2.8 社有林の利用間伐促進および木質資源有効利用促進実証事業 (王子木材緑化株式会社) 2.8.1 実証事業のねらいと実施内容 (1)実証事業のねらい 当社は、全国約700ヶ所に所在する王子グループ社有林約19万haの管理を行っている。 人工林の齢級構成は、7齢級∼11齢級が68%を占めるなど、ほとんどの人工林が利用間伐 の適期であり、間伐の実行による適切な森林整備を進める必要がある。また、間伐材の有 効利用は、持続可能な社会の実現、地球温暖化防止の観点から、従来の住宅資材等での利 用だけでなく、端尺材や末木枝条等いわゆる林地残材を木質バイオマスとして利活用して いくことが求められている。 しかしながら、現状をみると、利用間伐の実行は、低伐出コスト(=立地条件良)、低 運搬コスト(=搬入元まで比較的短距離)の条件を満たす山林に限られている。また、価 格の比較的安いパルプ原木は、生産できる対象森林がさらに限定され、末木枝条等木質燃 料用材の利活用にいたっては、建築廃材等との見合いという価格設定から林内に放置され るのが現状である。これらの問題を解決し、社有林の利用間伐を進めるためには、効率的 で経済的に有効な新しい革新的な生産・流通システムの構築が必要となっている。 平成20年度の実証事業では、王子グループ社有林4ヵ所において、各山林の地形等立地 条件を加味し、それぞれに適した異なる生産システムを適用して生産性やコストを把握す るとともに、社有林の間伐を進め、パルプ原木・木質燃料用材の有効利用を図ったところ である。この主たる目的は、経済的に見合う新たな生産・流通システム構築上の問題点を 検証することにある。検証結果は、それぞれの山林で予定される生産性・生産量を確保し たものの、高性能機械が導入されていない工程が生産性を上げる上で大きな障害になって いること、末木枝条の木質燃料用材としての生産が単独では経済的に引き合わないこと等 が明らかになった。 平成21年度の実証事業では、木質バイオマスの活用によるニュービジネスの創設に資する 観点から、木質燃料用材の生産を、単独ではなく間伐生産の一環として捉え、木質燃料用材 の生産コストを「生産現場からの輸送」、「工場での破砕」、「工場から製紙工場までの輸 送」等の経費に限って把握する。この生産コストが、市場価格と比べ経済的に見合う水準に なるか等の検証を行い、企業化の可能性を検討することが大きな狙いである。併せて、合板 用材、パルプ原木等の生産費水準と併せて、間伐生産全体の収益性を検証する。 また、8ヶ所の社有林においては、間伐及び木質バイオマスの利用を促進するため、間 伐木のパルプ原木、木質燃料用材等への有効利用を図る。 (2)実証事業の内容、規模 a パルプ原木、木質燃料用材の活用(定額助成対象) 定額助成対象は、王子製紙の社有林5ヵ所、王子木材緑化の社有林3ヶ所で実施する。具 体的には、図2.8.1、表2.8.1に示す。製紙用パルプ原木及び木質燃料用材は、全体で -163- 5,000㎥を予定する。 図2.8.1 表2.8.1 各事業地の位置 各事業地の出材量・利用量(当初計画) 木材利用量 事業地名 所有者名 王子木材緑化㈱ 野田山林 甲地山林 北郷山林 王子製紙㈱ 所在地 岩手県 九戸郡野田村 青森県 上北郡東北町 宮崎県 東臼杵郡美郷町 主要樹種 低質材 パルプ用 木質燃料用 小計 一般用材 計 アカマツ 22.15 1,338 1,338 644 2,027 スギ・ アカマツ 25.79 821 821 1,094 1,915 ヒノキ 5.00 180 180 180 360 643 朝霧山林 静岡県富士宮市 モミ 5.00 643 布部山林 島根県安来市 スギ 5.81 638 新見第二山林 岡山県新見市 スギ 10.00 美作山林 岡山県美作市 スギ 3.00 門ノ内山林 宮崎県延岡市 スギ 10.00 516 86.75 4,940 計 b 間伐面積 60 643 698 70 768 504 504 50 554 300 300 50 350 60 516 288 804 5,000 2,376 7,421 布部山林における実証事業(二分の一助成対象) 布部山林における実証事業地の概要は、表2.8.2、図2.8.2のとおりである。 表2.8.2 山林名 所在地 実証事業地の概要 布部山林(王子製紙所有) 備考 島根県安来市 ・実施面積は実測。 林小班 2林班へ、ち小班 ・集材路は227mを作設。 実施箇所の面積 1.44ha ・林分蓄積は毎木調査による。 樹種・林令 スギ35年生 ・間伐対象木は表示し毎木調査を行った。 全体蓄積 800㎥ ・市場までの距離は布部山林から 間伐対象蓄積 間伐率 257㎥(ha当り556㎥) 32%(材積) ha当り集材路密度 158m 平均集材距離 50m 傾斜 11∼30度 セイホクNL工業まで約40km。 山陰丸和生山工場まで約40km。 ・山陰丸和生山工場から王子製紙 米子工場まで約30km。 注:面積については実測、蓄積は全量毎木調査、間伐対象木は選木後表示、 間伐対象蓄積は毎木調査による -164- 図 2.8.2 実証事業地位置図 注:・赤色は、10t車通行可能な作業道、緑色は、実証区域。 ・集材路は、谷筋に2路線を作設。右側103m、左側124m。 (3)実証事業の実施期間、実施体制、実施場所 a 実施期間 実証事業の実施期間は平成21年9月から平成22年2月末日までとする。事業実行のタイム スケジュールを次表2.8.3に示す。 表2.8.3 7月以前 ●事業応募申請書 実施計画書提出 ●助成金交付申請書 実証事業のタイムスケジュール 8月 9月 10月 検討に 関する 実証 利用実証 関係 12月 1月 2月 7/13 ●報告書提出 ●全木協連 11月 5/20 3/5 現地調査 10/30 現地検討会 布部山林 9/10 事業期間 野田山林 事業期間 甲地山林 事業期間 北郷山林 事業期間 朝霧山林 事業期間 布部山林 事業期間 新見第二山林 事業期間 美作山林 事業期間 門ノ内山林 事業期間 -165- 2/25 b 実施体制および実施場所 本実証事業の実行に当たっては、社外委員、社内委員9名による現地検討委員会を組織 する。社外委員は、学識経験者、王子製紙(株)米子工場委員、山陰丸和林業本社委員2 名、山陰丸和林業生山工場委員計5名からなり、社内委員は当社林業部委員2名、米子営業 所委員2名の計4名である。現地検討委員会は、「木質燃料用材等の効率的生産を目的とし た間伐生産システム開発の検討に関する実証」として布部山林で実施する実証事業の事業 計画、実行管理、評価・検証、報告書の取りまとめ等を行う。また、事務処理及び業務遂 行支援のための事務局を当社林業部内に置く。 実証事業の実施場所は、「木質燃料用材等の効率的生産を目的とした間伐生産システム 開発の実証」を行う箇所として王子製紙社有林である布部山林(島根県安来市)、及び 「間伐の実施と間伐材のパルプ原木・木質燃料用材への利用実施」該当箇所として王子製 紙社有林(朝霧山林:静岡県富士宮市、布部山林;島根県安来市、新見第二山林:岡山県 新見市、美作山林:岡山県美作市、門ノ内山林:宮崎県東臼杵郡北川町)、当社社有林 (甲地山林:青森県上北郡東北町、野田山林:岩手県九戸郡野田町、北郷山林:宮崎県東 臼杵郡美郷町)の計8か所である。 また、本事業は、生産材の有効利用、特に従来、低質材と称されてきたパルプ原木、木 質燃料用材等の有効利用を図ることを目的のひとつとすることから、それらの需要者であ る次表2.8.4に掲げる者を共同実施者とする。 表2.8.4 事業署名 所在地 事業所概要 王子製紙 春日井工場 愛知県春日井市 紙パルプ生産 国産パルプチップ需要量 17,000BDT/月 事業の共同実施者 王子製紙 米子工場 王子製紙 富岡工場 鳥取県米子市 ①紙パルプ生産 国産パルプチップ需要 5,000BDT/月 徳島県阿南市 紙パルプ生産 国産パルプチップ需要量 14,000BDT/月 ②循環流動層ボイラ 蒸発量 250t/h 木質燃料需要量 3,000t/月 さらに、本実証事業については、当社が直営労務組織を持たないため、各営業所近傍の 素材生産業者等を協力者として間伐生産等を実施する。また、共同実施者への原料納入の ためのチップ化に際しても、一部の営業所については近傍のチップ工場を協力者とする。 以上の実施体制を表2.8.5及び図2.8.3に示す。 布部山林で行う間伐生産システム開発の実証については、山陰丸和林業(株)の協力を 得て、米子営業所の直営事業の形をとり、米子営業所の職員を現場に配置する。配置職員 は、材の受払い、現場の実行管理、生産管理を担当させる。また、経費整理は生産工程別 に行い、出役人数、林業機械のリース、運搬、賃加工等毎に行う。 -166- 表2.8.5 木質燃料等の効率的生産を目的とした間伐生産システム開発の実証体制 ・管理体制 事務局 王子木材緑化(株) 林業部 現地検討委員会 構成員:学識経験者、王子製紙(株)米子工場、王子木材緑化(株)林業部 王子木材緑化(株)米子営業所、山陰丸和林業(株)本社 山陰丸和林業(株)生山工場 実証事業助言者 森林総合研究所 九州支所 森林資源管理研究グループ長 王子製紙(株)米子工場事務部 馬場国彰 山田茂樹 ・ 現場体制 実行組織 王子木材緑化(株)米子営業所 素材生産 山陰丸和林業(株) 原木等輸送 山陰丸和林業(株) 加工施設 山陰丸和林業(株)生山工場;チップ加工及び破砕処理 搬入先 ・製紙用チップ ・燃料チップ ・一般材 王子製紙米子工場 王子製紙米子工場 NL工業 実行箇所 王子製紙(株)所有 王子木材緑化 名古屋支店 米子営業所 布部山林(島根県安来市) 山林名 (所在地) 素材生産 資材調達 原木輸送 加工施設 ・チップ工場 ・破砕加工 チップ輸送 利用施設 ・製紙原料 ・ボイラー燃料 朝霧山林 (静岡県) 湯山林業 素材生産 協力者 トラック 中野町チップ ・チップ工場 協力者 トラック 春日井工場 ・製紙原料 共同実施者 布部山林 (島根県) 山陰丸和 素材生産 協力者 トラック 山陰丸和生山 ・チップ工場 協力者 トラック 新見第二山林 (岡山県) 山陰丸和 素材生産 協力者 トラック 山陰丸和生山 ・チップ工場 協力者 トラック 美作山林 (岡山県) 杉産業 素材生産 協力者 トラック ライフォス ・チップ工場 協力者(売却) 甲地山林 (青森県) 太田造林 素材生産 協力者 トラック 加賀木材工業 ・チップ工場 協力者(売却) 野田山林 (岩手県) 岡野木材 素材生産 協力者 トラック 工藤材木店 ・チップ工場 協力者 船舶 北郷山林 (宮崎県) 西森林業 素材生産 協力者 トラック 日向林産 チップ工場 (自社) 船舶 門ノ内山林 (宮崎県) 西森林業 素材生産 協力者 トラック 日向林産 (自社) 船舶 米子工場 ・製紙原料 共同実施者 事務局 盛岡営業所 日向営業所 図2.8.3 富岡工場 ・製紙原料 共同実施者 間伐の実施と間伐材のチップ原木・木質燃料用材への利用実施体制 -167- 2.8.2 実証事業の実施方法 (1)間伐の実施と間伐材のチップ原木・木質燃料用材への利用実証 定 額 助 成 の対象事業としては、前 述 の 様 に 、 王 子 木 材 緑 化 ㈱ 社 有 林 3か 所 、 王 子 製 紙 ㈱ 社有林5か所で実施する。平成20年度の実証事業は、王子木材緑化㈱社有林4か所、間伐材の 買取り1か所で実施したが、生産性等を把握した結果、車両系伐出システムにより効率 的 な間伐が実施可能と判断されたため、箇所数を4から8か所に増やし、また、昨年実施し な かった名古屋支店管内、静岡県富士宮市所在の社有林でも実施することとした。 また、共同実施者として、新たに王子製紙㈱春日井工場を加え、製紙用チップの供給 を 行った。 各事業地における伐出生産システムは、表2.8.6のとおりである。 表2.8.6 事業地名 作業システム 各事業地の伐出生産システム 作業内容と使用機械 間伐方法 伐倒 木寄・集材 搬出 玉切 スキッダ チェンソー 定性 野田山林 各事業地共通 チェンソー グラップル・スキッダ・ブルトーザ 甲地山林 作業道(路)+ 車両系林業機械 チェンソー グラップル フォワーダ チェンソー 定性 チェンソー グラップル グラップル チェンソー 定性 チェンソー グラップル グラップル チェンソー 定性 布部山林 チェンソー スイングヤーダ・ロングリーチ フォワーダ プロセッサ 列状 新見第二山林 チェンソー グラップル フォワーダ チェンソー 列状 美作山林 チェンソー グラップル フォワーダ プロセッサ 定性 門ノ内山林 チェンソー グラップル グラップル チェンソー 定性 北郷山林 朝霧山林 既設及び新設作路 から搬出路を開設 (2)木質燃料等の効率的生産を目的とした間伐生産システム開発の検討に関する実証 ① 対象地の設定 実証の目的は、高性能林業機械による高い生産性を実現しつつ、素材生産の一連の作 業 の中で、末木枝条を木質燃料として生産した場合に、事業としての実現可能性について 検 証することにある。このため、実証事業の取組は、従来のように、林地の諸条件により 高 性能林業機械を選択するのではなく、高性能林業機械を最も合理的に使用できる生産シ ス テムに即したエリヤを選択した。 こうした観点から、対象地は、ロングリーチグラップルによる木寄、グラップルによ る 全木集材という生産システムの効率性を考慮し、沢筋を挟む2斜面(平均傾斜約25度) で 木寄距離が最大30m以内となるよう隣接する2か所のエリアを選定した。また、沢筋に は、既設の作業道から右側103m、左側124mの集材路を作設した。 土場は、事業地に隣接した沢の合流地点に設定し、 ・合板用材・チップ原木・端尺材・末木枝条が効率よく集積できること。 ・枝払い・玉切に使用するプロセッサ、はい積み・土場整理に使用するグラップルが 同 時並行に作業できること。 等を考慮して十分な広さを確保することとした。 -168- 対象地内の林分内容については、対象地全面積について毎木調査を実施することとし、 間伐対象木への表示と毎木調査を行った。 ② 作業手順 伐出の作業手順については、 ・伐倒は、概ね事前に先行伐倒を実施し、一部について、木寄・集積中の集材空き時間 に実施。 ・ロングリーチグラップルで木寄し、集材路上に全木で集積。 ・グラップルにより全木で土場まで集材。 ・土場でプロセッサにより、枝払い・玉切を行い、切断時に合板用材とチップ原木を仕 分けして集積。末木枝条は、たまり次第、プロセッサで一箇所に集積、ベースマシン の移動は微少。 ・集材の空き時間で、グラップルにより合板用材・チップ原木・端尺材別にはい積みを 実施等の方法により行う。 丸太等の輸送については、合板用材、チップ原木、端尺材、末木枝条のいずれも、需要 先又は加工地まで約40kmから50km圏内にあり、ヒアブ付10tトラック、4tトラックを使 用する。 積み込みは、用材はヒアブないしグラップルで、また端尺材、末木枝条はグラップルで 対応する。 ③ 生産性の把握方法 人工数の実績については、作業日報を活用し、現場従事者個々に、作業種毎の従事時間 を30分単位で把握する。作業種は、「集材路作設・補修」、「土場作設」、「伐倒」、 「木寄・集材」、「集材」、「枝払い・玉切」、「土場整理(はい積み)」の7工程と 「機械器具整備等」の補助作業、「休憩・昼休」の9区分で行う。 作業日報は、現場従事者の申告をもとに、現地に配置した職員が整理する。 生産された材の材積について、合板用材・パルプ原木は、末口二乗法により把握し、端 尺材は、看貫でトン数を把握の上、当該対象地のパルプ原木換算率の実績で材積に換算す る。 ④ コストの把握方法 コストの把握については、現場作業を担当する山陰丸和林業(株)から、人件費、林業 機械のリース料、燃料費、運搬費、破砕加工費等の項目ごとの請求に基づき行う。 2.8.3 実証事業の実施結果 (1)間伐の実施と間伐材のパルプ原木・木質燃料用材への利用実証 間伐の実施結果については、表2.8.7のとおりである。 間伐実施面積、パルプ原木生産量 は、計画に対し若干減少している。主な原因は、2月の降雪・降雨等により作業の遅れ や、作業道の路面が悪化し輸送が間に合わなかったこと等によるものである。 また、江府山林については、当初計画に無かったものを追加した。 -169- 表2 8 7 岩手県 戸 野田村 田山林 青森県上北 王子木材 緑化 東北町 地山林 宮崎 北 実施事業量 積 数 承認事業量 面積 数 実施場所 臼杵郡美郷町 山林 鳥取県日 野 王子製紙 宮崎県延岡市 門ノ内山林 計 数 用材 生産 掲 パルプ原木 計 ㎥ ha ㎥ ha ㎥ ㎥ ㎥ ㎥ 22.15 1,338 24 00 1,764 1.85 426 780 1,764 2,544 25 79 821 17.53 767 -8.26 -54 490 767 1,257 5.00 180 3.50 183 -1.50 3 27 183 210 8.30 287 8.30 287 220 287 507 743 743 江府町 県 士宮市 霧山林 島 県安来市 部山林 岡山県新見市 新見第二山林 山県美作市 美作山林 増減 面積 ha 江府山林 (追加) 静 間伐の実施結果 5.00 643 5.00 743 0.00 100 5.81 698 2.96 196 -2.85 -502 41 196 237 10 00 504 6.40 562 -3.60 58 27 562 589 3.00 300 2.10 158 -0.90 -142 89 158 247 10.00 516 6.90 279 -3.10 -237 292 279 571 86.75 5,000 76.69 4,939 -10.06 -61 1,966 4,939 6,905 間伐の実施と間伐材のパルプ原木等への利用実証に係る箇所の詳細については、各事業 地毎に以下のとおりである。 ① 野田山林 所属 岡営業所 山林名 野田 所在地 岩手県九戸郡野田村 ア マツ 広葉 ha当り材積 林令 52 63 495㎥/ha 林分内容 樹種 間伐実施内容 作業期間 2009年12月5日∼2010年2月4日 現場実施者 王子木材緑化㈱ 間伐面積 24 00ha 間伐率 20 出材材積 2 546㎥ 用材 780㎥ − チップ用材 1,766㎥ 燃料用材 グラップル : コマツ PC138US 使用機械 ・ブルドーザ : コマツ D31AM ・スキッダ : イワフジ T60 平均集材距離 200 m 林 生産 5.6 ㎥/人・日 松栄商 近隣合板 場 用材 納入先 材の流 岡野木材(株) 王子製紙富岡工場 チップ原木 チップ加工 − − 入先 木 燃料 粉砕加工 位 現場 真 間伐前 間伐後 -170- ② 甲地山林 盛岡営業所 青森県上北郡東北町 甲地 所在地 所属 山林名 林 樹種 スギ 令 32-46 ha当り材積 360㎥/ha 間伐実施内容 業期間 2010年1月19日∼ 0 年2月28日 現場実施者 王子木材緑化㈱ 7 53ha 間伐率 20% 伐面積 用材 490㎥ チップ用材 767㎥ 出材材積 1,257㎥ 燃料用材 − グラップル① コマツ PC78US グラップル② コマツ PC60 使用 械 ブルドーザ : イワフジ CT35 ・フォワーダー : イワフジ U6 平均集材距離 00 林内生産性 ㎥/人 日 近隣製材 場 合板工場 用材 材の流 王子製紙富岡工場 チップ原木 チップ加工 加賀木材工業㈱ 納入先 − − 木質燃料 粉砕加工 納入先 位置図 現場写真 間伐前 ③ 間伐後 朝霧山林 名古屋支店 朝霧 所在地 静岡県富士宮市 所属 山林名 分内容 樹種 モミ 林令 44∼59 ha当り材積 33 ㎥(作業小班平均) 間伐 施内容:定性間伐 作業期間 20年8月 ∼20年9月29日 伐倒・搬出は9月11日まで、以降運材作業のみ) 現場実施者 有限会社 湯山林業 5.00 間伐率 45% 間 燃料用材 用材 プ用材 743 出材材積 743 チェンソー、グラ プル(日立建機㈱EX100)、グラップル 立建機㈱EX45)、 使 機械 ワーダ(イワフジ 4SB ) 平均 材距離 150 200m 林内生産性 4.3㎥/人 日 用材 材の流れ チ プ原木 チ 王子製紙春日井工場 加工 株式会社中野町チップ 納入先 木 燃料 粉砕加工 納入先 位置図 ᦺลጊ 現場写真 伐前 間伐後 -171- ④ 布部 林 布部 所在地 安来市 瀬町布部 所属 山林名 王子製紙 林令 34 36年生 ha当り材積 樹種 スギ 290㎥/ha 林分内容 間伐実施 容 作業期間 平成21年10月∼平成22年2月 現場実施者 山陰丸和林業㈱ 伐率 間伐面積 2 96 30% 237 用材 41 チップ用材 出材材積 196 燃料用材 チェーンソー グラップル,プロセッサ 台(コマ PC120)、 使用機械 ロ グリ チグラップル1台(日立ZX 20) フォワーダ1台(イワフジU-4BG) 平均集材距離 0m 林内生産性 5.0㎥/人 日 松江エヌエル工業㈱ 用材 王子製紙㈱米子工場 納入先 材の流れ チップ原木 チップ加工 山陰丸和林業㈱ 木質燃料 粉砕加工 納入先 位置図 現場写真 間伐後 間伐前 ⑤ 新見第2山林 王子製紙 所属 山林名 林分内容 樹種 スギ 林令 間伐実施内容 作業期間 平成22年1月∼平成22年2月 現場実施者 (有)杉産業 間伐面積 6 40h 間伐率 30% 出材材積 589 材 27 新見第 37∼64 チップ用材 使用機械 チェ ンソ 、グラップル (0. 5) 1台、ハ 平均集材距 林内生産性 所在地 ha当り材積 562 岡山県新見市 366㎥/ha 燃料用材 スタ (0 5 - 台 造材)フォワ ダ (3t) 台 400m 山県森連 見共販所 用材 材の流れ チップ原木 チップ加工 山陰丸和 業㈱ 木質燃料 粉砕加工 位置図 納入先 納入先 王子製紙㈱米子工場 ▎ᚲ 現場写真 間伐前 間伐後 -172- ⑥ 美作山林 王子製紙 所属 山林名 林分内容 樹種 スギ 林令 間伐実施内容 作業期間 平成 月 平成2 年2月 現場実施者 武地林業 伐面積 2 1 a 伐率 30% 用材 89 出材材積 247 使用機械 美作 47 所在地 a当り材積 チップ用材 158 岡山県美作市 313㎥/ha 燃料用材 チェーンソー、グラップル 台、プロセッサ (0 25) 1台、 フォ 均集材距離 2000m 林内生産性 津山総合木材市場 用材 の流れ チップ原木 チップ加工 ライフォス㈱ 木質燃料 粉砕加工 置図 納入先 納入先 - ダ (3t) 1台、4tトラック1台 子製紙㈱米子工場 現場写真 間伐前 ⑦ 伐 江府山林 王子木材緑化 所属 山林名 林分内容 樹種 スギ 林令 間伐実施内容 平成22年1月∼平成22年2月 業期 現場実施者 中部林産㈱ 伐面積 8.30 a 伐率 30% 507 用材 220 出材材積 江府 45∼56 所在地 ha当り材積 チップ用材 287 鳥取県日野郡江府町 255㎥/ha 燃料用材 - 使用機械 チェーンソー、グラップル2台、フォワーダ1台又は2tトラック 平均集材距離 750m 林内生産性 用材 松江エヌ ル工業㈱ の流れ チップ原木 チップ加工 中部林産㈱ 木質燃 粉砕加工 置図 納入先 納入先 子製紙㈱米子工場 現場写真 間伐前 伐 -173- ⑧ 門ノ内山林 属 分内容 間 実 業 現 間 面 出材 積 門ノ内 王 製 株式 社 山林名 所在地 宮崎県延岡市北川 大字川内名 令 53 ha当り材積 樹種 スギ 360㎥/ha 容 作業道 両 械 ラップル 009 .9 2 10 2 27 予定) 社 伊藤 材 間 間 25 90 材 57 2 チ プ用 279 − 使用 グラップル(0.3㎥タ 械 林 材の流 プ) コベ 製2機 離 70m 産性 .2㎥ 日向 周辺木材市場 用 プ原木 チ プ加工 自社日向チ プ 質 料 粉 加工 − 場 納 先 納入先 子製 岡 場 現場写真 間伐 ⑨ 間 北郷山林 北 郷 所属 所在地 王子木 緑化株式会社 山 分内容 樹種 令 スギ ヒノキ 34 36 ha当り材 間伐 内容 作業 車 機械 グラ ル 業 0 0. 6∼20 2 20 予 現場 者 西森 業 間 面積 定 間 35 間 率 25% 積 2 用材 27 チップ用材 183 用機械 グ プルソ (0.45㎥タイプ) 平 離 50m 4 1㎥ 林内生産性 日向 周辺 材市場 材 の チ プ原木 チップ加工 自 日 な 木質 料 粉砕加工 宮崎県美郷町北 区大字宇納間 スギ23 ㎥ ha ヒノキ150㎥/ha 料用材 − 立製 機 場 先 入先 王 製紙富 − 現場写真 間伐 間伐後 -174- 場 (2)木質燃料等の効率的生産を目的とした間伐生産システム開発の実証 a 伐採搬出システムについて 伐倒は、チェンソーによるが、木寄 集材はロングリーチグラップル、集材路を利用した土場 までの小運搬はグラップル、土場での枝払・玉切はプロセッサで実施した。作業体制を表2 8.8 に、また現地における作業状況を、写真2 8 1、写真2.8 2に示す。 表2 8.8 作業体制 作業体制 作業員数 使用機械 器具 伐倒 集材(木寄せ) 集材(小運搬) 枝払い・玉切 集材路作設 輸送 原木 端尺材 末木枝条 伐倒 チェンソー 間伐対象木は選木済み 使用機械 チェンソー 3名 チェンソー ロングリ チグラップル グラップル プロセッサー バックホー 10tトラック 4t 10tトラック 10tトラック 木寄 集材 ロングリ チ 集材 グラップル 谷側に伐倒。集材路から ほぼ木寄可能。 ・集材路脇に集積。 ・集積地から、全木で運材。 ・2本∼3本をグリップ。 ・小運搬距離は、 平均で50m程度。 使用機械 使用機械 枝払い・玉切 プロセッサ 合板用材、チップ原木 端尺材を切断場所を 変えながら玉切を行う 使用機械 ロングリーチグラップル イワフジGS50LJV グラップル イワフジ6P-35U プロセッサ イワフジGS90LTV ベースマシン 日立 2AXIS120(0 45) LG 05A ベースマシン コマツPC120 8(0 45) ベ スマシン コマツPC120 8(0.45) 写真2.8.1 -175- 作業状況 間伐実施前林相 間伐実施状況 写真2 8.2 b 間伐の実行状況 末木枝条の処理 末木枝条は、プロセッサで枝払い 玉切を行った際、枝条がたまった段階でプロセッサによ り、一定箇所に集積した。実際には、全木で集材したため、引きずる際にかなりの部分が抜け落 ちている。 当初、廃棄物運搬用の40㎥ダンプで運搬する予定であったが、作業期間が冬季にかかり、降雪 等により作業道の路面が悪化し、使用できなかったため、ヒアブ付10t車の荷台に枠を設置し輸 送した。集積・積込・運搬・破砕の作業状況を、写真 8 3に示す。 枝条整理 ・プロセッサで枝払い 一定箇所に集積。 集積 玉切りをし、枝条がたま 写真2 8.3 た段階で 積込・運搬 ・ヒラブ付10tトラックの荷台に枠を 設置したもの 末木枝条の集積 -176- 積込・運搬 破砕 破砕機詳細 メーカ :日立建機 形式: HC1410 c 素材生産量等の実績 素材生産量は、合板用材125.7㎥、パルプ原木79トン、端尺材22トンであった。パルプ 原木及び端尺材の体積については、その一部を抽出して材積と重量から換算率を算出し た。この換算率0.824を使って、パルプ原木及び端材の材積を求めると、両者を合わせた チップ用材の材積は82 7㎥となり、総体の素材生産量は材積換算で208.43㎥となった。 立木材積から見た用材等の生産歩留りは71.6%であり、末木枝条は3.0%であった。対象 地の林相及び生産量等を表2 8 9、図2.8 4に示す。 表2.8.9 面積 区分 ha 事業対象地の面積・蓄積及び素材生産量 ha当り 立木材積 蓄積 間伐材積 合板用材 材積 ㎥ ㎥ ㎥ ㎥ 間伐対象地 1.44 800 556 うち集材路 (0.12) 181 76 小計 1.44 土場敷き 0.06 34 34 合計 1.50 834 291 注:区域内の立木 800 257 素材生産量 パルプ原木 末木枝条 計 材積 重量 材積 重量 材積 重量 層積 重量 材積 ㎥ t ㎥ t ㎥ t ㎥ t ㎥ 78.205 40.366 48.988 11.071 13.435 129.642 62.423 32.837 16.949 20.570 4.649 5.641 54.435 26.211 111.042 57.315 69.558 15.720 19.076 184.077 88.634 7.583 7.583 9.202 2.080 2.524 24.353 11.726 125.732 64.898 78.760 17.800 21.600 208.430 100.360 55.560 10.430 8.595 平均胸高直径 27.1cm、平均樹高 18m。 間伐木 平均胸高直径 24.3cm、平均樹高 18m。 集材路支障木 平均胸高直径 30.8cm、平均樹高 21m。 注: 端尺材 生産の状況 ・用材の生産歩留りは、71.6%。末木枝条は、立木材積の3%。 ・素材生産量の内訳は、合板用材60%、パルプ原木31%、端尺材9%。 図2.8.4 d 素材生産量の材種別比率 生産性の実績 生産工程については、林内生産性を見るため、林内、土場敷別に把握した。ただし、土場敷開 設に係る所要人口数については、この中には含めなかった。 林内の生産工程は、各作業についてみると、 -177- ア チェンソーによる伐採が31.7㎥/人日。 イ ロングリーチグラップルによる木寄・集材が37.6㎥/人日。 ウ グラップルによる集材・小運搬が65.7㎥/人日。 エ プロセッサによる枝払・玉切が51.1㎥/人日。 等の実績を上げることが出来た。はい積み、土場整理の生産工程については、グラップル、プ ロセッサの空き時間に作業しており、30分単位での計測であるため、正確な把握が出来てないこ ともあるが、141.6㎥/人日であった。その結果、集材路の作設、機械器具整備その他付帯作業、 休憩等を含めた全体の生産工程は、6.5㎥/人日となった。 また、機械器具整備その他付帯作業、休憩等を除く集材路作設を含む主作業だけで見ると8.7 ㎥/人日となり、ロスを排除すれば、更に生産性を高める余地があることを示唆している。詳細 を表2.8.10に示す。 表2.8.10 素材生産における生産性 (林内) 区分 項目 集材路 作設 単位 等 時間 総就労時間 総人工数 人工 一人当たり生産性 ㎥/人・日 18.5 2.6 伐採 はい積み・土場整理 集材 集材 枝払い・ (木寄 (小運搬) 玉切 小計 せ) 機械器 その他 伐出作業計 具整備(休憩・ 主作業 全体 昼) 他 40.5 5.8 31.7 34.5 4.9 37.6 44.5 19.5 2.8 65.7 25.0 3.6 51.1 5.0 0.7 4.5 0.6 9.5 1.3 35.0 147.5 227.0 21.1 28.4 8.7 6.5 ロング バックホーチェンソー リーチ グラップル プロセッサー プロセッサー グラップル グラップル 使用機材 出材量 単位:㎥ 用材 (合板用材) 111.042 用材 (パルプ原木) 57.315 69.558t 端尺材 (パルプ用) 15.720 19.076t 出材量計 計測材積 25.404 計量t 30.830 換算率㎥/t 0.824 184.077 末木枝条 集材路網 227m/ha 間伐方法 定性 注:各作業の人工数は、1日7時間で換算。「全体」の人工数は、1日8時間で換算。末木枝条の処理人工数は除く。 パルプ原木等の㎥の数値は、計量トンを換算率で算出。 (土場敷き) (全体) 区分 項目 単位等 土場作設 伐採 枝払い・ 玉切 土場整理 総就労時間 時間 16.5 3.5 1.0 2.5 総人工数 人工 2.4 0.5 0.1 0.4 機械器具 その他 全体 整備他 (休憩・昼) 8.5 9.0 5.1 一人当たり生産性 ㎥/人・日 4.8 出材量 単位:㎥ 用材 (合板用材) 14.690 生産性 284.0 35.5 5.9 208.430 注:土場での末木枝条整理を含む。 用材 (チップ原木) 7.583 9.202t 端尺材 (チップ用) 2.080 2.524t 出材量計 単位等 時間 人工 一人当たり生産性 ㎥/人・日 出材量 バックホー チェンソー プロセッサー グラップル 使用機材 41.0 区分 項目 総就労時間 総人工数 24.353 -178- e 生産コストの実績 伐出・搬出コストについては、土場敷き作設も含めて算出した。合板用材・パルプ原木 等用材の1㎥当り生産費は8,073円、うち直接生産費は6,187円、輸送費は1,886円という結 果となった。 合板用材とパルプ原木(端尺材を含む。以下同じ)別の生産費については、販売価格に 違いがあるため、総事業費のうち集材路作設・土場作設・重機回送費に相当する経費を合 板用材の生産経費とし、その他の経費は、合板用材、パルプ原木の材積割合により按分し て算出した。その結果、合板用材の1㎥当り生産費は8,568円、同様にパルプ原木は7,320円 となった。 末木枝条については、枝払い・玉切作業の空き時間にプロセッサを使用して土場に集積 し、トラックへの積み込みをグラップルで行うなど処理に若干の経費がかかっているが、 全て用材の経費に含め、破砕工場までの輸送費・破砕工場での加工費・破砕工場から需要 先の製紙工場までの輸送費で算出した。1ADt当りの生産費は7,003円であった。詳細は表 2.8.11に示す。 表2.8.11 伐出・搬出及び輸送コストの実績 区分 人件費 機械経費 全体 労賃 小計 重機回送費 リース料 ロングリーチグラップル プロセッサー グラップル バックホー 小計 事業量 35.5 35.5 単価 18,310 18,310 油脂費 計 輸送費 合計 1㎥当り生産費 備考 金額 650,000 付帯事業を除く。 650,000 140,000 労賃 伐採手 20,000円/日 103,880 その他 18,000円/日 112,561 76,382 58,906 351,729 147,803 1,289,532 6,187 393,044 1,886 1,682,576 8,073 別掲 事業費 125.732 単位:㎥ 輸送費 10tトラック 小計 事業費 単位:㎥ 82.698 10tトラック:t 100.360 パルプ原木 輸送費 小計 事業費 輸送費(枝条) 10tトラック:t 10.430 10.430 末木枝条 破砕加工費 輸送費(チップ)10tチップ輸送車 10.430 小計 ADt当り 合板用材 6,879 1,689 5,135 1,800 4,314 1,250 1,438 864,860 212,396 1,077,256 424,673 180,648 605,321 45,000 13,038 15,000 73,038 8,568 7,320 7,003 注1 : 合板用材とパルプ原木への経費配分は、集材路作設、土場作設、重機回送にかかる経費を合板用材の経費 に区分し、それ以外の経費は、それぞれの材積割合で配分した。末木枝条の処理費を含む。 注2: 末木枝条は、輸送費・破砕加工費に限定して算出した。 f 実行上の問題点 実証事業を実施する上で、次のような問題点があった。 ① 作業上では、ロングリーチグラップル、グラップル、プロセッサの生産性に差が生 じている。今後の取組として、ロングリーチグラップルについては、間伐木の選定に作業 -179- のしやすい列状間伐の導入や事前集中作業等の検討、グラップルについては、効率の良い 集材距離についての検討等が必要と考えられる。 ② 末木枝条の運搬については、当初40㎥積みダンプを予定していたが、作業道の路面 が 悪 化 し 、結果としてヒアブ付1 0 tトラ ッ ク を 使 用 し た た め 、 山 土 場 か ら 破 砕 工 場 へ の輸 送費がかかり増しになった。工夫次第で輸送費を低減できる可能性がある。 また、素材生産量の6割を占める合板用材が、経済的悪化により入荷制限を受け、作業 の中断等により作業期間が予想より長期化し、ロスが生じている。実作業日数は17日、作 業期間は4ヶ月弱であり、これを短期集中で実行すれば、生産性・コストを更に圧縮でき る可能性がある。 2.8.3 考察、その他 (1)考察 ① 実証事業の対象地には、高性能林業機械であるロングリーチグラップル、グラップ ル、プロセッサの性能が十分に発揮できる箇所を選定し、生産システムについては、現地 検討会において最適な作業手順を検討したのち実行した。これにより当初の計画は、概ね 達成することが出来た。 ② 収益性の検討については、米子営業所における過去3ヵ年の取引実績に基づいて、ス ギの合板用材、パルプ原木の最高単価額と最低単価額を元に試算した。これを表2.8.12に 示す。 表2.8.12 収益性の検討 事業費 最高価格 最低価格 総額 単価 販売量 販売単価 収入額 収益 販売量 販売単価 収入額 収益 円 円 円 円 円 円 円 円 ㎥,t ㎥,t 合板用材(スギ)1,077,256 8,568 125.732 11,000 1,383,052 305,796 125.732 8,500 1,068,722 -8,534 6,031 パルプ原木(スギ)605,321 100.360 4,300 431,548 -173,773 100.360 3,500 351,260 -254,061 (7,320) 区分 計 1,682,577 8,073 末木枝条 73,038 合計 ?当り 7,003 208.430 8,706 1,814,600 132,023 208.430 6,813 1,419,982 -262,595 4.840 3,500 16,940 3,500 16,940 -56,098 1,755,615 8,089 8,089 -56,098 1,831,540 75,925 8,439 350 4.840 1,436,922 -318,693 6,621 -1,468 注:販売価格は、過去3年間の実績。(最高価格、最低価格) 販売単位について、合板用材は、㎥。チップ原木はAdt。末木枝条は、Bdt。 チップ原木欄の単価( )は、㎥換算での単価。 末木枝条を含めた換算材積は、全体で217.025㎥。 末木枝条の1BDt当り生産原価は、15,090円。 ア 最高価格は、2008年9月のリーマンショック以前の実績であるが、この水準であれ ば、末木枝条の生産費単位当たり7,000円でもトータルとして十分吸収でき、利益を 上げることが出来る。 イ 最低価格は、2010年初頭の実績であるが、この水準では、補助金無しの自力の利用 間伐は困難になる。 -180- ③ 末木枝条の木質燃料としての活用については、実証事業による生産原価は、1BDt当 り15,090円という結果となった。 ア 木質燃料の販売価格は、現在、持込料を伴う建築廃材などを原料とした木質燃料の 価格が主体であり、林内から生産した枝葉を原料とした木質燃料の価格は一般化され ていない。このため、枝葉の販売価格を建築廃材等の価格として想定すると3,500円 であり、生産原価と大きな開きがある。 しかしながら、生産費の主要な部分は輸送費が占めており、トラックを大型化するな ど工夫することにより低減が期待できる。 イ 前述の様に素材生産の一環として生産した今回のケースでは、合板用材・パルプ原 木の価格をリーマンショック以前の価格で見た場合、末木枝条の生産に必要な経費を 吸収できる結果となった。 ウ 末木枝条の木質燃料としての活用については、用材やパルプ原木の生産過程で付随 的に生産されることを前提に、用材・パルプ原木の価格が末木枝条の生産費を吸収し 利益を生む水準にあれば、経済的に見合う生産が可能である。この条件は、過去の実 績を見ても現実的なものである。 エ しかしながら、全木集材による末木枝条の生産量は、立木材積の約3%という結果と なった。事業的に進めるにあたっては、量が出なければコストのかかりましが生ずる ことも考えられ、量的な問題も含めて今後検討していく必要があると考える。 (2)成果と今後の課題 ① 今回の成果は、1人1日当り6㎥を超える生産性を実現すれば、18,000円から20,000円 の労賃を払っても、木質燃料の生産も含めて自力の利用間伐の可能性があると判断される ものである。 ② 今回の実証事業は、高性能林業機械の性能を十分に発揮させ、素材生産の一環とし木 質燃料を生産した場合の経済的可能性を調査することを目的に、実証対象地を設定したた め、 ア ロングリーチグラップルのアーム長12mの範囲に作業範囲を設定。 イ 全木集材をグラップルで行うため、集材距離を平均50mの範囲とする。 等の条件となり、その結果小面積なものとならざるを得なかった。ただし、こうした条 件を満たす林地は、社有林の中でも極めて限られてくる。 ③ 今後は、成果として末木枝条を含めた利用間伐の実施に当たっての条件が明らかに なったことを踏まえ、より条件の悪い林地に如何に適用していくかにかかっている。社有 林の利用間伐を自力で進めていくためには、今回採用した生産システムに加え、集材範囲 を広げるためのスイングヤーダ等の活用も視野に入れて、より適用範囲の広い生産システ ムの開発をしていく必要があると考える。 -181-
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