正常皮膚のメラノサイト及びメラニンの所見 - 日本皮膚科学会雑誌 検索

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日本皮膚科学会雑誌 第72巻 第11号
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正常皮膚のメラノサイト及びメラニンの所見
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特にそれ等の分布について
池 田 重 雄*
Histologicalstudies on Melanin and Melanocytes of the Normal
Human
Skin
with
S pecial Reference to Their Distribution
Shigeo
Ikeda
l
蔓
1)
進歩と共に,各種皮膚色素異常症に関する研究も日を追
研究方法
って進歩し,その臨床形態学及び発生病理学,惹いて
材料
は治療の方面に到る迄,実に多岐に亘る報告か相次いで
標本作成方法 ,
なされている.又本邦に於ても,皮膚形成外科方面で各
メラノサイトの算出方法
種植皮術及びskin
研究結果
されるに及んで,白人ではそれ程問題とならなかった術
幻幻
緒言
厦
/・^
/^
1 <M
/■ \ /-^
TO
-^
/- \
lO
戒)
身体各部位に於けるメラノサイトの分布状況
メラノサイトの数と年令,性別との関係
abrasion technique
等か広く施行
後色素沈着を屡く経験する様になり,之にたずさわる医
師の問では,かなり重要な問題として取り上げねばなら
メラノサイ`トの形態
なくなって来ている.一般の皮膚色素異常症及至は皮膚
メラノサイ1ヽの表皮内に於ける位置
形成術後の色素沈着の問題を検討する為には,先ず日本
表皮突起部及び乳頭上表皮部に於けるメラノサ
人の正常皮膚に於けるメタノサイト及びメラエン沈着の
イ1ヽの分布状態
状況に就き検討を加える事を基本的な課題として採り上
皮膚表面及び表真皮境界の凹凸及び皮膚附属器
げる必要かあろう.よって著者は先ず日本人の正常皮膚
て1)表皮真皮境界凹凸の一般
II 研究方法
く2)陰嚢に見られ,た真の意味での表皮突起
1)材料:昭和32年6月初句より昭和33年1月下旬迄
=「(8)掌紋
のほゞ8ヵ月間に亘って,主として東京警察病院皮膚科
く4)毛盤
に於ける皮膚形成術に際して身体各部位より約152コの
(6)毛群
皮片を採取し,これを実験に供した(表I).
マ)手掌,足紋に於けるメラノサイト
2)標本作成方法:表皮を真皮より剥離する方法に
S)皮膚附属器に於けるメラノサイト
は,(a)酵素系を利用するもの,例えばBillingham
お
に於けるこれ等の問題に就いて検索を加えて見た.
作口
,の分布
& Medawar及びSzaboのトリプツソ溶液,
Becker,
Fitzpatrick & Montgomery等のパソクレアチソ溶液,
i)正常皮膚に於けるメラ=ンの分布状況
10)メラエン沈着量とメラノサイトの数との関係
(b)塩類溶液を用いるもの,例えば,
Staricco & Pinkus
の2N-NaBr等があるが,著者は後者のStaricco
I 緒 言
kuSの方法に略々準拠して上記152
最近メラノゲネーシスの基礎医学的方面からの研究の
離し,これにDopa反応を施行した.
&
Pin-
=の皮片の表皮を剥
* 東京大学医学部皮膚科教室(前主任 北村包彦教授,主任 川村太郎教授)
From tlie Department of Dermatology (Previous Director: Prof. Kanehiko
Taro Kawamura),
Faculty of Medicine, University of Tokyo, Tokyo.
―
836 −
Kitamura,
Director: Prof
83□
昭和37年11月20日
Table l Material
Sheets of Separated epidermis
Head
Head
6
2
Forehead
3
1
1
4
2
2
1
3
1
2
3
8
8
2
2
3
Lower eyelid
Preauricular region
Retroauricular region
Cneek
Face
Tip of nose
Nose
Upper lip
Helix
Auricular
Chin
Neck
Upper extremities
Deltoideal region
Axilla
Extensor side of upper forearm
Flexsor side of upper forearm
Flexor side of forearm
Elbow joint
of hand
Palm
Palmar side of flnger
Tip of finger
Back of finger.
Flexor side of hand joint
Inguinal region
Inner side of thigh
Frontal side of thigh
Back
of foot
Sole
Inner lower part of ankle joint
Anterior, chest
Lateral
Chest
lobuie
Lateral neck
Anterior
neck
Posterior neck
Back
Lower eχtremities
−
chest
Supraclavicular
r egion
Infrac】avicularregion
Breast
Trunk
Abdomen
Back,Lumbar
& Hip
Around
the navel
Abdomen
Head
of the ilium
0
3
0
1
1
2
4
1
4
4
3
2
5
0
0
2
0
1
1
4
0
1
、 2
1
0
0
5
5
0
5
5
1
1
1
0
0
1
1
33
1
2
2
2
12
3
3
1
2
2
19
2
0
2
0
10
2
1
0
0
2
1
3
3
2
Scapular region
2
Back
2
Hip
3
2
1
3
1
1
Lumbar
Vulva
Prepuce
Genital
Vertical sections
Penis
Scrotum
Perineum
Perianal region
Total
0
5
1
4
5
0
9
2
3
1
2
152
1
120
838
日本皮膚科学会雑誌 第72巻 第11号
せいぜい2 cm- 迄の大きさ以下の皮片を採り,出来得
これ等の身体各部位に於けるメラノサイトの数の相違は
-る限り皮下脂肪及び真皮をば良く切れる鋏で除去,生理
発表者により可成り異なるが,この事は著者の得た成績
ダ的食塩水中で軽く洗m,
にっいても云える.即ち彼等の身体各部位に於ける例数
2N-NaBr溶液中に室温で3
乃至8時開放置する.冬期は夏期に比し剥離に要する時
か自験例と比較すると相当に異なる事,但しStarrico
「欄が長びくが15乃至20°C前後の保温箱の中に入れパずこ
Pinkusは手掌,足耽にっいては全然メラノサイトの数
jれを防げる.次に表皮を丁寧に剥離し,約1分間蒸溜水
&
を検索していないが,著者はこれ等を夫々上肢,下肢に
に入れ,直ちに1‰緩衝Dopa溶液中に37°Cで1時間
算入している事等のデーターの集め方にも多少原因して
.浸した後,新らしい同様のDopa溶液に移して,37°C
いる様である,
-で4乃至7時間浸す.この間反応の進行状況を30分毎に
2)メラノサイトの数と年令,性別との関係
2つ観察し,個々の標本により至適と思われる染色結果が得
Staricco & Pinkusはメラノサイトの数は年令,性
=られた所で取り出す事が望ましい.充分染まったら蒸
別には特別な関係は認められないと論じているが,七の
溜水で洗淮,次に10%ホルマリン溶液中に移し,1晩放
正確なデーターを挙げていない.茲に於て著者は1才よ
グ置し,翌日脱水,透徹,真皮側を上に向けて封入する,
り70才に到る迄の男性12例,女性21例,計33例について
3)タラノサイトの算出方法:鏡胴を垂直にした顕微
大腿内側のメフノサイトの数を算出し,年令及び性別と
ニ鏡にCamera-Lucidaを取り付け,スライド上に目盛板
の関係を検討して見た(表Ⅳ,
■(Micrometer)を置き,その500μ平方の四角形を顕
i)年令的区分として1−5才,6¬13才,
ヅ微鏡脇の.机上の紙に.描写しておく.次に目盛板を被検標
才,41才以上の4区分に分ち,夫々の平均値を算出する
本に取換え,
Dopa陽性メタノサイトを逐一先に描いた
・四角形内に描写する.同一標本につき,8∼16コの四角
形について上記操作を繰り返えし,描¥したjラノサイ
と,夫々819,
Fig. 2 ).
14―40
896, 842, 890となり,仝例の平均値
846と大差なく,これからしてもメ夕ノサイトの数は年
令には殆ど影響されない事を知り得た.
下を算え・てご毎平方粍に換算した.
ii)男性12例の平均値は894,女性21例の平均値は
4)タIラノサイ.トの形塵,位置,大きさ等の観察:上
818ピ,これも全例の平均値846と大差なき事より,メラ
l記剥離標本と同時に,垂直切片による・Blackberg-Laidlaw
のDopa反応をJ約120例に併せ施,行した.尚タラノサ
イトとyラニン沈着との関係を検討する為,
152例全例
ノサイ’トの数は性別にも殆ど影響されない事を知った.
3)メラノサイトの形態
メラノサイトの形態学的検索には.
にH.E染色, "Masson-Zimm'ermann染色(Pyronin-
応,
'Methylgrun後染色)を施し,.微細なjラニソ穎粒の
金法.
C2)チロジナーゼ反応.
(5)メチレンブルー染色,
(1)
Dooa
5
(3)鍍銀法,(4)鍍
(6)クリスタル・
追求の為には,必要に応じて無染色標本を作成した.各
ヴィオレット染色等の方法かあるが,著者は表皮剥離標
術式に関しては.夫々の原著に譲る.
本及び従来の垂直標本に夫々Dopa反応を施行,更に
ni.研,究結果
垂直標本には Masson-Zimmermannの鍍銀法(M-Z
1)身体各部位に於けるメ.ラ.ノサイトの分布状況
と略す)を応用して検索に供しだ.茲では主として前者
《Population-density)
に於ける所見に就いて述べ,併せて後者の所見に就いて
著者か得た成績は表IIに示す姐くであり,これを図示
も述べる事にする.
゛するとFig. 1 の如ぐになる.メラノサイトの数は,同
メラ・ノサイトは細胞体(Perikaryon)及び樹枝状突
・一部位でも個人による差異が甚だしい事,又同一個人に
起(Dendrites)よりなり,細胞体内にはDopa陰性の
あつて右局処的分布状況が可成り異なる事は特記すべき
円形乃至楕円形の核を有する.細胞体は円形,紡錘形,
,所見であった.次に著者の得た結果をSzabo,
半月形,不規則形等の種々の形態を示し,これより繊細
Staricco &
IPinkusの得た成績と比較し,一括・して表にすると表
な樹枝状突起が多極性乃至は二極性に発生し(主枝),更
Ⅲの如くになるムメラノサイ小の分布密度の高いもの
にこの主枝より数コの不規則な長短種々の突起(副枝)
から順位をつけて並べて見ると,陰部>頭部,顔面,頚
が角型に繰返し分枝している.これ等樹枝状突起は互
・部=き=上肢>背部>胸部>下肢>腹部の順となる.一方
に吻合し,合胞体を形成しているかに思われる所見を
iStaricco & Pinkusのデーターでは.,:陰部>頭部,顔
身体諸々に認め得る.合胞体の所見は正常状態では認
J,頚部=背部>上肢>下肢>胸部>腹部の順となる.
め難いと論ずる学者もあるが,メラノサイトの数か多
紹和37年11月20日
839
Table II Melanocyte
Case#
Age
Sex
counts
#of Mela nocytes
Specific
Location
Mean
Head and neck
1
2
F
Scalp
2
20
3
30
4
16
Scalp
Scalp
Scalp
Scalp
Scalp
1044
6
17
M
M
M
M
M
7
22
M
Forehead
972
8
18
M
Forehead
872
9
22
Forehead
10
21
5
9
1018
1016
1014
964
716
824
11
25
12
17
M
M
M
M
13
19
F
Cheek
1620
14
34
F
Cheek
1036
15
19
F
16
14
F
Cheek
Tip of nose
1140
17
14
F
Nose、
18
25
F
Nose
19
19
F
20
ヱ9
F
Upper lip
Upper】ip
21
17
Auricu】e
804
22
17
M
M
Auricule
792
23
16
F
Auricule
24
34
25
19
F
F
Chin
Lateral neck
26
16
F
Lateral neck
27
19
F
Anterior neck
28
28
F
Anterior neck
988
29
18
M
Anterior neck
840
30
17
M
Anterior neck
688
31
32
M
Posterior neck
1300
32
30
M
M
Posteriorneck
1004
Posterior neck
988
33
46
Lower eyelid
1520
Preauricular region
1160
Retroauricular region
1228
916
876
756
1200
lOOS
708
]1.428
た.尚Staricco
1047、2
9圓
864
1080
Mean:
べ,形もやら大きく,樹枝状突起の発達の良いものか多
962
9ド
1010.4
& Pinkus‘1)は,胸部,腹部,四肢に
≒ヽ部位,例えば陰部,顔面,項部,頚部では殆ど毎常認め
あっては二極性のメラノサイトが多く,顔面,陰部にあ
られた(Fig.
っては多極性,星芒状のメラノサイトが多いと論じてお
8).又樹枝状突起には,水平に表真皮境
才界に沿って伸びるもの(水平突起)と,上方にマルビギ
るが,著者の観察し得た範囲では,胸部,腹部,四肢に
ー細胞聞隙中を伸びるもの(垂直突起)とかあるが,剥
あっても多極性,星芒状をなすメラノサイトが多く,僅
囃標本と垂直標本とを比較すると,前者で見る方がやゝ
かに双極性のメラノサイトを認める程度で,彼等の説く
大く且つ長い印象を受けた.又身体各部位に於いてメラ
程はっきりした所見は得られなかった.又少数の短かい
ノサイトが特殊な状態を示すが如き所見は得られなかっ
樹枝状突起を有する小型のメクノサイ・.トの多数存在する
840
日本皮膚科学会雑誌 第72巷 第11号
Table
Case#
Age
II Continued
Specific
Location
Seχ
#of Mela nocytes
Mean
Chest
1
Z5
M I Chest
n00
2
工6
F
Chest
1048
3
20
M
Chest
1048
4
20
F
Chest
1028
5
16
F
Chest ・
1008
6
18
Chest
956
7
20
Chest
908
8
59
9
59
Chest
Chest
860
10
20
M
M
M
M
M
Chest
852
11
8
F
Chest
780
12
4
M
Chest
M
Side
of chest
1372
13
45
868
588
14
9
F
Side of chest
1092
15
9
F
Side of chest
464
16
20
17
16
M
M
18
29
F
Suprac
19
20
M
Infraclavicular region
752
648
Supraclavicularr egion
ヽSupraclavicular region
20
22
F
Breast
21
16
F
Breast
vicularregion
920
976
1252
832
820
1016
980
950
Mean 942
AMomen
1
26
M
Around
2
the
navel
820
61
`M
Around
the navel
3
792
61
M
Lower aMominal region
839
4
26
M
Hip
935
5
16
F
792
6
26
M
Hip
Hip
792
806
840
Mean 828
中に,太く長い多数の樹枝状突起をもった大型のメフノ
傾向を示すものと考えておくべきものであろう.
サイトが少数混在する所見,即ちSzabo'",
メラノサイトの大きさとメラエン形成能力との関係に
Staricco &
Pinkus"'のDimorphismに一致する所見をば,身体
就いて,
各部位に屡々証明し得た(Fig-
トは白人のそれに比し大型且つ多数の長い樹枝状突起を
4).更に著者は身体各
Staricco & Pinkusは黒人皮膚のメラノサイ
部位に於けるメクノサイトの大きさを測定すべく,同一
有する事を見て,メラノサイトの大きさとメラニン形式
部位につき夫々50コのメラノサイトの細胞体の長径及び
能力とは平行するらしいと想定し,これを支持する所見
短径を測定し,両者の積をもって,一応メラノサイトの
として,
大きさを表わすものとして算出した処,表Vの如き数値
くなる事(Staricco
を得た.同一部位に於ても個人により其の大きさが異な
ラノサイトが月と共に漸次大きくなる事(Zimmermanm
ったり,同一標本中でも大小不同かあるので,大凡その
& Cornbleer 49)メフノサイトの組織培養に於て中心
Thorium
x 中等量照射後メラノサイトが大き
&Pinkus)"',胎生期におってはメ
841
昭和37年U月20日
Table
II
Continued
井of Mela nocytes
Specific
Location
Case#
Age
Sex
1
16
F
Scapular region
Mean
Back
2
16
F
Scapular region
3
43
F
Back
4
26
M
Back
5
21
F
Lumbar
6
22
M
Lumbar
7
22
F
8
24
9
6
M
M
Glutealregion
Glutealregion
Glutealregion
960
840
900
1096
956
1026
1040
900
970
1068
996
804
956
Mean 962
Genitals
1
48
M
Prepuce ’
153t3
2
25
Prepuce
1200
3
20
Prepuce
1172
4
20
20
6
35
Prepuce
Prepuce
Root of penis
1164
5
7
60
M
M
M
M
M
M
M
Perineal region
1480
Perineal region
1136
Perianal region
1544
1000
1214
1020
8
49
9
49
10
46
M
M
Perianal region
1232
11
28
M
Scrotum
1768
12
48
1728
22
Scrotum
1700
14
30
Scrotunx
1580
15
49
Scrotum
1516
16
25
Scrotum
1480
17
70
Scrotum
1396
18
45
Scrotum
1324
19
61
M
M
M
M
M
M
M
M
Scrotum
13
Scrotum
1220
Mean
1308
1388
1524
1378.7
部に於けるよりも辺縁部の方が,即ち最初に培地にう
る事を想起させると述べている.
えたものよりも生長しつゝある部分の方が,メラノサ
著者は皮膚損傷の修復時に於けるメラノサイトの態
イトの大きさか小さい事を認め,小型のものをより若
度に就き検討した処,
い胎生期型とし,それか成熟すると大型のものになり.
「メラノサイトの大きさとメラエン形成能力との間に平
Dopa陽性度もより強くなる事(Hu
行関係が存在する」様な所見を見出し得た.即ち著者は
et al. 12))等を挙
Staricco &
Pinkusの説の如き.
げており,更に単位面積中に小型のメラノサイトを多数
Dermatotneで12/1,000吋以下の薄い皮片を採取した
証明する部位では,メフノサイトの個・々のメラニン形成
部位及びskin
能力が低く,しかも同一標本中に大型及び小型のメラノ
れる毛嚢中心性の色素沈着部に剥離Dopa反応(Fig・
サイトを見る事(Dimorphism,
Szab・,38))は,個・々の
メフノサイトのメラ=ン形成能力に周期的変化の存在す
abrasion technique施行部位に屡々見ら
5),剥離M-Z染色等を施して検討した結果,毛嚢附
近の表皮メラノサイトはやゝ小型なるも,周辺部に行
842
日本皮膚科学会雑誌 第72巻 第11号
Table
II Continued
祚of Mela nocytes
Case#
Age
Seχ
1
16
M
Deltoideal region
1540
2
20
Deltoideal region
1108
3
16
Axilla
n36
4
45
Axilla
1052
5
23
6
14
7
16
8
45
M
M
M
M
M
M
M
Specific
Location
Mean
Upper extremities
Axilla
908
Axilla
900
Axilla
548
Fleχor side of upper forearm
888
9
20
F
Flexor side of elbow
10
18
M
Back
of hand
joint
1468
11
26
of hand
1056
11
M
M
Back
12
13
20
M
Back of finger
1100
14
22
M
Palm
1076
15
26
F
Palm
M
Palm
928
890
1324
928.8
812
Flexor side of hand joint
1262
860
1021
16
26
972
17
14
M
Palm
18
17
F
Palm
M
M
Palmar
side of finger
1004
Palmar
side of finger
1000
side of finger .
19
20
6
21
704
F
Palmar
22
!7
F
Palmar
side of finger
960
23
14
F
Palmar
side of finger
876
21
5
918
970
962
938
Mean
989.4
くに従って大型, Dopa強陽性となり,内部にメラエン穎
術後2乃至8週目,
粒を含有するものがふえてくるのを認めた.又25/1.000
週目では,共にマルピギー細胞内にメラユンを殆ど認め
吋以上の厚い皮片を採取した部位では,毛嚢,汗管等
得ず,メラエン穎粒の大部分はメクノサイト内に証明
の皮膚附属器からの表皮新生は認められず,損傷周辺
される(Fig.
表皮からの表皮新生に伴って,メラノサイトも移動,増
者では2∼3ヵ月頃よりマルピギー細胞内にメラユンが
殖するかに見える.
認められる様になり,それとは反対にメラノサイト内メ
Dopa陽性メラノサイトの出現は,
25/1,000吋以上の術後4週乃至6
6).前者では術後1∼2ヵ月頃より,後
表皮新生よりやゝ遅れ,且つ新生表皮全域に平等に分
ラエンは著明に減少し,メラノサイトの大きさ,
布する事は稀で,不規則形を呈する白斑部ではむしろ
陽性度咆ほ2正常に復するものが多くなる(Fi 7).
これを欠くのか普通である(尚この様な白斑部でもメチ
以上要するに皮膚修復の初期にあっては,メタノサイト
レン青の超生体染色を施すと,
は大きく,
Dopa陰性,メチレン青
Dopa ,
Dopa強陽性を示すか.表・真皮の修復の完
できれいに染め出される樹枝状細胞を多数証明する事が
成と相侠ってほ2正常に復するものである.又マルピギ`
可能である).新生表皮にあっては,周辺の表皮に於け
一細胞のメラユン沈着は初期にはこれを認め得ず,表・
るよりもメラノサイトは大型,
真皮の修復に伴って,主として基底細胞内にこれか見ら
Dopa強陽性を示し,内
にメク=ンを含有するものが多い.
12/1.000吋以下の
れるものと要約される.
昭和37年11月20日
843
Table
Case*
II Continued
Age
Seχ
1
19
F
Frontal side of thigh
484
2
27
M
Back
960
3
12
F
Back of foot
4
14
F
Inner lower part of ankle joint
5
18
F
Inner lower part of ankle joint
6
22
Sole
7
14
M
M
8
34
F
Sole
Inner
side of thigh
990
1328
9
30
M
Inner side of thigh
1272
21
F
Inner
side of thigh
1248
Specific
Location
肺of Mela・
nocytes
Mean
Lower extremities
10
of foot
932
484
946
1084
856
970
1100
11
7
F
Inner
side of thigh
1036
12
20
F
Inner side of thigh
1024
13
21
M
Inner side of thigh
988
14
16
F
Inner
side of thigh
984
15
17
Inner side of thigh
980
Inner side of thigh゛
936
16
6
M
M
17
2
F
Inner
side of thigh
920
18
F
M
Inner side of thigh
Inner side of thigh
912
19
16
8
20
70
M
Inner sdie of thigh
890
21
4
F
Inner
side of thigh
868
22
30
M
Inner
side of thigh
840
23
17
836
24
17
M
M
Inner side of thigh
Inner
side of thigh
820
25
16
F
Inner
side of thigh
816
26
28
F
Inner side of thigh
792
27
20
F
Inner side of thigh
792
28
1
F
Inner
side of thigh
784
29
20
20
F
M
Inner side of thigh
Inner side of thigh
780
30
31
22
M
Inner side of thigh
776
32
26
F
Inner side of thigh
772
33
6
M
Inner side of thigh
716
34
4
F
Inner side of thigh
704
35
19
F
Inner side of thigh
644
36
37
F
Inner side of thigh
616
37
18
F
Inner side of thign
592
38
37
F
Inner side of、thigh
588
39
16
F
Inner side of thigh
548
40
24
F
Inner side of thigh
432
1045
896
780
845.7
860.4
41
、5M
F
Inguinal region
844
Mean 848
844
844
日本皮膚科学会雑誌 第72巷 第11号
Fig. 1. Regiona】Distribution of Melanocytes
Sh&↑s of separated epidermisニ/52
言仁
子︰
Iins
(2)
南
I3SS
t2)
4)メラノサイトの表皮内に於ける位置
処もあるが,これは標本が基底膜に対して切線方向に切
メフノサイトの細胞体は基底細胞の下半分によって境
られた為に生じた現象と思われる.
された間隙に嵌入,下面は基底膜に接してこれをやゝ下
5)表皮突起部(Epidermal
方に押し下げて真皮側に突出している.これは剥離標
皮部(Epidermal
木乃至はThiersch氏皮片に於けるDo皿反応所見で
布状況
は,基底細胞よりも今い,手前にピン1ヽを合わせるとメラ
Billingham &
ノサイトかはっきり認められる様になる事からも肯け
Dapa標本から乳頭上部表皮(Valley)に於けるより
る.又垂直標本では,表皮有錬細胞層内乃至真皮乳頭層
も表皮突起(Ridge)に於てより多くのメラノサイトを
内にDopa陽性メラノサイトが存在するかに見える箇
見るものとしている.其後Staricco
ridge)及び乳頭上表
valley)に於けるメラノサイトの分
Medawar",
Szabo=白),川村16)等は剥離
&
Pinkus"リまメ
昭和37年U月20日
845
Table Ill Summary
of Melanocytes
Ikeda
へ
Region入
Genitals
#Of
cases
19
Melanocytes
per mm^
1000∼17卵
Mean
counts
Staricco
& Pinkus
Szabo
Melanocytes
per mm^
Melanocytes
per ■man'
#Of
cases
Mean
1378
12
1200∼2784
1668
688∼1520
ユ010
12
700∼2000
588∼1372
942
5
550∼1050
860
840∼1096
962
2
1290∼1390
1340
Head
Face
33
1340
1100∼4500
Neck
Chest
Back
Abdomen
21
9
6
792∼935
Upper extremities
13
548・∼1540
Lower
39
432∼1328
eχtremities
828
1021
848
15
9
11
Table IV Relation of Melanocytes counts to
age and sex. (Inner side of thigh)
400∼1270
754
950∼2500
1302
820∼1540
500∼1400
1031
500∼1850
28
30
29
30
30
34
1,328
31
37
588
32
37
616
33
70
Mean
1.2.72
840
818,
890
890
894
846
ラノサイトは元来真皮表皮境界面に均等に分布するもの
であるか,傾斜の急峻な表皮突起に於ては.傾斜の比較
的緩やかな乳頭頂部よりも単位水平面積内により多くの
メラノサイトが投影される結果となるので,これを一見
した場合前記諸家の述べたような印象を受けるものであ
ると説明している.著者は表真皮境界の起伏の高度のも
の,中等度乃至軽度のもの及びは2平坦なものの3型に
大別し,水平及び垂直標本を比較検討した.水平標本で
観察すると,高度の波状をなすものでは.表皮突起にメ
ラノサイ1ヽが密集して見えるか,他の2型にあっては略
々均等に見えたから,
Staricco &
Pinkusの説明は妥当
のものと思われる.
6)皮膚表面及び表真皮境界の凹凸及び皮膚附属器官
の分布
文献的考察
皮膚表面の模様,皮膚表面の模様は身体の諸部位に依
って相違かおる(橋本川挿図8).躯幹などでは皮膚の
表面は縦横に走る皮溝に依って皮野に区切られている.
皮野の表面にはまた小さい凹凸があって,その凸隆は皮
丘と呼ばれる(橋本11)挿図2
). Wolf≪>はセロテープで
皮膚表面から角層を剥離鏡検する方法に依って皮膚表面
を観察,皮膚表面の模様を(A)角質層にのみ関係する
846
日本皮膚科学会雑誌 第72巻 第11号
Fig. 2.(a) Scattergram comparing age and
melanocyte counts. (Section from inner
side of thigh, 33 cases)
comparing
sex and
melanocyte counts. (Section from
inner side of thigh, 33 cases)
uiiL jad
UIUIJad
s3j./douo│9Σ
S8J^X30UD│3U
6
タ
Male
13 j4∼40 41∼
Age
Table v Size of Melanocytes.
#of Pre。 Size of me parations lanocytes
5
197∼517μ2
Head
(b) Scattergram
Female
Wolfの第5次レリーフを形成する溝は,皮溝に相当し・
(橋本11)挿図8,腹部),
Wolfの第4次レリーフは略々
皮丘に概当するかに思われる.また第5次レリーフの溝
の交わる所に毛孔が存在,又少なからざる数の毛孔に接
Lower eyelid
1
Upper lip
Neck
2
74∼246μ2
してやゝ大きな,再分割されざる皮野(GrOssere,
4
82∼295μ2
unterteilte Felder)の存在を記載しているが,皮膚洗
Supraclavicular fossa
3
111∼246μ2
面の生体顕微鏡所見(川村18)第1図)と対比するに.後
Chest
10
111∼246μ2
nicht;
H1∼295μ2
に述べるHaarscheibeに概当するやに思われる.
Umbilicalregion
2
129∼246μ2
表皮真皮境界の一般
Back
2
111∼246μ2
表皮真皮境界の形態を鏡検する方法は2つに大別する
Buttock
3
n1∼369μ2
ことが出来る.その第1は表皮に真皮の一部を附けて薄
4
H1へ・369μ2
Palmar
side of finger
く剥取り(Thiersch植皮片),これを固定透徹して真皮側
繊細なものと,(B)より粗大であって真皮の凹凸に因る
から鏡検する方法であり,その第2は表皮を真皮から剥T
ものと大別している.更に前者(A)を次の3種に細分類
離して表皮を裏面から観察する方法である.後者は浸軟
している.第1次レリーフー−一個々の細胞の表面の瘤状
法と呼ぱれ,これにまた諸法かある(Horstmann)'-"
及び櫛状の膨隆.第2次レリーンー一細胞全体の膨隆に
か,現在広く行われているものとしては研究方法のと
依って規定されるもの,'第8次レリーフー1個以上の
ころで述べた様なものがある.上出(二)2o)は側腹部の
細胞を横切る所の摺襲又は溝によって形成されるもの.
Thiersch皮片を真皮側から鏡検,大要次の如く記載し
また後者(B)を次の2つに細分類している.第4次レリ
ている,表皮表面を区切る所の皮溝の下面に一致して表ッ
ーフー半球状その他の膨隆であって,その様子や排列
皮真皮境界面は真皮側に向つて膨隆している,此の膨隆万
ぱ種々である,第5次レリーフー皮膚全体のFelderung
の斜面は後に述ぺる乳頭間のものに比べて傾斜が緩く,
に依って規定されるもの.
頂が広く,そして全体が大形である.個々の皮野の中に
Wolfの第4次.第5次レリーフの定義には多少不明
は剣
瞭な所もあるが,図と対照すれば自ら理解される.即ち
これに呼応して表皮下面には宵薩状の圧痕が形成されて
昭和37年11月20日
847
いる.個々の圧痕の間では表皮は真皮側に向って突隆し
の形態は必ずしも常に Horstmannの図示したものと
て,垂直断面に見られる所の乳頭間「表皮突起」を形成
同様とは限らなくて,毛髪との関係も亦様々である(上
している.即ち少なくとも側腹皮膚に於ては,垂直断面
出,第10図).また汗腺排泄管を中心とする特殊の乳頭圧
に見られる「表皮突起」は堤防状の突隆の断面であるか
痕としても帽章模様及びバラ花模様か見られる.また毛
ら, Leverも推奨するように表皮稜線(rete-ridge)と呼
髪を中心としてその周囲を汗腺排泄管が取巻いて形づく
んだ方が実態に即している.又表皮裏面の起伏を手近か
る模様として時計盤模様(Zifferblatt)を挙げている.
なものにたとえれば,表皮突稜は広い田の中を縦横に走
Horstmannは,所謂帽章模様及びパラ花模様(橋本,挿
る野道に,そして乳頭間表皮稜は野道から更に分れて1
図48)は附属器官を有する人体皮膚では何れの部位にも
枚1枚の田を区切る所の畔にたとえられる.桜#37)は豚
存在するものとし,また口腔,食道,子宮腔部の粘膜に
鼻の表皮稜につき粗大な表皮稜とそれから分かれた微細
も見られるとしている.
な表皮稜とを区別し,前者を第1次表皮稜,後者を第2
毛盤(Haarscheibe,
次表皮稜と呼んでいるが,これに倣って皮溝に一致する
1898年Pomerは最下等の哺乳類であるノヽリモダラに
HSと略称する)
表皮稜を第1次表皮稜,乳頭間を区切るものを第2次表
於てこれを発見,次いで1902年F.
皮稜と呼んでもよかろう.第2次表皮稜の形成する網目
膚にHSを見出し,その肉眼的所見,組織学的所見並び
Pinkus
模様は.第1次表皮稜の斜面にも及んでいる(上出,第7
に種族発生学的意義等につき詳細に記載している.爾来
図).I此の部分についてHorstmann万は,皮溝の下面に
これに関しては,
於ては乳頭は平坦であるか若しくは欠如しているから,
C1952.
剥離標木でも皮溝を認めることか出来ると記している.
記述かおる.川村(1954)16
以上は躯幹皮膚に就いての先人の記載について纒めた
Ph.
SfShr
(:1951)"',
Horstmann'
18)上出(一郎)19),上出
(二郎)2o)等はこれに再び詳細な検討を加え,これを
一種の触覚器官と考えるに到った.F.
れ異なり,
ば,HSは女子より男子に良く発達,又思春期に到って
Blaschko Cl88ir),i,Greb (1940)等の分類か
Grebはこれに次の61型を分けて
Pinkus35)によれ
著しく見やすくなり,小さな毛乃至は中等大の毛に近接
して多く見られ,項部,肩脚,側腹,上腕屈面,肘腐,
いる.
1. 頭皮,
9)
19Br),森=小川27)藤田(1950リ)等の簡単な
ものであるか,真皮乳頭の形態はまた部位に依りそれぞ
おるI CHorstmann).
は人間の皮
Blaschko"の第1型,即ち稜及び乳頭を欠
前腕の上2/3に最も多く見られ,次で大腿,背,腎,体
く.
前面に,時に腕の背面,下腿,前頚部及び側頭部に,又
2.四肢の皮膚,多数の小さい,細長い乳頭を有す
稀には足趾及び眉毛部に見られるが,頭,前額,顔面の
る・
大部分,手及び陰茎には見られないと述べている.又上
8.1躯幹の皮膚,広く背の低い台状の乳頭を有する.
出(二郎)
4.アキレス腱上,膝蓋,肘頭及び腎部などの機能的
それ等と全く異なる形態を有する事から,これをF.
に強く要求される皮膚.多数の強靫な背の高い乳頭を有
nkusの云う如き巨大乳頭と見倣すべく,HSでは「1乳
する.
頭1皮野」であるとし,
5.手掌,足皺の皮膚,櫛状に排列する強大な乳頭を
17,即ちHSを有する湊毛群1に対し,これを有せざる
有する.
もの4と述べているか,著者も略々これに一致した所見
なお外耳道,陰部,その他にっいてはHorstmannの
を得ている.HSの表皮か周辺の表皮に比較してメラユ
詳細な研究かある.
ン沈着の少ない事は既にPinkusの指摘している所であ
C19B6)は,HSが普通の皮野に介在し,且
mm毛群中HSを伴えるもの
Horstmannの浸軟標本の研究に依れば,表皮の裏面
るか,上出(一郎y9)はこれにDopa反応を施行し,
には乳頭に依る圧痕を背景として,皮膚附属器官とこれ
頂点の表皮にもDopa陽性メラノサイトの存在を証明,
を取巻く特殊の乳頭圧痕とか装飾的模様を描く.毛嚢に
更にHSに於ける真皮内メラこンの問題にも触れ,表
属する特殊の乳頭圧痕に帽章模様(Kokarde),バフ花模
皮直下に色素の棚を吊った様に見えるとしているが,川
様(Rosette),及び腹部皮膚に見られる毛嚢に接した腎臓
村はこれか屡々祚経周囲性に存在する事を明らかにして
形│の大きい乳頭圧痕(Horstmaniil952
Abb 1 C7)9:',
1957
Pi-
いる.
Abb 60C8))を見,最後者にっいてはPinkusのHaar'
(1)表皮真皮境界凹凸の一般
scheibeであるとしているCi96r).尤もHaarscheibe
著者は剥離標本に垂直標本を加味して比較検討を加え
HS
848
日本皮膚科学会雑誌 第72巻 第11号
Fig. 8. Patterns of
which are
epidermo-dermal junction
characteristic
onsof the body
of
various
18),時計板模様(Fig.
regi-
11)を見た.
(2)陰嚢に見られた真の意味での表皮突起
surface.
陰部(肛囲,陰嚢,包皮,大小陰唇等)では,その起
伏の顕著な事の外に,全く独得な種々様々のpatternを
呈する.即ち該部におっては表皮稜は大小不同の種々
の形を呈する網目状を呈し,時に弧状,平行線状,魚骨
状等を呈する.又陰嚢に於ては9例中2例(80才及び45
才)に表皮より真皮側に向かい円錐状乃至は円柱状,時に
は球状に突出した表皮突起¬丁度胎生期に於ける表皮胚
芽を想起させるっを呈するものを見た.それは表皮裏面
より直接に,或は弧状乃至平行線状をなした表皮稜より
突出しているものであって,その尖端には多量のメラユ
ン沈着を認めるものが多かつたが,周辺表皮と略々同程
度のメラエン沈着を認める箇所もあった(Fig.
19, 20).
なお表皮突起の所見はMiescherの老人性皮膚に於け
る色素斑(Jadassohn's
Abb.
Handbuch
■ 3 , S.
1094,
48)とも共通するものがあった.
(8)掌政
手掌(指腹を含む),足踪ではその起伏が極めて顕著な
事の他に,該部に於ける表真皮境界④絞理は極めて特徴
的なものであって,垂直及び水平方向から見た模型を示
すと図4の如くなる.即ちCrista
(C・p.l.)及びCrista
−・・−
profunda
profunda
が劃然と平行して走り,
intermedia
牽刈Mの狭い細かな網目状をなした乳頭間表皮稜(Inter
示せばFig. 8 の如くなる.即ち顔面(眼瞼,額,頬,
papillarleiste)が存在する.
鼻(Fig. 4),上口唇(Fig. 9)),頭部(Fig.
夫々Sulcus
C.p.l.及びC.p.i.の表面は
superficialis(S.s.)及びCrista
比較的起伏は少なく,ほぶ平坦な表皮裏面に円形乃至楕
(C.s.)であって,個々のC.s. の下面には2列の乳頭
円形の小型の乳頭がはまり込んでおり,一見ゴルフボ
が存在する.又C.p.i.には汗管が貫通しており,隣り
ールの表面を想起させる.胸部(Fig.
合った汗管の間にはF.
11),腹部,脊部
(C・P.i.)
C.p.l・及びC.p.i.との間には,
た.身体各部位に於ける表真皮境界部の特徴を模型的に
10)に於ては
Pinkus
superficialis
(19訂)のShema28)33)と
<Fig. 12)に於ては前者に比しや・ゝその起伏が明らか
異なり,各列とも通常2∼3コの乳頭が存在する.
となり表皮稜は大部分閉鎖された網目状を呈する.四肢
(4)毛盤(Haarscheibe)
イ巾側(Fig. 13, 14, 15)では前者と略々同様な所見なる
毛盤は剥離標本に於て,毛嚢に接して存在する所のや
も,その起伏は更にや・ゝ顕著となり,特に膝蓋部におっ
や幅の広い表皮稜で囲まれた巨大な乳頭圧痕として見ら
てはその起伏は著しく,表皮稜の幅の広いもの,狭いも
れる.著需は身体各部位の剥離標本152コの中,毛群が
のが見られ,配列も時に平行して掌礁の絞理を想起させ
かなりの数(主として毛群が5群以上)存在する良好な
る箇所も存する.四肢屈側(Fig.
標本80コを選び,これ等についてHSの分布状況,HSと
16)ではその起伏は
著しく平坦で,乳頭の発達不充分,表皮稜は閉鎖された
網回状のものの他に,時に半分閉鎖せず,或は漆喰いば
毛群との関係,HS上の表皮の所見などについて検討し
た.HSは胸部,腹部,背部に圧倒的に多いが,大腿内側,
ね状,或は弧状を呈するものもある.肩肝部,腰部,腎
頚部,肩肝部にも僅かではあるが存在する.然し乍ら頭
部では前記膝蓋部に類似し,その起伏は顕著にして,表
部,顔面,堕鴛等には認め得なかった.次にHSと毛群と
皮稜は完全に閉鎖された深い網目状を呈する.又著者も
の関係を見ると,HSを認めた標本の毛群の総数は144
Horstmannの所謂帽章模様(Fig.
群,その中HSを有する毛群は28群,即ちHSを有す
17).バラ花模様(Fig・
limitans
昭和37年11月20日
849
Table VI Ratio of the number
of hair group with HS
井of heparati- 絆
of Preparation examined
on with HS
9
り
Head
to that of the total hair groups.
井of HS in
these ■Preparation
U
#ofhair group.with H.S.
#of totalhair groups
0
Face
6
0
0
0
Auricle
1
0
0
0
Cervical region
2
1
1
Axilla
5
0
0
Chest
1/7
0
8
15
3/5,
2/14,
3/!2,
AMomen
Scapular region
Back
4
3
5
2/4,
1/2,
2/6
3
1
1
1/6
2
2
4
1/11,
Buttock
1
D
0
0
Lumbar region
1
0
0
0
Inner side of thigh
26
1
2
2/11
Outer side of thigh
1
0
0
0
Frontal side of thigh
1
0
0
0
Perineum
1
0
0
0
Total
80
16
17
Table
28
1/12,1/10,
2/9,
2/12,
1/6
3/17
井of total hair
groups
in Preparation:
VII Ratio of one or multiple hair group to total hair groups.
144
850
日本皮膚科学会雑誌 第72巻 第U号
Fig. 21. Ratio of one or multiple hair group to total hair groups.
1 2 3 4
Scalp (7cases)
ノ 2 3 4
Chest (/7cQses)
Head
of ilium (/case)
Face {7cQses)
Neck
/ 2 、y 4
Abdomen (leases)
/ 2 J 4 / 2 j 4
ScQpul。regiontfcttses) Bぶock
(/cases)
Periaeum (lease)
(2cases')
Inner sideof tbgKぼcaces)
AX川c1(タcases)
851
昭和37年U月20日
るものぱ仝毛群の約`lsズあった■Hs;;;を有する毛群のう
ち,2本の毛嚢を認めるものが20,
1本の毛褒を認める
ものが5,3本の毛嚢を認めるものが3,即ち2本の毛
Fig. 25. Schematic presentation of the architect ureof epidermo-dermal junction in lχ11m
and sole.
Sweat
嚢を有するものが圧倒的に多かったことは,上出(二
ducts
郎)の側腹部に於ける所見と一致する.そしてこのこと
はまた胸腹部等HSのよく発達した部位では2毛群が最
も多いということとも関係があろう(表VI,
VII, Fig21).
HS上の表皮に於けるメラノサイ1ヽを剥離Do皿標本
にっいてのみ検討した.従って表皮内メラニン及び真
皮内メクユンの所見は知り得なかった.HSの表皮は,
他(Z)乳頭上表皮に於けるが如く一杯に平坦なものもある
が,極く僅かに真皮内に突出した幅の狭い,或は平行し
C・p.l.
トが見られる(Fig.
22, 23).この所見は未だ記載せられ
C.
Pよ
C.S、
゛
; ・ i /ノ
i
∇
た堤防状,或は島状をなした表皮稜様のものを認めるも
のか少なくない.その稜上にはDopa陽性メラノサイ
C・P
S、s.
ざるものの如くである.
(0 毛群CDreihaargruppe,
Pinkus)
毛群(Haargruppe)の存在する事は古くから知られ
ている.本邦では加藤(1936)
伺する膨大な研究かある.
"'の6∼10ヵ月の胎児に
F. Pinkus">は頭部以タトの身
・体有毛部位にあっては,毛髪は原則として8本づず群を
なして存在する事は入間のみならず全哺乳動物に認めら
れる所見にして,毛群の普遍的な基礎をなすものと述
べ.これを“Dreihaargruppe
"と呼んだ.
Pinkus及
び橋本の記載に拠れば,毛原基ぱぱじめ略々等間隔に
7)手掌,足疏に於けるメラノサイト
掌誼正常皮膚のメラニンに乏しいことは広く認められ
‥単発する.次いでこの第1毛(主毛)の両側に傍毛(副
ている所である.本邦では該部正常皮膚につきD0
毛)が通常1コずゝ生ずる事により,8本の毛が毛群を
応を施行し,
1a反
形成する.この8本の毛は通常一直線状(Pinkusの云う
は見当らない.田中(1958)45)は「この部位の皮膚は正
'Grundlinie)に並んでおり,この基本線は通常相互に平
常状態に於てはメラユン穎粒を認め難く,
行して走り,毛流に直角をなす.身体部位によっては,
メラノサイトも亦見られない」と述べているか,一方
Dopa陽性メラノサイトを認めている報告
Dopa陽性
8本の毛群の両側に一通常基本線上に一更に副毛が
Szabo (1954,
生じ,5本更に7本の毛からなる毛群(多毛群)を生ずる
ン溶液を用いた剥離標本を作成,これにDopa反応を施
ー事がある.加藤は頭部(2%),上腕C
行し,身体各部位のメラノサイトの数を算出してい
0.2%)にこれを
1968)"・39)は身体各部位につきトリプシ
認めている.胱毛の抜毛に際し,毛は均等に生えている
るが,同報告中手掌,足耽にDopa陽性メフノサイト
ものではなく,2∼8本で,時には5本ずゝ群をなして
の存在を確認し,その数をFinger
存在している所見に気付いていたが,剥離Dopa標本を
±440と掲げている.
鏡検すれば,このことは全身の有毛部に広く認められる
.現象であることかわかる(Fig.
24).
HSの検索に供し
た大体5群以上の毛群を有する剥離標本80コにつき検討
1120士80, Sole 1680
Masson(1948)^"はメタノサイト
はD0 1xl反応標木に於ては樹枝状細胞として現われるも
のと記載した後.メタノサイト内の色素量の少ない指趾
腹に於ては,
perikaryon内には極めて僅かのメラニン
した結果は表層の如くである.著者が用いた標本の数が
少ない事及びこの標本はDopa反応を行う必要上,小さ
顛粒しか有していない為に,メラユンを持った樹枝状突
’すぎた嫌いがある為に,正確な数値を示すとは看倣し難
起が集合する点に於て透明な無色の細胞として見られる
いとしても,毛は2本∼8本ずつ群生することが甚だ多
と記載している.またCajal術式即ちreduced
いと云う一般的傾向はよく納得出来る.
nitrateを用いて染めると掌疏の総てのメ?ノサイトは
silver
日本皮膚科学会雑誌 第72巷 第11号
852
穎粒を以て充たされているという所見と,これ等部位に
小括考按
於けるメラノサイトでは銀を還元するメラニン穎粒は主
正常状態に於ても掌鉉にDopa陽性メフノサイトが存
として樹枝状突起に存在してそのperikaryonには殆ど
在する事,並びにM-Z陽性メラノサイト並びに無染色標
ないという所見とを比較,
本で微細な淡黄色メラニン穎粒を有するメラノサイトも
Cajalではじめて現われる
所の好銀性(argentaffin)ではあるが.銀を還元する
認められるということ等に於て著者はMasson,
作用の無い(non-reducing)ものをメラエンの前階梯,
の説く所に賛意を表する屯のである.又メラノサイト
Hortegaの所謂Premelaninと考えた.
はC.p.l,
本邦文献では岩島13),飯塚14)遠山“),吉田47)伊藤15)
に存在,形,大きさ等他の身体部位と大差ない.
等の記述があり,いずれも胎生期には樹枝状細胞の出
8)皮膚附属器に於けるメラノサイト
現を見る事があるか,胎生期以後では正常掌蹄にはメラ
毛根メフノサイトに就いては,古くより知られま六=近
ユン色素か存在せず,無色メラノサイトとして存在する
年久木田゛はhair
と述べている.著者は手掌5例,指腹5例,足疏2例に
ロシン活性及びDo皿活性の動きを見ているが,毛包
つき, Dopa剥離標本,
頚,脂腺,汗管に於けるメラノサイトに就いての記述は
Dopa垂直標本,更に垂直標本
にはM-Z染色,無染色標本等を作成し,該部に於ける
Szabc〉
C.pよ,乳頭開表皮稜,乳頭上表皮部にも一様
cycle に依る毛球メタノサイトのチ
少ない.但し最近に到ってStariccoの外毛根鞘の無色
メラノサイトの数及びメラニン沈着の状況について検索
メラノサイトの観察かおる42)43)
を試みた処,仝例にDopa陽性メラノサイトを認め得
偶々著者は剥離Dopa標本及び垂直Dopa標木を検
た(Fig. 25, 26, 27, 28).該部におってはDopa陽性
討,或る程度の知見を得たのでその大要を記しておく.
度がやゝ弱いか,メラノサイトの形,大きさ等に関して
(1)毛嚢(Fig. 30):垂直及び剥離Dopa標本で偶々
は他の身体部位に於けると大差なく,
毛嚢か良く出ているものについて見ると,表皮基底細胞
C.p.l.,C.p.i.及び
層に於けると略々同様な形で,
Table VIII Melanocytes
palm & Sole.
& Melanisation in
Dopa陽性メラノサイト
が存在する事を屡々認め得た. 尚毛包頚のどの深さ迄
存在ずるかを検討した処,脂腺開口部迄の距離の半分位
二、
Palmar
finger
sideof
Malp. Cell
肺Of
cases MelaInin
Melanocytes
MelaDOIχlnm
Dopa
の深さ迄存在するもの,同じ深さ迄迫しないもの,同じ深
さより更に深く脂腺開口部迄存在するもの,更には脂腺
排泄管に迄存在するもの等種々の型を認めた.それぞれ
5
-
-
−or土
+
の頻度を比較すれば脂腺開口部迄の距離の半分位迄の深
Palm
5
-
-
-or二i二
+
さ迄存在するものが最も多かった.こ引こ於ても他と同
Sole
2
-
-
-or+
+
様,メラノサイトは基底層に認められる.又毛包頚上部
にメラノサイトが存在するということは,
Skin abrasion
technique施行後乃至大腿内側より 12/1,000吋以下の
乳頭間表皮稜,乳頭上表皮部に略々一様に分布してい
薄い皮片をDermatomeで採取した後や,浅い第1度
た,更に著者は垂直Dona標本の他に,連続的に切っ
火傷後などに.屡ζ毛嚢中心性の色素沈着か認められ
た凍結切片の一部にM-Z染色を施してDopa陽性メラ
るということ,又毛包頚の脂腺開口部より深部に及ぶ欠
ノサイトとM-Z陽性メタノサイトとの比較を試みた処,
損の修復後にはそれを殆ど認められないなどの臨床経験
Dopa標本に於ける方がメラノサイトの数が多く見られ,
と相容れるものがある.
細胞体も大きく見られるが,M-Z染色に依ってもメラ
(2)エックリン汗管(Fig.
ノサイトを認め得た.
M-Z染色で見られるメラノサイ
は,ほ2真皮と皮下組織との境より発し,直線的或は軽く
トは,核周囲に極めて微細且つ粒の揃ったメラユン穎粒
波状をなして真皮中を貫き上昇し,表皮突起の下端に達
(無染色標本では淡黄色を呈する)を有し,それはまた
31):エリックン腺の汗管
し,表皮内を貫通,皮膚表面に開いている.汗管の表皮内
樹枝状突起を有し,他の部位に於けると同様基底細胞の
終末部はepidennal
下半分に出来た細胞間隙にぱまっている.マルピギー細
Montagna)と呼ばれており,此の部位はまた表皮細胞
胞内には殆どメラニンを証明し得なかった(表理.
29).
Fig.
sweat duct unit (Lobitz-Holyoke-
の炎症の際,角化異常症,或は練細胞癌に於ても比較的侵
され難く,またメラエン色素を欠如する事,表皮細胞と生
固
昭和37年li月加M
長速度が異なる事などが知られているの亡,表皮一般か
メラノサイトの細胞原形質はスポンジ状を呈し,通常基
ら独立したunitとして看敞されいる.該unitを囲続す
底細胞から分離し,原形質は周囲の細胞より薄く染ま
る表皮突起は屡々円錐状を呈するから他の表皮稜と区別
り,又透明に見える事がら透明細胞(cellules
して円錐部とも呼ばれる.著者は剥離Dopa標本,垂直
clear cell)とも呼ばれ,
Claires,
Dopa標本,垂直M-Z標本等により該部に検討を加え
ニンが認められたいかの印象を受けやすいが,少なくと
H.E.標木では該細胞内にメラ
た処,表皮円錐部にはメラユン及びDota陽性メラノ
も邦人皮膚では必ずレす)そうではない.
サイトを毎常証明し得たが,真の汗管即ちepidermal
検べた処では,無染色標本で拡大を大きくし,注意して
sweat duct unit 及びdermal
観察すると,毎常とは云えないが透明細胞の核に接して
sweat duct unit と称さ
152例に就いて
れる部分には全然これを証明出来なかった.
極めて微細淡黄色の均一なメラニン穎粒が見られる場合
9)正常皮膚に於けるメラニンの分布状況
か少なくない.このものはM・Z染色ビ黒染する.これ
人体皮膚色素は,マルビギー細胞,表皮メラノサイ
は周囲のマルピギー細胞内メラJ=・ン沈着量と比較すると
ト,担色細胞,毛髪及び毛嚢に分けて観察するのが原則
著しく微量な為,見過ごされがちであるか,マルピギー
となっている10)著者は正常皮膚に於けるメラニンの分
細胞内メラユンが少ない部位では時に上記透明細胞内メ
布につき毛髪及び毛嚢以外のものをマルピギー細胞内メ
ラエン穎粒が細胞間隙の微細なメラユン穎粒へと連がる
ラニン(ln),マルピギー細胞外メラニン(EX),表皮メ
像,即ち樹枝状突起をはっきりと認める事が出来る.
クノサイト内メラユン(Me),真皮内メラユン(C).の
iv)マルピギー細胞外メラエン(EX):過度の色素沈
4要素に大別して観察した.また対照として,2,3の
着を来たす老人性枕贅,
色素沈着を伴う皮膚疾患にっいても観察,これと正常所
素性基底細胞癌等には殆ど毎常認められるものであっ
見とを比較した.
て,細胞間隙に一見樹枝状突起の寸離されたと看倣し得
i)マルピギー細胞内メラユン(ln):メラこニンに乏
る様なメラユン穎粒及びメラエン塊として存在する.こ
しい手掌,足疏を除き,その他の部位に就いて見ると,
の所見は正常皮膚にあっては通例認め難く,稀に表皮細
基底細胞内に多く,粒の揃った微細な黄褐色のメラニン
胞内にメラニン沈着の多い部位(例えば陰部)に見られ
Bloch氏黒色上皮腫第1型,色
穎粒が多量に存在,メラエン穎粒は屡こ細胞核の上極を
る事かおる.
上から帽状に覆っている(supranuclear
正常皮膚に於ける色素を以上の4要素に分け,それ等
caps).また有
韓細胞では下層のもの程メラユンか多い.剥離標本で真
相互の量的関係を比較すると,手掌,足礁を除いた身体
皮側より検鏡すると,基底細胞の核の周囲に大体一様
各部位を通じて表皮細胞内メラニンが最も多く,真皮内
に,黄褐色の微細,均一なメラニン穎粒か囲總してい
メラユンはこれに次ぐが,遥かに少なく,メラノサイト
る.表皮細胞内メラユン量は水平方向に一定の律動的消
内メラエンは更に遥かに少なく,表皮細胞外のメラユン
長を呈し,
は更に少量で寧ろ認め難い場合か多い(ln≫C≫Mc>
Epidermal
ridge にはEpidermal
valley に
比し多量のメラこ=・ンを見る.
EX→O).即ち正常皮膚におってはメラエンは主として
ii) 真皮内メラエン(c):正常皮膚におっては過
マルピギー細胞内にあり,このメラエンの量の多寡が皮
度の色素沈着を来たす種々の炎症性疾患や母斑等に於け
膚色調の部位的差異乃至個人的差異に重要な因子として
るか如く多量に存在することは無く,また身体各部位に
関与しているものと思われる,表皮細胞内にメラユンが
常に見られるものでもない.通例表皮細胞内メラユンが
存在する事は我々日本人の皮膚の所見に於ては明白な事
多量にある部位にこれを認める事が多い.自験例では陰
実である.垂直標本や電子顕微鏡所見に於ても亦同様表
部(包皮,陰嚢,大小陰唇,会陰部),項部,服寓,肘
皮内にメラユンの存在することか知られている.白人に
頭,膝蓋,顔面等に屡々これを見ている.真皮内メラユ
おってはStaricco
ンは通例真皮浅層,即ち乳頭層及び乳頭下層の担色細胞
Dopa標本の所見から黒色Dopaメラニンの為に基底
&
Pinkus (19Br) ""によれば,剥離
内.或は血管外膜細胞内,或は細胞外に粗大褐色のメラ
細胞内に僅かに存在する褐色メラニンを認め難くなる
ニン塊として認められる.表皮細胞内メラニンと異な
が,黒人ではDopaメラユンとは別にはっきりと基底
り,大小不同な塊状を示し,全般的に前者よりも大形で
細胞内に褐色メラユンが認められるという.また正常
ある.
及び病的皮膚にGiemsa染色を施すと,表皮細胞内メ
iii)メクノサイト内メラエン(Mc):固定標本では
タエンとは別に表皮細胞間隙に存在する樹枝状突起内メ
飴4
F1本皮膚科学会報誌 第72巻 第ji号
Fig. 3. Section from
each
tip of nose. Dendritic processes of the melanocytes anastomose
other, suggesting syncytial arrangement.
Fig. 4. Section from tip of nose. Several large melanocytes with long dendrites
areto be seen among many small melanocytes with short ones.
昭和37年11月20日
855
Fig. 5. Epidermal
re-pigmentation
after skin
abrasion. stripped epidermis. Dopa-
stain.
T he melanocytes which
are situated distant from the follicle,
arelarger and more strong】ydopa-po-sitive than those which are in
the
c lose vicinity of the follicle.
Fig. 6. Epidermal re-pigmentation after skin abrasion. Early stage. Melanin
granulesare revealed predominantly in the melanocytes rather than in
ma】pighian
cells CMasson-Zimmermann'
s stain).
856
日本皮膚科学会雑誌 第72巻 第11号
Fig. 7. Epidermal re-pigmentation after skin abrasion. Late stage. Melanin
granules predominate in malpighian cellsrather than in the melanocytes
(Masson-Zimmermann's
Fig. 9. Section from upper
ridges are present.
stain).
】ip.
The
incompletely closed arched or semilunar
857
昭和37年11月20日
Fig. 10. Section from
head. Circu】ar or
oval depression corresponding to dcr mal papillae are scattered over the
basal surface of the epidermis, a pat tern reminding
the surface of a golf-
ball.
Fig. 11. Section from
chest. Undulation
in the epidermo-dermal
junction to-
gether with network formation
of
ridges are conspicuous. Circular arran gement
of sweat pores surrounding a
hair follicle( Zifferblatt).
Fig. 12. Section from back. Undulation
in the epidermo-dermal junction is
remarkable.
858
日木皮膚科学会雑誌 第72巻 第n号
Fig. 13. Section from e】bow.The
of various width make
work formation.
ridges
a distinctnet-
Fig. 14. Section from knee.
A broad
ridgein the middle of the picture,
alongwith slender ones
sides.
on its both
Fig. 15. Section from the back of foot.
A fairly distinct network of ridges of
various width.
昭和37年11月20日
飴9
Fig. 16. Section from inner surface of
thigh. The epidermo-dermal
junction
is almcst flat,with several incom pletely closed arched ridges.
Fig. 17. Section from
scrotum.
Con-
centrical arrangement
of ridges
arou-nd a follicle,
i.eグKokarde ”.
Fig. 18.
Section
ridges
radially
from chest.
arranged
follicle result in 。Rosette
tion.
The
around
"-forma-
a
揃
日本皮膚科学会雑誌 第72巻 第]1号
Fig. 19. Section from
scrotum. There
are hemispherical epidermal processes
with excessive melanisation on the arched- or parallel-shaped ridges.
Fig. 20. Section from
scrotum. The
hyperpigmented
half-spherical epidermal
processes are to be seen at the top of ridges (Masson-Zimmermann's
stain).
訟
昭和37年11月20日
Fig. 22. Section from abdomen. " Haarscheibe ”
is present adjacent to the two-hair group
(H). The narrow
parallel- or islet-shaped
epidermal ridges in the area of the“Haar scheibe "
nocytes.
Fig. 23. Higher
have some dopa-positive me
magnification
of Fig. 22.
la-
船2
目本皮膚科学会鐘誌 第72巻 第1i号
Fig. 24. Section
from
radially arranged
be seen
together
axilla. The
around
with
ducts
of sweat
a four-hair
an
apocrine
group
sweat
glands
Fig. 26. Section
are
die, broad
to
duct (ap・).
from
so】e.
In
crista profunda limitans.
bこ)th sides,
slender
by the sweat
ducts
crista profunda
Fig. 27. Section
from palmar
distributed in
findings
in palm
surface
of finger.
C. p. 1.,C. p. i., and
and
sole.
ones
intermedia.
ridges
similar to the
midto
On its
penetrated
corresponding
Melanocytes are evenly
interpapillar
the
ridge correspanding
to
岫和37年11月加目
8ら
6 34 `
Fig. 28. Section from
palmar
Surface of finger.£)opa-positivemelanocytes are
present.
Fig. 29. Section from palm. Fine melanin granules of approximately same
sizeare present around nucleus and in the dendritic processes of the
melanocytes (Masson-Zimmermann's
stain).
8削
自本皮膚粘学会無誌 第臨
Fig. 30. Section of eczematous
area. Dopa-posi tive melanocytes are seen in the basal layer of
hair follicledown to the orifice of sebaceous
gland. There are some dopa-positive leucocytes
in the dermis.
Fig. 31.
Section from perineum.
melanocytes are present in the
eccrine
sweat
duct.
Dopa-positive
conus
of
昭和37年11月20日
865
ラこ・ンが認められるという.正常状態に於てメタノサイ
した場合よりも却って色素沈着が少ないという興味ある
ト内メラaンの存在することは電子顕微鏡所見から疑い
所見となる.これ等諸事実に拠れば,色素沈着を規定する
を入れないか30)31)光学顕微鏡所見としてはこれを全く
ものはメラノサイトの数だけではなく,むしろFitzpat-
認め得ずとするものと,僅かではあるが認め得るとする
rick & Szabo (1959) "の述べるが如く,メラノサイト
ものとかある.太田(1959)'"は正常皮膚に於てぱメヲノ
のメラ一こン形成能の完進如何,更にはマルピギヽ一細胞の
サイト内にはメラエン穎粒を指摘出来ず,
色素摂取及び維持能力,真皮内色素の運送能力等の諸因
M-Z染色に
よるも認められず,時にその樹枝状突起が黒色瞬粒を合
子に依って綜合的に規定されるものと考えてよかろう.
んで短小な紐状をなして表皮基底層に散見するに止まる
結 論
と述べている.一方Masson
1)本邦人正常皮膚に於けるメラノサイトの分布密度
(1948)
"'Bメラノサイト
のperlcaryonにも微量のメラユンを認めており,それ
を152コの身体各部位より採取した皮片につき算出し,
か周辺表皮細胞に比し極めて僅少量なるか為に周辺表
欧米諸学者の発表と大差なきデーターを得た.掌耽に関
皮細胞と対照的な透明細胞として認められると説き,基
してはドーパ陽性メラノサイトが存在するという説に賛
底細胞のメラエン沈着が少ない所,例えば眼瞼.頚部,
成したい.
前腕末梢部,肛門の辺縁等にあっては,
2)メラノサイトの数は年令及び性別には関係しない
モニア銀染色法にても,
Masson氏アン
Dopa反応で染め出されるメラ
事を33コの大腿内側より採取せる皮片について確かめ得
ノサイトに比し,ひけを取らない程の鮮明さでメラノサ
た.
イトの形態を染め出し得ると述べている.著者も亦,毎
8)従来とかく垂直標本のみに偏って論ぜられている
常とは云えないが正常メラノサイト内にメフaンを認め
メラノサイトの所見に,剥離標本からの所見をも加味
た.
し,メラノサイトの形態及び大きさ.表皮内に於ける位
10)メラニン沈着量とメラノサイトの数との関係
置及びEpidermal
152コの垂直標本にM,Z染色を施し,メラご=1ン穎粒
る分布状態等について論じた.
の量の多寡に於いて見るに,陰部に最も多く,次いで項
4)毛盤上の表皮には,時に平行線状乃至は島状をな
部,背部,四肢伸側,顔面,次に頭部,胸腹部,四肢屈
した幅の狭い表皮稜様のものが存在し,該部の上にDopa
側の順位となり.手掌,足眩,指腹,趾腹には殆どメラ
陽性メラノサイトが存在する所見を見出し,
ニンを証明出来なかった.一方メラノサイトの数は陰部
出(一郎)等の所見に補遣した.
か最も多く,次いで顔面.頚部,頭部,上肢,背部,胸
5)皮膚附属器に於けるメタノサイトの分布状況を検
部,下肢,腹部の順位を取り,メラ4ン量と多少平行す
討し,表皮細胞の延長である外毛鞘の毛包頚及び汗管円
るかの傾向も見られるか,あまり厳密なものでぱなく,
錐部に,夫々Dopa陽性メラノサイトの存在する事を
メラニン沈着を全く見ない手掌,足疏に多数のDo芦陽
認め,これか雪状炭酸療法後,
性メラノサイトが見られた.因みに生理的条件とはや二
後, Dermatome皮片採取後(12/1.000吋以下)に屡々
異なるが,自家植皮術に際してもメタノサイトの数とメ
認められる毛嚢中心性の色素沈着に関係するものと考え
ラ=ン沈着とは必ずしも平行しない.仲野(1959)
"'に
ridge及びEpidermal
valley に於け
Pinkus,上
skin abrasion technique
た.
よれば,耳後部から眼瞼部へ植皮した皮片は,大腿内側
6)正常皮膚におっては通例ヽマルピギー細胞内メラゴ
より同部への植皮したものに比ぺれば殆ど色素沈着を認
ン(ln)≫真皮内メラエン(C)≫メラノサイト内メラ
めず,色素分布は前者では正常皮膚型(ln及びCが略
==ン(Mc)>マルピギー細胞外メラユン(EX)→oなる
々正常皮膚に近い),後者では混合型(ln及びCが共に
メラニンの分布状況を示したが,手掌,足眩ではマル
増殖している)を示すものが多く,
ピギー細胞内メシ・=ンは証明されないにも拘らず,
Dopa反応では両者
の間にメ?ノサイトの数,形,大きさ,位置,DO
μ1陽
Dopa
陽性メクノサイトが存在し,該メラノサイトの一部のも
性度等に関し著明な差異は認められない.またこの所見
のに僅少量微細メラエン穎粒の存在する事を認めた,
と著者の算出したメラノサイトの数とを比較対照する
7)皮膚メタユン量とメラノサイトの数は大体に於て
と,耳後部のメ?ノサイトの数は1128,大腿内側のそれ
平行関係を示すが,それは厳密なものでなく,メラ=ン
は846であるから,メラノサイトの数の多い部分の皮膚
量を規定する因子はメラノサイトの色素形成能の強弱,
を植皮した場合の方がその数の少底い部分の皮膚を植皮
マルピギー細胞のメラニン摂取.維持能力の大小などか
866
日本皮膚科学会雑誌 第72巷 第11号
考えられる.
病院皮膚科医長大森清一先生及び医局の諸先生方に感謝
8)身体各部位に於ける表真皮境界部の模様を真皮側
の意を表します.
から観察してその大要を述べ,尚Dreihaargruppeの開
尚本論文0大略は,東京地方会第366回例会(昭和33
題にも検討を加え,本邦人皮膚におってもII∼Ⅲ毛群が
年2月15日),第57回日本皮膚科学会総会(昭和33年5月
均等に存在する事が多い所見を得た.
24日)に於て発表した.
筆を欄くに当って,材料を提供して下さった東京警察
ABSTRACT
1.
Melanocytes
normal
Japanese
similar
to foreign
in palms
and
2.
No
3.
The
4.
counted
from
correlation was
epidermal
of the
sheets
of 152 specimens
body. Results
were
of
essentially
the positive findings of dopa-positive melanocytes
found between
sizes. shapes
and
the melanocytes
counts and
distribution of melanocytes
were
age or sex.
studied by using sepa-
sheets in addition to the usual vertical section.
Results
were
almost
as those of Staricco and Pinkus.
In
some
finding which
As
cases on
epidermis
might
over
the “ Haarscheibe
ridge・like structures
be complementary
revealed in conus
of the
to the le▽el of orifice of the
with
in epidermal
eccrine
sweat
sebaceous
relationship to the foUicular re・pigmentation which
duct
was
and
were
paralledヽor
melanocytes.
a
and l. Kamiide.
dopa-positive mela-
in
outer
a finding which
hair sheath
suggest their
often seen after application with
or dermal
6.
features of distribution of melanin
general
appendages.
glands,
・carbon dioxide snow
The
” there
dopa-positive
to those described by F. Pinkus
for distribution of melanocytes
:nocytes were
・down
regions
reports, including
islet-shaped, slightly protruded
5.
in separated
various
soles.
rated epidermal
the same
were
skin
planing etc. \
in normal
skin are to be sum-
こraarizedas follows :
Intracellular
melanin
てC)≫melanin pigment
Malpighi (,Ex)
In palms
pigment
in stratum
in melanocytes
(Me)
melanin
pigment
pigment
in stratum
>C:),
and soles. however,
:ghi, but there were
7. Amount
some
no intracellular melanin
in
the
skin was
of melanocytes
cells,rather than
various regions of the body
were
considered
Malpi-
granules.
to be well correlated with
and ability of taking and
keeping
the
melanin
junction
viewed
from
the underside
in
descriBed.
the “ Drei-Haargruppe
in any
found in stratum
counts of the melanocytes.
8. The patterns of the epidermo-dermal
Concerning
was
dopa一犬positive
me】anocytes with traces of fine melanin
of melanin
:activity of pigment-formation
・of malpighian
predominant
Malpighi (In)≫dermal
>extracellular melanin
part of the body.
”, the
two-or
three-hair group
was
found to be
867
昭和37年11月20日
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