ISSN 2186-5647 −日本大学生産工学部第47回学術講演会講演概要(2014-12-6)− 2-3 マルチサイクルキャプチャテスト生成における低消費電力要因解析 日大 生産 工(院) 〇 山 崎 紘史 日大 生産 工 (院) 日大 生産 工 細川 利 典 京 都産 大 近年の半導体微細化技術の進歩に伴って,大規模集 積 回 路 ( Very Large Scale Integrated circuits: VLSI ) が 大規模化・高速化し,テスト実行時における消費電力 の増大が問題となっている.テスト時の過度な消費電 力 は IR ド ロ ッ プ を 発 生 さ せ ,回 路 内 に 遅 延 を 引 き 起 こ すことで良品を不良品と判断する誤テストを行う可能 性がある.また,消費電力による発熱で回路を破壊す る可能性も考えられる.これらの現象により,テスト 時の消費電力増加は歩留まり損失の原因の一つとして 考えられる.したがって,歩留まり損失を抑制するた めにテスト時の消費電力を削減することが重要である. VLSI の テ ス ト 方 法 と し て 広 く 普 及 し て い る ス キ ャ ン テ ス ト [1]で は ,テ ス ト 時 特 有 の 消 費 電 力 と し て ス キ ャンチェインへのテストデータの印加を行うシフト動 作 時 に 発 生 す る シ フ ト 電 力 [2]と ,テ ス ト 応 答 の フ リ ッ プ フ ロ ッ プ (Flip-Flop : FF)へ の 格 納 を 行 う キ ャ プ チ ャ 動 作 時 に 発 生 す る キ ャ プ チ ャ 電 力 [2]が 挙 げ ら れ る .シ フト動作時には最長スキャンパス長分のクロックパル スが必要となるため,シフト電力の影響は温度上昇と い う 形 で 現 れ , VLSI を 高 熱 で 破 壊 す る 可 能 性 が あ る . 一 方 , キ ャ プ チ ャ 動 作 時 に は FF の 遷 移 が 同 じ タ イ ミ ン グ で 発 生 し ,回 路 内 の 多 く の 信 号 線 が 遷 移 す る た め , キ ャ プ チ ャ 電 力 の 影 響 は IR ド ロ ッ プ に よ る 回 路 内 の 遅延増加という形で現れ,誤テストを行う可能性があ る .本 論 文 で は ,フ ル ス キ ャ ン 設 計 [1]が 施 さ れ た 順 序 回路の遷移故障モデルを対象とするテスト生成におい て,キャプチャ電力の削減を試みる. 遷移故障のテスト方法として, 2 パターンテストが 提 案 さ れ て い る [2].ま た 2 パ タ ー ン テ ス ト を 用 い た 実 速度スキャンテスト法として,スキュードロード方式 [3][4] と ブ ロ ー ド サ イ ド 方 式 [5]が 提 案 さ れ て い る . 本 論文ではブロードサイド方式を用いる.キャプチャ時 高 消 費 電 力 の 原 因 と し て ,VLSI の 機 能 動 作 を 考 慮 せ ず 構造的なテスト生成を行っていることが考えられる. フルスキャン設計が施された回路において,一般的な 自 動 テ ス ト 生 成 (Automatic Test Pattern Generation: ATPG)は 機 能 動 作 を 考 慮 せ ず テ ス ト 生 成 の 容 易 性 を 優 先してテスト生成を行う.そのため,生成されたテス ト パ タ ー ン の ス キ ャ ン FF の 状 態 が 機 能 動 作 で は 起 こ りえない状態となり,回路内の多くの信号線に遷移を 発生させている可能性がある. 一 方 ,文 献 [6]に お い て ブ ロ ー ド サ イ ド テ ス ト 用 の テ ス ト パ タ ー ン に 対 し て マ ル チ サ イ ク ル 間 (5 サ イ ク ル 以 上 )キ ャ プ チ ャ 動 作 を 実 行 す る こ と で キ ャ プ チ ャ 電 力 が 減 少 す る こ と が 報 告 さ れ て い る . ま た ,k(≧ 2)時 間 展開モデルを利用してテスト不可能な遷移故障を判定 するための手法としてマルチサイクルキャプチャテス ト 生 成 が 文 献 [7]で 提 案 さ れ て い る . 本 論 文 で は ,文 献 [6]で 報 告 さ れ て い る キ ャ プ チ ャ 動 作をマルチサイクル間実行することによるキャプチャ 電力の減少に着目し,マルチサイクルキャプチャテス ト 生 成 を 用 い て , k(≧ 2)サ イ ク ル 間 キ ャ プ チ ャ 動 作 を 行 っ て 最 終 時 刻 で 遷 移 故 障 を 励 起・ 検 出 し , k-1 時 刻 に お け る ス キ ャ ン FF と 外 部 入 力 (Primary Inputs: PI)の 値をテストパターンとすることで,キャプチャ電力の 抑制を目的としたブロードサイド方式の遷移故障テス ト生成法を提案し評価を行う. また,従来のブロードサイド方式のテスト生成では, 機 能 動 作 で 遷 移 し な い 状 態 に FF を 設 定 し て テ ス ト 生 成を行っている可能性がある.この状態を無効状態と いう.一方,提案手法では,たとえ 1 時刻目が無効状 態であったとしてもキャプチャ動作をマルチサイクル 間 実 行 す る こ と で ,FF の 状 態 が 機 能 動 作 で 遷 移 す る 状 態,すなわち有効状態へと遷移する可能性がある.そ のため,本論文では低消費電力設計された回路に対し てテスト生成を行い,生成されたテスト集合を有効状 態と無効状態に分類し,それぞれのキャプチャ時消費 電力の解析を行った. 2 章 で マ ル チ サ イ ク ル キ ャ プ チ ャ 動 作 と WSA に つ いて,3 章で提案手法であるキャプチャ消費電力削減 のためのマルチサイクルキャプチャテスト生成を提案 し ,4 章 で 実 験 結 果 に つ い て 考 察 し ,5 章 で 結 論 と 今 後 の課題について述べる. 2. マ ル チ サ イ ク ル キ ャ プ チ ャ 動 作 と WSA 文 献 [6]に お い て ,ブ ロ ー ド サ イ ド テ ス ト 用 の テ ス ト パターンに対してマルチサイクル間キャプチャ動作を 実行することで,キャプチャ時消費電力が減少するこ と が 報 告 さ れ て い る .本 章 で は 予 備 実 験 と し て ,ATPG で生成したテスパターンに対して,キャプチャ動作を 50 サ イ ク ル 間 動 作 さ せ た 時 の キ ャ プ チ ャ 時 消 費 電 力 を評価する.また,本論文ではキャプチャ時消費電力 の 評 価 に は 重 み 付 き 信 号 遷 移 (Weighted Switching Activity: WSA)[8]を 利 用 す る .2.1 節 で 予 備 実 験 内 容 に つ い て 説 明 し , 2.2 節 で 予 備 実 験 結 果 を 示 す . 7000 6000 5000 WSA 1. は じ め に 西間木 淳 吉 村 正義 4000 3000 2000 1000 0 1 5 9 13 17 21 25 29 33 37 41 図 1. s15850 の 50 サ イ ク ル 動 作 時 の WSA An Analysis of Low Power Dissipation using Multi Cycle Capture Test Generation Hiroshi YAMAZAKI, Jun NISHIMAKI, Toshinori HOSOKAWA, and Masayoshi YOSHIMURA ― 149 ― 45 キャプチャサイクル数 49 PI1 FF11 FF21 PI2 組合せ回路 (1時刻目) FF31 FF12 FF22 PI3 組合せ回路 (2時刻目) FF32 FF13 FF23 PI4 組合せ回路 (3時刻目) FF33 FF14 FF24 FF34 組合せ回路 (4時刻目) f × 0 FF15 FF25 FF35 組合せ回路 (5時刻目) f × 0/1 FF16 FF26 FF36 ブロードサイドテストパターンとして利用 図 2. キ ャ プ チ ャ 消 費 電 力 削 減 の た め の マ ル チ サ イ ク ル キ ャ プ チ ャ テ ス ト 生 成 モ デ ル 例 (k=5) 2.1. 予 備 実 験 本 章 で は ,文 献 [6]で 報 告 さ れ て い る 内 容 を 確 認 す る ために,予備実験としてマルチサイクル間のキャプチ ャ動作とキャプチャ時消費電力の関係について解析し た.ブロードサイドテストではシフト動作によりテス トパターンを印加した後,キャプチャ動作を 2 サイク ル間実行するが,本予備実験ではシフト動作によるテ ス ト パ タ ー ン を 印 加 後 ,キ ャ プ チ ャ 動 作 を 50 サ イ ク ル 間 実 行 さ せ , 各 サ イ ク ル に お け る WSA を 解 析 す る . 外 部 入 力 の 値 は 1 サ イ ク ル 目 の キ ャ プ チ ャ で は ATPG で生成したテストパターンを印加し, 2 サイクル目以 降はランダムパターンを印加する. 2.2. 予 備 実 験 結 果 本章では予備実験結果について説明する.図 1 に s15850 に 対 し て 50 サ イ ク ル 間 キ ャ プ チ ャ 動 作 を 行 っ た 際 の WSA の 推 移 を 示 す .図 1 に お い て 縦 軸 は WSA, 横軸はキャプチャサイクル数を示す.テスト集合は Synopsys 社 の TetraMAX ATPG で 生 成 し た テ ス ト 集 合 である.故障モデルは遷移故障を対象とした.テスト パ タ ー ン 数 は 20 パ タ ー ン で あ る . 図 1 の結果より,多くのテストパターンにおいて, 1 サ イ ク ル 目 の キ ャ プ チ ャ 動 作 時 の WSA が 一 番 高 い 結 果 と な っ た .ま た ,多 く の テ ス ト パ タ ー ン に お い て , 5 サ イ ク ル 以 上 キ ャ プ チ ャ 動 作 を 行 う と WSA が 激 的 に 減 少 し ,WSA の 変 化 が 小 さ く な る こ と が 確 認 で き た . 他の回路においても同様の結果が得られた. 本論文ではこの結果に着目し,テスト生成時にマル チサイクルキャプチャテストのための k 時間展開モデ ルを応用した低消費電力指向テスト生成法を提案する. 3. キ ャ プ チ ャ 消 費 電 力 削 減 の た め の マ ル チ サ イクルキャプチャテスト生成 本章では,提案手法であるマルチサイクルキャプチ ャテスト生成モデルを用いた低消費電力指向テスト生 成について説明する.提案手法ではテスト対象回路に 対して,k 時間展開したテスト生成モデルを用いてテ スト生成を行う.また提案手法はフルスキャン設計さ れた回路を対象とする.また,本手法で生成したテス ト集合に対するテストは,ブロードサイドテストを対 象 と す る . 3.1 節 で 提 案 手 法 の テ ス ト 生 成 法 に つ い て 説 明 し , 3.2 節 で 提 案 手 法 の ア ル ゴ リ ズ ム に つ い て 説 明する. 3.1. キャプチャ消 費 電 力 削 減 のためのマルチサイク ルキャプチャテスト生 成 モデル マルチサイクルキャプチャテスト生成モデルにお け る k 時 間 展 開 モ デ ル は ,1 時 刻 目 の FF の 出 力 を 擬 似 外 部 入 力 と し ,k 時 刻 目 の FF の デ ー タ 入 力 を 擬 似 外 部 出力として,k 時間分順序回路を時間展開した回路モ デルである.また本論文で提案するキャプチャ消費電 力削減のためのマルチサイクルキャプチャ テスト生成 モ デ ル で は , 時 刻 k-1 と k の み を テ ス ト に 用 い る . 時 刻 1~ k-2 ま で の 回 路 は 状 態 正 当 化 の み に 利 用 す る .そ の た め ,時 刻 1~ k-2 の 回 路 に お い て は 外 部 入 力 の 値 は 常に同じである必要はなく,異なる外部入力値を制御 可 能 な モ デ ル と す る . ま た , 1 時 刻 目 か ら k-1 時 刻 目 の 組 合 せ 回 路 部 に 関 し て は ,故 障 は 設 定 し な い .一 方 , 時 刻 k-1, 時 刻 k に お い て は 遷 移 故 障 を 設 定 す る . ま た , 時 刻 k-1, 時 刻 k に お い て は 遷 移 故 障 の テ ス ト に 用 い る モ デ ル で あ る た め ,FF の ク ロ ッ ク に 同 期 し て 外 部入力値を変化させることは困難であるので同じ値が 入力されるモデルにする. 図 2 に信号線 f の立上り遷移故障に対する,5 時間 展 開 モ デ ル (k=5) の 場 合 の 提 案 手 法 の テ ス ト 生 成 モ デ ル の 例 を 示 す . 図 2 に お い て , 1 時 刻 目 の FF で あ る FF1 1 , FF2 1 , FF3 1 の 3 個 の FF は 可 制 御 で あ る . ま た 最 終 時 刻 +1 の FF で あ る FF1 6 , FF2 6 , FF3 6 の 3 つ の FF は 可 観 測 で あ る . ま た , PI 1 ~ PI 4 の 各 外 部 入 力 も 可 制 御 で あ り ,4 時 刻 目 と 5 時 刻 目 の 外 部 入 力 で あ る PI 4 のみ同一の値が入力される.また 4 時刻目の組合せ回 路部には,信号線 f に立上り遷移故障の初期値である 0 を 割 当 て る .5 時 刻 目 の 組 合 せ 回 路 部 に は ,信 号 線 f に 立 上 り 遷 移 故 障 の 故 障 値 で あ る 1/0 を 割 当 て る . 1 時刻目から 3 時刻目の組合せ回路部に関しては,故障 は 設 定 し な い .テ ス ト 生 成 後 ,PI 4 と FF1 4 ,FF2 4 ,FF3 4 に割当てられた値をブロードサイド用のテストパター ンとして保存する.このようなテスト生成モデルを用 いることで,キャプチャ動作を複数サイクル間 実行し た 後 の FF の 状 態 を テ ス ト パ タ ー ン と す る た め , キ ャ プチャ電力が抑制されたテストパターンが得られるこ とが期待できる. 3.2. キャプチャ消 費 電 力 削 減 のためのマルチサイク ルキャプチャテスト生 成 アルゴリズム 本章では,提案手法であるマルチサイクルキャプチ ャテスト生成モデルを用いた低消費電力指向テスト生 成のアルゴリズムを示す.図 3 に提案手法の全体アル ゴリズムを示す. 回 路 C と 時 間 展 開 数 k, 高 消 費 電 力 テ ス ト パ タ ー ン を 判 定 す る た め の WSA 閾 値 th を 入 力 と す る . ま ず 高 消 費 電 力 テ ス ト 集 合 HPT と 低 消 費 電 力 テ ス ト 集 合 LPT を Φ に 初 期 化 す る (行 4,行 5).次 に テ ス ト 生 成 の 対 象 となる全ての遷移故障を算出し故障集合 F に代入する (行 6). 行 6 で 算 出 し た F と C を 基 に , ブ ロ ー ド サ イ ド モ デ ル で テ ス ト 生 成 を 行 い ,テ ス ト 集 合 T を 算 出 す る (7 行 ).T に 対 し て ブ ロ ー ド サ イ ド モ デ ル で 故 障 シ ミ ― 150 ― と 考 察 を 示 す .4.1 節 で ISCAS’89 ベ ン チ マ ー ク 回 路 に 対 す る 実 験 結 果 を 示 し , 4.2 節 で 低 消 費 電 力 設 計 が 施 された回路に対する提案手法の実験結果 を示す. 1. Procedure low_power_multi_cycle_test_generation(C, k , th); 2. C : circuit , k : time_expansion , th : wsa_threshold 3. { 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 14. 15. 16. 17. 18. 19. 20. 21. 22. 23. 24. 25. 26. 27. 28. 29. 30. } HPT = Φ; LPT = Φ; F = collect_all_fault( C ); T = broadside_test_generation( C, F ); D = broadside_fault_simulation(C, T ); XT = x_identification( C, D, T ); FT = low_power_x_filling( C, XT ); for each test pattern fti in FT { wsai = calc_wsa( C, fti ); if( wsai > th){ HPT = HPT ∪ fti ; } else{ LPT = LPT ∪ fti ; } } HPF = broadside_fault_simulation( C, HPT , F ); LPF = broadside_fault_simulation( C, LPT , F ); HPF = HPF - LPF ; for each fault hpfi in HPF { mti = multi_cycle_capture_test_generation( C, k, hpfi ); LPT = LPT ∪ mti ; DM = broadside_fault_simulation( C, mti , HPF ); HPF = HPF - DM; } return (LPT ); 図 3. マ ル チ サ イ ク ル キ ャ プ チ ャ を 用 い た 低 消 費 電 力指向テスト生成アルゴリズム ュ レ ー シ ョ ン を 実 行 し ,検 出 故 障 集 合 D を 算 出 す る (行 8). T に 対 し て ド ン ト ケ ア 判 定 [9]を 実 行 し , ド ン ト ケ ア を 含 む テ ス ト 集 合 XT を 生 成 す る (行 9).XT に 対 し て キャプチャ時消費電力を低減するドントケア割当て [10]を 実 行 し , テ ス ト 集 合 FT を 生 成 す る (行 10). FT に 含 ま れ る 各 テ ス ト パ タ ー ン ft i に 対 し て 行 12 か ら 行 19 の 処 理 を 適 用 す る . ft i に 対 し て WSA を 算 出 し wsa i を 求 め る (行 12).wsa i が th よ り 大 き い か 否 か を 判 定 す る (行 13).も し wsa i が th よ り 大 き け れ ば ft i を HPT に 加 え , HPT を 更 新 す る (行 14). そ れ 以 外 の 場 合 は , ft i を LPT に 加 え , LPT を 更 新 す る (行 17). HPT に 対 し てブロードサイドモデルで故障シミュレーションを実 行 し ,検 出 故 障 HPF を 算 出 す る (行 20).LPT に 対 し て ブロードサイドモデルで故障シミュレーションを実行 し , 検 出 故 障 LPF を 算 出 す る (行 21). HPF か ら LPF の 差 集 合 を と り ,HPT で し か 検 出 で き な い ア ン セ ー フ 故 障 集 合 HPF を 更 新 す る (行 22).HPF に 含 ま れ る 各 故 障 hpf i に 対 し て 行 24 か ら 行 28 の 処 理 を 適 用 す る (行 23).hpf i に 対 し て 時 間 展 開 数 k で マ ル チ サ イ ク ル キ ャ プチャテスト生成モデルを用いた低消費電力指向テス ト 生 成 を 行 い ,テ ス ト パ タ ー ン mt i を 生 成 す る (行 24). mt i を LPT に 加 え , LPT を 更 新 す る (行 25). mt i に 対 し てブロードサイドモデルで故障シミュレーションを実 行 し ,検 出 故 障 集 合 DM を 算 出 す る (行 26).HPF か ら DM の 差 集 合 を と り , HPF を 更 新 す る (行 27). テ ス ト 集 合 LPT を 返 す (行 29). 4. 実 験 本章では,提案したキャプチャ消費電力削減のため のマルチサイクルキャプチャテスト生成 法の実験結果 4.1. 実 験 結 果 本 章 で は ISCAS’89 ベ ン チ マ ー ク 回 路 に 対 す る 実 験 結果を示す.故障モデルは遷移故障である. 時間展開 数 k は 2,5,10,15,20 で 実 験 を 行 っ て い る .k=2 は 従 来 の ブロードサイド方式のテスト生成と同一である. 表 1 に 図 3 の 行 22 ま で の 処 理 を 適 用 し た , 初 期 テ ス ト 生 成 結 果 を 示 す .表 1 に お い て , 「 閾 値 割 合 」は 高 消 費 電 力 テ ス ト パ タ ー ン を 判 定 す る た め の 閾 値 WSA を 計 算 す る た め の 割 合 を 示 す . 閾 値 割 合 は 最 高 WSA の 70% を 用 い た .「 WSA 閾 値 」 は 高 WSA の 閾 値 を 示 し , 生 成 さ れ た テ ス ト 集 合 の 最 高 WSA の 70% か ら 算 出した. 「 ア ン セ ー フ パ タ ー ン 数 」は WSA 閾 値 を 超 え たテストパターン数, 「 ア ン セ ー フ 故 障 数 」は ア ン セ ー フパターンでのみ検出可能な故障数を示す. 表 2 に 表 1 の ア ン セ ー フ 故 障 を 対 象 に ,図 3 の 行 23 か ら 30 ま で の 処 理 を 適 用 し た 結 果 を 示 す .表 2 に お い て「テスト不可能故障判定数」は k 時間展開テスト生 成モデルにおいてテスト不可能と判定された故障数を 示 す .ま た , 「 k=2」, 「 k=5」, 「 k=10」, 「 k=15」, 「 k=20」 は 提 案 手 法 の 時 間 展 開 数 を 示 す .「 lp_tmax」 は 図 3 の 24 行 目 の 処 理 を , キ ャ プ チ ャ 時 消 費 電 力 を 考 慮 し た TetraMAX ATPG で 実 行 し た も の で あ る . TetraMAX ATPG の 打 ち 切 り 制 限 は バ ッ ク ト ラ ッ ク 数 100 億 回 に 設 定 し た . 図 3 よ り , k=2 と lp_tmax で は , ほ と ん ど の 故 障 が ア ン セ ー フ 故 障 と 判 定 さ れ た . s13207 と s38417 に お い て は , lp_tmax で 打 ち 切 り 故 障 が 存 在 し た.また,提案手法では時間展開数 k を増やすほどア ンセーフ故障数が減少する傾向がある. 表 3 に 表 2 に お け る テ ス ト パ タ ー ン 数 を 示 す .「 セ ー フ パ タ ー ン 数 」 は WSA 閾 値 以 内 の テ ス ト パ タ ー ン 数を示す.ほとんどの回路において提案手法における テストパターン数は,時間展開数 k を変更しても大き く 増 減 し な い こ と が わ か る .し か し な が ら ,s38417 に おいては時間展開数 k を増やすごとにテストパターン 数が増加していく傾向が確認できた. 4.2. 低 消 費 電 力 設 計 回 路 に対 する実 験 結 果 従 来 の ブ ロ ー ド サ イ ド 方 式 の テ ス ト 生 成 で は ,FF を 無効状態に設定してテスト生成を行っている可能性が ある.一方,提案手法では,1 時刻目でたとえ無効状 態であったとしても,キャプチャ動作をマルチサイク ル間実行することで,有効状態へと遷移する可能性が ある.しかしながら,低消費電力設計が施されていな い回路に対しては,有効状態においても回路内の多く の信号線に遷移が発生する可能性が考えられる.本章 では,低消費電力設計を施した回路を設計し,低消費 電力設計回路に対して提案手法の有効性を検証した. 表 4 に設計した低消費電力設計を施した回路に対し て , 提 案 手 法 (k=2,5,10,15,20)で テ ス ト 生 成 を 行 っ た 結 果 を 示 す .こ こ で k=2 は 従 来 の ブ ロ ー ド サ イ ド 方 式 の テスト生成と同一である.また本実験は,回路内の全 て の 遷 移 故 障 を 対 象 に ,図 3 の 24 行 目 の 処 理 を 適 用 し た .表 4 に お い て ,ex01 回 路 は 無 効 状 態 時 の 次 状 態 の 定 義 を 行 っ て い な い ,ex02 回 路 は 無 効 状 態 時 の 次 状 態 を無効状態となるように設計した回路である.また ex2 回 路 は 6 サ イ ク ル 動 作 す る と , 無 効 状 態 か ら 有 効 状態へと状態遷移をする回路である.表 4 において, 「有効状態数」はコントローラの動作で定義されてい る状態数, 「 無 効 状 態 数 」は コ ン ト ロ ー ラ の 動 作 で 定 義 ― 151 ― されてない状態数, 「 無 効 状 態 テ ス ト パ タ ー ン 数 」は 生 成されたテストパターンで無効状態だったテストパタ ー ン 数 を 示 す .表 4 よ り ,k=10 以 上 で テ ス ト 生 成 を 行 うと無効状態のテストパターンが生成されないことが 確 認 で き た .表 5 に ,表 1 の テ ス ト 集 合 に 対 す る WSA を 示 す .表 5 に お い て , 「 有 効 状 態 パ タ ー ン 」は 提 案 手 法で生成されたテスト集合のうち 有効状態であるテス トパターン, 「 無 効 状 態 パ タ ー ン 」は 提 案 手 法 で 生 成 さ れたテスト集合のうち無効状態であるテストパターン を示す.表 5 より,低消費電力設計が施された回路に お い て ,無 効 状 態 の 方 が 有 効 状 態 よ り 最 高 WSA,最 小 WSA, 平 均 WSA が 高 い こ と が 確 認 で き た . Press, (1985) pp298. [2] A. Krst ic, and K -T C he ng, “ Dela y Fault Test ing for V LSI C irc uits,” Kluwe r Acade mic Pub lis hers, 1998. [3] J.Savir. “Skewd-Load Tra nsit io n Test: Part 1 :, Calc ulus. ” Proceed ings of IEEE Internat io na l Test Confe re nce, pp705 -71 3, 1992 [4] J.Savir. “Skewd-Load Trans it io n Test: Part 2:, Calc ulus. ”Proceedings o f IEEE Interna t io na l Test Co nfere nce, pp714-722, 1992 [5] Xiao Liu a nd Mic hae l S. Hs iao “ Constra ined ATPG for Broads ide Tra ns it io n Test ing” Depart me nt of Electrica l & Co mp ute r Engineering, Virginia Tec h, Blacksburg, VA 24061. [6] E. K. Moghad da m, J. Rajski, S. M. Reddy, M. Kassab, “ At -Speed Scan Test wit h Low Sw itc hing Act ivit y,” IEEE V LSI Test Sy mpos ium, pp177 -182, 2010. [7] Masayos hi YOSHIMUR A, Hiroshi OG AWA, Toshino ri HO SO KAWA a nd Koj i YAM AZAKI, “ Eva luat io n o f Tra ns it io n Untestab le Fa ults Using a Mult i -C yc le Capture Test Gene rat io n Method,” IEEE Sy mpos ium o n Design and Dia gnost ics of Electro nic C irc uits and Syste ms, pp273 -276, 2010. [8] Sying-J ya n Wa ng, Kuo -Lin Fu, Kat herine Shu -M in Li, “ Low Peak Power ATPG for n-Detect io n Test”, p1, 1999. [9] K. Miyase, K. Noda, H. Ito, K. Hata ya ma, T. Aik yo, Y. Ya mato, H. Furukawa, X. Wen and S. Kaj iha ra, “Effect ive IR -Drop Reduct io n in At-Speed Scan Testing Us ing D istrib ut io n -Co ntro lling X-Ide nt ificat io n,” IEEE/ ACM Interna t io na l Co nfere nce o n Co mp uter-Aided Design, pp. 52 -58, 2008. 5. ま と め 本論文では,マルチサイクルキャプチャテスト生成 用いたキャプチャ電力削減のためのテスト生成法を提 案した.提案手法により,アンセーフ故障数の削減が できた.また,時間展開数 k を増加するほどアンセー フ故障数が減少する傾向があることが確認できた. 低 消費電力設計が施された回路に対して,時間展開数 k=10 以 上 に す る こ と で 無 効 状 態 を 含 ま な い テ ス ト 集 合が生成可能であることが確認できた .また,低消費 電力設計が施された回路では無効状態のほうが有効状 態 よ り WSA が 高 い こ と が 確 認 で き た . 今 後 の 課 題 と して,アンセーフ故障数のさらなる削減や,テストパ ターン数の削減が挙げられる. [10] Xiaoq ing We n,Ko he i M iyase,Seij i Kaj ihara,Tats uya Suz uk i,Yuta Ya mato,Pat rick G irard,Yuj i O hsu mi, La ung -Terng Wa ng, "A No vel Sche me to Red uce Power Supp ly No ise fo r High -Q ua lit y At-Speed Scan Test ing," Internat io na l Test Confe re nce, Paper 25.1, 2007. 文献 [1] H. Fujiwara, “ Lo gic Testing and Design for Testability,” The MIT 表 1. 初 期 テ ス ト 生 成 結 果 回路名 s5378 s9234 s13207 s15850 s35932 s38417 s38584 閾値割合 70% 70% 70% 70% 70% 70% 70% 対象故障数 検出故障数 テスト不可能故障数 10590 6546 4044 18468 13813 4655 26358 19261 7097 31694 20009 11685 71224 49278 21946 76678 73736 2942 76864 50138 26726 打ち切り故障数 0 0 0 0 0 0 0 テストパターン数 223 581 627 498 113 1307 1820 WSA閾値 アンセーフパターン数 アンセーフ故障数 1111 12 156 1759 71 519 1919 52 372 2252 8 120 8740 22 4922 8222 46 2688 4499 13 1448 表 2. 再 テ ス ト 生 成 後 の ア ン セ ー フ 故 障 数 回路名 閾値割合 対象故障数 s5378 s9234 s13207 s15850 s35932 s38417 s38584 70% 70% 70% 70% 70% 70% 70% 156 519 372 120 4922 2688 1448 k=2 156 516 372 119 4922 2688 1448 k=5 61 93 257 27 4363 1094 804 アンセーフ故障数 k=10 k=15 51 64 58 40 107 110 15 18 2962 2460 385 139 747 725 k=20 lp_tmax 58 156 56 482 119 372 0 117 2218 4922 226 2688 645 1448 k=2 k=5 0 0 0 0 0 0 0 テスト不可能故障判定数 k=10 k=15 k=20 lp_tmax 47 56 56 0 297 297 298 0 140 140 140 0 25 25 26 0 0 0 0 0 38 38 38 0 31 31 31 0 k=2 29 296 39 19 0 36 31 k=5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 打ち切り故障数 k=10 k=15 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 k=20 0 0 0 0 0 0 0 lp_tmax 0 0 0 0 0 4 0 表 3. 再 テ ス ト 生 成 後 の テ ス ト パ タ ー ン 数 回路名 閾値割合 対象故障数 s5378 s9234 s13207 s15850 s35932 s38417 s38584 70% 70% 70% 70% 70% 70% 70% 156 519 372 120 4922 2688 1448 k=2 k=5 32 129 95 17 71 168 122 39 62 117 24 67 221 134 テストパターン数 k=10 k=15 33 25 63 69 96 99 20 20 50 53 276 299 125 133 k=20 lp_tmax 28 32 66 128 94 102 20 22 49 48 316 161 143 72 k=2 k=5 0 1 0 1 0 0 0 13 37 13 16 2 23 66 セーフパターン数 k=10 k=15 11 8 43 47 41 44 16 14 10 14 119 139 83 91 k=20 9 44 43 19 11 199 95 lp_tmax 0 6 0 1 0 0 0 k=2 32 128 95 16 71 168 122 アンセーフパターン数 k=10 k=15 k=20 lp_tmax 26 22 17 19 32 25 20 22 22 122 104 55 55 51 102 8 4 6 1 21 65 40 39 38 48 198 157 160 117 161 68 42 42 48 72 k=5 表 4. 低 消 費 電 力 設 計 回 路 に 対 す る 無 効 状 態 テ ス ト パ タ ー ン 数 回路名 対象故障数 有効状態数 無効状態数 ex01 ex02 14434 14588 17 17 15 15 k=2 508 506 テストパターン数 k=5 k=10 k=15 518 505 479 502 509 502 k=20 463 467 k=2 168 87 無効状態テストパターン数 k=5 k=10 k=15 0 0 0 57 0 0 k=20 0 0 表 5. 低 消 費 電 力 設 計 回 路 の WSA 回路名 テストパターンタイプ ex01 ex02 有効状態パターン 無効状態パターン 有効状態パターン 無効状態パターン k=2 3499 3840 3546 3710 k=5 3370 3403 3729 最高WSA k=10 3553 3330 - k=15 3457 3325 - k=20 3221 3446 - k=2 229 1675 206 1180 k=5 178 212 2106 ― 152 ― 最小WSA k=10 200 216 - k=15 223 231 - k=20 205 228 - k=2 1618 2737 1591 2835 k=5 1604 1608 2916 平均WSA k=10 1571 1568 - k=15 1585 1604 - k=20 1585 1617 -
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