3 - 公立はこだて未来大学

公立はこだて未来大学 2014 年度 システム情報科学実習
グループ報告書
Future University-Hakodate 2014 System Information Science Practice
Group Report
プロジェクト名
函館の未来を拓くトランスファー
Project Name
Future Public Transportation for Hakodate City
グループ名
調査班 (C)
Group Name
Search group(C)
プロジェクト番号/Project No.
7
プロジェクトリーダ/Project Leader
1011251
山本真平
Masahira Yamamoto
グループリーダ/Group Leader
1011012
小嶋大樹
Daiki Kojima
グループメンバ/Group Member
1011012
小嶋大樹
Daiki Kojima
1011109
加藤亨輔
Kyosuke Kato
1011148
生駒敬一
Keiichi Ikoma
指導教員
平田圭二 田柳恵美子
椿本弥生
竹川佳成
Advisor
中島 秀之 松原 仁
川嶋 稔夫
白石 陽
提出日
2014 年 1 月 15 日
Date of Submission
January 15, 2014
佐野 渉二
概要
本プロジェクトでは,函館市民の移動を活性化することを目標として活動してきた.近年の
函館では交通全体の約 8 割が自家用車によるものであること,函館バスにおける不採算路線の
減便・廃便が多数発生していること,函館に訪れる観光客が市内移動手段に対して最も不満を
感じていること,函館市民が年間函館バスを平均 13 回程度しか利用していないことなどが問
題点として挙げられる.しかし本プロジェクトはその交通の諸問題を発生させている原因や本
質的な問題を完全に捉えられていない.そこで前期の調査では,函館の交通における本質的な
問題を探るために行った.調査結果を統計解析し考察したところ,主に 2 つのことがわかっ
た.第一に,函館市民は移動手段として自動車を選択している.その選択は,路線バスなどの
公共交通手段の不便さなどが原因でなく,漠然とした理由によるものであった.第二に,新し
い便利な交通サービスの情報が行き渡りにくいことであった.本プロジェクトでは,函館市民
は行き過ぎた車依存思考に陥っていると考えた.前期の結果より,グループ A では,函館市民
が路線バスに対して,時間どおりにこないや本数が少ないなどの不満を抱いていることから,
それらの不満を解消する新たな交通手段として,スマートフォンアプリを利用した相乗り支援
システムを作成することになった.グループ B では函館市民が移動手段を選択する際に,交
通関連の情報が必要であると考え,各利用者に適した交通手段の情報を提供する Web サイト
を作成することになった.また各システムの対象ははこだて未来大学の学生となった.後期の
調査では,各システムの潜在需要を探るために行った.調査結果を考察したところ,学生間で
相乗りは一定の需要と供給があることと,新入生は生活関連の情報を必要としていることがわ
かった.前期・後期の調査結果を元に,学生間の学生の車を利用した相乗り支援システムと,
新入生を対象とした生活情報提供 Web サイトを作成することになった.今回の活動では,期
間内には各システムのユーザーテストを実施することができなかった.したがって今後の課題
として,システムのユーザーテストを実施し,システムの有効性を検証する必要がある.
キーワード
公共交通, アンケート調査, インタビュー調査, 問題解決, 問題提起, 統計解析,
ユーザーテスト
(文責: 生駒敬一)
-i-
Abstract
This project goal is to encourage the movement of the Hakodate citizens. Recently,
about 80% of the traffic in Hakodate is occupied by a car. Many routes of the Hakodate
bus which are deficits were repealed or decreased. In average, the Hakodate citizens
use the public bus only 13 times a year. The most discontents of the tourists who
visited Hakodate is for the public transportation. But this project didn’t capture the
essential problems and the causes of the traffic problems perfectly.Then, in first half
term, we implemented the survey to explore the essential problems of the Hakodate
traffic. We analyzed, discussed the result and mainly noticed two things. Firstly, the
Hakodate citizens choose a car as transportation. The choice is by not inconvenience
of the public bus, but the indeterminate cause. Secondly, it is difficult to spread new
convenience information about traffic. This project thought that the Hakodate citizens
fell into thinking of depending on a car.Considering the result of the first survey, Group A
determined to design the system with a smart-phone application software which supports
riding together in the same car. Because the Hakodate citizens complained against the
public bus. For example, the public bus doesn’t come on time, the number of buses
is a few, and so on. On the other hand, Group B determined to design the web site
which provides people information about a transportation suitable for them. Because
we thought that the Hakodate citizens need information about traffic when they choose
a transportation. In this case, Future university Hakodate’s students are the targets
of both system. In second half term, we implemented the survey to explore hidden
demand of both systems among students. Considering the result of the first survey,
we noticed that riding together in a car of a student has some demand, and freshmen
need information about life also.Considering the results of two surveys, we determined
to design the system with a smart-phone application software which supports riding
together in a car of a student, and the web site which provides people information
about life and a transportation suitable for them.In this term, we couldn’t implement
usability tests of both systems. Therefore, we need to implement usability tests and
validate efficacy of the system as a future problem.
Keyword
a public transportation, a survey, an interview, a solution problem, an
institution problem, a statistical analysis, an usability test
(文責: 生駒敬一)
- ii -
目次
第1章
1.1
1.2
第2章
はじめに
プロジェクト全体
1
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
1
1.1.1
背景 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
1
1.1.2
目的 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
5
調査班 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
6
1.2.1
背景 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
6
1.2.2
目的 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
6
1.2.3
先行研究における調査の現状 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
7
プロジェクト全体の目標
8
2.1
問題の設定 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
8
2.2
課題の設定 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
9
2.3
目標の設定 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
12
調査における課題解決のプロセス
13
3.1
具体的な手順と課題の設定 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
13
3.2
班内における課題の割り当て
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
14
3.3
課題解決の方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
15
分析と考察
19
4.1
分析 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
19
4.2
考察 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
23
まとめ
25
5.1
プロジェクトの成果 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
25
5.2
プロジェクトにおける個人の成果 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
26
5.3
今後の展望 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
29
第3章
第4章
第5章
5.3.1
プロジェクト全体の展望
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
29
5.3.2
調査班の展望 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
30
参考文献
付録 A
32
調査に使用された質問紙
33
- iii -
Future Public Transportation for Hakodate City
第1章
1.1
はじめに
プロジェクト全体
本プロジェクトは ICT を利用し,函館市民にとって不便さと非効率性を削減した,新たな交通
手段を提案することが目的だとした.そのために交通手段の利用者である函館市民に対して調査を
行うことで,函館の交通における本質的な問題を捉えることを調査班(グループ C)の目的とし
た.さらに適切な調査を行うために先行研究の調査実態を調査した.交通手段の利用者の意見・評
価を率直に得るために,インタビュー調査や自由記述ができるアンケート調査などが重要であると
考えられた.
1.1.1
背景
人々が日常生活を営む上で,交通手段の果たしている役割は大きい.ここでいう交通手段とは,
自家用車や自転車,また公共交通機関が提供している路線バスや鉄道などのことである.それぞれ
の交通手段は各々の特性を活かして人々の日常生活の中で利用されている.例えば,自家用車で
は,家族でレジャーをしたり,買い物で重い荷物を運んだり,遠くの町で自由気ままに移動したい
場合などにおいて,自家用車を使用すると便利で楽である.また自転車では,生徒が近くの学校に
通学したり,子供が遊びに行ったり,自動車の通れない狭い道を移動したい場合などにおいて,自
転車を使用すると便利である.さらに路線バスや鉄道などの公共交通手段では,自家用車を持って
いない人が長距離移動をしたり,移動先に自家用車を停める駐車場がなかったり,複数の友人と一
緒に移動したい場合などにおいて,路線バスや鉄道などの公共交通手段を利用すると便利である.
他には、タクシーでは,路線バスを待つ時間が惜しいと思ったり,自身の現在地と目的地に直接行
き来したい場合などにおいて,タクシーを利用すると便利である.これらのように,人々の日常生
活の上で,人々は各交通手段の特性を活かし利用している.
さらに,公共交通手段は都市の装置と呼ばれ,人間社会に溶け込んでいる.公共交通手段とは,
路線バスや鉄道などといった,不特定多数の人が利用する交通手段のことである.公共交通手段の
利点として主に二つある.一つ目は,一度に多くの人を運べるということである.通勤時におけ
る,鉄道と自家用車が一度に運べる人数を比較した.列車の車両一両の定員は約 150 人である,し
かし列車の定員は余裕をみて設定されているため,一般的な乗車率は約 150 %である.よって大都
市における 10 両編成の列車の場合,約 2000 人が乗っていることになる.一方で自家用車で通勤
する場合,一人に一台となるので,2000 人を移動させるのに自家用車が 2000 台必要となる.道
路の容量も限られているので,一度に多くの人を運べるという利点は大きい.二つ目は,自動車を
運転できない人に移動を提供することである.飲酒をした人や,老人や若年者,身体障害者などと
いった自動車運転が困難な人にとって,公共交通手段は日常生活を送る上での生命線である.すな
わち公共交通手段は人間社会を形成するのに必要な存在である.
なお大都市では,公共交通手段の重要性が高まっている.図 1.1 は昭和 62 年,平成 4 年,平成
11 年,平成 17 年における,鉄道,バス,自動車,二輪車の利用と徒歩の割合を示したグラフであ
る.日本全国,三大都市圏(東京圏,名古屋圏,大阪圏),地方都市圏をそれぞれ平日と休日に分
け,集計したものである.
Group Report of 2014 SISP
-1-
Group Number 7
Future Public Transportation for Hakodate City
図 1.1 交通手段別の利用率の変化
Group Report of 2014 SISP
-2-
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Future Public Transportation for Hakodate City
図 1.1 によると,三大都市圏では,交通全体における路線バスや鉄道などの公共交通手段の利用
率が高い状態で推移している.三大都市圏では,路線バスと鉄道の利用率が平成 17 年の平日では
約 30 %であり,特に鉄道の利用率が高かった.この要因として,東京をはじめとする大都市では,
路線バスや鉄道などの公共交通手段を主軸に都市開発を行うため,新しい公共交通を導入しやすい
ことが挙げられる.一方で大都市では,人々は自家用車を所持しにくい,もしくは自家用車を使用
しにくい現状がある.これは自家用車を所持する際にかかるコストが大きいことなどにより,自家
用車を購入しようとする意志が低下することが要因の一つと考えられる.また駐車場の少なさ,駐
車場代の価格の高さなどにより,大都市の中では自家用車を使用しにくくなってしまう.さらに若
年層では趣味の多様化により,自動車に対する興味が薄れているということも考えられる.これら
のことから,東京などの大都市は,公共交通が利用しやすいが,自家用車を所持・使用しにくい環
境である.
ここでいくつかの新たな公共交通手段の例を紹介する.第一の例で,東京都には,東京臨海新交
通臨海線,通称ゆりかもめがある.これは AGT(Automated Guideway Transit) という交通シス
テムを取り入れている.AGT とは,ゆりかもめの車両が自動運転により専用の走行路を走行する
旅客輸送システムである.このシステムは,兵庫県神戸市の神戸新交通株式会社が運営するポート
アイランド線,海外ではシンガポールの SMRT トレインズが運営するものがある.このシステム
を導入する利点として,ゴムタイヤを使用しているため,走行による外部への騒音や振動が少な
い.また摩擦力の大きさを活かした急勾配路線と過密な都市内や幹線道路上にも高架橋などを建
設することが可能であるなどが挙げられる.第二の例で,複数の他人とともに特定の車を利用しあ
う,カーシェアリングがある.カーシェアリングはレンタカーとは違い,ごく短い時間の利用を想
定しており,買い物などの少しの時間車を利用したいときに便利である.カーシェアリングには,
大都市において空きの多い駐車場を有効活用する利点もある.そしてこのようなシステムは,現在
普及しているスマートフォンのアプリケーションと連携している.このように大都市では,路線バ
スや鉄道のような従来の公共交通手段と,AGT やカーシェアリングなどのような新たな公共交通
手段を効果的かつ効率的に利用されている.それにより,移動の際に困っている人,すなわち交通
弱者が発生しにくくなっている.大都市では特に公共交通手段が必要不可欠の存在となっている.
しかし地方都市では,交通の利用実態が大都市と大きく異なっており,公共交通離れが深刻化し
自家用車の重要性が高くなっている.図 1.1 によると,地方都市圏において,自家用車の利用率が
高い状態で推移しており,平成 17 年の平日では約 60 %,同年の休日では約 70 %であった.また
自家用車の利用率が昭和 62 年から年々高くなっていた.一方で,鉄道と路線バスなどの公共交通
手段の利用率が低い状態で推移しており,平成 17 年では平日休日ともに約 2 %であった.また三
大都市圏と比較すると,三大都市圏における公共交通手段の利用率が約 3 倍であった.公共交通手
段,特に路線バスの衰退は,近年の自家用車の急激な普及等による利用者の大幅な減少により,不
採算路線が減便・廃便されることで利用しにくくなり,さらなる利用者の減少を招くという形で進
んできたことに由来すると考えられる.この背景には,平成 14 年における道路運送法の改正があ
る.この改正は,乗合バス事業における需給調整規制の廃止,すなわち規制緩和により,新規事業
者の参入,利用者ニーズに応じた運賃,サービスの多様化が進んだ.一方で,交通事業者の意思の
みで路線廃止が可能になったため,地方都市における過疎化や自家用車の普及により不採算路線
の減便・廃便に拍車がかかることになった.これらことから,地方都市では,路線バスの減便・廃
便により路線バス事業のサービス低下が起こり,人々の交通手段が路線バスから自家用車に移り,
更なる路線バスにおける不採算路線を生み出すことになるという,悪循環に陥っている.このよう
な悪循環は,全国の地方自治体において共通の問題となっている.また地方都市では,自家用車を
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使用・所持できないなどの理由で移動に困っている高齢者や年少者などいった,交通弱者が多い傾
向にある.交通弱者にとって,公共交通手段の必要性は非常に大きいが,上記したような悪循環に
陥っている現状のため,交通弱者の公共交通手段に対する不満が大きくなっているという問題も発
生している.そして交通弱者による経済活動が縮小されていることはほぼ自明なので,地方都市に
おける公共交通手段の減少は大きな問題である.
函館においても,例外ではない.図 1.2 は,函館市における,平成 15 年から平成 23 年までの 1
日あたりの交通機関別利用数の推移を示すグラフである.
図 1.2
函館市における、1 日あたりの交通機関別利用数の推移
図 1.2 によると,交通全体において自家用車の利用率が約 80 %を占めている.また路線バスな
どの公共交通機関の利用率が低い状態で推移しており,約 20 %になっている.これらも,上記し
た悪循環によって発生していると考えられる.一方で,函館の公共交通手段の事業の縮小も現在発
生している.路線バスでは,不採算路線を廃便されている.主な廃止路線として,函館駅前−ガス
会社前, ガス会社前−五稜郭駅前,松風町−宝来町などがある.路面電車においても同様である.
主な廃止路線として,五稜郭駅前−五稜郭公園前−函館どつく前,湯の川−松風町−函館どつく
前,湯の川−ガス会社−函館どつく前,五稜郭駅前−函館駅前−函館どつく前がある.路面電車の
五稜郭駅線すべては開業から約 20 年で廃止されてのである.ところで函館は観光事業を主要産業
として捉え,発達してきた街である.人々が観光する場合においても,公共交通手段は非常に重要
な存在である.そして観光客の,利用する公共交通手段に対する評価が少なからず観光事業に影響
していると考えている.図 3 は,函館に訪れた観光客の感じている不満を示すグラフである.
図 1.3 より,函館に訪れた観光客の感じている最も大きい不満は市内移動手段に対してであり,
約 50 %であった.また函館に訪れる観光客の数は年々減少している.すなわち函館に訪れる観光
客の,公共交通手段に対する不満が,少なからず函館に訪れる観光客の数に影響していると考えら
れる,これらのように,公共交通の問題は他の問題に影響していることから,適切な問題解決手段
を提案することが求められている.
地方都市の公共交通機関は.こうした現状から脱却しようと努力している.ここでは地方都市が
実施している交通問題の解決策の例をいくつか挙げる.第一の例では,利用者の要求に応じて運行
するデマンドバス,もしくはコミュニティバスがある.これは,収益が減少したことにより,路線
バスの数が減少した地方で多く利用されている.利点としては,利用者の要求を通信手段によって
事業者に伝え,要求に応じてバスを運行することから,利用者の要求に応えやすいシステムであ
ることである.第二の例では,富山県富山市には,次世代型路面電車システム,通称 LRT (Light
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図 1.3 函館に訪れた観光客の不満だった点
Rail Transit) がある.近年,日本全国において路面電車は減少傾向にあった.自家用車の普及と,
路線バスなどの他の公共交通への転換があったためである.そのような状況下で,このシステムは
道路交通を補完し,人と環境にやさしい公共交通として再評価されている.LRT は,軽量化され,
加速性・快適性などを高め,乗客の乗降がしやすいように超低床化された路面電車を使用したもの
である.地盤面の鉄軌道を走行するため,建設・導入コストが比較的安い.また超低床車両なの
で,高齢者・障害者にも乗降がしやすくなっている.LRT は西洋諸国を中心に普及している.第
三の例では,年少者に対して,公共交通の適切な利用法を教える学校教育がある.これは,人々が
日常生活の中で適切に公共交通と付き合えるような考え方を身に着けることができる手法である.
各公共交通機関は,交通市場の競争化やサービスの多様化が進む中で,利用者の要求に基づいた,
様々な工夫で利用者を獲得しようと努力している.
1.1.2
目的
本プロジェクトは利用者の要求に基づいた交通手段を提案することが大きな目的だと捉えてい
る.ICT を利用し,函館市民にとって不便さと非効率性を削減した,新たな交通手段を提案する.
その新たな交通手段を利用することにより函館市民の移動の流れがよくなり,日常生活の中のあら
ゆる活動をより活発に行えるような環境を設けることで,函館市民の将来がより豊かになっていく
と考えている.そこで本プロジェクトは上記の新たな交通手段を提案するために調査を行い,新た
な交通システムを製作すべきという考えに至った.
(文責: 生駒敬一)
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1.2
1.2.1
調査班
背景
本プロジェクトでは上記した目的のために,函館市の交通における本質的な問題を発見するため
に調査を行うことにし,調査班(グループ C)を結成した.
調査を行う背景としては,公共交通手段の路線バスと路面電車においてだけでも多くの問題を抱
えていると考えられる.例えば,函館の路線バスは全体的に到着時刻が遅れる傾向にある.その要
因の一つとして,函館市民が地域に幅広く住んでいることが挙げられる.それにより,路線バスが
担う地域が広くなり,利用者である函館市民の要求に応えきれなくなってしまう.路線バスにかか
わる別の問題として,冬における路線バスの到着時刻が遅延してしまうことが挙げられる.その要
因の一つとして,函館をはじめとする北海道・東北の地域では例年の冬に雪が降る.雪により凍結
した道路を車で走行するのは危険である.凍結した道路では,路線バスは他の季節より走行速度を
減少せざるを得ない.その結果,冬において,路線バスの到着時刻が遅れてしまい,利用者の不満
につながってしまう.次に路線バスと路面電車では,運賃を一律にしていないことが問題とされて
いる.上記したように,函館は観光事業を主要産業と捉えている.函館市と同じように観光事業を
主要産業として捉えている京都市では,路線バスの運賃を一律に設定している.それは,観光客が
交通情報不足によって,観光地に対して不満・低評価をしないようにする配慮からである.他の観
光地でも同様の対処を取っているので函館でも取り入れるべきだが,運営団体はその対処に対して
消極的であるように考えられる.本プロジェクトはこのような事象が起こる原因を把握できてい
ない.
ところで国土交通省都市・地域整備局・都市計画課都市計画調査室が平成 22 年に発行した『都
市・地域総合交通戦略及び特定の交通課題に対応した都市交通計画検討のための実態調査・分析の
手引き』によると,施策群の実施が目標値の達成にどの程度寄与するかを見極めることが求められ
ており,それには,現況分析に基づき,実施予定の施策群の効果や利用者ニーズに対応する目標水
準を踏まえた上で,定量的に数値目標が設定されることが必要であるとされている.このことから
調査の重要性が伺える.
1.2.2
目的
調査班は函館市の交通をよりよいものにするために,市民がどのようなことを交通手段に求めて
いるのかを探ることを目的としている.本プロジェクトは上記したような公共交通における問題が
どのような位置づけの問題なのか,この問題を解決することが交通問題全体に対して有効なのかを
まだ知らない.一方で,上記したように,函館をはじめとする地方都市の人々は自家用車を頻繁に
使用する傾向にある.他の調査・研究から,自家用車を頻繁に利用する要因としては,公共交通手
段のサービスの低下が主に挙げられている.しかし函館の街中には,函館バス株式会社が運営する
路線バスと函館市企業局交通部が運営する路面電車がある.函館市民が乗用車を購入する主な要因
が公共交通手段のサービスの低下ではないように考えた.調査班はこうした複雑,かつ漠然とした
問題が多く存在するので,利用者が路線バスなどの公共交通手段に対してどのような不満を感じて
いるかを認識する必要があると考えた.
そこで函館の交通が抱える本質的な問題と問題を発生させる要因,各要因の関連性を調査するこ
とにした.その理由は函館の交通が抱える本質的な問題が判明すると,関連する多くの諸問題を一
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Future Public Transportation for Hakodate City
度に捉えることができ,函館の交通問題を一気に解決することができるからである.また問題の要
因と,要因同士の関連性が判明すると,問題解決手段を構想しやすいからである.
1.2.3
先行研究における調査の現状
そこで調査班は,以前の交通に関するプロジェクトを行ったグループと,交通機関の調査実態を
調査することにした.この調査の目的は,先行研究や実例から具体的な交通に関する調査方法を学
ぶことである.このような目的を設定した理由は,本プロジェクトが交通問題に対して,適切かつ
効果的な調査を実施でき,利用者の要求に基づいた新たな交通手段を提案できると考えたからであ
る.調査対象として,2012 年度の「10 年後の函館の公共交通をデザインする」プロジェクトと,
地方都市の路線バスの運営団体の調査方法に設定した.そこから調査方法を抜き出した.
2012 年度の交通に関するプロジェクトでは,函館市路面電車の調査グループと路線バスの調査
グループの二つに分かれていた.そしてフィールドワークと,Web や書籍による文献調査が主で
あった.フィールドワークでは,調査者が現地で評価対象を直接観察する手法をとっていた.実際
にそれぞれ函館市路面電車と路線バスに乗車して,自身が気づいた点をノートに記入していた.そ
して気づいた点をスライドにまとめ,プロジェクトのメンバーと情報と意思の共有をしていた.ま
たその際に,絵や図を描き,写真を撮り,自身の感じたことを振り返られるようにしていた.Web
や書籍による文献調査では,フィールドワークで気づけなかった点を他の地域の事例から抽出し
まとめていた.一方で,地方都市の路線バスの運営団体として,静岡県湖西市の取り組みを調査し
た.湖西市は地域公共交通総合計画の一環として,バスの満足度についてのアンケート調査を利用
者に対して実施していた.
この結果を考察したところ,それぞれの調査からいくつかの問題点が判明した.まず昨年度の交
通に関するプロジェクトの調査における問題点から述べる.フィールドワークでは,実施する前に
あらかじめいくつかの仮説を用意していないようである.これにより,気づける情報量が少なく
なってしまうと考えられる.また直接観察の手法をとったため,路線バス利用者の意見・評価をあ
まり得られなかったと考えられる.文献調査では,フィールドワークで気づけなかった点に焦点を
当てて Web や書籍を調べていたため,適切な調査を行っていたと言える.次に湖西市の路線バス
運営団体の調査における問題点を述べる.アンケート調査では,自由記述が少なかったため,仮説
を綿密に行わなければ,路線バス利用者の意見・評価が生かされにくいと考えられる.二つの調査
実態を調査・考察してみたが,路線バス利用者の意見・評価を正確に得られていないように考えら
れる.
そこで,利用者である函館市民が公共交通手段に対してどのような不満を感じるのか,公共交通
手段に対してどのようなことを求めているのか,を主軸に仮説を立てる必要がある.そして立てた
仮説を検証することを視野に入れ,アンケート調査用紙を作成する.加えて,利用者の率直な意見
を取り入れることができるように,インタビュー調査や自由記述ができるアンケート調査を実施す
る必要がある.
(文責: 生駒敬一)
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Future Public Transportation for Hakodate City
第 2 章 プロジェクト全体の目標
2.1
問題の設定
ここで設定する問題とは,函館市民が函館の交通に対して不満を抱いている原因となるものであ
り,プロジェクトの課題を設定する前に,現状の函館の交通における問題点にはどのようなものが
存在するのかを把握する必要がある.1章で記述されている通り,現状の函館の交通には様々な問
題が潜んでおり,これらの問題を一つ一つ解決していくことは容易なことではない.そこで,私た
ちのプロジェクトでは手始めにプロジェクトメンバー全員でブレインストーミングを行い,函館の
交通に関するキーワードを絞り込んだ (図 2.1 参照).
図 2.1
函館の交通に関するポストイット
このブレインストーミングでは,函館の交通手段や影響するもの,さらにどのような解決手段が
あるかなど,それぞれのキーワードをグループ化することで可視化していった.そのキーワードを
基に,公共交通において重要な問題と思われるキーワードをグループメンバー各々で設定し,函館
の交通をより良いものにするためのオピニオンシートを作成した.このオピニオンシートでは,例
えば,
「エンターテイメント」をキーワードとし,AR 技術を使用してバスの中を仮想現実空間にす
ることでバスに付加価値をもたらし,観光客を増やすことや,
「施設の分散」をキーワードとし,函
館市の商業・観光・工業施設が分散していることを問題点としてあげ,超小型自転車「A-bike」な
どを函館市に導入し輪行を増やすことで,感覚的に函館市をコンパクトするという案が得られた.
これらのオピニオンシートをプロジェクトメンバー及び担当教員と合わせて発表形式で議論し,そ
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Group Number 7
Future Public Transportation for Hakodate City
れぞれの考案したものの良い部分と悪い部分を明確化した.プロジェクトメンバーが各々で制作し
たオピニオンシートはそれぞれ別の視点から函館の交通をアプローチしていたが,これらの意見を
合わせることでさらに強い案に結びつくと考え,そこで私たちはその中でも函館の交通の約7割が
車であることは他の地域と比べてみても車が占める交通量の割合が非常に高いという点に着目して
みた.この数値の裏には必ず何か函館市民には車が必要とさせる問題が潜んでいるのではないかと
仮設を立てた.
この仮説に対して予測される結果がいくつか存在する.まず一つ目に,函館市の公共交通に地下
鉄が存在しないことである.地下鉄が存在するのと存在しないのでは車を使用しない場合の交通の
利便性に大きく影響する.なぜなら地下鉄は他の交通手段とは別の路線を使用するからである.こ
のため,一般的に使用される道路(ここでは通常路線と呼ぶ)に影響されることなく,移動するこ
とができる.こんなにも利便性の高い公共交通がなぜ函館には存在しないのか.その理由は,函館
市が設備を怠っているのではなく,地下鉄の工事ができないのである.函館市は実のところ,地盤
がゆるく地下道を設置することができないのが現状である.
二つ目に,函館の地形は独特であり,坂道が多いことである.坂道が多いことで自転車などを利
用するときに影響が生じる.特に夏場では,坂道を自転車で移動していると汗をかいてしまう.汗
をかいた状態で人に会ったりお店に入ったりするのを拒む人は少なくない.このことが原因で自転
車という移動手段を選ばないという傾向にあると予測できる.
三つ目に,函館の公共交通の運行に問題がある.例えば函館バスの場合,時刻表の予定時間より
も遅れることが多々ある(ここでは低定時制と呼ぶ).函館バスが低定時制あることで函館市民は
バスが遅れる分だけそのバス停で待たなければならなくなる.バス停に屋根がない函館では,天候
が悪いときなどはなおバスを待っているのは大変である.函館バスがこのように低定時制であるの
は,函館の通常路線が時間帯によって混雑したりするためである.函館では前述にもある通り,交
通の 7 割が車であるため,通常路線での交通量が増え混雑するという結果になる.
これらの結果から,函館の交通の主体である車こそが函館の交通に様々な影響をもたらしている
のではないかと私たちは考えた.
(文責: 小嶋大樹)
2.2
課題の設定
ここでは,プロジェクト全体としての課題とその課題を設定するに至ったプロセスについて説
明する.ここでの課題とは,2.1 で設定した問題をどのように解決するかというものである.ま
ず,プロジェクトのメンバー全員で本プロジェクトのタイトルである「函館の未来を拓くトランス
ファー」にはどのような意味が込められているのかを考えるところから始めた.ここで重要なのが
「トランスファー」という言葉は何を表しているのかということである.「トランスファー」とはモ
ノを移動する等の意味があるので,乗り物などを想像するのが一般的である.しかし,このタイト
ルで使われている「トランスファー」とは,人を動かすもの,すなわち,必ずしも乗り物とは限ら
ないのである.私たちが定義した「トランスファー」とは,人々の移動手段を選択させているもの
である.なぜ函館市民の多くが車という移動手段を選択しているのか,この車という移動手段を選
択させているものこそが「トランスファー」である.このような考えから,本プロジェクトでは,
未来の函館市民がよりよい移動手段を選択させるシステムやコンテンツの提案及び制作を行うこと
を目標に設定した.
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ここからはプロジェクトの課題解決に用いる各班(調査班・システム班・コンテンツ班)の既存
技術及び習得技術,関連する講義について説明していく.
調査班では,調査の計画・実施・分析を行う.そのための関連する講義としては,主に全コース
共通の認知心理学や情報デザインコース専攻の実験・調査データ解析があげられる.認知心理学
は,人間の認知過程を目に見える行動の系統だった観察から出発して,科学的に解明しようとする
学問であり,ロボティクスや脳科学などと隣接しているものである.今回の本プロジェクトは,こ
のような認知心理学からの研究はしていないが,t 検定などの基本的な統計知識や,研究という概
念そのものを理解できる点において参考になった.また,実験・調査データ解析の講義は,確率・
統計学や認知心理学で学んだ基本的な確率及び統計法を現実のデータ分析に適用できるような実践
的な技術をつける講義であり,実際にデータを収集し,そのデータをフリーの統計ソフトなどを用
いて分析することにより,実用的なデータ解析の手法を学んだ.この講義はフリーの統計ソフトに
R 言語を用いた.
次に,既存技術としては関連する講義で学んだ知識,具体的には基本的な統計法や R 言語などの
統計ソフトである.R 言語とは,ATT ベル研究所が開発した S 言語を参考にしており,グラフィ
カルな出力には向いてないが,CUI と GUI の両方がパッケージによって使えたり,JDBC との連
携が取れたりとパッケージが充実しており,フリーの統計ソフトとしては非常に優れている.習得
技術としては,残差分析方法やアンケートの作成方法,また,有料の GUI ソフトウェアの SPSS
の使用方法などである.残差分析とは,カイ 2 乗検定で求められた統計結果をさらにどの部分の
誤差が有効であるかを明確化することができ,両側検定による残差分析の有意確率は,| r | >
2.58 ならば,p <.01,| r | > 1.96 ならば,p <.05 となる.アンケート作成方法は,「社会調
査工房オンライン」(甲南大学文学部社会学科)のサイトに記載されているアンケート法を参考に
し,アンケートを作成する手順や作成するときの注意点などを学んだ.また,SPSS は IBM が開
発した Microsoft 社の表計算ソフト Excel をさらに統計用に作成されたようなソフトで,アンケー
トデータを始め,顧客購買データ,医療データなど,「人」に関する様々な「データ」をより簡単
に,より深く分析するためのサポートツールである.
システム班は,モバイルアプリの企画・実装・テストを行う.そのための関連する講義としては,
主にソフトウェア設計論やデータベース工学があげられる.ソフトウェア設計論は,ソフトウェア
開発プロセスの実際や,詳細設計・実装・テストのフェーズを中心に,チームプログラミングに必
要な技術や手法を学ぶ.また,データベース工学は,情報の論理構造と物理構造の違いを認識し,
その違いを支える仕掛けの原理を理解するとともに,大量の情報を蓄積・検索・管理するシステム
の設計・利用法を習得できる.この講義は,SQL でのコードの使用方法も学ぶことができる.
次に,既存の技術としては,PHP やデータベース工学で学んだデータベース技術である.今回
本プロジェクトの制作物として Android アプリの開発を行ったため,その Android デバイス間の
通信にはサーバが必要であった.そのため,サーバ側のプログラミングとして PHP で記述したも
のを設置し,MySQL でサーバの情報の取得・挿入を行い,通信を実現した.また,習得技術は主
に,Android 開発言語 (XML・Java) を中心に学び,チームメンバーとの共同開発のため,OSS セ
ミナーで紹介されていた Redmine(図 2.2 参照) や Git を使用した.Redmine は Ruby で開発され
た Web を活用するプロジェクト管理ソフトウェアである.これを使用することでチケットを発行
しての個々人の進捗及びガントチャートを利用しての全体の進捗を管理することができ,設計段階
と現地点での進捗の比較を容易に管理することができる.また,Git はバージョン管理の一つであ
り,リポジトリに共同開発しているものを保管し,それをお互いに更新していくことで共同開発を
促進することができる.
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図 2.2
Redmine による進捗管理
コンテンツ班は,Web コンテンツの企画・実装を行う.このために関連する講義としては,主に
情報機器概論があげられる.情報機器概論は,コンピュータネットワークの基礎知識やマナーにつ
いて学習し,実際に HTML を用いて Web サイトを制作する講義である.
既存技術としては,情報機器概論で学んだ HTML や Adobe のベクトル描画ツールである
Illustrator でのデザイン技術である.Illustrator は,Web ページのボタンなどを画像ファイル
として作成するために使用した.また,習得技術としては,Web サイトを動的にするために
JavaScript(主に jQuery) を習得し,コンテンツとしては,タグクラウド及び TwitterAPI の取得
である.jQuery とは,オープンソースの JavaScript ライブラリの一つであり,jQuery を使用す
ることで,一般的な Web サイトで使用されているスライドショーやウィンドウの表示など,Web
サイトを簡単なコードで動的にすることができ,様々な機能を実現する豊富な対応プラグインが公
開されている.また,Web サイトで使用されているタグクラウドとは,利用率の高い単語のフォ
ントサイズを大きくし,逆に利用率の低い単語のフォントサイズは小さくする言語集団のことであ
り,今回は twitterAPI と連携することで,twitter のハッシュタグでつぶやかれた文章を本プロ
ジェクトで作成した Web サイトにリアルタイムで投稿し,その文章の中の単語をタグクラウド化
することで,閲覧者にどのようなことがつぶやかれているかを一目で理解できるようにした.
これら 3 つの班は,それぞれの専門的な技術及び既存技術の習得・活用をしたが,プロジェクト
全体で習得した技術も存在する.その技術はプロジェクトの進行に欠かすことのできないプロジェ
クトマネジメントである.私たちのプロジェクトは,1 年間を通してプロジェクトの上流工程 (企
画・設計等) から下流工程 (制作・実装・デバッグ等) の全ての段階を踏んだため,進捗管理の重要
性や,プロジェクト関係者の把握などを行い,プロジェクトマネジメントとは何かをするのか,ど
のような点を気をつけなければいけないのかを理解することができた.
(文責: 小嶋大樹)
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2.3
目標の設定
1 年間という限られた期間でプロジェクトを成功するには,プロジェクトの課題解決に関しての
到達目標を決める必要がある.未来の函館市民がよりよい移動手段を選択させるシステムやコンテ
ンツの提案及び制作を行うことには,そのシステムやコンテンツを制作する前の段階で,そのシス
テム及びコンテンツの有効性を評価できるようなデータが必要である.そのため,函館市全体で函
館の交通問題に関するアンケートやインタビュー調査を行い,函館市民がどのような点に不満を感
じているのか,またどのようにして移動手段を選択しているのかの函館市民の交通に対する意識調
査ができれば市民の声を直接聞くことができる.しかし,この方法ではあまりに時間や人的資源な
どのコストがかかりすぎるため,1年間のプロジェクトには不向きである.
そこで,函館のある一つの地域に暮らしている人々を調査対象者とすることで,その地区の交通
の特徴と函館に共通する特徴を明らかにすることができると考えた.また,この一部の地域の人た
ちの函館の交通に対する意識を変えることができれば,函館全体の交通に対する意識も変えること
ができる一つの有効性のあるデータとなる.そのため,私たちは調査対象者を身近である公立はこ
だて未来大学の学生や教員とし,未来大生及び教員の交通事情とそこに潜む問題点を調査すること
にした.そして,その得られた調査結果より,未来大生がよりよい移動手段を選択させるシステム
やコンテンツの制作を行うところまでをプロジェクト全体の目標として定めた.
(文責: 小嶋大樹)
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第3章
3.1
調査における課題解決のプロセス
具体的な手順と課題の設定
下記のリストは調査班における課題解決の具体的な手順を各月ごとに記載したものである.5 月
から 7 月までが前期の活動であり,8 月から 9 月はプロジェクトの休暇期間である.また,10 月
から 12 月は後期の活動である.
5月
キーワード絞り込み,調査計画
函館の交通の問題点を発表形式で議論を行い,函館の公共交通問題とその解決策を考える
糸口となるキーワードを絞り込んだ.その結果,人々の交通行動を調査し,公共交通に対す
る問題意識を明確化する必要があるということが明らかになった.しかし,函館市民全ての
交通行動を調査するとなると,莫大なコストと労力を要す為,まずは身近な未来大関係者の
交通行動を調査することとし,調査計画書を作成した.バス・車・徒歩の利用実態は,未来
大生の 1 年生から 4 年生 226 名に対し 10 分程度のアンケートで調査を行うこととした.自
転車の利用実態は,未来大の教員 4 名・学生 4 名に対し,40 分程度のインタビューで調査
を行うこととした.
6月
調査用質問項目の作成,実行,分析・考察,提案のアイデア出し
アンケート・インタビューに使用する質問項目を作成,実行した.アンケートは「環境と
産業」,
「技術者倫理」の講義時間の一部を借りて行い,インタビューはインタビューイに指
定された時間に行った.調査を行った後は分析と考察の作業に移行した.アンケートデータ
は,SPSS や R 言語を用い,カイ二乗検定の結果を残差分析することによって,どこに特徴
があるのかを明らかにしてから考察した.インタビューデータは,音声データを文字起こし
し,要約・分析してから考察した.考察を行った後は,後期に行う提案に向けてのアイデア
出しを発表形式の議論で行った.
7月
中間発表会に向けての準備
中間発表に向けて,前期のプロジェクトの活動をスライドに整理した.それを基に,中間
発表で使用するスライドやポスターの作成を行った.中間発表用のスライドは Google ドラ
イブのプレゼンテーションサービスを使用した.また,ポスター制作には Illustrator を使
用した.推敲・訂正作業を繰り返し行った後,プロジェクトメンバー全員で発表練習を行
い,中間発表会に臨んだ.
8 月・9月 後期の活動に向けての準備
本プロジェクトは,2 ヶ月間の休暇を取り,プロジェクトの進行は行わず,各々は他の活
動 (インターンシップ等) に専念するようにした.他の活動で技術を身につけることで,後
期の活動に生かすことができるためである.また,前期の活動を踏まえ,後期に必要となる
であろう技術や知識を見つけ,各自習得することを課題に設定した.
10 月 提案物の考案,調査計画
システム班とコンテンツ班が制作するための提案物の考案を調査班も含め行った.これは
システム班の制作物とコンテンツ班の制作物の制作する目的を統一し,プロジェクト全体の
課題を解決する一つの目標からそれぞれの班が離れないようにするためである.また,前期
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の調査結果より,提案物の有効性を評価しながら,活動した.この提案物の考案には様々な
ものが意見として出された.
システム班の当初の提案物は未来大生のための乗り合いタクシーを支援するシステムで
あった.これは,タクシー会社と契約し,通学時に同じ目的の場所に移動する学生同士を安
価で相乗りを支援するシステムである.しかし,このシステムの実現にはタクシー会社の契
約を確立することが前提となり,残り 2 ヶ月の間では不可能であると考え,提案を破棄し
た.そこから実現可能性の高い学生ドライバーに注目し,学生同士の相乗りを支援するシス
テムが考案され,システム班の制作物に決定した.コンテンツ班においてもバス停のデザイ
ンやパンフレットの作成,函館の交通の週刊誌の発行など様々な意見が出されたが,最終的
には Web コンテンツで未来大入学予定の学生に情報を与えることで意見が固まった.
これら 2 つの制作物の有効性の評価と付加価値として必要となる機能を探り,システムの
利便性の向上を図るべく,調査班では,調査を実施することとした.今回の調査では質的調
査より量的調査の方が有効であると考え,アンケート調査の実施を計画した.
11 月 調査用質問項目の作成,実行,分析・考察
今回のアンケート調査では,システム班とコンテンツ班の 2 つの制作物についての有効性
の評価や付加価値として必要となる機能を探ることを目的とし,質問項目をそれぞれ仮説を
立てながら作業を進めた.また,今回はこの 2 つの制作物のターゲットユーザーが異なるた
め,システム班用のアンケートの調査対象者を主に未来大生の 3 年生とし,コンテンツ班用
のアンケートの調査対象者を未来大生の 1 年生とした.調査結果を集計し,分析した.分析
方法は前期と同様に R 言語を用いてのカイ二乗検定である.
12 月 最終発表会に向けての準備
最終発表に向けて,1 年間を通してのプロジェクトの活動を振り返った.最終発表ではシ
ステムとコンテンツの制作物のデモンストレーションを兼ねて行うため,発表形式や時間配
分を厳密に設定した.調査班は 5 分間のスライド発表を行うため,スライドの作成を前期と
同様 Google ドライブのプレゼンテーションサービスを用いて行った.スライド発表には時
間が 5 分と限られているため,調査の分析内容を簡略化し,提案物に対しての有効性やプロ
ジェクト学習の全体の流れを中心的にスライドを制作した.発表の時間に説明できない調査
結果や分析内容をメインポスターにまとめ,質問がきた時にポスターセッションする体制を
整えた.今回はポスターは Google ドライブのプレゼンテーションサービスを使用して作成
した.
(文責: 加藤亨輔)
3.2
班内における課題の割り当て
下記のリストは調査班のメンバーそれぞれに割り当てられた課題について記述したものである.
加藤 亨輔
プロジェクト全体ではタスク管理を徹底して行った.中間発表に向けての必要な機材や
発表場所を指定する提出物の期限をプロジェクトのメンバーが逃さないように随時報告し,
プロジェクト全体の大きな失態を未然に防ぐ役割を担った.また,調査班としては,Office
Word のソフトを使用しての資料の作成やアンケート用紙の大量印刷,Excel を使用しての
アンケート用紙の集計を積極的に行うなど,事務的なタスクを得意としていたため,それら
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を中心に受け持った.その他にも,担当教員と積極的にアポイントを取り,担当教員に自分
の主張を伝え,その考えに対しての意見をもらうことで,アンケートの質問項目の質を高め
ていった.
生駒 敬一
プロジェクト全体では論文や図書館の資料から函館の交通に関する情報の収集を行い,プ
ロジェクトメンバー全員の知識共有を促した.また,調査班としては,アンケート調査時に
調査対象者にアンケートの説明を行うなど調査の進行を積極的に指揮した.調査以外にも大
量の情報をまとめる能力を生かし,他の班と情報の共有や発表会に向けての取りまとめを
し,最終発表時に使用するスライドなどの作成も手がけた.
小嶋 大樹
プロジェクト全体では PHP や javascript など技術的なサポート係りとして担った.ま
た,調査班としては,アンケートの調査結果を SPSS や R 言語を用いて,カイ二乗検定の
結果を残差分析することによって,どこに特徴があるのかを明らかにしてから考察した.そ
して,その結果をグラフにまとめて視覚化した.
(文責: 加藤亨輔)
3.3
課題解決の方法
調査班の課題とは,市内における函館市民の移動を活性化するために,函館市民にとっての不便
さと非効率性を削減した,新しい交通手段を作成するための情報を収集することである.調査の方
法としては、大きく分けて 3 つであり,本プロジェクト内における意見交換,各交通手段の利用者
に対するアンケート調査とインタビュー調査,それぞれの補足となる情報を得るための文献調査で
あった.
まず最初に本プロジェクトでは,函館の交通の本質的な問題点とは何かを考える為に,議論を重
ね,函館の公共交通問題とその解決策を考える糸口となるキーワードを絞り込んだ.その際に,ブ
レインストーミングと KJ 法を用いた.ブレインストーミングとは,集団でアイデアを出し合うこ
とによって相互交錯の連鎖反応や発話の誘発,自由な発想を促す議論技法である.KJ 法とは,ブ
レインストーミングなどで発生したアイデアやフィールドワークなどで得た情報を,関連する事柄
ごとに分類し考察していく技法である.また本プロジェクトのメンバーごとに自身の考える交通問
題とその対策に関する意見書を作成した.ここでは,AR 技術を用いた公共交通手段におけるエン
ターテイメント性や路線バスの車両のデザイン,函館バスのバスロケーションの改良,バス停に路
線バスの接近情報を伝える電子媒体の設置,小学生などの若年層に対する交通教育などが挙がっ
た.そして本プロジェクトはこれらの各人の意見を考察した.考察した結果,結論としてまず函館
市民の交通行動を調査し,公共交通に対する問題意識を明確化する必要があると考えた.それは各
人の考える交通問題は客観的な考察によって裏づけされたものではない上に,対策についても実現
性と有効性の面で問題を抱えるものであった.またどの問題が重要視されるべきなのか,他に重要
な問題があるのではないか,などといった疑問が出たからであった.
次にアンケート調査とインタビュー調査の手順としては,仮説を立て,調査を実施し,調査結果
を考察する流れを基本とした.少しでも多くの問題を発見するために,新たな仮説が考えられた場
合,すぐに調査計画に組み込んでいった.質問項目を作成する際に,自由記述を多くすることによ
り,回答者の率直な意見・評価を得られるようにした.調査対象としては,はこだて未来大学の関
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係者に設定した.アンケート調査結果は,統計解析ソフトウェア SPSS と統計解析向けのプログ
ラミング言語である R 言語を用いて,それぞれ仮説を検証された.調査した結果と考察では,グ
ラフの作成や写真撮影,図解の描写による視覚化を行い,オンラインストレージサービスである
DropBox において必要な情報をすぐに確認することができるような体制を作った.
前期の調査の課題としては,まず一般的な交通に関する情報の収集とはこだて未来大学生は交通
手段に対してどういったことを考え,その交通手段をどのような基準で選んでいるのかを調べた.
自家用車,路線バス,自転車の三つの交通手段に区分して調査の計画を立てた.そして,現時点で
の交通手段に対する考えにはどのようなものがあるのを明確化することによって,後期における製
作物に対しての足がかりにしようとした.
前期のアンケート調査では,通学時における自家用車,路線バスの二つの交通手段の利用実態を
主軸に質問項目を作成した.調査対象は大学生 226 人であった.ここで主な各質問項目の意図を
述べる.Q1 では,自家用車を使用しているかを問う質問である.Q2 から Q8 は,自家用車を使用
する人を対象とする質問である.Q2 では,自家用車の所持し始める時期を明確化することにより,
どの時期において自家用車を所持するのを防ぐかを考えることである.Q5 と Q6 では,公共交通
と比較して便利な自家用車を使用している人が,自家用車に対して不満を感じている点を探ること
により,公共交通手段によりその不満を解消することはできないかを考えることである.Q8 では,
自動車を使用することで感じているメリットを明確化することにより,公共交通手段にどのような
機能をつけるべきかを考えることである.Q9 から Q14 は,主に路線バスを利用する人を対象と
する質問である.Q10 と Q11 では,路線バスなどを利用している現状において自動車を所持した
い原因を明確化することで,路線バスに抱えている問題と自動車の魅力を考えることである.Q13
では,路線バスの目線から,自動車を持つことのデメリットを考えることである.Q15 から Q20
は,全ての回答者を対象とする質問である.Q15 では,路線バスをはじめとする公共交通手段の利
用実態を明確化することである.Q16 と Q17 では,路線バスに対するマイナスイメージを明確化
することにより,路線バスの抱える問題を考えることである.Q19 では,路線バスを便利に利用で
きるようにする新しい IT システムはどのくらいの利用者に認知されているかを明確化することに
より,便利なシステムの情報の行き渡り方を考えることである.Q20 では,各交通手段を利用して
いる人の柔軟な考え方から,路線バスに潜む問題を IT でどのようにして解決できるのかを考える
ことである.次に主な検証すべき仮説について述べる.自家用車を所持している人は路線バスを利
用しなくなることを Q1 と Q15 の相対性から導き出す.回答者は路線バスにマイナスイメージを
持っていると自動車を所持したくなることと,路線バスに対してマイナスイメージを持っていない
にもかかわらず自動車を所持したいと思っていることを Q10 と Q16 の相対性から導き出す.
前期のインタビュー調査では、自転車の利用実態を主軸に質問を考えた.調査対象は大学生 4 人
と教員 4 人であった.盛んに自転車を使用する人とそうでもない人でそれぞれ半分に分けた.イン
タビューの様子を録音して文字に直して分析できるようにした.
後期の調査の課題としては,前期の調査結果より考案された各システムの潜在需要とどのような
機能をつけるべきかを調べる.システム班(グループ A)の作成する相乗り支援システムとコンテ
ンツ班(グループ B)の作成する交通情報提供 Web サイトのそれぞれの目的に区分して調査の計
画を立てた.後期ではアンケート調査のみであった.
後期における,相乗り支援システムの潜在需要のアンケート調査では,はこだて未来大学生の通
学時における自動車の利用実態と本システムの潜在需要を調査した.アンケート質問項目の作成時
において、回答者であるはこだて未来大学生が回答しやすいように、本システムの具体的な実用場
面を提示することにした。本システムは未実施であるため、回答者にとって、本システムの目的と
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図 3.1
図 3.2
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アンケート調査の様子
インタビュー調査の様子
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有効性、実用場面を想像しにくいと考えられるからである。前期のアンケート調査結果から、自家
用車を所持している人の多くは学部三年生であったので、学部三,四年生 58 人を対象にした。こ
れは本システムを持続的に運営していく場合、本システムの要である学生ドライバーの意見・評価
が必要不可欠であると考えたからである。ここで主な質問項目の意図を述べる.Q1-1 と Q1-2 は,
本システムの元となる SNS の機能の利用実態を明確化する.Q1-3 は,通学時に自家用車を使用し
ているか,していないかで区分する質問である.Q2-1 から Q2-11 では,学生ドライバーに対して
相乗りに関することを尋ねる質問である.Q3-1 から Q3-9 は,自動車を所持・使用していない人
が相乗りに対してどのようなことを感じているかを尋ねる質問である.Q2-1 と Q3-2 では,現状
において学生間で相乗りが行われているかを明確化する.Q2-3 では,学生ドライバーが自家用車
に友人を乗せることに抵抗を感じるかを調べ,本システムが持続的に運用されるかを明確化する.
後期における,交通情報提供 Web サイトの潜在需要のアンケート調査では,はこだて未来大学
生が交通手段の利用の際における情報の重要性とどのような情報が必要であるかを調査した.交通
情報は見知らぬ土地に新しくやってきた人に対して行き渡りにくいものであると考えたので,調査
対象は大多数を学部一年生とし,合計 122 人とした.ここで主な質問項目の意図を述べる.Q1 で
回答者を各交通手段ごとに区分し,Q2 でその交通手段を選択した理由を明確化する.Q9 は,現
状における交通関連の情報の獲得の方法を明確化する質問である.Q12 と Q13 では,大学入学前
に知りたかった情報を明確化することにより,どのような情報を提供すべきかを考える. 全体の
課題としては,はこだて未来大学生が交通手段に対して何を要求しているのかを明確化することで
あった.さらに疑問を持つと先行研究の論文や報告書を調査し,知識獲得に努め,本プロジェクト
の製作するシステムを利用者にとって有益なものとなるようにした.実際に用いたアンケート調査
項目を資料1に示す.
(文責: 加藤亨輔)
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第4章
4.1
分析と考察
分析
前期は,公立はこだて未来大学の学生及び教職員を対象に,交通に関する実態調査を行った.調
査は,アンケートとインタビューによって行った.アンケート調査では,未来大生 226 名 (1 年生
22 名,2 年生 119 名,3 年生 76 名,4 年生 8 名) を対象に行い,インタビュー調査では,未来大学
の教員 4 名 (自転車ヘビーユーザー 2 名,ライトユーザー 2 名),学生 4 名 (自転車ライトユーザー
2 名,車ユーザー 2 名) を対象に 30 分から 60 分程度で行った.
図 4.1
バスにマイナスイメージを感じるか (n=226) 図 4.2 バスのマイナスイメージを感じる点 (n=226)
上記の図 4.1 と図 4.2 は函館バスに対してのマイナスイメージに関する結果を表している.図 1
は未来大生の中でバス通学者とそうでない学生の函館バスに対してマイナスイメージを感じている
かどうかを表したものである.図 4.1 より,バスを利用している未来大生の中で函館バスに対して
マイナスイメージを感じている人の割合は 67 %であった.また,バス通学者ではない未来大生の
中でバスにマイナスイメージを感じている人の割合は 47 %となっている.2 つことから,実際に
函館バスに乗って未来大学へ通う学生は何らかの理由で函館バスに不満を感じているのではないか
と予測できる.
また,図 4.2 では未来大生の中で函館バスに対してどのような点に不満を感じているかを調査し
た結果を表したものである.この図から未来大生は函館バスの本数が少ないことに不満を感じてる
人が一番多いことがわかる.実際に未来大に向かう函館バスの本数を確認してみると,バスが時刻
表には 30 分間隔が多く,時間帯によっては次のバスが来るまで 1 時間以上もかかることがある.
これは,未来大生が大学へ通学する際に 1 つのバスを乗り過ごしてしまうと講義に間に合わない可
能性があることが考えられ,それが原因で未来大生の不満に繋がっていると考えられる.また,時
間通りにバスが来ないという不満も多かった.2 章にも記述されている通り,函館バスが低定時制
あることで,バス停で待つ時間が長くなってしまい,特に天候が悪い日にはバス停に屋根がないた
め,函館市民の不満に繋がっている.未来大生も同様に不満を感じているため,函館バスに対する
マイナスイメージに繋がっていると考えられる.本数が少ないと時間通りこないの 2 つの結果より
は少ないが終発が早いこともマイナスイメージに繋がっていることが図 4.2 から読み取ることがで
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きる.未来大学を経由するバスの終発が早いと思われる理由の一つは,放課後に部活もしくはサー
クルがある場合,後半の人たちは活動が終わった時間にはすでに終発の時間が過ぎてしまってい
る.つまり,放課後に部活もしくはサークルをやっている人々はバスに乗ることができない.この
ような場合多くの未来大生は車を持っている先輩などにお願いして帰宅するケースが多い.しか
し,それ以外の学生は自転車もしくは歩いて帰らなければならない.その他にも 1 年生に制作する
ピタゴラスイッチや 3 年生のプロジェクト学習,4 年生の卒業研究などでは遅くまで学校にいる学
生が多く,部活もしくはサークルで残る学生同様に終発を過ぎてしまうことが多い.このような不
便な点もあることから函館バスのマイナスイメージに繋がっていると考えられる.
図 4.3
バスにマイナスイメージがない
学生の車購買欲 (n=226)
図 4.4 車が欲しい理由ごとの割合 (n=226)
上記の図 4.3 と図 4.4 は車の購入に関しての結果である.図 4.3 では,図 4.1 の函館バスにマイ
ナスイメージを感じないと答えた学生の中で車が欲しいかどうかを表したものである.函館バスに
対してマイナスイメージを感じていないのにも関わらず,車が欲しいと答えるのには何かそれ相応
の理由があるはずである.そこで,図 4 では車が欲しいと答えた学生に対してなぜ車が欲しいのか
を表したものであり,このデータから「楽だから」と答えた人は 37 %であった.これは未来大生
にとって車はその他の移動手段よりも利便性が高いことを意味している.また,「好きなところに
行ける」と答えた学生の割合も 27 %であった.これはバスの時刻表や路線経路の関係上好きなと
ころにいくことが困難であると感じていると読み取れる.しかし,函館バスにマイナスイメージが
なく,「楽だから」という理由で車が欲しいと答えているということは車を持つことに対して特に
これといった理由がないということにも繋がる.つまり,未来大生は漠然とした理由で車が欲しい
と感じているのではないかと考えられる.
図 4.5 では普段自由に使える車を所有している学生と所有していない学生別の公共交通の利用回
数を表したものである.まず,車所有者とそれ以外の学生に共通していることが一つある.それ
は,未来大生は函館の市電をほとんど利用していないことである.未来大生の多くは未来大学周辺
の美原及び赤川周辺に住んでいる.一方,函館の市電は主に湯の川,五稜郭,函館駅周辺を通るた
め,未来大生は湯の川及び函館駅へ行くことが少ないということがわかる.また,バスの利用回数
は車を所有していない学生が車所有者よりも圧倒的に多いということが図から読み取れる.車を所
有していない学生は公共交通のほとんどにバスを利用しているが,車所有者の 1 週間のバスの利用
回数はアンケート調査結果では 0 となった.これは車を所有している学生は移動手段のほとんどに
車を使用してしまい,公共交通を使用していないことを表している.唯一,車所有者がそれ以外の
学生よりも利用している公共交通はタクシーである.タクシーは車と同様,時間等に束縛されるこ
とのないので利便性が高く,飲み会の席の帰りなどで利用しているのではないかと予測できる.
インタビュー調査から得られた結果として,大きく 2 つに分類できる.車を支持する人と車以
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図 4.5
各公共交通の利用回数 (n=226)
外の交通手段に魅力を感じている人である.車を支持している人からは,「お金があれば,もちろ
ん車に変えたい」や「車は通勤・通学時間の節約になる」という意見が得られた.「お金があれば,
もちろん車に変えたい」という意見から読み取れることは,現時点ではお金がないから車を持って
いないだけでお金が溜まったら車を買いたいということである.この自転車利用者は未来大学の
坂道に日ごろ苦労していることから車に対しての憧れを感じていると考えられる.また,「車は通
勤・通学時間の節約になる」という意見を出した自転車利用者は,バスが規定された時間帯にしか
利用できないことが原因で自転車を利用しており,車も自転車と同様に時間帯に関係なく使用でき
る点に魅力を感じていると考えられる.一方,車以外の交通手段に魅力を感じている人の意見から
は,「お散歩サイクリングで街の魅力を発見できる」や「気持ちよく汗をかけて,ダイエットに最
適」という意見が得られた.「お散歩サイクリングで街の魅力を発見できる」という意見を出した
車利用者は,通勤・通学ではなく,余暇で自転車を使用しており,通勤・通学には車を使用してい
る.この車利用者は車は移動速度が速いために景色を堪能できないと感じており,自転車を移動手
段ではなく趣味として利用している.また,「気持ちよく汗をかけて,ダイエットに最適」と意見
を出した自転車利用者は,以前車を使用していたが,体に気をつけなければいけないという意識か
ら通勤・通学の移動手段を車から自転車に変えている.
後期は,前期に提案されたモバイルアプリと Web コンテンツの有効性の評価を検証した.調査
対象者は前期と同様に公立はこだて未来大学の学生及び教職員とし,アンケート調査を行った.今
回のアンケート調査は,システム班が作成するモバイルアプリとコンテンツ班が作成する Web コ
ンテンツはそれぞれのターゲットユーザ及び必要な調査項目が異なるため,それぞれ別に実施し
た.システム班が実装する制作物の有効性を評価するアンケート調査では,未来大生 58 名を対
象に行った.こちらのアンケート調査は,車利用者の割合を増やすために,主に 3 年生を対象に
行った.
図 4.6 では,未来大学へ通学する際に普段どのような連絡手段でやり取りしているかを調査した
ものである.図 4.6 より,未来大生が多く使用している連絡手段はモバイルアプリの LINE と携帯
電話の通話機能であることがわかる.LINE はユニークなスタンプや無料通話機能を強みに,近年
急速に普及してきた.今回システム班で作成する制作物は未来大学までの相乗りを支援することを
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図 4.6
友人との連絡手段 (n=58)
目的としている.相乗りをするだけならば無料で通話やメッセージのやり取りができる LINE を
利用すれば新たなシステムを実装しなくても十分である.そこで,私たち調査班とシステム班は付
加価値をもたらす機能の追加を目指し,既存のアプリではできない便利な機能はないかと考えた.
そして提案された機能は,相乗りをしてもらった回数を記憶する機能である.調査結果より,相乗
りを依頼されたドライバーは「相乗りした友人からお礼をもらっているか」という問い (n=11) に
対して,「もらっている」と答えた人が 3 名,「もらっていない」と答えた人が 8 名と,「もらって
いない」と答えた人が圧倒的に多いことが明らかになった.このため,相乗りした回数を記憶し,
ユーザに一定数の相乗り依頼をした時点で報告することで,感謝するきっかけを生み出すことがで
きると考えた.また,コンテンツ班が実装する制作物の有効性を評価するアンケート調査では,未
来大生 112 名を対象に行った.
図 4.7
未来大生の車を購入する時期 (n=26)
コンテンツ班は,未来大生が車を購入する時期が 1 年後期から 2 年後期にかけて多いことに着
目した (図 4.7 参照).これは,入学する前段階で函館の交通に関しての情報が不足していたため
に,函館に住み始めてから,函館の交通に関して不満を感じ,車の購入に結びついていると考えら
れる.そこで,コンテンツ班では,新しく未来大学に入学しようとしている学生に対して現在通っ
ている未来大生のリアルな生活や交通情報を提供するコンテンツを制作するため,ターゲットユー
ザに一番近い未来大学の 1 年生を対象に行った.コンテンツ班は,結成当時システムを使用せず,
未来大生が頻繁に使用する道だけを記したバスの路線図など,未来大新入生に役立つパンフレッ
トを作成することで函館の交通情報を与えるという考えであった.しかし,パンフレットが本当に
未来大新入生にとって必要なものかという疑問が班内で飛び交った.そこで,アンケートの調査項
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目に「交通情報の入手方法」を自由記述法で追加した.このアンケート項目の結果より,未来大生
の約 7 割の人がインターネット (モバイルアプリを除く) を利用して取得していることが明らかに
なった.そこで,コンテンツ班はパンフレットの作成から,Web コンテンツの作成へと変更した.
(文責: 小嶋大樹)
4.2
考察
前期の調査からの考察として,未来大生は漠然とした理由で移動手段として車を選んでいる,も
しくは車に対して憧れを感じているということが明らかになった.下記の図 4.8 は,車を所有して
いない未来大生の車が欲しいと感じるかどうかの割合を表しているグラフである.
図 4.8 未来大生の車購買欲
図 4.8 より,車を所有していない未来大生の 73 %が車を欲しいと回答している.また,お金が
かかるので車は要らないと答えた 14 %の人は,車に対してマイナスイメージを持っているのでは
なく,金銭的な問題であるので,お金があれば欲しいということになる.この結果より,車が欲し
いと回答した人とお金があれば車が欲しいと回答した未来大生を合わせると,全体の 87 %になる.
考察でも述べたが,未来大生は車に何らかの理由があるために車が欲しいと感じるのではなく,漠
然とした理由で移動手段として車を選択している.これは,決して悪いことではないが,バスや自
転車などの交通手段の方がその人に適しているのにも関わらず,漠然とした理由で車を選択してい
ることは最終的に未来大生の函館の交通に対する不満に繋がっていると考えられる.
図 4.9
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交通手段の壁
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上記の図 4.9 は函館の交通手段の遷移を壁で表現したものである.自転車を利用している未来大
生は,函館バスを利用する際に,バスの時刻表通りにバス停に行けば乗ることができる.実際に天
候に大きく左右される自転車での移動は,悪天候の日には向いていない.そのため,自転車を利用
している学生も天候が悪い日には函館バスに乗っている.また,函館バスを利用している人も自転
車を気軽に利用することができる.自転車を購入する必要があるが,自転車は購入後は維持費が故
障が起きない限りかからない.よって普段バスを利用している学生も近くへ移動する移動手段とし
てはバスではなく自転車を利用するケースが多い.これらのことからバスと自転車の 2 つの交通手
段に対する壁は薄いと表現することができる.
一方,自転車利用者及びバス利用者が交通手段を車にするには車を購入する必要がある.それに
加え,車は自転車と違い,運転免許が必要であり,さらに維持費もかかる.また,一度車を利用し
始めると,他の交通手段をほとんど利用しなくなることも明らかになっている (4.1 図 5 参照).バ
スや自転車を利用している学生が経済的理由により車購入が厳しい状態でも交通手段として車を選
択もしくは車に対して憧れを持ち,また,一度車に変更すると他の交通手段をほとんど利用しなく
なることから,車と他の交通手段の間には厚い壁が存在すると表現することができる.私たちはこ
の厚い壁が存在していることを「車依存思考」であるというように定義した.
(文責: 小嶋大樹)
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第5章
5.1
まとめ
プロジェクトの成果
主なプロジェクトの成果としては,学生間の相乗りを支援することを目的とした Android アプ
リケーションの「Hacobi」や新入生に未来大生のリアルな生活や交通情報を提供することを目的と
した Web コンテンツの「FUN DAYS」,また,前期から後期にかけて 3 回行われたアンケート調
査とインタビュー調査の結果があげられる.
システム班の制作物である「Hacobi」(図 5.1 参照) は,なぜ前期の調査結果からの考察で出され
た未来大生の車依存思考が悪いのか,という問題に対して,
「車依存思考故に, 学生が車を 1 人 1 台
もつことによって, 車 1 台あたりの輸送人数が減ること」と私たちは考え,学生間の相乗りを支援
するシステムとして作られた.「Hacobi」の機能にはドライバーの時間割を表示するものがあり,
ドライバーに対して相乗りを依頼する学生のユーザインタフェースを考えた作りになっている.デ
マンドバスのように,既存の公共交通機関を効率化するシステムは多く考案されてきたが,学生個
人が所有する車に公共性を持たせて効率を上げるというシステムは未来大学を舞台とした新たな試
みであり,プロジェクトとしては大きな成果であった.
図 5.1 「Hacobi」画面遷移図
また,コンテンツ班の制作物である「FUN DAYS」(図 5.2 参照) は,前期の調査結果から函館
の交通に対する情報が不足しており,それから生まれた不安が利便性の高い車の利用に誘導してい
るのではないかと考え,函館に来る前の函館に対しての情報が少ない新入生に対してリアルな生活
や交通情報をクイズ形式で提供するコンテンツとして作られた.「FUN DAYS」は TwitterAPI を
使用することで,Twitter を通して未来大生の生の声をリアルタイムで新入生に伝えることを可能
にした.それに加え,Twitter でつぶやかれた文章で一番多い単語をタグクラウドで可視化し,特
徴を一目で捉えれるような工夫もされている.
調査班の成果である 3 回にわたるアンケート調査とインタビュー調査より,未来大学生が抱える
さまざまな問題を探ることができた.これらの調査から得られた統計分析結果などは今後の函館の
交通に関するプロジェクトや実態調査の一つの有力なデータになると期待される.
未来大学生の主な特徴としては, バスに対してマイナスイメージを持っていないにも関わらず, 車
の所有願望を持っている人が多い. そして漠然とした理由で, 車を選択することが多い. また, 車購
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図 5.2
「FUN DAYS」トップ画面
入に厚い壁を感じつつも購入に踏み切り, 一度車に変更するとほかの乗り物にはほとんど乗らなく
なってしまう. 壁というのは, 金銭の理由や危険性のことを指している.
これらの事実をデータで確認できたというのは, とても有意義なことである. そして, 未来大生を
対象にした今回の調査結果全てが全部函館の住民に当てはまっているわけではないが, 函館の交通
を改善する一つの手がかりになると考えられる. 現在車を持っている人が車依存思考に陥っている
ため, 車以外の交通手段が使用されていないというのが現状である. そのため本プロジェクトは念
入りな調査を行い,これらのアプリやコンテンツを制作した.残念ながら,実際にテストを行うこ
とはできなかったが足掛かりとしては, 十分なものができたのではないかと考えられる.
(文責: 加藤亨輔)
5.2
プロジェクトにおける個人の成果
加藤 亨輔
私は本プロジェクトではグループ C の調査班で活動した. 活動内容は主にアンケートの作
成である. 具体的な個人の成果というのは, アンケートの作成技術及び考察である. 前期後期
とともにアンケートを行い, その結果を考察することによって問題・課題を発見し, それの解
決案を考えた. アンケートの作成に関して, 教員の方の本を見せてもらったところ, 想像する
以上に多くのルールが存在していて衝撃を受けた. その本を見ながらではあったが, まとまっ
たアンケートを作成できた. また, 考察にあたって SPSS を使った考察や, 残差分析,T 検定
などの技術習得ができた. 他には, プロジェクト担当の教授が推し進めているデマンドバス
の実験やタクシーの実験にも参加し交通に対しての多くの経験を積めたと考えている. 交通
に対して考えることがあまりない現状を大きく変えてくれたと思う.
前期では, 様々な問題を発見するためにオピニオンシートを使った意見の交換や, ディス
カッション形式での会議を行った. 積極的に参加していかなければならないので自分自身あ
まり, 得意ではないが多くの発言を行った. それにより積極性がついた. また, 共同作業とい
うもののよい経験になった. 他人と意見をぶつけることはとても難しいことだと理解した.
後期に関しては, 成果物に対する未来大学生の求めることを調べるために,「何が必要なの
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か」,「何を考えてそうしているのか」などを考えて, それを調査した. 調査グループ三人で何
度も, チェックをしてアンケートの質問項目を作成したために, 質の高い質問項目が作成で
きた. そして, アンケート集計後に考察を念入りに行い成果物に対して生かすことができた.
説得力のある成果物にできたのではないかと考えている.
最終発表では, 観客のほうをしっかり見て, 大きな声で話すことができた. 中間発表のとき
の反省を生かせるよう努力した. おおむねうまくいった. 質疑応答では, 緊張してしまったが
うまく答えていたのではないかと考えている. ただ, もう少し念入りに発表練習ができてい
ればよかった. そうすれば, もっと余裕をもって臨めたはずである.
プロジェクト全体としては, 積極性や問題解決能力が身についた. 多くの会議を行い, 意見
を交換して問題を発見し解決策を発見する. この一連のプロセスを何度も行ったためである.
最初はとても大変だったが何度も繰り返すうちに慣れたのではないかと思う. また, 細かい
提出物などを気にかけていたのでその点でプロジェクトメンバーをサポートできていたので
はないかと思う. 意外と細かい提出物が見落としがちだったので今後は気をつけていきたい.
ただ得られたものは多かった反面,反省点も多々あった. まず, タイムスケジュールが甘かっ
た. 期限を守れない点が多くあり, プロジェクトのメンバーに迷惑をかけてしまった. 社会に
出ると期限というものはとても大切になるので, しっかりと厳守することが大切である. 他
にはもうちょっと発言を増やすべきであった. ちょっと遠慮をしていたと思う. いいものを
作り上げる上で遠慮をしていてはよくないということに気づいた. プロジェクトを行うにあ
たり様々なことを得ることができた. この経験を社会に出ても生かしていきたい. 本当にい
い経験であった.
生駒 敬一
私は本プロジェクトで調査班であるグループ C に所属し, 主にアンケート質問項目作成と
アンケート調査結果の考察に取り組んだ. アンケート質問項目の作成において, 本プロジェ
クトの製作物を利用者にとって良いものにしようとする考えを心に留めながら, 利用者の意
見・評価を適切に捉えるようにした. また函館の交通における本質的な問題と問題の原因を
探ることも考慮した. それらの考えの上で, 私はアンケート質問項目に不備があった場合, 自
分の考えをスライドにまとめ, 積極的に本プロジェクト内で自分の意見の発表を行った. こ
こで例として, グループ A の製作物である, 学生の車を利用した, 学生間での相乗支援アプリ
に関するアンケート質問項目作成の流れを説明する.
まず私は本システムの本質的な要素を考えるために,”なぜ友人の車に注目したのか?”,”
なぜ相乗り支援アプリを作成しているのか?”,”実行する上で発生するであろう不安要素は
何か?”の三つの疑問を主軸にした. そして一つ目の疑問から,”利用者は時間通りにすばや
く移動したいと考えている”,”交通全体から見た場合, 利用者をより効率的に移動できるよ
うにしたいには学生の車を利用することがよい”,”自動車以外の交通手段では, 実効性の面
で利用者の要求に応えるのは困難である”の三つの仮説を立てた. 二つ目の疑問から,”相乗
希望者と学生ドライバーの需要と供給の関係が存在する”, 学生ドライバーにとって相乗の
管理は面倒なものである”の二つの仮説を立てた. 三つ目の疑問から, 学生ドライバーの不満
が原因で利用者が減少する可能性があるので, 学生ドライバーの不満を解消するために何か
見返りは必要である”の一つの仮説を立てた. そして本プロジェクトのメンバーとの意見交
換をし, これらの疑問と仮説を基礎にすることになった. 他のアンケート質問項目作成にお
いても同様の手順をとって, 綿密に計画を立て取り組んだ. その結果, より完成度の高いアン
ケート質問項目を作成できたと感じる. アンケート調査実施後, アンケート調査結果を分析
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し, 本プロジェクト全員で考察したことにより, 有効性において説得力のあるシステムの作
成に移れたと感じる.
後期の終盤では, グループ A のメンバーと一緒に最終成果発表用のプレゼンテーションの
スライドとポスターの内容を構想した. アンケート質問項目作成におけるスライド作成と,
前期における文献調査が一定の評価を本プロジェクトのメンバーから受けたため, 最終成果
発表資料の構想と作成を引き受けることになった. 彼と LINE などで逐一情報交換と情報共
有をしながら, スライドとポスター作成に移った. しかし, スライドに情報を詰め込みすぎて
しまったため, 本プロジェクトのメンバーからの指摘が多かった. そして資料の手直しをし
たが, 最終成果発表の当日まで取り組んでしまい, あわてて作る形となった. ただ流れはまと
まっていたため, 簡略化することで後に完成度の高いスライドとポスターができた.
最終成果発表では, システム作成までの背景を発表する役割になった. 本番では, 適度な声
の大きさと速さで話すことができた. しかし, 質疑応答では, 少し緊張してしまっていたため
即座に適切な回答を答えられなかった.
全体的に, 本プロジェクトの活動をある程度客観的に指摘できていた. 自分の意見をしっ
かりと持ち, たとえ周りとの衝突が発生する可能性があっても, 臆せずに自分の意見を述べ
ることができていた. また様々な書籍を参考にし, 問題解決力と資料作成力を向上させるこ
とができたと感じる. しかし最終成果発表の準備において, 本プロジェクトのメンバーに指
摘されたように, スライドに情報を詰め込みすぎてしまったことが個人的に反省すべき点で
ある. 私はプレゼンテーションというものを理解していなかった. プレゼンテーションとは,
聴衆に自分の意見を分かりやすいように伝えることであるが, 私は自分達の努力を伝えるこ
とに重きを置いて, 聴衆にとって退屈で分かりにくいスライドを作成していたのである. ま
たスケジュール通りに作業することの難しさを感じた. これからは他人に自分の意見を分か
りやすく退屈しないスライド作りを心がける. また社会のどのような業種においても定めら
れた時間内で最良のものを完成させていく能力と精神が求められているので, 時間当たりの
生産性を高める時間管理法である, タイム・マネジメントの考えに則って作業に取り組んで
いきたいと思う. 他にも問題解決力と資料作成力の向上と, 自分の意見を適切に伝えること
ができるように学んで生きたいと考えている.
小嶋 大樹
本プロジェクトでの私の立場は,周りのプロジェクトメンバーのサポートする係りであっ
た.まず,プロジェクトの始めにみんなで函館の交通に対してのブレインストーミングを行
い,その際にできるだけ多くのキーワードを出すようにした.前期のアンケート調査では,
基本的な統計法 (カイ二乗検定や t 検定など) を一から学び直し,多重比較を行うフリード
マン検定や因子分析など様々な統計法を学んだ.これを基に,フリーの統計ソフトである R
言語を独学で学び,アンケート調査を分析する際の大きな武器にした.また,有効な結果が
得られた場合に,さらに有効な部分を見つけ出す残差分析なども学習し,みんなに教え,知
識を共有することができた.分析結果から提案を導く場合はプロジェクトメンバーの意見を
取り入れつつ,自分の意見を出すように心がけた.
中間発表では,ポスター制作で初めて Illustrator を使用した.このときも Illustrator を
独学で学ぼうとしたが,デザインコースのメンバーがいたので,その人に教えてもらいなが
ら制作した.また,中間発表に用いるスライドは何度もプロジェクトメンバー及び担当教
員の添削を行い,何度も内容とレイアウトの提案・訂正をした.発表時には,なるべく声が
通るように心がけた.その結果,多くの学生・教員が立ち止まり発表を聞いてくれ,たくさ
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んのアドバイスを頂くことができた.後期では,システムを実装する上でどのような知識
(FacebookAPI やモバイル通信方法など) が必要か,またどのような部分に時間がかかるか
を明確にし,基本情報技術者検定等でプロジェクトメンバーが忙しくなると予測される期間
は進捗を少なく見積もるなど,具体的なスケジューリングを立てるように促した.また,後
期の途中から調査班のリーダーとして活動し,進捗管理や教職員への進捗報告を担った.
進捗管理では,調査班のメンバーの進捗を怠ってしまったため,時には進捗通りに進ま
なかった時期もあった.その分翌週のタスクを増やすことで補った.また,調査班として
活動していたが,夏休みの間に独学でサーバプログラミングの PHP や java などの様々な
プログラミング言語の知識を身につけたため,他の班のサポートにも廻った.具体的には,
Android アプリの設計・実装を行うシステム班の通信部分 (主に PHP と MySQL を使った
サーバプログラミング) の実装を担当し,Android デバイスからの通信に対して何度もバグ
が生じたが最終的には通信を実現することができた.また,Web コンテンツを作成するコ
ンテンツ班のお手伝いをした.こちらの班では,Web サイトを動的にするために javascript
を付け加え,Web サイト全体を動的にした.また,Illustrator で作成された画像を Web サ
イトに配置するなど基本的な部分の実装も行った.調査班では,後期にもアンケート調査を
行ったため,その調査項目の提案や有効性などをメンバーで話し合い,より効果的な調査が
できるように慎重に作業を進めた.
最終発表の準備では,プロジェクトメンバーのスライド作成やポスターの添削,ポスター
の英語部分の記述,原稿の作成のサポートとして活動した.プロジェクトメンバーのサポー
トをすることは,メンバーよりも知識や技術がないと成り立たなく,人一倍の努力が必要
だった.その努力があり,プロジェクトメンバーの中では一番技術が身についたのではない
かと思う.
(文責: 加藤亨輔)
5.3
5.3.1
今後の展望
プロジェクト全体の展望
本プロジェクトは,函館市民の交通が持続的で魅力的なものにすることを目的として活動した.
函館市民の中でも未来大関係者の交通行動と交通に対する意識を調査した.また,持続的で魅力的
な交通とは何か考え,未来大関係者の交通を快適にするサービスを企画及び実装,評価することを
本プロジェクトの課題とした.それを, さらに推し進めていくことが第一の目標である.
前期は, 函館未来大学生の交通に関する現状・問題を理解するために多くの議論を行い, ある一定
の結論は得られたのではないかと思う. それは,「車依存思考に陥っている」,「車に乗り始めると,
他の乗り物を全く使用しなくなる」,「安易に車を選択している」といったものである. これは, 函
館全体に言えることである. 当然の結果であるとも言えるが, アンケートや, インタビューの考察を
通し上記の事実を確認できたのは, とても重要なことであると考える. 今後は, 上記のこと以外の事
実を発見し考察することにあると考えている.
また後期では, 前期で得たデータをもとにシステム班・コンテンツ班に分かれて活動した. それぞ
れの成果物で実現可能な部分を相談し実装していった. そのため実装できていない部分や見落とし
ている部分が多々存在している. そのため, さらに議論を進め, より良いものを開発して欲しい.
今後は, 2月18日に行われる秋葉原の課外発表会に向けて成果物の開発を進めていく予定であ
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る.最終発表の段階で時間や技術の面が原因で完成には至っていない部分が存在している. また, ま
だ改良できる余地が多く存在している. 課外発表会まで,誰がどこまで実装するのかを具体的に計
画し実装する必要がある.そして最終発表までに評価まで行うことが出来なかったために開発した
アプリやウェブサイトの有効性が確かめられていない.実際に,ユーザに使ってもらい,評価を受
けることで開発したアプリやウェブサイトがが未来大関係者の交通を持続的で魅力的なものとする
のかを確かめたい.そのためにもテストを行いたいと考えている. その結果から, さらに改良を進
めるのか, それともまた, 新たなものを開発するのか方向性を決めるべきだと考える.
最終発表でのレビューでは使ってみたいといった意見や,面白いアイディアであるといったポジ
ティブな意見が多く聞かれたことから,大いにその効果が期待される.ただ, 反面多くの指摘を受
けたので, その内容に対してプロジェクトメンバーで話し合いより良いものを作り上げたい. いつ
か自分たちで作り上げたものが, 多くの人に使用してもらえるようになれば, 函館の公共交通の一
助になるのではないかと思う. そのためにも, さらにこのプロジェクトを進めていくべきである.
プロジェクトを通して交通に対して多くの考え方ができるようになった. 本当に函館の公共交通
を活性化させるにはまず, こういった意識を持つことが大切である. 便利になりすぎたせいで交通
に対して無関心さが目立つ. より多くの人たちが交通に対して関心をもって, 受け身にならず自ら
考えていくことができれば, 自ずと函館の公共交通は活性化してくと考える. その手助けをするこ
とがなによりのプロジェクトの目標である. 函館市民一人ひとりが,一歩ずつ目標の実現に向けて
努力して行ってほしいと願っている.
5.3.2
調査班の展望
調査班の今後の展望としては, 調査の範囲を広げることである. 今回はコストや規模の関係から,
未来大学生を中心とした狭いエリアで行ったが, 次回は函館全体を調査してみたいと考えている. 函
館全体でなくても, エリア分けして, そのエリアの特色を調べるといった形でも面白いと考えてい
る. そして, どんどん調査の範囲を広げて行くべきだと思う. また, 調査の範囲を広げるだけでなく,
内容についても, もっと吟味して行けたらと思う.
図 5.3
函館バスカード
また, バス会社や市役所といった公的機関についてもっと知るべきだったように思う. 普段私た
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ちが使用している函館バスカード (図 5.3 参照) の使用方法などは理解している.しかし,一日で
もバス会社の会社見学などをすることができれば, 調査で得たデータの質も上がり, また実体験を
経ているため説得力が増したのではないかと思う. 一日中バスに乗り続ける, 市電に乗り続けると
いったアクティブな活動をしても面白かったのではないかと思う. 自分の目と足で調査するという
のが少なかったように感じた. アンケートばかりでは, 偏った意見になってしまっていたのではな
いか. その点は, 今後の課題である.
他には, 外国で行われている事例なども, 専門家がいるのであれば, その人の講演などをみてさら
に理解を深めることができたのではないかと思う. 実際に, プロジェクトのメンバーで講義を受け
たがとても有意義なものだったと感じている. 勉強の機会というのが少し足りなかったように思う.
このような機会をもっと増やしていくことも大切だ. 今回は, アプリとコンテンツという形になっ
たが, もうちょっと技量を上げて調査に臨めば, もっといい案が出ていたかもしれない. また, 前期
と後期で多くの調査を行ったため, もう一度調査した内容をまとめなおし, 新たにまとめるといっ
たことをすれば, データが洗練されると共に新たな発見をすることができる. このままで終わりと
いうのはあまりにももったいない. まだまだ, 調査すべきことまとめるべきことがたくさんある. そ
れを, まとめることができれば, 私たちひいては, 未来大学,そして函館市のためになるはずである.
今回作成したアプリ, コンテンツに関しては, 将来本当にリリースされるぐらい洗練したものに
なればいいと考えている. まだまだ, 未完成な部分や実装されていない部分がある. それを完成させ
て多くの人に利用してもらいたい.
(文責: 加藤亨輔)
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参考文献
[1] 函館市企業局:『平成 24 年度事業概要―交通事業』 (2012).
[2] 国土交通省 都市・地域整備局 都市計画課 都市交通調査室:『都市における人の動き―平成 17
年全国都市交通特性調査の結果から―』 (2007).
[3] 函館市観光コンベンション部観光振興課:
『平成 24 年度観光アンケート調査の結果』 (2012).
[4] 株式会社ケー・シー・エス 静岡営業所:『平成 23 年度 湖西市地域公共交通基本計画策定調査
業務委託―湖西市の地域公共交通に関する市民アンケート結果』 (2011).
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付録 A
調査に使用された質問紙
ここからは,プロジェクト学習で作成し,調査に使用した質問紙を添付する.以下のリストは付
録Aで添付した資料である.
資料 1. 前期で行ったアンケート調査の質問紙
資料 2. 後期の未来大 1 年生を対象に行ったアンケート調査の質問紙
資料 3. 後期の未来大 3 年生を対象に行ったアンケート調査の質問紙
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