64 サブキャリアという小さな拡散率で高精度に伝搬路特 10 Average received Eb/N0 per receive antenna [dB] 性を推定するために,時間軸上にインパルス応答を多重するこ とで各送信アンテナからの伝搬路特性を推定可能な CI を用い 図 7 SER 特 性 た MIMO-OFDM システムのための伝搬路推定方式を提案した. 計算機シミュレーションにより提案方式の特性を評価した結果, Throughput [Mbit/s] 20 18 3 スロットで伝搬路特性を推定すれば,所要の受信 Eb /N0 の劣 16 化を 1 dB 程度に抑えられることを確認し,提案方式により高 Perfect 14 精度に伝搬路特性を推定できることを示した. 12 文 10 8 6 Nsym = 1 Nsym = 2 Nsym = 3 4 2 0 -2 0 2 4 6 8 10 Average received Eb/N0 per receive antenna [dB] 図 8 スループット特性 所要 Eb /N0 の劣化を 1.2 dB 程度に抑えることができる.また, 図 7 においても同様に SER = 0.01 を達成するための所要の受 信 Eb /N0 は,伝搬路特性を既知とした場合 6 dB 程度となるの に対し,実際に伝搬路特性を推定した場合には 7 dB 程度とな り,1 dB 程度の所要 Eb /N0 の劣化で高精度に推定できることが 分かる. 次に,図 8 に,DPC-OF/TDMA システムのスロットフォー マットに基づいてデータ伝送を行った場合のスループット特性 を示す.まず,同図において,本シミュレーションにおける最 大スループットについて述べる.送受信アンテナ数がそれぞれ 4 本,1 スロット長 250 μsec のうちデータシンボルが 19 シンボ ル,サブキャリア数が 64 であり,変調方式が QPSK,符号化率 が 1/2 であるから, 64 × 19 × 2 × 1/2 × 4 = 19.456 (Mbit/s) 250 献 [1] 中西 俊之,三瓶 政一,原田 博司,森永 規彦,“可変符号化率 OFDM 適応変調方式による 1 セル繰り返し TDMA システム,” 信学技報,RCS2003-372, Mar. 2004. [2] 原田 博司,安 昌俊,高橋 賢,神尾 亨秀,三瓶 政一,“Dynamic Parameter Controlled OF/TDMA による新世代移動通信システ ム,” 信学技報,RCS2003-284, Jan.2004. [3] 横枕 一成,三瓶 政一,原田 博司,森永 規彦,“DPC-OF/TDMA システムにおける伝搬路推定方式に関する検討, ” 信学技報, RCS2004-263, Jan. 2005. [4] B. Natarajan, C. R. Nassar and S. Shatti, “Throughput Enhancement in TDMA through Carrier Interferometry Pulse Shaping,” Proc. IEEE 52nd, VTC2000-Fall, vol. 4, pp. 1799-1803, Boston, USA, Sep. 2000. [5] Z. Wu, C. R. Nassar and S. Shatti, “Ultra Wideband DS-CDMA Via Innovations In Chip Shaping,” Proc. IEEE 54th, VTC-Fall, vol. 4, pp. 2470-2474, Atlantic City, USA, Oct. 2001. [6] P. R. Borbosa, Z. Wu and C. R. Nassar, “High-Performance MIMOOFDM via Carrier Interferometry,” Proc. IEEE GLOBECOM2003, vol. 2, pp. 853-857, San Francisco, California, USA, Dec. 2003. [7] 横枕 一成,三瓶 政一,原田 博司,森永 規彦,“DPC-OF/TDMA システムにおける隣接セル間干渉存在下での伝搬路推定精度の 向上に関する検討,” 信学技報,RCS2005-2, Apr. 2005. [8] 畑本 浩伸,三瓶 政一,原田 博司,“下りリンク DPC-OF/TDMA システムにおけるセルサーチ特性に関する検討, ” 信学技報, RCS2005-1, Apr. 2005. [9] A. Van Zelst, R. Van Nee and G. A. Awater, “Space Division Multiplexing (SDM) for OFDM Systems,” Proc. IEEE VTC2000-Spring, pp. 1070-1074, Tokyo, Japan, May, 2000. [10] A. Van Zelst “Per-Antenna-Coded Schemes for MIMO OFDM,” Proc. IEEE ICC2003, Vol. 4, pp. 2832-2836, Anchorage, Alaska, USA, May, 2003. (15) となる.図 8 において,最大スループットの 50% 程度である 10 Mbit/s に着目すると,伝搬路特性を既知とした場合の所要 Eb /N0 が 2.2 dB 程度であるのに対し,Nsym = 1 の場合は 5 dB, Nsym = 3 の場合は 3.7 dB となり,3 スロットで伝搬路特性を 平均化すれば伝搬路特性を既知とした場合に対して所要 Eb /N0 は 1.5 dB 程度の劣化に抑えられる.次に,ほぼ最大となるス ループットである 19.4 Mbit/s に着目すると,伝搬路特性を既知 —6—
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