東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 インターン報告 みずほ情報総研株式会社 劉源・杉山彩 東京都市大学伊坪研究室 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 目次 インターン先及び期間 インターン背景 インターンの目的 スケジュール 調査資料 -ライフサイクルインパクト評価① -放射性物質の影響分析・被害分析③ -放射性物質の影響分析・被害分析④ 検討案 感想 謝辞 参考文献 2 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 インターン先及び期間 インターン先 担当者 みずほ情報総研 環境・資源エネルギー部 環境リスクチーム 久保利晃様 期間 劉:2011年8月25日(木)~9月7日(水) 杉山:2011年9月12日(月)~22日(木) 土日を除く 3 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 インターンの背景 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震( 東日本大震災)により、東京電力福島第一原子力発 電所を津波が襲い、深刻な原子力事故が発生した。 放射性物質の漏出量や分布については評価結果が 公表されているものの、漏出した放射性物質によるヒ ト健康への影響についてはまだ十分な評価がなされ ていない。 4 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 インターンの目的 みずほ情報総研株式会社が実施する調査を補助す るため、放射性物質のライフサイクルインパクト評価、 及び、放射性物質の運命分析・影響評価・被害分析 に関する既存文献の内容を取りまとめる。 5 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 スケジュール 初日 2 日 3 日 4 日 5 日 6 日 7 日 最終日 目 目 目 目 目 目 午 前 午 後 MT・進捗報告 手 続 き 原書講読 (資料①) 資 料 収 集 原書講読 (資料その他) 報告書の作成 6 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 調査資料 資料精査 1.放射性物質のライフサイクルインパクト評価について ①Frischknecht R., A. Braunschweig, P.Hofstetter, P. Suter (2000) : “Human health damages due to ionising radiation in life cycle impact assessment", Environmental Impact Assessment Review, Vol.20, pp.159-189 2.放射性物質の運命分析について ②Peter Bickel, Rainer Friedrich(2005) : “ExternE Externalities of Energy Methodology 2005 Update", Institut für Energiewirtschaft und Rationelle Energieanwendung — IER Universität Stuttgart, Germany 3.放射性物質の影響分析・被害分析について ③岡敏弘 (2011):「放射線リスクへの対処を間違えないために」 ④岡敏弘 (2011):「放射線被曝回避の簡単なリスク便益分析」 7 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 ライフサイクルインパクト評価① Human health damages due to ionising radiation in life cycle impact assessment 背景 核燃料サイクルや発電所などにおける施設の移動や ガス抽出は、大気や水などの環境へ放射線を人為的 に排出する原因となっているが、これまでLCAに適切 な評価モデルがなかったために評価されてこなかっ た。 目的 ヨーロッパ核燃料サイクルから放出される人為起源の 放射性物質によるヒト健康の影響評価を行うことを目 的とする。 8 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 ライフサイクルインパクト評価① Human health damages due to ionising radiation in life cycle impact assessment 方法 ・Hofstetter(1998)に定義された放射線による健康被 害の評価手法に基づく ・各環境媒体(大気・河川・湖沼・海域・土壌)へ排出さ れた放射性物質の拡散はDreicer et al.(1995)のモ デルを利用して運命分析と暴露分析を実施 ・施設固有の情報は一般的なものとした ・健康影響の重症度はDALYを利用して算定 ・地域特異性は小さいとした。 9 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 ライフサイクルインパクト評価① Human health damages due to ionising radiation in life cycle impact assessment 方法 移動・拡散・沈着モデル 環境中の濃度上昇 用量反応関係 致死的・非致死的ガン、遺伝的影響 文献での対象調査範囲 今回の報告対象範囲 イ ン ベ ン ト リ 分 析 運 命 分 析 暴 露 分 析 影 響 分 析 被 害 評 価 被 害 評 価 と 文 化 的 理 論 生産システムモデル 人々の基準特性 障害ウェイト 放射性物質 吸収線量、集団実行線量 DALYs(障害調整生存年) 10 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 ライフサイクルインパクト評価① Human health damages due to ionising radiation in life cycle impact assessment 運命分析 1つの川をいくつかの部分に分けて、各部 分が完全統合すると仮定したモデル ・ExternEモデルを使用 ・大気:ガウスプルームモデル (不確実性の推定レベルは地域的には2~4、広域的には4より上) ・河川:シンプルボックスモデル (不確実性の推定レベルは5) ・海:EUの海域(北EU海域を地中海を含む) (不確実性の推定レベルは2~3) ・施設からの継続的排出期間を10万年と設定 ・世界人口は100億人を想定 11 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 ライフサイクルインパクト評価② ExternE Externalities of Energy Methodology 2005 Update ガウスプルームモデル ・大気圏への連続的な放出による濃度分布を説明するモデル ・理想的な地形/気象条件、汚染物質は風と共に直線で移動することを想定した ・放出点から50kmの範囲内で適応される 式: 図1.ガウスプルームモデルの概念図 c(x , y , z):媒体における汚染物質の濃度 Q:汚染物質の放出割合(単位時間あたり) U:汚染物質の放出高さにおける風速 σy:風下距離xにおける 横方向濃度分布の標準偏差 σz:風下距離xにおける 縦方向濃度分布の標準偏差 h:地形上のプルーム高さ (plume height above terrain) 12 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 ライフサイクルインパクト評価① Human health damages due to ionising radiation in life cycle impact assessment 暴露分析 ・大気や水などの各環境媒体の放射性物質の増加量 は移動や拡散、堆積に基づいて決定 ・放射性核種の排出による集約線量はDreicer et al.(1995)のデータを主に使用し、部分的にUNSCER で補完 ・暴露係数はフランスの施設とその気象や人口統計を 用いて評価された結果に基いた ・評価結果は67%信頼区間で1桁の範囲内は正しい とされる 13 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 ライフサイクルインパクト評価① Human health damages due to ionising radiation in life cycle impact assessment 暴露経路 C-14とI-129は飲食物、 Kr-85は外部照射 Rn-222は直接吸入 が主な暴露経路 図2.暴露経路 14 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 ライフサイクルインパクト評価① Human health damages due to ionising radiation in life cycle impact assessment 集約線量 表1.大気および水域に排出された放射性核種の暴露係数 15 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 ライフサイクルインパクト評価① Human health damages due to ionising radiation in life cycle impact assessment 暴露係数 短い半減期を持つ放射性各種の不確実性を考慮 表2.全体に拡散した放射性核種の暴露係 数 16 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 ライフサイクルインパクト評価① Human health damages due to ionising radiation in life cycle impact assessment 影響分析 ・体細胞への影響(致死的がん/非致死的がん)、遺伝 的影響を分析する ・確率的影響のみを考慮 ・体細胞への影響は疫学実験により放射能影響を外 挿する方法が推定されている ・遺伝的影響は動物実験による結果によるものである ため、明確ではない(高い不確実性を持つ) 17 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 ライフサイクルインパクト評価① Human health damages due to ionising radiation in life cycle impact assessment 影響分析 αL:高線量域のリスク係数 α1:低線量域のリスク係数 LNT(閾値無しの直線)を想定 曲線はS字型曲線 低線量の推定のために利用する DDREF(線量-線量率効果係数)は 2~10未満とされる 図3.吸収線量とそれに伴うがん発症率の曲 線 18 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 ライフサイクルインパクト評価① Human health damages due to ionising radiation in life cycle impact assessment 影響分析 表3.致死的および非致死的がんの各部位による発症率 19 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 ライフサイクルインパクト評価① Human health damages due to ionising radiation in life cycle impact assessment 被害評価 ・人間健康への被害はDALYs=YLD+YLLとして表す ( DALY:障害調整生存年 / YLD:障害生存年数 / YLL:生命損失年数 ) ・時間割引率を考慮しない2つのシナリオで評価 -年齢重み付けを考慮しないシナリオ→(0,0) -年齢重み付けを考慮するシナリオ→(0,1) ※1 Dm:障害ウェイト / Lm:障害持続時間 / αm:障害発生年齢 / β:年齢重み付け係数 ※2 年齢重み付け平均値が1になるように、β=0.04、C=0.1658 と設定 20 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 ライフサイクルインパクト評価① Human health damages due to ionising radiation in life cycle impact assessment 被害評価 日本人女性における年齢ごとの期待寿命より算定 表4.各部位におけるYLD、YLL、DALYsの(0.0)および(0.1)の計算結果 21 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 放射性物質の影響分析・被害分析③ 「放射線リスクへの対象を間違えないために」 目的:リスク論に基づいた防衛を考える (リスクと比較するための物差しを作る) 『損失余命』で比較してみてはどうか ⅰ.10mSvにおける損失余命 [損出余命(日)]=[10mSvにおけるリスク係数(件/10mSv)] ×[がん死1件当たりの損失余命(日/件)] ⅱ.食品を摂取した場合における損失余命 [損出余命(日)]=[放射性物質の濃度(Bq/kg)]×[1日の摂取量(kg/日)× [摂取期間(日)] ×[被曝線量係数(mSv/Bq)]×[1mSvにおけるリスク係数(mSv)] 22 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 放射性物質の影響分析・被害分析③ 「放射線リスクへの対象を間違えないために」 喫煙による寿命短縮と比較して際立つことはない *計算例* ⅰ.ICRPのリスク係数を用いて、10万人中1件のがん死で66分寿命が縮まる→損失余命2.6日 ⅱ.3月18日の茨城県産ほうれん草を大人が毎日400gを1週間食べ続ける→損失余命21時間 3月21日の福島県産茎立菜を大人が毎日400gを1週間食べ続ける →損失余命23時間 ⅲ.水道水に含まれる放射性ヨウ素濃度が300Bq/kgから100Bq/kgに減少→寿命増加29分(乳児) 表5.農産物の出荷が制限される基準値 表6.ヨウ素131を1Bq摂取した場合の被曝量 放射性ヨウ素 乳児(3ヶ月) 幼児(5ヶ月) 大人(20歳) 1.8×10-4 mSv 1.0×10-4 mSv 2.2×10-5 mSv 放射性セシウム 水・牛乳 300Bq/kg 水・牛乳 200Bq/kg 野菜 2000Bq/kg 野菜 2000Bq/kg ※ICRPのリスク係数…5.7×10-4(1万人中5.7人) ⅲ.濃度が変化した場合の寿命の増加分 [寿命増加分(分)]=[(変化前濃度-変化後濃度)(Bq/kg)]×[1日の摂取量(kg/日)]× [摂取期間(日)] ×[被曝線量係数(mSv/Bq)]× [1mSvにおけるリスク係数(mSv)] ×[がん死1件当たりの損失余命(日/件)] 23 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 放射性物質の影響分析・被害分析④ 「放射線被曝回避の簡単なリスク便益分析」 目的 ICRP:5.7×10-4[10mSv]-1 放射性影響研究所:1×10-3[10mSv]-1 ゴフマン:2.556×10-3[10mSv]-1 ・リスク係数の妥当性を検討 ・被曝時年齢と被曝期間を反映できる損失余命の算出 ・出荷制限の費用対効果の考慮 放射性影響研究所のプレストンらによるERR逓減モデル 男:ERR=0.35de-0.038(x-30)-0.7log(y/70) 女:ERR=0.59de-0.038(x-30)-0.7log(y/70) を利用して算出する。(ただし、被曝後10年間はERR=0と仮定する) ※x=被曝時年齢 / d=被曝量(Sv)/ y=ERRを求めたい時の年齢 24 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 放射性物質の影響分析・被害分析④ 「放射線被曝回避の簡単なリスク便益分析」 表7.被曝のリスク-Preston et al.(2003)の場合- 25 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 放射性物質の影響分析・被害分析④ 「放射線被曝回避の簡単なリスク便益分析」 リスク係数の妥当性 ・元々一次式があてはまるものに二次式を あてはめようとすると、係数βが0もしくは 負にならないようにして得たαLは高線量 域を超えて高い値を算出する。 ⇒妥当性は低い 若干上に凸 図4.原爆被曝生存者の線量とがん死亡率 出荷制限の費用対策効果の考慮 ・vl(10d)q≧p を満たす場合、規制費用がその便益を超えないと判断できる q=p/10vld[Bq/kg] これを超える規制値は費用を上回る便益をもたらす (v:余命1年延長便益 / l:10mSvあたりの損失余命 /q:飲食物1kg当たりの放射能 / d:飲食物中の放射能1Bq当たりの預託線量 / p:飲食物1kg当たりの出荷制限など規制の費用) 26 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 検討案 項目 調査文献 今回の震災 対象物 ヨーロッパ核燃料サイクル 福島第一原子力発電所 対象地 EU 日本 放射性物質の放出量と時間 微量かつ長時間 大量かつ短時間 事故の取り扱い 評価対象外 評価対象 職業暴露 評価対象外 運命分析モデル-大気 ガウスプルームモデル(煙突の高さを考慮) -水域 ボックスモデル -世界域 単純モデル ガウスパフモデル Dreicer et al.(1995)のモデル 大気に海域経路を加える 水道水経由の暴露を考慮 -係数 フランス施設とその周辺気象・人口統計による評価 フランス→日本 -水産物の暴露量 淡水海産物の方が多い 海産水産物の方が多い 体細胞影響、遺伝的影響 体細胞影響のみ -細胞変化影響 確率的損傷 確定的損傷 -DDREF値 ICRPの推奨値2を採用 DDREFを採用しない 暴露分析-モデル 影響分析-影響 被害評価-方法 -年齢重み付け DALY概念を使用 有/無の場合で2パターンのシナリオを想定 27 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 検討案 パフモデルではガウス分布型の丸い煙 (パフ)が時間とともに広がりながら、 時々刻々変化する風によって流されてい くモデルである。 通常の連続放出の場合には、敷地外の年間平均濃度を求めるためにガウスプルームモデルを使用 事故的な放出の場合には時間的・空間的な気象上の変化を取り入れたパフモデルを適用可能 http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=06-03-05-02 +α:SPEEDIによる予測の公表が遅れたことによる追加的な ヒト健康に及ぼす影響はどの程度のものだったのかも算出してみてはどうか。 28 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 感想 理解を含め、課題・検討案について十分だと納得できずとも、時 間内で結果を出さなければならない社会人の厳しさを感じた。 英語文献を思うように読み進められず悪戦苦闘し、必要性を痛 感した。 報告書の作成方法も学べたおかげで、卒業論文にも生かせそう だと思った。 毎日MTから始めて頂いたおかげで、問題を問題のままに放置し ないという社会人のポリシーを感じた。 部署全体がお互いをお互いに支えていたという印象が強く、自ら も必要とする側ではなく必要とされる側になるような努力が必要 だと思った。 29 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 謝辞 この度は、ご多忙の中、本インターンシップを受 け入れて下さったみずほ情報総研株式会社様、 担当して下さった久保利晃様、ならびに環境・資 源エネルギー部のみなさまに深く御礼申し上げ ます。 30 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 参考文献 独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター-がん情報サービス-年次推移 http://ganjoho.jp/public/statistics/pub/statistics02.html 原子力安全委員会-「環境モニタリングの結果」に対する原子力安全委員会による評価結果について http://www.nsc.go.jp/nsc_mnt/ チェルノブイリ20年の真実 事故による放射線影響をめぐって http://www.aesj.or.jp/atomos/popular/kaisetsu200701.pdf 第4章 放射線による発がん http://www.carenet.com/saigai/iryoukagaku/pdf/03/01.pdf 海洋政策研究財団 福島第一原子力発電所からの放射性物質の海洋拡散シュミレーション http://www.sof.or.jp/jp/news/251-300/267_2.php 日本放射化学会 http://www.radiochem.org/index-j.html Artificial Radionuclides in the Environment 2009 http://www.mri-jma.go.jp/Dep/ge/2009Artifi_Radio_report/index.html (http://www.mri-jma.go.jp/Dep/ge/ge.html) 東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質の移流拡散について http://www.mri-jma.go.jp/Topics/H23_tohoku-taiheiyo-oki-eq/1107fukushima.html 大気圏拡散シミュレーションモデル http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=06-03-05-02 ・食品の調理・加工による放射性核種の除去率 http://www.rwmc.or.jp/library/other/file/kankyo4_1.pdf 31 東京都市大学伊坪研究室 2011年度インターンシップ報告会 インターン報告 みずほ情報総研株式会社 劉源・杉山彩 東京都市大学伊坪研究室
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