新規 Formosa 属細菌の分類学的検討 平成 24 年度 三重大学大学院 生物資源学研究科 生物圏生命科学専攻 博士前期課程 宮脇弘光 目次 1. 緒言 2. 目的 3. 材料および方法 3-1. 使用菌株 3-2. 生化学的性状の決定 3-2-1. 海藻分解性試験 3-2-2. 有機物利用性試験 3-2-3. コロニー色 3-2-4. 細菌の形態 3-2-5. 各種酵素活性試験 3-2-6. 各種物質分解性試験 3-2-7. 各種生育条件 3-3. 16S rRNA 遺伝子系統解析 3-3-1. PCR 法による 16S rRNA 遺伝子増幅 3-3-2. サイクルシークエンスによる塩基配列決定 3-3-3. 系統解析 3-4. 供試培地・試薬 4. 結果 4-1. 生化学的性状の決定 1 4-1-1. 海藻分解性試験 4-1-2. 有機物利用性試験 4-1-3. コロニー色 4-1-4. 細菌の形態 4-1-5. 各種酵素活性試験 4-1-6. 各種物質分解性試験 4-1-7. 各種生育条件 4-2. 16S rRNA 遺伝子系統解析 5. 考察 6. 謝辞 7. 参考文献 2 1. 緒言 近年、環境負荷が少ないバイオマス燃料などの再生可能エネルギーや資源の増産が行わ れている。しかし現状ではトウモロコシやサトウキビなど食糧として利用される穀物が主 要な原料として用いられており、将来的な人口増加も加わると食糧生産との激しい競合が 起こる可能性がある。そのため、食糧生産とあまり競合しない生物資源の有効利用が重要 となっている。 その中で食糧生産との競合が小さいと考えられる海藻の有効利用が期待されている。海 藻の有効利用については各種海藻構成多糖類を微生物によって分解し、発酵・化学処理す ることで有機素材や化学薬品、バイオ燃料を生産する研究が有力視されている。これには 高い海藻構成多糖類の分解能を有する微生物が有益な役割を果たすと考えられ、その発見 が重要となっている。海藻構成多糖類の分解能を有する微生物は海水中のみならず海藻を 主食とする生物の消化管内においても存在が確認されている。 本研究室ではメガイアワビ Haliotis gigantea 消化管内より褐藻分解能をもつ分離株を 4 株 取得している。これらの分離株は海洋性の好気性従属栄養細菌に属する Formosa 属細菌で あることが示唆されていた。各種海藻構成多糖類に対して顕著な分解能を有する本菌は、 褐藻類のさらなる有効利用を探るうえで有益な要素になると考えられる。そこで本研究で はこれらの分離株を新規 Formosa 属細菌として登録することを目的として、本菌の諸性状 を詳細に調査し、分類学的検討を行った。 3 2.目的 本研究ではメガイアワビ消化管内より分離された 4 株をそれぞれ MA1, MA2, MA3, MA4 株として新規の Formosa 属細菌として新たに分類し、登録することを目的として行っ た。 実験方法は既知の Formosa 属細菌である Formosa algae および Formosa agariphila との比 較、検討を行うことを中心として決定された。旧来からの生化学的性状の比較に加えて、 遺伝子系統解析を行うことにより分類の確実性を高めた。生化学的性状を決定する実験で は海藻分解性試験とアルギン酸分解性試験も併せて行うことで 4 株の海藻分解能と海藻構 成多糖類分解能に関しても知見を得ることを試みた。 4 3. 材料および方法 3-1. 使用菌株 検討を行った菌株は、メガイアワビ消化管より分離され Formosa 属細菌であることが示 唆されていた MA1 株、MA2 株、MA3 株、MA4 株である。これら 4 株は ZoBell 2216E 斜 面培地で継代培養を行った。 3-2. 生化学的性状の決定 3-2-1. 海藻分解性試験 菌体を BSL(Basal seawater liquid)培地で洗浄、懸濁した。懸濁液を海藻試料が投入さ 日間の条件で培養を行った。培養液中の海藻試料の状態 観察を 1 日おきに行った。海藻試料にはマコンブ(Saccharina japonica)、ワカメ(Undaria pinnatifida)、アナアオサ(Ulva pertusa)を実験に供した。 れた BSL 培地に接種し 20℃、5 3-2-2. 有機物利用性 グリセロール利用能試験 13mmφ培養試験管に 1%グリセロール含 BSL 培地 5ml とダーラム管を入れたものを 試験培地として用いた。各分離株を ZoBell 2216E 液体培地で培養後、15000 g, 1 分間遠 心分離により菌体を採取した。そして、菌体を BSL 培地で洗浄、懸濁した。懸濁液を上 記液体培地に接種し 20℃、5 日間静置培養を行い、懸濁の確認されたものを陽性とし、 また、ダーラム管内に気体を生じたものをガス産生能陽性とした。 3-2-3. コロニー色 上記継代培養中のコロニーを目視にて観察した。 コロニー色は 5 3-2-4. 細菌の形態 (1) (2) (3) 観 運動性試験 光学顕微鏡による観察にて行った。 形態 察および グラム染色 滅菌した 1/3ASW で菌体を懸濁後に乾燥固定した。固定後、クリスタルバイオレ ット液を滴下後 1 分、ルゴール液滴下後 1 分、サフラニン液滴下後 30 秒の順でグ ラム染色を行い、光学顕微鏡にて観察を行った。 べん毛染色 滅菌した 80mM MgSO に菌体を懸濁後に乾燥固定した。乾燥後、第一液を滴下 し、4 分間染色した。次に第二液を滴下し弱火で加熱後、4 分間染色を行い、蒸留 水で水洗後に光学顕微鏡にて観察を行った。 4 (4) (5) 芽胞染色 滅菌した 1/3ASW で菌体を懸濁後に乾燥固定した。固定後、5%マラカイトグリ ーン液で3分間染色し、水洗した。さらに 0.5%サフラニン溶液で30秒染色後、 水洗し検鏡により芽胞の有無の確認を行った。 OF 試験 MOF 培地に菌体を 20℃、7 変 観 日間の条件で穿刺培養した。培養後、MOF 培地の 色の 化を 察した。 6 (6) 滑走による運動性確認試験 後 平板培養に滴下し、20℃、 2日間培養を行った。その後、顕微鏡を用いて滑走による運動性の有無を確認した。 各分離株をZoBell 2216E液体培地で培養 、ZoBell2216E 3-2-5. 各種酵素活性 (1) タ ゼ オキシ ー 活性試験 テ ラ チ ρ フェニレンジアミン水溶液をしみ込ませ た濾紙に塗沫し、色の変化時間を観察することで行った。 菌体を 1% N,N,N’,N’- ト メ ル- - (2) カタラーゼ活性試験 菌体への 3% H O の滴下による O 発生の有無によって行った。 2 (3) 2 2 レ ゼ ウ アー 活性試験 後 2−14日間培養を行った。培養後、 培 地の変色の確認を行った。深紅色に変化したものをウレアーゼ陽性とした。 菌体を Urea 液体培地に接種 、20℃、 3-2-6. 各種物質分解性試験 (1) 寒天分解性試験 菌体を ZoBell 2216E 観 平板培地に接種、培養し菌体周辺の培地の沈み込みの有無 を 察した。 (2) アルギン酸分解性試験 ナ リ ム 含む ZoBell 2216E 平板培地(APY 培地)で 20℃、5 日間の条件で培養した。培養後に 70%エタノールを平板上に満たし、室温で 30 分 アルギン酸 ト ウ を 0.5% 7 間放置後、コロニー周囲のクリアゾーンの有無を観察した。 (3) (4) タ チ Starch 平板培地に菌体を滴下し 20℃、5 日間の条件で培養を行った。培養後に 平板上にヨウ素液を滴下し、クリアゾーンの有無を観察した。 ス ー 分解性試験 DNA 分解性試験 市販の DNA 寒天培地()を用いて作製した平板培地に菌体を接種し、20℃、5 日 間の条件で培養した。培養後に平板上を 1.5N HCl で満たし、室温で 15 分間放置 後にコロニー周囲のクリアゾーンの有無を観察した。 (5) ゼラチン分解性試験 ゼラチンを 0.5%含む ZoBell 2216E 平板培地に菌体を接種し 20℃、5 日間の条 件で培養した。培養後に平板上に塩酸昇こう水を満たし、クリアゾーンの有無を観 察した。 (6) (7) カゼイン分解性試験 菌体を Casein 平板培地に菌体を接種し 20℃、5 日間培養を行った。培養後,クリ アゾーンの有無を観察した。 Tween80 分解性試験 添 菌体を 1% Tween80 および 0.001% CaCl2 2H2O を 加した ZoBell 2216E 平板 滴下後 20℃、5 日間培養を行った。培養後, CaCl 顆粒の有無を観察した。 培地に 2 8 3-2-7. 各種生育条件 求 (1) Na+要 性 求一次培地(1/10 ZoBell 2216E 培地)で白濁する程度まで前培養 を行った。これから 1 白金耳ずつ NaCl 濃度を 0-8%に調整した塩類要求性培地に 接種し、20℃で7日間培養を行い、菌の発育の有無を確認した。 菌体を塩類要 (2) pH 耐性 整 20℃で7日間培 菌体を pH4-12 に調 した ZoBell 2216E 液体培地に接種し、 無 養を行い、菌の発育の有 を確認した。 (3) 温度耐性 温度(4, 20, 25, 30, 37℃)で7日間 菌体を ZoBell 2216E 液体培地に接種し、各 無 培養を行い、菌の発育の有 を確認した。 3-3. 16S rRNA 遺伝子系統解析 3-3-1. PCR 法による 16S rRNA 遺伝子増幅 一晩振とう培養した。遠心分離を 15,000 rpm で 2 分間行い、集菌した。次に 100℃、5 分間で DNA を熱水抽出法により抽出した。 抽出した DNA の 16S rRNA 遺伝子領域を PCR 法によって増幅した。プライマーには 菌株を ZoBell 2216E 液体培地に接種し 25℃で E8f (5’-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3’)、E1492r (5’-GGCTACCTTGTTACGACTT-3’) 温度条件は熱変性(95.0℃、240 秒)を 1 サイクル後に、熱変性(95.0℃、30 秒)、アニーリング(57.0℃、30 秒)、伸長反応(72.0℃、90 秒)を 25 サイクルとした。 3-3-2. サイクルシーケンスによる塩基配列決定 を使用した。 9 作製した PCR 産物に Big Dye Terminator によるサイクルシークエンスを行 いラベリングした。プライマーには E8f を用い、温度条件は熱変性(95.0℃、240 秒)1 サ イクル後、熱変性(95.0℃、10 秒)、アニーリング(55.0℃、5 秒)、伸長反応(60.0℃、240 秒)を 25 サイクルとした。DNA シークエンサーABI PRISM 3100-Avant Genetic 3-3-1 で Analyzer(Applied Biosystems)を用いて塩基配列を得た。 3-3-3. 系統解析 編集後、 National Center for Biotechnology Information(NCBI) の ホ ー ム ペ ー ジ (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)上の BLAST を利用して塩基配列の相同性検索を行い、近 縁種を調べた。さらに MEGA version 4 を用いてブートストラップ検定を行い、系統樹 を作製した。 3-3-2 で決定した塩基配列を遺伝子解析 ソフ ト Chromas Lite を用いて 3-4. 供試培地 3-4-1. 供試培地 (1) ZoBell 2216E agar medium Polypeptone 5g Yeast extract 1g Agar 15 g 75 % Natural seawater(NSW) 1000 ml pH 7.5 (2) BSL medium NH4Cl 0.9 g 10 KH2PO4 0.0675 g FeSO4・7H2O 0.0252 g Artificial sea water (ASW) 390 mL DW 390 mL Tris 5.49 g pH 7.5 (3) MOF medium Bacto Casitone 1 g Yeast extract 0.1 g (NH4)2SO4 0.5 g Tris 0.5 g Phenol red 0.01 g Agar 3g 75% ASW 1000 mL Glucose 5.0 g pH 7.5 (4) Urea medium Polypepton 2g Urea 30 g Na2HPO4 1g KH2PO4 1g Phenol Red (0.2 %) 5 mL 11 75% NSW 1000 mL pH 6.8 (5) APY agar medium Polypeptone 5g Yeast extract 1g Sodium alginate 5g Agar 15 g 75 % Natural seawater 1000 ml pH 7.5 (6) Starch agar medium Polypeptone 10 g Yeast extract 3g NaCl 3g Sluble starch 2g Agar 15 g 75% NSW 1000 mL pH 7.2-7.4 (7) DNA agar medium (8) 0.5% Gelatin ZoBell 2216E medium Polypeptone 5g Yeast extract 1g 12 Gelatin 5 g Agar 15 g 75 % Natural seawater (NSW) 1000 ml pH 7.5 (9) Casein agar medium Polypepton 5g Yeast extract 3g NaCl 3g Skim milk powder 15 g Agar 15 g 75% NSW 1000 mL pH 7.0 13 4. 結果 4-1. 生化学的性状の決定 除く生化学的性状の決定結果を table 4-1, 4-2, に示した。 海藻分解性試験を 4-1-1. 海藻分解性試験 日目と 5 日目の状態を fig.4-1 に示した。褐藻類であるコンブとワカメ は大部分が分解された。緑藻類であるアオサは分解されなかった。 各海藻試料の 1 4-1-2. 有機物利用性 (1) グリセロール利用能試験 グリセロール利用能は確認されなかった。 4-1-3. コロニー色 黄 4 株とも 色のコロニー色を示した。 4-1-4. 細菌の形態 (7) 観 運動性試験 形態 察および 桿 運動性は確認されなかった。 グラム染色 ペプチドグリカン層の染色が見られず、4 株ともにグラム陰性を示した。 べん毛染色 べん毛は確認されなかった。 胞子染色 4 株とも染色部位が確認されず、胞子形成を行っていなかった。 4 株とも 菌の形態をしており、 (8) (9) (10) (11) OF 試験 嫌 下 変 判 4 株とも 気性条件 での MOF 培地の色 は確認されず、Oxidative の 定 14 を示した。 (12) 滑走による運動性確認試験 滑走による運動が確認された。 4 株とも 4-1-5. 各種酵素活性 (4) (5) (6) タ ゼ 4 株とも 10 秒以内に色変を示し、陽性であることが確認された。 カタラーゼ活性試験 4 株とも酸素を発生し、陽性であることが確認された。 ウレアーゼ活性試験 ウレアーゼ活性は確認されなかった。 オキシ ー 活性試験 4-1-6. 各種物質分解性試験 (8) (9) 寒天分解性試験 4 株とも培地への沈み込みを示し、陽性であることが確認された。 アルギン酸分解性試験 リ ゾ 陽 4 株ともク ア ーンが発現し、 性であることが確認された。 (10) (11) タ チ 4 株とも陽性であることが確認された。 ス ー 分解性試験 DNA 分解性試験 リ ゾ 陰 4 株ともク ア ーンを発現せず、 性であることが確認された。 (12) ゼラチン分解性試験 4 株ともわずかながらク (13) リアゾーンが発現し、擬陽性であることが確認された。 カゼイン分解性試験 4 株とも陰性であることが確認された。 15 (14) Tween80 分解性試験 陰 4 株とも 性であることが確認された。 4-1-7. 各種生育条件 求 (1) Na+要 性 4 株とも NaCl (2) pH 耐性 濃度 1%~4%の間で生育が確認された。 間 4 株とも pH6~9 の で生育が確認された。 (3) 温度耐性 ~ 間 4 株とも 20℃ 30℃の で生育が確認された。 4-2. 16S rRNA 遺伝子系統解析 縁 相同率を table 4-3 に示した。4 株とも Formosa algae との間でもっと も高い相同性を示した。相同率は MA1 株 98%、MA2 株 97%、MA3 株 97%、MA4 株 97%をそれぞれ示した。作製した系統樹を fig.4-2 に示した。 4 株の近 種との 16 Table 4-1. Major phenotypic charateristics of MA1, 2, 3, 4. Source Gram staining Morphology Colony color Motility OF test Oxidase activity Catalase activity Flagellum Forming spore Motility of glinding Degradation of Agar Arginate Tween 80 Geratine Starch Cazein DNA Urease Utilization of Glycerol MA1 MA2 MA3 MA4 Gut of the abalone Gut of the abalone Gut of the abalone Gut of the abalone Rod Yellow O + + + Rod Yellow O + + + Rod Yellow O + + + Rod Yellow O + + + + + w + + w + + w + + w + + + + - - - - - - O, oxidative. +, positive. -, negative. w, weakly positive. 17 - - Table 4-2. Major phenotypic charateristics of MA1, 2, 3, 4. MA1 MA2 MA3 MA4 0% 1% 2% 3% 4% 5% 6% 8% + + + + - + + + + - + + + + - + + + + - 4 5 6 7 8 9 10 11 12 + + + + - + + + + - + + + + - + + + + - 4 20 25 30 37 + + + - + + + - + + + - + + + - Require of Na+ pH ℃) Temperature( +, growth. -, non-growth. 18 Table 4-3. Homology of MA1, 2, 3, 4 according to 16S rRNA gene Homology MA1 98%(98,05%) Formosa algae MA2 97%(97,92%) Formosa algae 19 MA3 97%(97,64%) Formosa algae MA4 97%(97,91%) Formosa algae Day1. S. japonica Day2. U. pinnatifida Day1. U. pertusa Day5. S. japonica Day5. U. pinnatifida Day5. U. pertusa Fig.4-1. Degradation of the brown alga(Saccharina japonica, Undaria pinnatifida) and green alga(Ulva pertusa) 20 Fig.4-2. Phylogenetic position of MA1, 2, 3, 4 according to 16S rRNA gene sequence analysis. 21 5. 考察 含 既存種を めた生化学的性状を table 5-1, 5-2 に示した。本菌の分類学的検討のために既 知の Foromosa 属細菌である F. algae と F. agariphila との比較を行った。 表 緑 表 えて、本研究で対象となった MA1~4 株はすべてメガイアワビ消化管内より分離された。こ のことから Formosa 属細菌は様々な海洋環境中に普遍的に存在しているものと考えられる。 本菌は海藻分解性試験において 2 種類の褐藻を顕著に分解したことから強力な褐藻分解 能を有していることが確認された。特に褐藻の主要な構成多糖成分の一つであるアルギン 酸に対する高い分解能が大きく寄与していると考えられる。一方で緑藻に対しては顕著な 分解能が見られなかったため、F. algae と同様に本菌の海藻分解能は褐藻類のみに限定され F. algae と F. agariphila はそれぞれ褐藻 面、 藻 面と海水中から分離されている。加 ると示唆された。 判明した本菌の各生化学的性状は MA1~MA4 株の間では違いが見られなかっ た。F. algae との比較ではオキシダーゼ活性、寒天分解性、スターチ分解性、ウレアーゼ活 性、グリセロール利用能、塩分耐性、pH 耐性の 6 項目で違いが見られた。F. agariphila と の比較ではゼラチン分解性、塩分耐性の 2 項目で異なる結果となっていた。このことから 実験により 本菌の生化学的性状は F. algae よりも F. agariphila により近いものであると考えられる。ま 耐 た、本菌は塩分 性が 1~4%、pH 耐性が 6~9 と既存の Formosa 属細菌よりも耐性の範囲が 狭くなっていることも特徴である。 16S rRNA 遺伝子系統解析で 作製 した系統 樹 をもとに系統学 上 での検討を行った。 MA1~4 株は既存の Formosa 属細菌とはクラスターを形成していない。 さらに 4 株の中でも、 MA1 株は MA2,3,4 株と同クラスターではないことがわかった。MA1 株はもっとも相同性 の高い F. algae との相同率でも他の 3 株が 97%であるのに対し、98%と高かった。 以上の結果を総合すると、MA2,3,4,株については既存の Formosa 属細菌との間で生化学 22 相違点が見られること、遺伝子系統解析で異なる系統群であると考えられること から新規の Formosa 属細菌であることが強く示唆された。MA1 株については生化学的性状 において MA2,3,4 株と同一の性状であったものの、遺伝子系統解析での相同性が低いため さらに詳しい検討が必要と考える。 的性状に 23 Table 5-1. Comparing MA1, 2, 3, 4 with F. algae and F. agariphila. Gram staining Morphology Colony color Motility OF test Oxidase activity Catalase activity Flage llum Forming spore Motility of glinding Degradation of Agar Arginate Twee n 80 Geratine Starch Cazein DNA Ure ase Utilization of Glycerol MA1 Rod Yellow O + + + MA2 Rod Yellow O + + + MA3 Rod Yellow O + + + MA4 Rod Ye llow O + + + Formosa algae KMM3553 F. agariphila KMM3901 F. agariphila KMM3962 Rod Yellow O + + Rod Yellow O + + + Rod Ye llow O + + + + + w + + w + + w + + w - + + w w + ‐ + - + - + - + + - - + ‐ + - O, oxidative. +, positive. -, negative. w, weakly positive. 24 Table 55-2. Comparing MA1, 2, 3, 4 with F. algae and F. agariphila. MA1 MA2 MA3 MA4 Formosa algae KMM3553 F. agariphila KMM3901 F. agariphila KMM3962 0% 1% 2% 3% 4% 5% 6% 8% + + + + - + + + + - + + + + - + + + + - 0~6% 1~8% 1~7% 4 5 6 7 8 9 10 11 12 + + + + - + + + + - + + + + - + + + + - + + + + + + - 4 20 25 30 37 + + + - + + + - + + + - + + + - + + + - Require of Na+ pH ℃) Temperature( +, growth. -, non-growth 25 6. 謝辞 論 執筆において終始適切な御指導、御鞭撻を頂いた三重大学生物資 源学部生物圏生命科学科海洋生物科学講座准教授田中礼士博士に心から感謝を申し上げる。 同じくご協力を頂いた家畠俊平博士をはじめ海洋微生物学研究室の方々にも深い感謝を 申し上げる。 本 文に関する研究、 26 7. 参考文献 1. Elena P. Ivanova, Yulia V. Alexeeva, Se´bastien Flavier, Jonathan P. Wright, Natalia V. Zhukova, Natalia M. Gorshkova,Valery V. Mikhailov, Dan V. Nicolau1 and Richard Christen. Christen.(2004) Formosa algae gen. nov., sp. nov., a novel member of the family Flavobacteriaceae. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology , 54, 54 705–711 2. Olga I. Nedashkovskaya, Seung Bum Kim, Marc Vancanneyt,Cindy Snauwaert, Anatoly M. Lysenko, Manfred Rohde, Galina M. 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