PTC の ECAD-MCAD コラボレーションソリューション - PTC.com

PTC の ECAD-MCAD
コラボレーションソリューション
「機械系と電気系の製品設計の統合」
2009 年 4 月
CIMdata 製品レビュー
PTC ECAD-MCAD コラボレーション ソリューション – CIMdata 製品レビュー
ページ. 1
ECAD-MCAD コラボレーション
ソリューション
「機械系と電気系の製品設計の統合」
2009 年 4 月
提供
CIMdata, Inc.
®
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CIMdata, Inc.
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PTC ECAD-MCAD コラボレーション ソリューション – CIMdata 製品レビュー
ページ. 2
ECAD-MCAD コラボレーション ソリューション
「機械系と電気系の製品設計の統合」
CIMdata が作成したこの ECAD-MCAD コラボレーション ソリューション
製品レビューでは、あらゆる業界で企業の電気機械設計を支援する
PTC の提供する製品について述べています。
本書では、ECAD 部門と MCAD 部門のコラボレーションについて
概説するとともに、PTC の ECAD-MCAD コラボレーション ソリューションを
評価し、各ソリューションの問題点とメリットを示します。
1. 概要
2. はじめに
PTC は、連携して動作させることのできる独自の
製品の多くが電気系と機械系の両方の部品とシステムを備え
ECAD-MCAD コラボレーション ソリューション セットとして、
るようになった今日、電気機械設計の重要性はますます大きく
ProSTEP が考案した ECAD-MCAD データ交換フォーマッ
なっています。製品内部の電気系と機械系の関連性が増す
トを採用したソリューションを最初に開発しました。この
につれ、両方の領域にまたがってコラボレーティブに製品を設
ECAD-MCAD コラボレーション ソリューションは、電気系領
計しシミュレートする能力は、製品の正確性と品質を高めるた
域と機械系領域を併せ持つ製品のエンジニアリング設計プロ
めに一層丌可欠となります。以前は、電気系と機械系の設計
セスを支援します。両領域のコンテキストでエンジニアの製
は明確に区別され、2 つの領域間の関連性もわずかでした。
品設計を支援し、製品設計においてより綿密で情報に基づい
しかし、多くの製品に電気機械部品が含まれるようになり、2
た意思決定を可能にします。また、この ECAD-MCAD コラボ
つの領域の相互依存性が格段に高まったことに伴い、今日の
レーション ソリューションは設計プロセス全体を通して活発な
企業は包括的な設計戦略が必要だと認識するに至っていま
コラボレーションを支援することで、設計の革新性を高め、設
す。つまり、孤立した各設計部門が緊密に協力できる仕組み
計変更プロセスを容易にします。多くの企業では、通常は
を提供し、部門の壁を越えて技術革新が生まれるようにする
別々に作業し異なる方法で製品設計を行う複数のチームが
必要があるということです。
電気系と機械系の設計を行っているため、この点は非常に重
そこで、機械系と電気系の両設計部門でコラボレーションを
要です。このようなチームのメンバーの間でコミュニケーション
行うことが、製品開発を支援する上で極めて重要になってきま
をとることは、顧客の要件を満たす高品質の製品を開発する
す。これは特に、構造の複雑化とパッケージの小型化が進む
ために欠かせません。
製品を設計している企業において重要となります。こうした製
重要な点は、本書で解説している PTC のツールはまだ発展
品の場合、機械部品と電機部品の干渉は複雑で重大な問題
途上であるものの、このツールがサポートする ECAD-MCAD
を引き起こしますが、この種の問題は、製品の設計者全員が
コラボレーション戦略を実装することで得られるメリットが、実
密接に協力することで効率よく解決することができるためです。
務的かつ広範囲なメリットを生むということです。企業戦略の
企業における効果的なコラボレーションを阻害する要因は、
一環として ECAD-MCAD コラボレーション ソリューションを
大きく 2 つあります。1 つは互換性のない複数の設計ソリュ
広範囲に採用することで、企業は財務面だけでなく製品の設
ーションを使用していること、そしてもう 1 つは設計部門間に
計品質の面でも多くのメリットを得ることができます。
文化的な違いがあることです。
PTC ECAD-MCAD コラボレーション ソリューション – CIMdata 製品レビュー
ページ. 3
機械系と電気系の両設計部門でこれまで使用されてきた設
降のセクションでは、次の内容について説明します。
計ソリューションは、基本的に互換性がありません。つまり、コ
•
ECAD-MCAD コラボレーション — ECADMCAD コラ
ラボレーティブな設計を行う上での鍵となるデータの共有を、
ボレーションを PLM 戦略 (補足説明を参照) 全体に
各部門の設計者が使用するツール間で行うことができないの
おいて使用した場合の影響と価値についての簡単な考
です。各部門で使用されるこれら従来の設計ソリューションは、
察。
別々のソリューション プロバイダによってまったく異なるデータ
•
ECAD-MCAD コラボレーション ソリューション —
フォーマットとデータ構造を用いて開発されているため、コラ
ECAD-MCAD コラボレーション ソリューションについて
ボレーションを行うにはデータ共有とデータ交換のための何ら
の簡単な展望。また、多くの ECAD ツールと
かの手段が必要となります。これらの統合が進むほど、コラボ
Pro/ENGINEER との統合を可能にする PTC のソリュー
レーションは緊密かつ有効なものとなります。
ションについての説明と CIMdata による評価。
製品のシミュレーションと検証を仮想的に行えることも、製品
•
まとめと結論 — 本書のまとめと所見。
の動作を解析するための重要な能力です。現在、製品のシミ
PLM (製品ライフサイクル管理)
ュレーションは領域ごとに行われています。つまり、機械系の
部門ではアセンブリ動作、熱転送、構造などについてシミュレ
ーションを行い、電気系の部門ではシグナル干渉、熱損失、
その他の電気的要因など、プリント回路基板の相互作用につ
いてシミュレーションを行います。これら 2 つのタイプのシミュ
レーションは現在の CAD ソリューションでは統合されておら
ず、電気系 (制御系と回路) と機械系 (エンクロージャ、アク
チュエータ、モーター、スイッチなど) との間で必要とされる相
互作用は、仮想的な設計環境では十分にシミュレートできま
せん。
PLM とは、一貫性のある一連のビジネス ソリューション
を用いて、製品定義情報のコラボレーティブな作成、管
理、配布、使用を支援する戦略的なビジネス アプローチ
のことをいいます。その対象範囲は、企業全体、そして製
品コンセプトから製造中止に至るまでを含み、人、プロセ
ス、ビジネス システム、そして情報の統合を実現します。
PLM には、データ管理、ロセス管理、CAD/CAM、エン
ジニアリング解析、データ通信、その他の製品開発のプロ
セスが含まれます。
機械設計部門と電気設計部門の設計者が、製品開発プロセ
ス全体を通して、設計上の問題に協力して取り組むことはこれ
3. ECAD-MCAD コラボレーション
までありませんでした。一方の部門の設計者は他方の部門の
問題や用いられる手段についての経験がほとんどなく、このこ
今日の企業が、先に述べたビジネス上の問題やプレッシャー
とがコミュニケーションを困難にしています。両部門の設計者
を解決するソリューションを求めている背景には、より効果的
は互いの設計範囲を、製品設計者が製造エンジニアに対す
に電気系と機械系の設計および解析を統合し、製品開発プロ
るのと同じ姿勢で扱ってきました。つまり、「設計を壁の向こう
セスのコラボレーションと技術革新を促進したいという動機が
へ投げてしまう」やり方です。これでは自由闊達なコミュニケー
あります。
ションを図ったり、両部門間の問題の刷新、協議、早期解決
多くのエンジニアリング プロセスは、コラボレーションによって
のための能力を促進することはできません。この原因の一部
支えられています。その代表例は設計変更の評価と承認です
は技術的な制約にあり、一部は文化的な側面にあります。技
が、コラボレーション能力は革新的な製品の開発を促進する
術的な問題を取り除くことができれば、文化的な問題にも取り
ためにも重要となります。このような製品を開発するためには、
組みやすくなります。
概念設計の段階から開発終了に至るまで、各部門の専門知
本書では、ECAD-MCAD コラボレーションの実施目的、価
識を容易に共有し活用できるような環境が必要となるためで
値、将来についての CIMdata の見解を示し、ProSTEP の
す。コラボレーションを行う上で重要なのは、有効な情報へい
EDMD スキーマに基づいてソリューションを評価します。以
つでもアクセスできることと、コラボレーションに関わる人々の
間で円滑なコミュニケーションを行えることです。これらは、本
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書で解説している技術によって実現することができます。
ためには、プロセスを再考し、文化的な問題や部門間の
問題自体は極めて明確であるものの、ビジネスやプロセスに
壁の問題に積極的に取り組むことが丌可欠です。
関する課題が数多く存在するため、いずれの対策も抜本的な
•
解決策にはなっていません。
PLM によるプロセスとデータの統合 — コラボレーショ
ンから最大の価値を得るには、広範な PLM 戦略の一
環としてコラボレーションを実施する必要があります。こう
することで、他の製品開発プロセス (変更管理など) との
3.1 ECAD-MCAD コラボレーション
より緊密な統合が可能になります。また、コラボレーション
の課題
の過程で作成、使用されたデータを PLM 環境で管理
ECAD-MCAD コラボレーションを効果的に導入したいと考え
し利用できるようにすると、データをより有効に活用するこ
る企業にとって、特に重要な課題がいくつかあります。大切な
とが可能となります。
ことは、PLM の他の重要な要素を導入することで学んだ教訓
•
価値の早期実現 — 価値を早期に示すことで、
を活かして、ECADMCAD コラボレーションのメリットを最大限
ECAD-MCAD コラボレーションのようなプロジェクトに対
に引き出せるようにすることです。特に重要な点を以下に示し
する社内の支持を高めることができます。
ます。
•
ライブラリの同期化 — 実務上の目的のため大部分が
• 複数のソリューション サプライヤ — 電気系と機械系の両
分離されている MCAD と ECAD ライブラリの共通部
方の製品要素を設計できる製品を提供している CAD ソリュ
分を統合します。
ーションプロバイダはありません。したがって、最も効率的なコ
•
解析とシミュレーション — ECAD-MCAD コラボレーショ
ラボレーション環境でも 2 社以上のベンダーが提供する製
ンの一環として、完全なシステム シミュレーションを行い
品のデータを扱うことになります。
ます。これにより、各領域で個別にシミュレーションを行う
• ECAD と MCAD のデータ モデルが異なる— 2 つの領
場合よりも正確に製品を理解、検証できます。
域で使用されるデータの基本フォーマットと基本構成はまった
もちろん、成功を収めるために実施できることは他にも数多く
く異なります。ECAD ソリューションは通常、3 次元データ
あります。大規模な情報システム ベースのプロジェクトにおい
(特にレジスタや IC チップなどの 3 次元電気部品のデータ)
ては、効果的なプログラム管理、組織幹部の関不、適切な予
を扱いません。しかし、3 次元データは機械設計プロセスで
算、社員の協力はいずれも欠かせません。ECAD-MCAD コ
使用される一般的なフォーマットです。機械設計とのコラボレ
ラボレーションによってもたらされる価値を考えれば、それだけ
ーションをサポートするには、電気部品のライブラリが 3 次元
の労力を費やす価値は十分にあります。
か尐なくとも 2-1/2 次元の形式でなければならず、さらに機械
設計のシステムと共有する必要があります。
• 設計者が両方の領域で作業していない — 両部門の設計
3.2 ECAD-MCAD コラボレーション
がもたらす価値
者のコラボレーション能力は、非常に限定されています。これ
企業がコラボレーションからメリットを得る方法は数くあります。
らの設計者は共同作業に丌慣れで、データを他者と共有した
ビジネスの価値を高める一般的な機会には以下のものがあり
がらない場合があります。したがって、一方の部門が相手側の
ます。
要件を考慮せずに変更を提案するといったことが起こりえます。
•
変更管理の改善 — コラボレーションは部門間で変更
そこで、各部門の設計者が、自分達の責任はコラボレーショ
の調整を行うのに役立ち、変更の実装に要する時間の
ンを行う場合も変わらないということを理解することが重要とな
短縮と変更時のエラーの削減に貢献します。
ります。つまり、関連する情報を迅速に入手しながらも、自分た
•
再作業の削減 — コラボレーションを通してコミュニケー
ちの設計分担に対する責任は変わらない、ということを理解す
ションを改善し、コストの大きな再作業につながりかねな
る必要があるのです。
い設計エラー(特にコストが甚大になる製品開発プロセス
•
見直しのプロセス — コラボレーションを効果的に行う
PTC ECAD-MCAD コラボレーション ソリューション – CIMdata 製品レビュー
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•
•
•
•
•
の終盤で発生するエラー) を削減します。
でコラボレーションのプロセスを支援します。第一に、電気系
品質の向上 — コラボレーションにより設計者は設計の
と機械系のそれぞれの設計者が、既に慣れ親しんでいる製品
反復をさらに多く行えます。これにより製品の品質を向上
設計環境で作業を続けられるようにします。これにより作業へ
できます。
の混乱は最小限に抑えられます。第二に、ビジュアリゼーショ
製品設計の改善 — 電気制御系を機械系のデバイスに
ンコンポーネントにより、一方の部門の設計箇所が他方の部
接続して同時にシミュレーションを行うシステム レベルの
門の設計にどう作用し影響を及ぼすのかを綿密に検証できる
シミュレーション環境によって、設計の丌備が早期に見つ
ようにします。つまり、自分達の作業のコンテキストで相手の作
かる可能性が高まります。これによって製品の品質が向
業を見つめられるようにしつつ、質問、意見、問題を文書化し
上し、より多くの時間を技術革新に費やせるようになりま
相手に伝えることのできる適切な手段を提供することにより、
す。
両部門間で確実にコミュニケーションを図れるようにするという
より迅速な設計のサポート — 設計に関する決定を早期
ことです。Windchill などのデータ管理ソリューションを活用す
にシミュレートし、評価できるようになります。これによって
ると、コラボレーションを通した対話のすべてを記録し、製品
設計プロセスの迅速化を図るとともに、プロセスの終盤で
設計プロセス全体における知見として保存することが可能とな
意思決定が下された場合のチーム内での丌必要な混乱
ります。これによって知識の蓄積が促進されることになり、この
を最小限に抑えることができます。
ことが将来的な技術革新の実現を促すことになります。
開発期間の短縮 — コミュニケーションの改善、意思決
ECAD-MCAD コラボレーションでは、データ交換を通じて、
定の容易化、エラーの削減を図ることで全体的な設計期
PCB ECAD データと機械アセンブリの 3 次元 MCAD モ
間を短縮し、製品の製造をより早く開始できるようになりま
デルを完全な電気機械製品設計のコンテキストで参照できる
す。
ようにしています。製品設計において設計変更プロセスをサポ
技術革新の促進 — コラボレーションによる相互作用で
ートするには、ECAD と MCAD の設計データを相互に交換
従業員がより多くの新しいコンセプトを試せるようになりま
して、初期段階のベースライン設計と設計プロセス全体を通
す。
じて発生する WIP のあらゆる変更をやり取りできるようにする
ことも必要となります。
4.
ECAD-MCAD
コラボレーション ソリューション
現時点では、IDF と IDX の 2 つのフォーマットをデータ交
換の促進に利用できます。IDF (Intermediate Data Format)
は、ECAD と MCAD の設計ツール間の PCB データの交
PTC は電気系と機械系の設計部門間のコラボレーションを支
換に業界全体で長年にわたって使用されているフォーマット
援するソリューションを開発しました。PTC のソリューションの
です。IDX (Incremental Design Exchange) フォーマットは、
1 つはあらゆる ECAD プリント回路基板 (PCB) 設計ツール
IDF の欠点を克服するために PTC などと協力して ProSTEP
とともに使用でき、別のソリューションは ProSTEP の EDMD
が開発した新しいフォーマットです。このフォーマットは、デー
スキーマを採用した ECAD ツールとの直接的かつ非常に緊
タの移行に使用する当該ファイルの拡張子が .IDX であるこ
密な統合を可能にします。現時点で、PTC は EDMD 標準を
とから一般に IDX と呼ばれており、ProSTEP EDMD オープ
採用した ECAD/MCAD ベンダー 2 社のうちの 1 社です。
ン スキーマに基づいています。ユーザーにとっての問題とし
PTC のアプローチはどちらも、機械設計に Pro/ENGINEER、
ては、EDMD スキーマは 3 次元データの移動を可能にす
ビジュアリゼーションに ProductView、データとプロセスの管理
る一方で、2 次元の電気部品を 3 次元表示する統一された
に Windchill を使用します (Windchill は必須ではありませ
手段がないことが挙げられます。ユーザーは機械系の設計者
んが、より効果的な管理が可能になります)。
が必要な作業を行えるように、このデータの 3 次元版を作成
以降で解説する 2 つのソリューションは、多くの重要な方法
する必要があります。そもそも 3 次元データは、特に PCB
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が携帯電話のような小さな筐体に組み込まれている場合に、
通しているツール環境で作業を行います。
正確なクリアランス解析と干渉解析を行うために必要です。ま
た、気流解析や熱解析を行うのにも 3 次元データが必要と
なります。このような解析では、PCB 上のコンポーネントの質
量と形状が重要な要素になります。PTC のソリューションは、3
次元の電気部品の共有ライブラリも、ECAD データからこれ
らを自動的に作成する手段も提供していません。
IDX ファイルの重要な特徴は、データへのインクリメンタルな
変更を保持することができる点です。つまり、データの一部を
変更するたびに PC 基板を定義するデータのすべてを差し替
える必要がありません。これは、データ サイズが大きくしかも
完全なデータセットでしかやり取りできない IDF データ交換
フォーマットと比べ、大きな改善点といえます。インクリメンタル
データは、ほぼリアルタイムのコラボレーションの実現と設計
変更プロセスの改善にとって、極めて重要な役割を果たしま
す。
IDX ファイルではユーザーのコメント、サインオフ、日付など
のトランザクション情報も保持できます。このため、設計変更
の詳細のほか、変更をリクエストした人物や変更を行った人物
の追跡情報を伝達することにも使用できます。IDX ファイルに
は、ECAD と MCAD のユーザーに関係する PCB 設計の
図 1 — ECAD に依存しない基本統合アプローチ
ほとんどすべての側面を含めることができます。しかしこのファ
(PTC 提供)
イルからは、パッドスタックや詳細な電気系ネットリスト情報とい
設計者はもう一方の設計ツールがどのように動作しているのか
った ECAD 固有の構造は意図的に取り除かれています。現
を知る必要はありません。
時点では、EDMD スキーマのすべての機能が ECAD ベン
たとえば設計変更の影響を調べるなど、両部門間のコラボレ
ダーや MCAD ベンダーによってサポートされているわけで
ーションをサポートするには、ビューイング コンポーネントと共
はないため、交換できるデータの量には制限があります。PTC
通のデータ フォーマットを追加します。これらは、ECAD 設
によると、このデータの制限は将来のリリースで取り除かれる予
計者が MCAD データを、MCAD 設計者が ECAD データ
定です。
を参照して検証するために必要となります。このシナリオでは、
データ交換のサポートに IDF か EDMD オープン スキー
4.1 ECAD に依存しないソリューション
マのいずれかを使用できます。EDMD スキーマを使用する
このソリューションとその方法論は、ECAD ソリューションが
場合、Pro/ENGINEER では、ECAD ユーザーが入力した位
Pro/ENGINEER と緊密に統合されていない状況をサポートし
置情報 (部品や適用領域 / 除外領域といった要素の移動
ます。図 1 では、PCB アセンブリ オーサリング ツールは
方法を MCAD ユーザーが理解できるようにするための情
Pro/ENGINEER ですが、PCB レイアウト オーサリング ツー
報) を直接受け取ることができます。
ルには任意の PCB 設計ソリューションを使用できます。これら
より緊密に統合された ECAD-MCAD コラボレーション ソリュ
2 つのツールは、それぞれの本来の機能である機械設計と電
ーションの場合も同様ですが、ここで重要なのは、機械系の
気設計の機能を提供します。両部門の設計者は自分達の精
設計者が 3 次元で表したデータを電気系の設計者が参照
PTC ECAD-MCAD コラボレーション ソリューション – CIMdata 製品レビュー
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できるということです。同様に、機械系の設計者は基板レイア
Windchill を通じて、機械系と電気系の両設計部門間で設計
ウトやそのコンポーネントを参照できます。このため、一方の部
の変更を伝達することができます。Windchill を使用した場合
門の設計者が変更を提案した場合、その変更を行う前に両
は、変更プロセスや変更データだけでなく変更理由も管理で
方の部門で設計に不える影響を評価することができます。さら
きるため、設計変更に関する知見を蓄積していくことができま
に、変更は同じプロジェクトに関わる関係者の間で共有するこ
す。
とができます。
両部門をまたがるシミュレーションや解析はこのシナリオでは
たとえば、電気系の設計者が提案してきた部品の移動が穴や
サポートされません。しかしこれらのツールは、統合が緊密で
マウンティング ブラケットの位置と干渉する場合、機械系の
ない一方、複数の企業が異なる ECAD および MCAD ツ
設計者は 2 次元 ECAD でのビューに加え 3 次元環境で
ールを使用するサプライチェーン環境で大きな効果を発揮し
もその変更を明確に確認できます。そして、干渉する機械部
ます。サプライチェーンのユーザーは、多数の MCAD フォ
品を移動するか、干渉が起こらないような形で問題の電気部
ーマットのデータだけでなく、IDF や IDX フォーマットの
品を移動するよう電気系の設計者に依頼するかのいずれかの
ECAD データもインポートできるためです。このソリューション
対応を取ることができます。後者の場合、電気系の設計者は
シナリオにおけるコラボレーションは、次に説明する緊密に統
3 次元の機械設計を参照して機械系の設計者の問題を把握
合されたソリューションほどインタラクティブとはいえず、また変
できます。これにより、コミュニケーションが大幅に改善される
更承認プロセスの完全な自動化と統合をサポートしていませ
ことで、変更の評価に要する時間を劇的に短縮して製品の設
ん。
計プロセスを迅速化できる可能性が生じます。
PTC は ECAD と MCAD のユーザー向けに、ECAD およ
4.2 緊密に統合されたコラボレーション
び MCAD ツールを緊密に統合することなく ECADMCAD
提案された変更が電気系と機械系の設計者の間でダイナミッ
コラボレーションを行えるようにするツールスイートを提供して
クに共有される、より綿密なコラボレーションを促進するため、
います。ProductView ECADCompare/Validate は EDMD ス
PTC は、一層緊密に統合された ECAD-MCAD コラボレー
キーマを利用します。
ション ソリューションを開発しています。このソリューションで
このツールは ECAD および MCAD データの 2 つの設計
は、ProSTEP の EDMD スキーマを採用した ECAD ツー
の相違点を検索して、両設計の同期に関する問題を識別す
ルのユーザーと Pro/ENGINEER のユーザーはそれぞれ自
る場所を抽出します。このツールは各設計者がインタラクティ
分自身の CAD 環境で作業しながら、部品や機能の位置情
ブに参照できるレポートを生成します。ECAD 側では、電気系
報を互いに直接参照したり交換することができます。現状では、
の設計者は ProductView ECAD Compare を使用して、提案
Mentor Graphics が EDMD スキーマを採用している唯一の
された変更を確認できます。機械系の設計者は、変更された
ベンダーです。
内容を後から参照およびレビューし、IDX データとしてインポ
図 2 に PTC ソリューションの 3 つの主要コンポーネントの
ートすることができます。InterComm Expert は、ECAD 設計
統合を示します。ここでは、MCAD データのオーサリングに
を MCAD 設計のコンテキストでニュートラルに参照できるよ
Pro/ENGINEER、ECAD データの参照に InterComm Expert、
うにします。これにより、ECAD の変更だけでなく MCAD の
変更管理に ProductView Validate をそれぞれ使用しています。
変更に関しても詳細に検証することが可能となります。MCAD
各コンポーネントは互いに連携し、インタラクティブな双方向
の変更は ECAD ツールへ直接はインポートされませんが、
コラボレーションを実現します。この緊密な統合のシナリオで
InterComm Expert を使用して視覚化できます。これらのツー
は、データ交換に EDMD スキーマが使用されています。
ルでは、電子メールや全社規模の PLM を実現する PTC
PTC ECAD-MCAD コラボレーション ソリューション – CIMdata 製品レビュー
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設計者は EDME スキーマを使用して、提案された変更の問
図 2 — Pro/ENGINEER での ECAD-MCAD コラボレーション。提案された変更を検証している様子
題点を伝えることができます。
(PTC 提供)
使用上のシナリオでは、ECAD および MCAD のユーザー
各部門の設計者はビューイング ツールや解析ツールを使用
は、データとプロセスを管理する Windchill を用いてデータ
して、提案された変更を受け入れられるかどうかを判断します。
および変更を共有するか、電子メールを介してデータを交換
設計者は自分達が使い慣れた環境で提案を解析し、提案を
できます。ここでは、インクリメンタルなデータの更新を行う
受け入れる、拒否する、対案を提示するといった対応を取るこ
EDMD スキーマの機能が大きな効果を発揮します。各ユー
とができます。このプロセスは合意が形成されるまで続きま
ザーが EDMD データのベースライン セットをロードすると、
す。
それらデータのインクリメンタルな変更を通常よりもはるかに小
PTC の ProductView Validate ツールを使用すると、EDMD
さいファイルで共有できるようになります。これによって、コラボ
データを検証してインタラクティブなレポートを作成できます。
レーションはさらに柔軟になります。
このレポートは、変更内容をより深く理解し変更による影響を評
ECAD および MCAD 製品には、各 CAD 製品でオーサリ
価するのに役立てることができます。
ングされた EDMD (IDX) データの参照や拡張に利用できる
ProductView ECAD Compare ツール (図 3) は PC 基盤設
ビューイング技術が用意されています。設計者が変更を行っ
計の異なる 2 つのバージョンを比較するのに使用します。こ
た場合、その変更は EDMD スキーマ データ セットに反映
のツールは前バージョンからの差分を EDMD スキーマ内に
され、他方の部門の設計者はそれを 3 次元設計コンテキス
記録して、機械系の設計者が重要な情報をすべて把握でき
トで参照して設計に適切な変更を加えることができます。また
るようにします。
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緊密に統合されたこの
ツール セットを用いると、
MCAD チームが
Pro/ENGINEER を使
用し、ECAD チームが
EDMD スキーマを採
用しているツールを使
用している企業におい
て、極めて柔軟な変更
評価プロセスを実現で
きます。しかしこのツー
ルは、電気系の制御と
機械部品が MCAD 環
境で定義されていると
おりに相互作用している
かどうかを評価するシス
テム シミュレーションの
機能をサポートしていま
せん。ネットリストやその
他の電気系データが利
用できないため、機械
系の設計エンジニアも
また、適切なケーブル
図 3 — PTC の ProductView ECAD Compare ツールで PC 基盤設計の
接続や回路連続性など
2 つの状態を比較し、変更を強調表示
の電気系の相互作用
(PTC 提供)
テストを行えません。
Mentor Graphics の
Expedition PCB と Board Station XE、そして PTC の
のツールを使用する企業はさらに大きなメリットを享受できるよ
Pro-ENGINEER は、EDMD 標準を採用し、コラボレーション
うになるでしょう。
のためのこのレベルの統合を実現した最初の ECAD および
MCAD ツールです。EDMD は公開されている標準であるた
5. まとめと結論
め、他の MCAD および ECAD ベンダーも将来的にこの標
準を採用して同様の機能を実装するものと予想されます。
電気機械設計は、多くの企業にとって極めて重要な製品設計
上述のツール セットはともに、電気系と機械系の両設計部門
プロセスとなっています。企業内の電気系と機械系のすべて
間に存在するギャップを埋めて電気機械製品の開発企業を
の設計者がコラボレートすることは、製品設計を改善し革新的
支援します。これらのツールは、時間の経過とともに進化して
な製品の開発を促進するために必要丌可欠です。しかし、電
いくものと予想されます。他の PC 基盤設計ツールや
気系と機械系の設計を統合しコラボレーティブな設計環境を
MCAD ツールともより緊密に統合できるようになれば、これら
実現することは決して容易ではありません。PTC がこの分野で
成し遂げたことは非常に前向きに評価でき、今後の製品開発
PTC ECAD-MCAD コラボレーション ソリューション – CIMdata 製品レビュー
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の方向性を指し示すものといえます。さらに、現時点で提供さ
作業のコストを低減。電気系と機械系の各設計部門間の
れているソリューションは、具体的なメリットをももたらすことが
技術革新を促進して設計サイクル時間を短縮。たとえば、
できます。
コラボレーティブな設計プロセスを採用している電子機
ECAD-MCAD コラボレーションから生じるメリットには、設計
器メーカーでは、最大 50% の設計期間短縮を実現して
変更に対する意思決定の迅速化、設計における機能的有効
います。
性の強化、革新的な製品設計の促進があります。
•
設計作業を連携させることで BOM のメンテナンスに要
ECAD-MCAD コラボレーションが製品開発プロセスにおい
する時間を短縮。たとえば、複数の部門間でコラボレー
て中心的な役割を果たすと、多くの肯定的な影響が生まれま
ティブな設計手法を活用している消費者製品開発企業
す。これらの影響は大きく分けて、ビジネスの価値向上に貢献
では、BOM のメンテナンスと再作成のコストを 50% か
するものと、製品開発コストの削減に貢献するものとに分類す
ら 70% 削減しています。
ることができます。ビジネスの価値を高める一般的な機会には
ECAD-MCAD コラボレーション ソリューションを企業戦略と
以下のものがあります。
して広範囲に導入すると、企業は財務と製品設計の質の両面
•
電気系と機械系の設計の問題を適切に解決することで
でメリットを生むことができます。サポート技術とプラクティスの
設計の品質を改善。
導入は、企業の特定のビジネス戦略の一環として、
設計プロセスを効率化、共有化して製品の設計および
ECAD-MCAD コラボレーションの効果を最大限活用するた
開発期間を短縮。
めの文化的側面の改革とともに行う必要があります。これによ
コラボレーションを強化することにより、技術革新を促進
って、将来における価値を一層大きくすることができます。
して継続的な改善を実現。
PTC は、幅広い業種の企業における機械設計および電気設
開発プロセスにおける重要な問題を早期に解決して市
計を統合する ECAD-MCAD コラボレーション ソリューション
場投入期間を短縮。
のリーダー企業です。設計変更などのプロセスでのコラボレー
より迅速な製品開発を可能にして投入する新製品の数
ションは極めて重要で有益ですが、ECAD-MCAD コラボレ
を増やす。
ーションで最大限のメリットを得るためには、製品開発、シミュ
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理解しておく必要があるのは、コストを削減することよりもビジ
レーション、および検証におけるニーズを満たす、幅広い部門
ネス価値を高めることの方が、数値化は困難ながらはるかに
間コラボレーションを実現する必要があります。このためには、
大きなメリットをもたらす場合が多いということです。なぜならビ
電気系と機械系の両設計部門が今利用できるものよりさらに
ジネスの価値を高めることは、割合としては通常大きくはない
広範囲のデータ セットを共有することが必要です。長期的な
ものの、全体としての収入増をもたらすためです。製品開発コ
目標は、製品のソフトウェア、電気部品、機械部品を含む完
ストの削減分はより直接的かつ容易に計算できます。典型的
全なシステムの相互作用をシミュレートできるようにすることで
なコスト削減効果には以下のものがあります。
す。
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部門をまたがって提案された変更の評価に必要な労力
現在の製品スイートは既に ECAD-MCAD コラボレーション
を削減し変更管理プロセスを支援することで、変更作業
の基盤として機能しますが、PTC は機能の拡張を継続すると
に要するコストを削減。たとえば、いくつかの電気機械製
述べています。たとえば、ライブラリの同期化とシミュレーショ
品メーカーとコンピュータ システム メーカーでは、20%
ン モデルは今後のリリースで取り組む目標とされています。ま
から 60% のサイクル時間の短縮と設計変更における最
た CIMdata では、より緊密に統合されたソリューションが他の
大 60% の効率向上が実現されています。
ECAD および MCAD ツールに対応することは、このスイート
機械システムと電気システムの仮想的なシミュレーショ
の有用性とメリットを高めるために極めて重要であると考えて
ンを支援して設計評価のコストを削減。
います。
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電気機械解析をライフサイクルの早い時期に実施して再
PTC ECAD-MCAD コラボレーション ソリューション – CIMdata 製品レビュー
ページ. 11
CIMdata について
CIMdata は製造業向けの世界的な独立系コンサルテ
日本において国際カンファレンスを開催、PLM に焦点
ィング企業。PLM (製品ライフサイクル管理) の活用に
を当てた業界の啓蒙にも尽力している。北米、ヨーロッ
より製品開発やサービス提供を改善する方法について
パ、アジア太平洋といった世界中の地域の顧客にサー
戦略的なアドバイスを行っている。業務プロセスと最新
ビスを提供している。
テクノロジーを自在に融合させた PLM ソリューション
CIMdata のサービスの詳細については、弊社ウェブサ
に関する高い知識、スキル、方法論を持つ。
イト (www.CIMdata.com) をご覧いただくか、下記まで
PLM ソリューションのナレッジ、経験、方法論に優れた
お問い合わせください。3909 Research Park Drive,Ann
企業やベンダーと協力関係にある。
Arbor, MI 48108, USA. Tel: +1 (734) 668-9922. Fax:+1
コンサルティングに加え、市場調査、Web による PLM
(734) 668-1957. ヨーロッパ : Siriusdreef 17-27, 2132
関連の情報発信、出版も行う。また、米国、ヨーロッパ、
WT Hoofddorp, The Netherlands. Tel: +31 (0)23
568-9385. Fax: +31 (0)23 568-9111.
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