本県産業の現状からのアプローチ - 長崎県

第Ⅱ章
本県産業のポテンシャル及び課題
第Ⅱ章 本県産業のポテンシャル及び課題
1.課題等整理の考え方
第Ⅰ章でも示したとおり、我が国・本県の産業界を取り巻く環境は大
きな変革の局面にあります。本県産業における政策展開の方向を検討す
るにあたっては、こうした環境の変化への対応に加え、本県産業の現状
分析が必要であることから、ここでは、本県産業のポテンシャル及び課
題について、下記の3点のアプローチからそれぞれ整理しています。
(1)本県産業の現状からのアプローチ
(2)「新産業創造構想」の取組成果からのアプローチ
(3)民間企業、大学などの有識者の意見からのアプローチ
※県外企業等の意見含む
- 13 -
第Ⅱ章
本県産業のポテンシャル及び課題
2.それぞれの視点からのアプローチ
(1)本県産業の現状からのアプローチ
本県産業の特徴を「本県の製造業の特徴」
、
「本県の地理的特性及び誘致
企業の特徴」、「本県の産業人材の特徴」
、「本県の地域経済の現状」
、
「その
他」それぞれの観点から整理し、本県産業のポテンシャル及び課題を取り
まとめています。
1)本県の製造業の特徴
①本県の製造業が産業全体に占める割合は低い
②本県の製造品出荷額は九州で下位
③本県の中小製造業(30 人以上 299 人以下の事業所規模)における1事業所あ
たりの製造品付加価値額は九州で最下位
④本県の中小製造業(30 人以上 299 人以下の事業所規模)における事業所数、
製造品出荷額ともに九州で最下位
⑤本県の製造業は、出荷額ベースで加工組立型が中心(輸送用機械、電子部品・
デバイス、はん用機械など)
⑥造船関連産業など高度加工組立技術の蓄積
⑦表面処理加工や精密微細加工など多様な最終製品の製造に対応できる技術の
幅が小さい
⑧次世代エネルギーの活用及び環境・エネルギー関連企業の先進的な取組み
⑨本県は全国有数の農林水産資源の産出県である一方、食料品製造業の出荷額
は九州で最下位
- 14 -
第Ⅱ章
本県産業のポテンシャル及び課題
①本県の製造業が産業全体に占める割合は低い

本県の製造業が産業全体に占める割合は、平成19年度で14.6%と平成10年度と比
べ3.4ポイント上昇しているものの、全国の21.2%を6.6ポイント下回っている。
ここ10年で約2割増加しているものの、産業全体に占める割合は約15%と低い。
【図
長崎県の産業構造の推移(総生産額ベース)】
全国:76.4%
(本県:80.8%)
100%
90%
80%
43.4%
43.8%
43.1%
45.0%
45.8%
45.7%
46.1%
45.7%
44.1%
44.2%
第3次産業
70%
'うちサービス業(
60%
50%
21.6%
21.9%
23.3%
23.5%
23.4%
24.1%
24.2%
24.4%
24.5%
25.3%
'うち卸・小売業(
40%
30%
13.7%
13.8%
14.7%
14.1%
13.8%
14.0%
13.3%
12.7%
11.8%
11.3%
20%
10.4%
10.2%
9.2%
8.6%
7.2%
7.8%
7.3%
5.6%
6.1%
4.9%
10%
11.2%
11.0%
10.5%
10.2%
11.5%
10.2%
10.7%
13.0%
14.4%
14.6%
3.6%
3.3%
3.2%
3.0%
3.0%
2.9%
3.0%
2.9%
2.7%
2.9%
H 10
H 11
H 12
H 13
H 14
H 15
H 16
H 17
H 18
0%
全国
21.2%
第2次産業
'うち製造業(
第1次産業
H 19
出典:「平成19年度県民経済計算」'内閣府(
'注(総生産には帰属利子等'控除項目(が含まれるため、各産業のシェアの合計は100とはならない
②本県の製造品出荷額は九州で下位

本県の製造品出荷額については、九州他県と比べると、下位で推移している状況にある。
【図 製造品出荷額の推移(4人以上の事業所】
※出典:工業統計(経済産業省)
100,000
単位:億円
福岡県
90,000
85,965
80,000
70,000
60,000
出
荷
額
50,000
大分県
44,106
40,000
熊本県
30,000
28,352
鹿児島県20,504
19,156
18,234
14,098
20,000
10,000
佐賀県
長崎県
宮崎県
0
S53 S59 S61 S63 H2
H4
H6
H8 H10 H12 H14 H16 H18 H20
- 15 -
第Ⅱ章
本県産業のポテンシャル及び課題
③本県の中小製造業における1事業所あたりの製造品付加価値額は九州で最下位

本県の中小製造業(30 人以上 299 人以下の事業所規模)における1事業所あたりの製造
品付加価値額は下位で推移しており、H20年度は九州最下位で、1位の大分県の約6割
程度の付加価値額しかない。
【図
1事業所あたり製造品付加価値額の推移(30 人以上 299 人以下の事業所規模)
】
※出典:工業統計(経済産業省)
120,000
100,000
付加価値額'百万円(
80,000
60,000
40,000
20,000
0
単位:万円
H 14
H 15
H 16
H 17
H 18
H 19
H 20
福岡県
73,950
78,351
83,831
78,304
85,086
80,657
86,511
佐賀県
70,369
75,429
82,362
86,020
83,798
83,461
80,979
長崎県
53,338
50,385
59,039
58,976
60,463
55,670
54,242
熊本県
66,830
71,671
78,360
78,134
78,819
79,312
79,825
大分県
90,237
93,144
103,991
104,508
100,737
99,644
89,493
宮崎県
61,169
61,274
63,913
55,682
53,094
55,741
55,401
鹿児島県
56,353
62,032
65,868
65,578
63,734
67,754
65,379
※付加価値額:事業所の生産活動において新たに付け加えられた価値のことで、生産
額から原材料貹等を差し引いたもの。
④本県の中小製造業における事業所数、製造品出荷額ともに九州で最下位
本県の中小製造業(30 人以上 299 人以下の事業所規模)における事業所数、製造品出荷額は
九州で最下位
【図 従業者規模別の事業所数(4人以上の事業所)】
※出典:平成20年工業統計(経済産業省)
6,000
5,000
事業所数

4,000
3,000
2,000
1,000
0
福岡
佐賀
長崎
熊本
大分
宮崎
鹿児島
4人以上
29人以下
5,579
1,293
1,950
2,030
1,452
1,367
2,241
30人以上
299人以下
1,292
365
300
495
388
381
451
99
31
24
44
36
27
17
300以上
- 16 -
第Ⅱ章
本県産業のポテンシャル及び課題
【図 従業者規模別の製造品出荷額等(4人以上の事業所)】
※出典:平成20年工業統計(経済産業省)
45,000
40,000
35,000
30,000
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
0
福岡
佐賀
長崎
熊本
大分
宮崎
鹿児島
4人以上
29人以下
10,963
2,175
2,349
3,266
2,612
1,872
4,210
30人以上
299人以下
36,236
9,130
4,219
11,938
10,209
6,957
9,983
300以上
38,766
7,850
11,666
13,148
31,285
5,270
6,311
単位:億円
⑤本県の製造業は、出荷額ベースで加工組立型が中心

本県の加工組立型の製造品出荷
額の構成割合は、輸送用機械、
電子部品・デバイス、はん用機
【図
産業別製造品出荷額等の構成割合(4人以上の事業所)
】
※出典:平成20年工業統計(経済産業省)
80.0
71.6
械などを中心に、全体の7割以
60.0
上を占める一方、基礎素材型、
50.0
生活関連型の割合は低く、出荷
40.0
額ベースでも九州で最下位であ
54.2
52.8
49.5
40.0
38.5 38.2
39.3
36.9
基礎素材型
37.3
33.7
30.0
23.3
る。
単位:%
70.0
加工組立型
26.3
29.1
28.6
25.8
生活関連型
21.3
17.7
17.2
20.0
10.8
7.9
10.0
①基礎素材型:鉄、石油、木材、
0.0
紙など、産業の基礎素材とな
る製品の製造
②加工組立型:造船、自動車、
福岡県
【図
35,000
の製造
30,000
家具など、衣食住に関する製品
等の製造
熊本県
大分県
宮崎県
鹿児島県
長崎県
産業別製造品出荷額等(4人以上の事業所)
】
※出典:平成20年工業統計(経済産業省)
テレビ、時計など、加工製品
③生活関連型:飲食料品、衣服、
佐賀県
33,093
単位:億円
32,859
25,000
23,289
20,014
20,000
17,342
基礎素材型
14,042
15,000
13,052
11,112
※3類型は、工業統計(経済産業省)
による区分
10,000
8,259
7,665
6,051
6,455 5,035
5,000
3,475
5,090 5,142
生活関連型
5,861
3,526
1,961
3,221
3,560
0
福岡県
- 17 -
佐賀県
熊本県
大分県
宮崎県
鹿児島県
加工組立型
長崎県
第Ⅱ章
本県産業のポテンシャル及び課題
⑥造船関連産業など高度加工組立技術の蓄積
⑦表面処理加工や精密微細加工など多様な最終製品の製造に対応できる技術の幅が
小さい

県内には、船舶製造・修理のほか、発電プラント等の大型機械や構造物を生産する大手事
業所があり、これらが直接、間接に調達する部品の製造や加工に関わる企業が多数存在し
ている。このため、比較的中・大型の製造品を多種尐量生産するための設備や製造技術を
持つ企業が多く、製缶加工や機械加工に関する技術が豊富に蓄積されており、県外からの
受注にもつながっている。
これらの技術は、例えば、今後の市場拡大が見込まれる新エネルギー分野をはじめ、環境
関連産業などにも活かされており、従来の県内大企業の専属的下請け生産から脱し、新た
な取引先との取引が始まってきている。

一方、製缶加工や機械加工に関する技術は豊富なものの、表面処理加工や精密微細加工、
大量生産への対応が必要とされなかったため、多様な最終製品の製造に対応できる県内の
技術の幅という点では立ち遅れている。
⑧次世代エネルギーの活用及び環境・エネルギー関連企業の先進的な取組み
(1)次世代エネルギー活用の先進県

太陽光発電の導入率、風力発電の導入量及び設置基数は全国でも上位の位置にあるなど、
本県の自然エネルギーの活用は進んでいる。

本県は、平成21年に、次世代エネルギーの普及啓発拠点として全国で初めて国の認定を
受け、「長崎次世代エネルギーパーク」をハウステンボスに開設したほか、同年には、京都
より西では唯一となる「EV・PHVタウン」として認定を受けるなど、次世代エネルギ
ーの活用において、先進的な取組みを進めている。
【図表:風力発電導入量】
順番
都道府県名 設置容量(KW)
1位
青森県
292,540
2位
北海道
257,495
3位
鹿児島県
154,415
4位
島根県
128,320
5位
秋田県
124,482
6位
長崎県
97,160
【図表:太陽光発電設備の導入率】
順番
都道府県名
件数
1位
佐賀県
25.3件
2位
宮崎県
23.7件
3位
熊本県
22.0件
4位
長崎県
17.8件
5位
山梨県
17.7件
全国平均
9.2件
出 典 : N E D O 技 術 開 発 機 構 調 べ (2010年 3月 末 現 在 )
出典:長崎県取りまとめによる
※ 一 般 社 団 法 人 新 エ ネ ル ギ ー 導 入 促 進 協 議 会 (H21.7)
「住宅用太陽光発電システム導入状況に関する調査」
から作成
※ 1,000世 帯 あ た り 導 入 件 数
【図表:風力発電設置基数】
順番
都道府県名 設置基数'基(
1位
北海道
266
2位
青森県
200
3位
鹿児島県
107
4位
秋田県
104
5位
長崎県
74
出 典 : N E D O 技 術 開 発 機 構 調 べ (2010年 3月 末 現 在 )
- 18 -
第Ⅱ章
本県産業のポテンシャル及び課題
(2)環境・エネルギー関連企業の先進的な取組み

平成19年8月に「長崎環境・エネルギー産業ネットワーク」を設立し、環境・エネルギ
ー分野における取引拡大や新規参入に向けた取組みなどの支援により、本県の環境・エネ
ルギー産業の振興を図っており、K-RIP(九州地域環境・リサイクル産業交流プラザ)
を推進拠点に、長崎をはじめ、北九州市(環境・エネルギー)、水俣市(環境・バイオ)、
奄美市(環境・リサイクル)
、宮崎県(リサイクル・環境・バイオ)の5カ所を地域拠点と
して連携した取組みを展開している。

県内には、次世代エネルギーによる社会インフラ構築の鍵となるリチウムイオン蓄電池の
プレ量産化実証工場、大型太陽光発電向けの高効率パワーコンディショナーの生産工場が
あるほか、大手企業の取引先企業など中小企業においても高い技術を保有している企業が
ある。
⑨本県は全国有数の農林水産資源の産出県である一方、食料品製造業の出荷額は九州で
最下位

本県は、全国の約12%にあたる4,209km の海岸線に面した広大な漁場に恵まれ、
漁業生産額は北海道に次いで全国第2位の水産県である。また、あじ類、くろまぐろ、た
い類、ふぐ類、ぶり類など、生産量が全国第1位を誇る魚介種を多く抱えている。本県の
農業産出額は全国第22位で、びわ、ばれいしょ、ミカン、いちご、肉用牛など全国で上
位10位以内の品目が23品目ある。

一方、本県の食料品製造業の事業所数は、九州7県の中で3番目に多いが、出荷額は1番
低く、1事業所あたりの出荷額及び従業者1人あたりの出荷額についても九州で1番低い。
つまり、中小零細事業所が多く、生産性が低いことが窺える。
【図表
全国的にみた本県水産業の地位】 ※出典:農林水産統計年報(農林水産省)
区 分
単位
全国
長崎
全国順位
海面漁業・養殖業生産量(H20)
1000t
5,520
325
3位
海面漁業・養殖業生産額(H20)
億円
15,423
1,025
2位
【図表
全国的にみた本県農業の地位】
区 分
農業産出額(H20)
※出典:農林水産統計年報(農林水産省)
単位
全国
億円
84,736
- 19 -
長崎
1,396
全国順位
22位
第Ⅱ章
本県産業のポテンシャル及び課題
【図 食料品製造業の九州各県比較(4人以上の事業所)】
※出典:平成20年工業統計(経済産業省)
事業所数
単位:事業所
1,600
1,400
1,352
18,000
16,000
14,000
12,000
10,000
8,000
6,000
4,000
2,000
0
1,291
1,200
950
1,000
715
800
568
600
455
405
400
200
単位:百万円
佐賀
長崎
熊本
大分
宮崎
10,395
3,691
1事業所あたりの出荷額
単位:百万円
35
1,143
2,845
長崎
熊本
800
661
625
702
大分
3,987
宮崎
鹿児島
従業者1人あたりの出荷額
33
31
28
30
911
1,000
佐賀
4,723
2,644
鹿児島
1,400
1,200
15,453
福岡
0
福岡
出荷額等
単位:億円
25
805
600
23
22
20
23
15
15
400
278
10
200
5
0
0
福岡
佐賀
長崎
熊本
大分
宮崎
鹿児島
福岡
佐賀
長崎
熊本
大分
宮崎
鹿児島
2)本県の地理的特性及び誘致企業の特徴
①本県の工業用水は尐ない
②本県は地震災害のリスクが尐ない
③大型の企業立地に対応できる工業団地が丌足
④最近の誘致企業の傾向は、加工組立型や、コールセンターなどの非製造業型
が中心
- 20 -
第Ⅱ章
本県産業のポテンシャル及び課題
①本県の工業用水は尐ない

本県製造業の事業所数及び工業用水使用実績(30 人以上の事業所)はともに九州で1番
尐ないが、特に工業用水使用実績は九州他県より尐ない状況が際立っている。また、河川
延長についても九州の中で1番短い。

以上の状況や、全国の業種別における1事業所あたりの工業用水使用実績と本県製造業全
体の1事業所あたりの工業用水使用実績の比較から、誘致できる業種は制約されることが
窺える。
【図 業種別1事業所(30 人以上)あたり工業用水使用実績】
【図 本県製造業の事業所数及び工業用水使用実績
(全国及び本県実績)※出典:H20工業統計(経済産業省)
(30 人以上の事業所)】 ※H20工業統計(経済産業省)
工業用水使用実績
万㎥/日
事業所数
84,786
工業用水量
単位:㎥/日
3,500
3,004
1400
451
1391
401
462
485
1200
301
251
424
396
1,500
800
1,000
408
600
468
324
151
101
1000
500
539
1,512
1,315
579
255
172
345
105
0
400
133
110
200
51
42
36
1
2,436
2,500
2,000
351
201
3,000
8
0
全 国
【図
九州各県の河川延長】
※長崎県河川課作成
河川延長(km)
200.0
180.0
160.0
140.0
120.0
100.0
80.0
60.0
40.0
20.0
0.0
河川延長(km)
174.3
99.3
68.0
53.7
63.8
25.0
福岡県
佐賀県
熊本県
大分県
16.6
宮崎県 鹿児島県 長崎県
- 21 -
171
350
第Ⅱ章
本県産業のポテンシャル及び課題
②本県は地震災害のリスクが少ない
•
地震調査研究推進本部が公表した下図の「全国地震予測地図 2010 年版」によると、本県
における今後30年以内に震度6弱以上の地震が起こる確率は、太平洋沿岸と比べ低くな
っている。
【図
0%
今後30年以内に震度6弱以上の地震が起こる確率図(基準日:H22.1.1)】
0.1%
3%
6%
26%
100%
【出展:全国地震予測地図 2010 年版(地震調査研究推進本部)】
- 22 -
第Ⅱ章
本県産業のポテンシャル及び課題
③大型の企業立地に対応できる工業団地が不足
④最近の誘致企業の傾向は、加工組立型や、コールセンターなどの非製造業型が中心
•
平成11年度以降に分譲可能であった工業団地は122ha あったが、現在の残地は34ha
となっており、このうち、潮風の影響を受けにくい内陸型の工業団地は残り6ha と、大型
の企業立地に対応できる工業団地が不足している。
•
平成2年までの本県への進出企業は雑貨型が多く見られたが、平成13年以降は、加工組立
型や非製造型が中心となっている。
①雑
貨
型:衣服、家具、印刷、プラスチック製品、ゴム製品、皮革、その他製造業
②地方資源型:食料品、飲料・たばこ・飼料、繊維工業、木材、木製品、パルプ、紙、
窯業、土石製品
③基礎素材型:化学工業、石油・石炭製品、鉄鋼業、非鉄金属
④加工組立型:金属製品、一般機械、電気機械、情報通信機械、電子・デバイス、輸送
用機械、精密機械、武器
⑤非 製 造 型:コールセンター、ソフトウェア、研究所
※産業類型は、工場立地動向調査(経済産業省)による区分(非製造型は県独自の区分)
【図
長崎県への進出企業の状況及び全国の工場立地件数推移】※長崎県企業立地課取りまとめ
長崎県への企業進出状況の推移
7 00 0
16
14
6 00 0
全国立地件数
12
5 00 0
10
4 00 0
8
3 00 0
6
2 00 0
4
1 00 0
2
0
雑貨型
地方資源型
基礎素材型
加工組立型
- 23 -
非製造型
H14
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H3
H4
H5
H6
H7
H8
H9
H10
H11
H12
H13
S55
S56
S57
S58
S59
S60
S61
S62
S63
H1
H2
S44
S45
S46
S47
S48
S49
S50
S51
S52
S53
S54
0
S38
S39
S40
S41
S42
S43
長
崎
県
進
出
企
業
件
数
全国立地件数
全
国
の
工
場
立
地
件
数
第Ⅱ章
本県産業のポテンシャル及び課題
3)本県の産業人材の特徴
①本県は工業高校生など優秀な人材が豊富である一方、県内高校生の県外への就
職割合は高い
②県立高等技術専門校修了生の就職率は高く、そのうち県内就職者の割合も高い
③産学官連携による取組み
①本県は工業高校生など優秀な人材が豊富である一方、県内高校生の県外への就職割合は
高い

本県の工業高校生の資栺取徔状況において、第一種電気工事士取徔合栺者数と第三種電気主
任技術合栺者数はともに10年連続1位、ジュニアマイスター顕彰制度の認定者数(申請校
1校あたりの認定者数)は2年連続1位であり、本県には優秀な人材が豊富であることが窺
える。
①第一種電気工事士:自家用電気工作物、一般用電気工作物の工事に従事できる国家資栺
(経済産業省)
※社会人や大学生を含めた全国の合栺率は29%、本県工業科生徒は47.9%
②第三種電気主任技術者:電気工作物の工事に従事できる国家資栺(経済産業省)
※社会人や大学生を含めた全国の合栺率は9.7%、本県工業科生徒は19.4%
③ジュニアマイスター顕彰:全国工業高等学校長協会が設けた制度で、優れた活躍をした
工業科生徒を顕彰する制度

一方、県内高校生の県外への就職割合は、九州他県と比べても高く、特に優秀な人材を多く
抱える工業科卒業生の県外流出割合は高い。
【図表
県内高校生の県外就職者割合における本県と九州他県、全国との比較】
H16.3卒
H17.3卒
H18.3卒
H19.3卒
H20.3卒
H21.3卒
H22.3卒
福岡県
17.4
19.3
19.4
20.7
21.4
22.0
17.5
佐賀県
35.5
40.1
42.5
44.5
42.8
46.9
39.5
熊本県
27.2
31.8
34.4
36.8
38.3
44.9
37.3
大分県
24.0
24.7
24.4
26.0
24.2
24.5
21.2
宮崎県
36.1
36.4
41.2
41.2
43.2
46.1
40.9
鹿児島県
38.0
42.0
44.6
47.4
51.0
54.2
47.6
長崎県
38.9
42.4
44.1
45.8
44.7
46.3
39.9
全国
17.5
18.4
19.3
20.2
20.8
21.9
19.6
九州順位
1位
1位
2位
2位
- 24 -
2位
3位
3位
出典:学校基本調査'文部科学省(
※H22.3卒は速報値
単位:%
第Ⅱ章
【図表
本県産業のポテンシャル及び課題
県内工業科卒業生の県外就職者割合】
工業科
単位:%
H19.3卒
H20.3卒
H21.3卒
H22.3卒
66.0
64.6
62.4
58.7
出典:長崎県高校教育課、学事振興室
②県立高等技術専門校修了生の就職率は高く、そのうち県内就職者の割合も高い

県立高等技術専門校修了生の就職率は高く、長崎校は、平成19年度から4年連続で就職率
100%、佐世保校も平成21年度、過去最高の99.1%を達成
【図表:県立高等技術専門校の就職率の推移】 単位:%
H15年度 H16年度 H17年度 H18年度 H19年度 H20年度 H21年度
長崎高等技術専門校
佐世保高等技術専門校
合 計
就職率
96.4
97.0
97.0
100.0
100.0
100.0
100.0
県内就職者の割合
95.5
91.4
92.2
90.7
96.9
99.2
96.0
就職率
91.6
98.3
94.4
95.0
93.9
93.6
99.1
県内就職者の割合
85.5
86.8
86.4
82.3
86.0
86.3
86.2
就職率
94.5
97.6
95.7
97.5
97.1
97.0
99.6
県内就職者の割合
91.8
89.3
89.4
86.6
92.0
93.4
91.4
出典:長崎県産業人材課
③産学官連携による取組み

本県では、大学、県、市町からなる「地域と大学等との連携推進会議」を平成18年度に設
置し、大学等の研究成果や人材等を幅広く地域振興に活用し、様々な課題解決を図る取組み
を進めている。

慶応義塾大学とは平成21年に連携協定を締結し、地域の歴史・文化・特産品等の資源を活
用して、地域力向上に取り組む市町に対して、大学と連携して施策の提言や事業立ち上がり
段階でのフォローアップによる支援を行っており、東京大学生産技術研究所とは平成22年
に連携協定を締結し、環境と調和した自然エネルギー活用型新産業を創出するため、自然エ
ネルギーの活用技術や環境保全に関する技術、さらには、それらを支えるものづくり技術の
高度化について、連携した取組みを進めることにしている。

特に産業人材の育成については、長崎大学とは平成21年、長崎総合科学大学とは平成
22年に連携協定を締結し、企業在職者を対象に、大学教授による特定分野に絞ったセミナ
ーを実施しているほか、大学教授等と企業経営者との懇談会を開催している。
- 25 -
第Ⅱ章
本県産業のポテンシャル及び課題
4)本県の地域経済の現状
①県内の商店数や販売額は減尐傾向にあり、特に商店街におけるその傾向は
顕著である
②本県の空き店舗率は増加傾向にあり、その割合は全国と比べても高い
③本県の廃業率が開業率を上回る度合いは九州他県と比べ大きい
④商店街におけるユニークな取組み
①県内の商店数や販売額は減尐傾向にあり、特に商店街におけるその傾向は顕著である
②本県の空き店舗率は増加傾向にあり、その割合は全国と比べても高い

本県の商店数及び年間商品販売額は減尐傾向にあり、特に商店街におけるその傾向は顕著
である。

【図
商店街の空き店舗率は増加傾向にあり、平成15年以降は、全国を上回って推移している。
本県の商店数の推移】
※出典:商業統計調査(経済産業省)
県内全体
商店街
大規模小売店
140
※H9 を 100 とした場合
126.8
123.4
【図
120.8
110.4
120
100.0
100.8
100
14.0%
93.6
88.5
99.7
80
83.9
60
平成9年
平成11年
平成14年
本県と全国の空き店舗率の推移】
※出典:商店街基礎調査(長崎県商工振興課)
※出典:商店街実態調査(中小企業庁)
77.4
平成16年
12.2%
80.1
12.0%
8.0%
平成19年
本県の年間商品販売額の推移】
※出典:商業統計調査(経済産業省)
県内全体
商店街
大規模小売店
120
100.0
※H9 を 100 とした場合
100.7
100
98.3
101.2
81.3
114.9
94.1
75.4
64.6
平成9年
平成11年
平成14年
平成16年
8.3%
全国
7.3%
長崎県
6.2%
0.0%
H9
80
60
9.0%
6.8%
2.0%
107.6
99.4
10.8%
4.0%
117.2
101.9
9.3%
8.5%
6.0%
【図
9.6%
10.0%
67.5
平成19年
- 26 -
H12
H15
H18
H21
第Ⅱ章
本県産業のポテンシャル及び課題
③本県の廃業率が開業率を上回る度合いは九州他県と比べ大きい

全国的にみても産業全体において廃業率は開業率を上回っており、特に本県におけるその度
合いは九州で2番目に大きい。

業種別にみても、廃業率が開業率を上回る度合いは、全体的に九州の中で大きい状況にあり、
特に卸売・小売業については、九州で1番大きい。
【図 開業率-廃業率の九州各県、全国との比較(H16~H18 の年平均)
】(単位:%)
※出典:事業所・企業統計調査(総務省)
産業全体
製造業
0.0
0.0
0.0
▲ 0.1
▲ 0.2
▲ 0.3
▲ 0.1
▲ 0.5
▲ 0.1
▲ 0.2
▲ 0.4
▲ 1.0
▲ 0.4
▲ 0.5
▲ 0.4
▲ 0.8
▲ 1.1
▲ 1.5
▲ 0.6
▲ 2.0
▲ 0.6
▲ 0.7
▲ 0.7
▲ 0.8
▲ 0.9
▲ 1.4
▲ 1.5
▲ 1.9
▲ 2.1
▲ 2.2
▲ 2.5
卸売・小売業
飲食店・宿泊業
0.0
0.0
0.0
▲ 0.2
▲ 0.5
▲ 0.6
▲ 1.0
▲ 1.5
▲ 1.1
▲ 0.9
▲ 1.0
▲ 1.1
▲ 1.0
▲ 1.6
▲ 2.1
▲ 1.8
医療・福祉
6.1
4.7
3.9
4.4
3.7
▲ 1.1
▲ 1.4
▲ 1.9
5.6
4.4
- 27 -
▲ 0.7
▲ 0.9
▲ 1.2
▲ 2.5
9.2
▲ 0.6
▲ 0.8
▲ 1.2
▲ 1.5
▲ 2.0
10.0
9.0
8.0
7.0
6.0
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
▲ 0.2
▲ 0.4
▲ 1.6
▲ 1.1
第Ⅱ章
本県産業のポテンシャル及び課題
④商店街におけるユニークな取組み
•
長崎浜んまち商店街の取組み
国際観光船の中国人観光客受け入れのために、中国人観光客向け決済サービスである「銀
聯(ぎんれん)カード」を全国でもいち早く導入したことに加え、地域の6商店街で国
際観光船受入委員会を設置し、商店街における日本的な歓迎イベントを開催するなど、国
際観光文化都市である長崎の特長を活かしたまちづくりを進めている。
•
させぼ四ヶ町商店街の取組み
クリスマスシーズンにイルミネーションで街を彩る「きらきらフェスティバル」や、「YO
SAKOI させぼ祭り」などを実施しており、「きらきらフェスティバル」ではイルミネーシ
ョンの電球を市民の出資により設置したり、デザインの募集・表彰を行うなど、市民参加型
のユニークなイベントによるまちおこしを展開している。
5)その他
①アジアとの歴史的・地理的近接性
②豊富な観光資源
•
本県を中心にすると、上海、ソウル、釜山等の都市が客船で1日圏となる 1000km 圏内
にほぼ入るなど、アジアとの地理的近接性がある。
•
本県は、アジアやヨーロッパとの長年の歴史があり、人を呼んで栄え、人々の交流の中で
生きてきた地域である。歴史的に海外とのゲートウェイとして、経済的にも文化的にも時
代の先端を担ってきた。現在は、ハウステンボスなどの海外とのつながりの深い資源や、
「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」として世界遺産の暫定リストに登録されたキリシ
タン史跡、出島などの歴史的資源など、観光資源を活かした観光戦略を進めている。
また平成22年度、県庁内に「アジア・国際戦略本部」を設置し、こうした長い交流の歴
史により培ってきた国際的友好・信頼関係を活かしながら、今後も高い経済成長が見込ま
れるアジアを中心に海外の活力を取り込み、本県の経済活性化を図っていくことにしてい
る。
【長崎県を中心とした 1000km圏内図】
長崎が世界に誇る歴史・文化遺産
教会群とカトリック信仰
札幌
(平成19年1月 暫定リスト入り)
聖フランシスコ・ザビエル記念教会
田平教会、紐差教会、宝亀教会
旧野首教会
天正遣欧使節記念館
本経寺
黒島教会
長崎県
鯛ノ浦教会
頭ヶ島教会
青砂ヶ浦教会
出津教会、黒崎教会
遠藤周作記念館
井持浦教会 、堂崎教会、
旧五輪教会
大浦天主堂、浦上天主堂
26聖人殉教地、出島
原城跡
日野江城跡
吉利支丹墓碑
全国の教会の1割以上を占める約130の教会が存在。
- 28 -
63
第Ⅱ章
本県産業のポテンシャル及び課題
これまでの現状を踏まえると、本県産業のポテンシャル及び課題は次のと
おりです。
①ポテンシャル
①造船関連の事業から発した高度加工組立技術の蓄積
②次世代エネルギーの活用及び環境・エネルギー関連企業の先進的な取組み
③豊富な農林水産資源の存在
④地震災害のリスクが尐ない
⑤工業高校生など優秀な人材が豊富
⑥産学官連携による産業人材育成体制の構築
⑦商店街におけるユニークな取組み
⑧アジアとの歴史的・地理的近接性
⑨豊富な観光資源
②課 題
①製造品出荷額の向上、中でも特に、中小製造業における1事業所あたりの
製造品付加価値額の向上
②表面処理加工や精密微細加工など、多様な最終製品の製造に対応できる
技術の幅の拡大
③食料品製造業出荷額の向上
④工業用水が尐ないなどの制約要因を踏まえた誘致対策
⑤企業ニーズに合った工業団地の確保
⑥高校生の県内就職率の向上
⑦空き店舗率の増加など商店街の衰退への対応
⑧廃業率が開業率を大きく上回る状況の打開
- 29 -