ただいま、ページを読み込み中です。5秒以上、このメッセージが表示されている場 合、Adobe® Reader®(もしくはAcrobat®)のAcrobat® JavaScriptを有効にしてください。 Adobe® Reader®のメニュー:「編集」→「環境設定」→「JavaScript」で設定できます。 「Acrobat JavaScriptを使用」にチェックを入れてください。 生涯教育講座 日皮会誌:107 (1), 1-8, 1997 (平9) ポルフィリン症の生化学的診断 なお、Adobe® Reader®以外でのPDFビューアで閲覧されている場合もこのメッセージが表示 されます。Adobe® Reader®で閲覧するようにしてください。 近 藤 雅 雄 緒 言 また赤芽球ALAS(赤芽球型, ポルフィリン症はポルフィリン代謝系酵素の辿伝的 染色体(Xplトq21)に存在することがわかった.N型 ALAS-E, E型)はX (一部非遺伝的なものもある)障害による一連の疾患群 はヘムにより負のフィードバック調節を受けるが,E であり,殆どの病型が光線過倣症を主訴とするため, 型はヘムにより正のフィードバック調節を受けること 皮膚科領域で取り扱われることが多い.したがって, もほぽ明らかになっている.さらに,ヘム合成系の各 光線過敏症を訴える患者についてはポルフィリン症を 種酵素量が肝と赤芽球では異なるため,ポルフィリン 疑うべくポルフィリンの生化学検査を実施することが 症では臓器選択性が見られる.これらポルフィリン・ 望ましい. ヘム合成およびポルフィリン症の分子生物学について ポルフィリン症の研究は高速液体クロマトグラ の詳細は文献5) フィー(HPLC)とpolymerase ポルフィリン症の概念および分類 chain reaction (PCR) 7)を参照されたい. の出現によって,飛躍的に発展した.すなわち,微量 ポルフィリン症は医聖といわれるギリシャのヒポク 生検材料中のポルフィリン分析,さらに酵素活性の測 ラテスにより紀元前460年頃にすでに記載されている 定がHPLCによって短時間で,正確に測定できるよう が,今日的には1874年Schultzによる症例報告が初め になり,ポルフィリン症の自動診断技術がほぽ確立さ てである.その後, れ凪一方, 1912年,有機化学者のH. Fischer PCRはポルフィリン症の分子生物学およ び遺伝子診断に必須の機器としてm要だが,ポルフィ 【ヘム生合成】 リン症の場合,家系ごとに変異部位が異なっているな グリシン十サクシニルCoA どスクリーニングとしては未だ難点が多い.本稿では, ポルフィリン症の生化学的診断法として,ポルフィリ I ALAS 【ポルフィリン症】 ALA ADP←●t●゜・゛・●●●●●●●●●●●●・I ン代謝産物の測定を中心に述べる. PBG ヘムの生合成調節 ATP← ↓・・PBGD ヒドロキシメチルビラン ヘムは細胞内のミトコンドリアと可溶画分に局在す る8個の酵素の共同作業によって合成され(図1),ヘ 非酵素的 CEP←・・・ モグロビンを初めとして,ミオグロビン,シトクロー URO'gen Ⅲ ム,カタラーゼ,ペルオキシダーゼ,トリプトファン PCT,nEP←・・l ピロラーゼなどの補欠分子族として,酸素の運搬,電 子伝達,酸化還元,薬物代謝など重要な反応に携わ る1) 3).このヘムの合成調節は肝と赤芽球とで異な る4).この最大の原因は,最初の酵素j-rミノレブリン 酸(ALA)合成酵素(ALAS)に組織特災性があるこ とである.すなわち,山本らの一連の研究5)によって, ■-ALAD ・en l→ URO■gon l→排泄 ↓ ・・UMD COPROgenⅢ copno ・ -UROD gen l→排泄 HCP←・・・'・・l・ ・CPO PROTOgenⅨ VP ・‥・l・・PPO プロトポルフィリン匯 EPP←・・・・・■I ■・FeC, Fe'* ヘム 図1 ヘム合成経路と各ポルフィリン症における酵素 ALASにはそれぞれ異なった遺伝子から生産される 異常 二つのアイソザイムが発見され,1つは肝ALAS(非 ヘム合成経路には8個の酵素が関与し,すべての遺 特異型, 伝的酵素異常(ALASの異常はポルフィリン症では ALAS・N,N型)で第3染色体(3p21)に, ないが鉄芽球性貧血が知られている)が知られてい 国立公衆衛生院・栄養生化学部 る.また,これら酵素の多くがSH酵素であり,多 平成8年9月25日受理 くの環境因子,薬剤によって阻害される.酵素の障 別刷請求先:(〒108)東京都港区白金台4−6−1 害は基質の過剰生産を招き,体内に増量・蓄積され 国立公衆衛生院・栄養生化学部 近藤 雅雄 各種症状発現の原因となる. 2 近藤 雅雄 表1 ポルフィリン症の分類 分類 1 性 皮 后 型 肝 ポルフィリン症 病 型 遺伝形式 (常染色体) 障害酵素 染色体上の 発症年齢 性差 遺伝子座 CEP 劣性 EPP 優性 PCT 家族性 優性 UROD 散発性 なし UROD 劣性 UROD HEP AIP UROS FeC 優性 PBGD 急 性 性 10q25.2 -n26.3 出生時 18 <121.3 幼児川∼ 思石川 ♀=古 主要症状 生化学的所見 光線過敏症 ポルフィリン ♀=舎 光線過敏症 ポルフィリン 幼児閲 ?>舎 光線過敏症 ポルフィリン 1p :i'i 中年以降 ♀<舎 光線過敏症 ポルフィリン 1p 3・1 幼児閲 ? 】p34 11<12.1.1 −(124.2 ADP 劣性 VP 優性 ALΛD 凹32 −(134 rro in 22 HCP 優性 CI'O 3qi2 湖 幼児則 石叩 抑 フン吉 神経症状 ? ALA,PBG ALA, 神経症状 yンき mM状 光線洒敏症 yン名 陣経症状 光線過敏症 PBG 患者数 ∼Ii)il2.1 .TU 本邦第一 例報告年 17 : 16) 1920 9・i( :\2: 62) 1964 未発見 (} 23(1 ( !■!:214) 4( 】: 3) 145(117 : 1957 1972 2G) 1932 未発見 0 ΛLΛ,l'BG ポルフィリン 40 ( 34: 6) 1962 Λ│.Λ,I'l≪! ポルフィリン 23 ( 17: 5) 1966 患者数(♀:Uは本邦第1例報告1920年から1992年け)までに報告された放であり,この他分川不明の急性ポルフィリン症43例 (31 : 11)を含めると総数612例(26H : 343)である.性別不明は6例である. llKl'とΛDPの竹.差は例数が少なく不明 が同じ症状を呈する忠者のぶどう酒の様に赤い色素を いため,前処理をできるだけ最小限にとどめ,ポルフィ 尿中から分離し,その構造を決定してからポルフィリ リン類を短時間に正確に分離して定址することが重要 ンの生化学,臨床医学が急速に進展し, 1960∼1970年 であり,これらの条件を満たす最も理想的な方法が 代には各辿伝性ポルフィリン症の発見および酵素異常 HPLC法である. が次々と明らかにされた8). 1. HPLCによるポルフィリンの分析9) ポルフィリン症は,ヘム合成系酵素の活性が異常に 尿,血液,糞便中のポルフィリン類は逆相カラムど 減少しているために生じる代謝異常症であり,8つの アセトニトリル系の移動相(溶離液)を用いたHPLC 病型が知られている(表1).これらの病型はポルフィ 分析によりカルボキシル基数の多い順(水溶性の高い リン代謝異常がおもにどこの臓器に発現しているのか 順),およびI型と111型の川で溶出するので,これを蛍 によって肝性と赤芽球性に,あるいは臨床的立場から 光検出器で測定する. その主要症状の違いにより急性と皮膚型に分類され 1)尿中ポルフィリン分析 る. 皮膚聖ポルフィリン症忠者では尿中に過剰のポル ポルフィリン症の生化学的診断 フィリンを排泄するため,尿自体が暗赤色を呈するこ 12) ポルフィリンは化学侶辺土,側鎖の持つカルボキシ とがある.これに暗室でウッド灯(400nm付近の長波 ル基数の違いによる溶解性の差と,すべてのポルフィ 長紫外線が照射されるランプ)を照射すると鮮明な赤 リンに共通な特有の赤色蛍光とを利川して測定され 色蛍光が見られるが尿中には多くの蛍光物質があり, る.ポルフィリンは尿,血液,糞便,および組織中か 確定および鑑別診断はHPLC法で行う. ら,健常人ではウロポルフィリン,コゾロポルツィリ 尿中のポルフ.イリノーダンをヨウ素/酢酸液などで ン,プロトポルフィリンの3種煩がおもに検出される 完全に酸化13)させた後,一定量(n)μl)を逆相カラムに が,ポルフィリン症の病型によって特有のポルフィリ 注入する.アセトニトリル系溶離液によって尿中ポル ン類が出現し,同症の鑑別診断に極めて重がな情報を フィリンは10分以内に分躍し,これを蛍光検出器 与える.現在,生体材料中のポルフィリンム111を測定す (Ex = 404nm, る専用の簡易分析機器,呈色液,またはテストペーパー フィリン代謝異常症忠名・の尿中ポルフィリンの典型的 といったものは開発されていないが, なクロマトグラフを示した.その他,尿中ポルフィリ HPLC分析はポ Em = ()2()iini)で測定する.図2にポル ルフィリン症の自動鑑別診断を可能にした(後述).す ン分析としてポルフィリン特有の吸収波長または蛍光 なわち,微Jltの生体試料からのポルフィリン分析では 波長を利川し,スペクトルを直接とる方法I4)-16)レー ポルフィリンが光照射や過酸化物によって分解され易 ザー法17)18) 'pL(;法''■", Dowexイオン交換樹脂を用い 3 ポルフィリン症の生化学的診断 11 OHdOO I OUdOO I VlN3d VJ.d3H 、剛 o匡コ く (b) VX3H 0 9 180 9 180 9 180 9 180 9 18 保持時間〔mln〕 (a)健常者.(b)急性鉛中毒忠者, ポルフィリン症患者, カラム(Econosphere (c)急性間欠性ポルフィリン症患者, (d)先天性赤芽球性 (e)晩発性皮川ポルフィリン症患者 C18, 4.6mmX15()inm)に注入した尿量は, (a) 2.5μ1, (b)∼(e)は1.25 μIに相当する.図中の略号は図20・2と同様 , 図2 ポルフィリン代謝異常症患者の尿中ポルフィリンのクロマ1ヽグラム例 たカラムクロマトグラフィー法20)およびマイクロプ 2. レートリーダ法12)21)が知られている. ポルフィリンの前駆物質であるΛLΛとポルホビリ ALAおよびPBGの測定 2)赤血球中ポルフィリン分析 ノーダン(PBG)は急性ポルフィリン症や鉛中毒症の 赤血球中に存在する総ポルフィリンの70∼90%は亜 鑑別診断に重要な測定意義を持つが,皮膚型ポルフィ 鉛結介聖プロトポルフィリン(ZP)であり,残りの殆 リン症の診断にはポルフィリン測定の方が重要であり どが赤血球苛叩聖プロトポルフィリン(FP)である. 紙面の都合上参考文献だけを記載するlo川圃≒ このFl', 3.ポルフィリン代謝産物の正常値と異常値の臨床 '/A'はiiri.c法22)により5分以内に分離す る.これを蛍光検出器(励起波長420nm,蛍光波長630 的意義 nm)にて検出する.その他,総ポルフィリンおよびZP ヘム合成系酵素の先天的,後天的異常によって赤芽 測定を目的とした溶媒抽出法,ヘマトフルオロメー 球または肝由来のポルフィリン代謝産物が尿,糞便, ター法などの簡易法が各種開発されている23)-25) 赤血球中に増量する(表2).肝陸ポルフィリン症の場 3)血漿中ポルフィリン分析 合,肝ヘム合成系酵素の障害はヘムによる抑制解除の 微址の血漿をlOmMリン酸緩伽液一().!)%食蝋水, 機構によりALAS活性が上昇しl)-3)障害酵素までの 1)H 7.4などで希釈した後,直接4{}O 各種中間代謝産物が過剰蓄積され,尿中に大量排泄さ nmの励起光で 580∼700nmの蛍光スペクトルを測定する方法2(1)27)が れる.赤芽球性ポルフィリン症の場合はおもに異常酵 利川されている.鑑別診断にはHPLC法を用いる川. 素の基質が大量に血液,尿,糞便中に出現する. 4)糞便中ポルフィリン分析 1)尿中ポルフィリンの増量する疾患 爽中のポルフィリン測定はHPLC2脚こよる分離定 尿中ポルフィリンは赤芽球性プロトポルフィリン症 :11法が望ましいが, (EPP)を除いたすべてのポルフィリン症で増量し,そ Holtiの簡便法29)もスクリーニン グとして利用されている. のパターンの変化から鑑別診断が可能である.最近, 先天性赤芽球性ポルフィリン症(CEP)患者の尿およ 近藤 雅雄 4 表2 ポルフィリン症の特徴的な生化学所見 ポルフィリン症 増量するポルフィリン代謝産物 酵素障害 尿 赤 血 球 ADP ALAD ALA, COPRO AIP CEP PBGD UROS PCT UROD ALA, PBG, PENTA URO I, COPRO I URO in, HEXΛm HEP UROD URO HCP CPO COPRO VP PPO EPP FeC COPRO m,URO Ill,A LA, PBG 肝障害によりCOPRO I …… m,HEXA { III 糞 便 正常範囲内 正常範囲内 正常範囲内 PROTO>COPRO COPRO COl'RO 1, ZV 正常帽川内 Ill Ill,A LA, PBG I HEXA, PENTA, is( ■COPRO COPRO>PROTO KP, COVliO PROTO, 正常帽川内 正常帽川内 COPRO PROTO>COPR0,X-porphyrin FI> PROTO(正常の20倍以上) HPLC/インテグレーター・・--・・---・--l isoヽCOPRO m>COPRO I>PROTO r・一一・C証回豆巫)・---: (0)び H I ゛一白 H I デガッサ 検出器 とミJレ ロ □ ]{ミミ9 ヨ== FP 1 母・j代 無回誕 II︲I︲︲IIIk 余 謬 岬賢. プリンタ 移動相溶媒 ロ 1 °-・゜・・・●●●゛・`-・`゜・゜゜----・--'-------・--・・-・-・・--・・-・-・・●----16●..-.--・-・・-・・-●●-・・・--・・--.....-S 図3 診断システムの構成図と診断ルール 5 ポルフィリン症の生化学的診断 表3 赤血球ヘム合成諸酵素活性値の変動する疾患 血清および尿中に大量のALAが出現する35)また,急 性ポルフィリン症の急性発作時には肝ALAS活性の I.高値を示す疾患 1.ALAD:溶血性貧血,鉄欠乏性貧血,鉄芽球性貧血 上昇が確認され,その結果として,尿中にALAや 2. PBGD:EPP, PBGが大量出現する.しかし,症状か寛解すると減少 CEP√溶血性貧血,鉄欠乏性貧血 鉄芽球性貧血,鉛中毒,肝硬変 するので,予後判定が可能である.これら尿中ALAの 3. UROS:EPP,溶血性貧血 鉄芽球性貧血,鉛中毒 増量する疾患ではほぼ共通した神経症状が出現する. 4. UROD:HCP,溶血性貧血,鉄芽球性貧血 急性ポルフィリン症の急性発症時にはPBGも増加 II.低値を示す疾患 し,寛解期で減少する.ただし, 1. ALAD:ADP,先天性チロシン血症,鉛中毒,糖尿病, アルコール多飲,晩発性皮附ポルフィリン − − AIPでは寛解期でも 増量している. 症,腎不全,肝硬変,多ハロゲン化芳香族化 4.ポルフィリン症自動鑑別診断装置 合物暴鱗 ポルフィリン症の尿,糞便,血中には各病型に特有 2. PBGD:A メ 3. UROS:CEP 4. UROD:PCT のポルフィリン排泄パターンが見られる36)これを (家族性), HEP, CEP, VP,鉛中毒, HPLCで精密分析し,各種ポルフィリン誘導体の量と 質の違いから各種疾患におけるポルフィリンのパター 一 多ハロゲン化芳香族化合物暴露 ンを解析し,データー処理によってポルフィリン代謝 下線を引いた疾患はとくに確定診断に重要 異常症を無侵襲に約10分で診断できる全自動鑑別診断 び血漿中からHPLC分析によってURO I のハイドロ 法が開発されている37)図3に診断システムと診断結 キシ誘導体が3個発見されている32)が,生理的意義に 果を出力するまでのフローを示したが,本システムは ついては不明である. HPLC/データ処理装置でポルフィリンの定性・定量分 2)糞便中ポルフィリンの増量する疾患 析を行った後,フロツピーディスクを介してデータを 糞便中には疾患により未同定のポルフィリンを含め 診断処理装置に取り込み,診断を行うものである.す 総計20種類近くのポルフィリンが出現する.この殆ど なわち,10μ1の尿がHPLCに自動的に注入され,ポル の物質が腸内フローラによって生産または側鎖の変化 フィリンのパターンと量を分析,これをデーター処理 が生じたものと推測される28)糞便ポルフィリンは急 し,具体的にポルフィリン症の病型を表示する.他の 性間欠性ポルフィリン症(A 分析方法によって得られたデータもキーボードから診 メ),ALAD欠揖匪ポル フィリン症(ADP)を除いたすべてのポルフィリン症 断処理装置に入力することができる. において増量,パターン変化が認められ,鑑別診断が 5.ポルフィリン症の酵素学的診断 可能である汽さらに,晩発性皮膚ポルフィリン症 本邦で発見されたポルフィリン症患者総数は約612 (PCT),肝赤芽球性ポルフィリン症(HEP)ではイソ 例38)であるが,キャリアはこの数倍存在するものと思 コプロポルフィリンが,多楡匪ポルフィリン症(VP) われる.キャリアの早期発見はポルフィリン症の発症 ではポルフィリンーペプチド結合物であるX−ポル 予防において極めて重要であるが,その実態について フィリン33)が各々特災的に増量し,重要な診断的意義 は殆ど不明である.キャリアの確定診断には,当該病 を持つ. 型の責任酵素の活性測定が必要である.この酵素活性 3)赤血球中ポルフィリンの増量する疾患 の測定にはおもに血液細胞,肝細胞,各種培養細胞な EPPおよびHEP患者のプロトポルフィリンは赤 ど微量の臨床材料が用いられるが,測定法および活性 血球遊離型であり不顕性遺伝子保行者(キャリア)で 値は統一されておらず,異常値を判定するには必ず対 も高値であることが多い.この遊雌型は血漿中にも出 照値が必要である.赤血球中のヘム合成酵素活性の測 現し,皮膚や肝などの組織に沈着するため,光線過敏 定意義について表3にまとめた39)が,8つのヘム合成 症や肝障害を誘発する原因となる.一方,鉛中毒や鉄 系酵素の活性測定法と臨床的意義4o)および遺伝子診 欠乏性貧血で増量するプロトポルフィリンはZn結合 断41)についての詳細は文献を参照されたい. 型であり,これはヘモグロビンと結合し,血漿中には 結 語 出現しない燃 この10年間でポルフィリンの測定は溶媒抽出法から 4)ALAおよびPBGの増量する疾患 HPLC法の時代に一変し,ポルフィリン代謝異常症の ADPのようにALADの著明な活性低下があると, 生化学的診断技術が飛躍的に発展した.ポルフィリン 6 近藤 雅雄 症に関する情報(医学中央雑誌によると1995.12までに は増加するものと思われる.本疾患においては早期発 1,134件の報告がある)は日本皮膚科学会の継続的な皮 見が極めて重要であり,本稿で述べたポルフィリン症 膚科研修講習会42)43)などにより,皮膚科領域での報告 の生化学的診断の積極的な臨床応用を期待したい. が年ごとに増大し,今後も,環境の変化と共に患者数 文 献 1) Kappas 37-42, A,Sassa S,Galbraith RA, Nordmann Y : The porphyrias. In : The Molecular CR, Metabolic and Basis of Inherited Disease, Scriver Beaudet AL, Sly ws, Edn. McGraw・Hill, New Valle D (eds), 7th, York, 1995, 2103-2159. 2) Fujita H編: Regulation of Heme thesis. Alph Med Protein Syn- Press, Ohio, 1994. 3) Sassa S, Nagai T : The role of heme 14) 1989. Valcarcel derivative a1 : Direct and quanti丘cation uroporphyrins synchronous fluorescence 15) Bok, Zuiiderhoudt FMJ, Dorresteijn-de in gene photometric 16) 1995. screening 186-189, 分子生物学一非特異型および赤血球型ALAシン Ann ターゼ遺伝子の発現とその調節,ポルフィリン・ヘ 17) ムの生命科学一遺伝病・がん・工学応用などへの展 ins 開一,ポルフィリン研究会編,現代化学,増刊27, laser fluorimetry, 東京化学同人, 189-196, 1995, 33-40. of Clin I?ed, cw, using 18) 分子生物学,ポルフィリン・ヘムの生命科学一遺伝 phyrin 病・がん・工学応用などへの展開一,ポルフィリン time・of-flight 研究会編,現代化学,増刊27,東京化学同人, use spectrophotometric porphyrin in 9 : 156-161, et al : Rapid screening analysis RM, Lamb JH, profiles of by mass classical Lim laser spectrometry 生物学,生化学,65 of Henderson MJ free : Thin-layer porphyrins for 疫学−ポルフィリン症研究の歴史とわが国におけ 20) る患者分析一,ポルフィリン・ヘムの生命科学一遺 the 伝病・がん・工学応用などへの展開−,ポルフィリ porphyrins, ン研究会編,現代化学,増刊27,東京化学同人, 21)近藤雅雄:マイクロプレート螢光法を用いた新し 1995, い尿中ポルフイリンの測定法,医学のあゆみ, Leahy DT, : 1043-1044, Brien separation / TG and : 49卜492, without : A 毟り/, of simple 156 測定法概論,特集ポルフィリン症,日本臨床, 22)坂井 公,竹内幸子,荒木高明,他:HPLCによ 53(6):45-51, る血中プロトポルフィリン測定法の検討,標準液 調整の協定と4施設での血液試料の測定結果の比 22 : 411-418, 1994. 較,産業医学,34 11)近藤雅雄:尿・血液・糞便中ポルフィリンおよびδ 23) −アミノレブリン酸,ポルフォビリノーダン.特集 Microanalysis ポルフィリン症,日本臨床, levels : 236-242, al : of 12)近藤雅雄:尿中ポルフィリンのスクリーニング cronic 法.特集ポルフィリン症,日本臨床,53(6):65-70, range,Biochem 1995. 24) M, et a1: Urinary coproporphyrin patanalysis in patients with Dubin-Johnson by high-performance B liquid 「I Iwsf Puhl Health,38: Lamola in the AA, 25) and : 936-938, Rimington of for urinary 1982. 1992. in lead erythrocyte Med, in T : Zinc of patients de丘ciency : I, the detection the 8 : 135-148, Yamane iron poisoning protoporphyrin in intoxication erythrocytes cation 186 Studies spectrophotometry lead method 1991. 10)近藤雅雄:ポルフィリンの検査法.検査と技術, by porphyria, 35 : 1232-1235, 9)近藤雅雄:ポルフィリン・ポルフィリン前駆体の S, et the 1989. quantification Clinl=? por- chromatography CKw Chem,35 1995. : Comm Mass diagnosis 8)矢野雄三,近藤雅雄,浦田郡平:ポルフィリン症の 53(6):52-58, visivle CK; Urinary matrices,Rati 19) Sassa of porphyrand desorption/ionization 7)藤田博美,永井 正:先天性ヘム代謝異常の分子 1995. urine, Anal C旨琲 Acta, 254 Sftectr, 9:921-923, 1995. 136-144. diluted 1976. flow-injection 128-135. : 8-25, 1993. urine 1991. 6)赤木玲子,高川真徳,藤田博美:ポルフィリン症の 1995, Jones for increased CHm Biochem. Z2: S, et al : Direct determination chromatography, teValde 1995. Schwartz Huie test excretion, Ann 5)永井 正,山本雅之:ポルフィリン・ヘム生合成の syndrome by K : Evaluation of a first・line spectro- 学, tern of urine spectros- 1989. porphyrin 13) Kondo in copy, CHw Chem, 35 ・.1 508-1512, expression, bit J Hematol,63 : 167-178, 1996. 4)近藤雅雄:天然色素ポルフィリンの科学,現代化 291(6):49-55, M, et coproporphyrins of subclinical 1973. protoporphyrin with lead anemia, intoxiScieれce, 1974. C, Cripps DJ : Biochemiccl and ポルフィリン症の生化学的診断 fluorescence microscopy screening erythropoietic protoporphyria, 624-626, 26) MB Arch£)び。mtol, for value plasma variegate 116 : 543-547, Simonin Nordmann tic : A marker VD, 定法,臨床化学,17 : 36一39, 1988. 35)藤田博美,石田信宏,赤木玲子:δ−アミノレブリン 酸脱水酵素欠乏症.特集ポルフィリン症,日本臨 Poh-Fitzpatrick Silva for 1965. fluorescence 27) tests Lancet, 1: jF I porphyrin 床, 53(6):96-105, porphyria, 36)近藤雅雄:ポルフィリン代謝異常症の鑑別診断に 1980. S, Deybach 1995. ついて.日本臨床代謝学会記録,27 JC, Puy H, Y : Variegate porphyria : Diagnos- of fluorometric scanning of plasma 生化学的診断法一尿中ポルフィリンパターン解析 porphyrins, Clin Chim A, 238 : 163-168, 1995. によるポルフィリン症自動鑑別診断システムの検 28)近藤雅雄:糞便ポルフィリンの測定と臨床的意 討−.特集ポルフィリン症,日本臨床, 義,ポルフィリン,2 : 85-91, 96-105, 1995. 29) investigation Holti G, et a1 : An cutanea : 192-193, 1990. 37)藤岡裕二,柳沢 久,近藤雅雄:ポルフィリン症の 1993. of porphyria tarda, QJ Med, 27 : 1-17, 1958. 38) Kondo M, Yano 53(6): Y : Porphyria in Japan. ln: Regulation of Heme Protein Synthesis.(ed by 30)友国勝麿:尿中δ−アミノレブリン酸(スクリーニ Fujita H), 125-132, AlphaMed ング法)。特集ポルフィリン症,日本臨床,53(6): 39)近藤雅雄:赤血球中ポルフィリン合成酵素.特集 71-76, 31) CJ, urinary Med, 32) ポルフィリン症,日本臨床, 1995. Watson Schwartz S : A porphobtlinogen, 47 : 393-394, Gu G, Lim hydroxy ProcSocExp Biol derivatives : 245-248, 33) Jamani C加希35 of l by high- chromatography with / Chromatfび A, 1996. A, Pudek chromatographic and separation of uroporphyrin liquid 1995. ン・ヘムの生命化学―遺伝病,がん工学応用などへ 27,東京化学同人, 1995, 177-191. 41)大門 真,佐々木英夫:ポルフィリン症のDNA 診断法.特集ポルフィリン症,日本臨床,53 :(6): 90-95, 1995. 42)三浦 隆:ポルフィリン症の臨床.日本皮膚科学 M, Schniber assay : 471-475, 53(6):59-64, 40)近藤雅雄:ポルフイリンの臨床化学.ポルフイリ の展開−,ポルフィリン研究会編,現代化学,増刊 electrochemical detection, 722 test for 1941. CK : Preparation performance simple Press,Ohio, 1994. WE of urinary : LiquidPBG, 1989. G泌 会皮膚科講習会,日本皮膚学会教育委員会刊, 1982. 43)野中薫雄:代謝異常と光線過敏症.前実積研修講 34)近藤雅雄,広沢実一:高速液体クロマトグラ 習会必須Bコース,日本皮膚科学会専門医委員会 フィーによる赤血球ポルフィリンの高感度迅速測 刊, 1994. 8 近藤 雅雄 Biological Diagnostic Technique of Porphyria Masao Kondo Department of Nutrition and Biochemistry, The Institute of Public Health, Japan (Receivedand accepted for publication September Porphyrias are a clinicallydiverse group of diseases stemming in the heme biosynthetic pathway。 Depending from inherited deficiencies of enzymes on the clinical expression of the enzyme are classified as either erythropoietic or hepatic. They to causative enzyme 25,1996) defect, porphyrias are further classifiedinto eight subtypes according defect, clinical presentation, and over-produced substrate. Contrary to the belief that porphyrias are of relatively rare occurrence, there has recent】ybeen a proliferation of reported cases, apparently as a result of growing research, and improvement may stillbe misdiagnosed. ly, determination and their precursors is of paramount of porphyrins solvent-extraction method determination of porphyrins diagnosis, determination lymphocytes porphyrins or various chromatographic high-performance liquid chromatography of activities of enzymes and/or genetic diagnosis would procedures are based 106: 1∼8, 1997) words: porphyria, It follows involved diagnosis, HPLC and extracted to provide information (HPLCパs most in heme be the most reliable ways in by the of diagnostic effective for the separation and there is the need for a definite biosynthesisor in erythrocytes or of addressing the problem. These on highly specialized scientificknowledge used biologic diagnostic criteria and the underlying Key biological porphyrias for the treatment ;according- can easily be separated are not therefore suitable for general application. This paper (JpnJ Dermatol however, therapeutic importance. for differential diagnostic purposes. Where diagnostic techniques, however, and molecular and their precursors in clinical materials is of pivotal importance establishing the diagnosis of porphyrias. While importance, in biochemical of diagnostic techniques. Unfortunately, Early detection and identification are important of porphyrins that determination clinician interest, advances and refinement and discipline and provides a description of the most diagnostic techniques in current use. widely
© Copyright 2025 ExpyDoc