第6章 人的資本 (Human Capital)

第 6 章 人的資本
1
6.1.1
健康の違いが所得に与える影響
例: イギリス
第 6 章 人的資本
Fogel は 1780 年-1980 年まで 200 年間イギリスの栄養状
態が経済成長に与える影響を分析.
栄養の向上は生産高を 2 つの方法で引き上げる.
⋆ 講義ノートは
http://www2.asia-u.ac.jp/˜ shin/lecture/growth.html にある.
⋆ 第 2 版のスライドは
http://wps.aw.com/aw weil econgrowth 2/ → Classrom ReR Slides にある.
sources → PowerPoint⃝
⋆ 第 3 版のスライドは
1. 栄養が向上しなければ虚弱で働けなかった人を労働力
にすること.
2. 人々がより激しく労働できるようにすること.
http://wps.aw.com/aw weil econgrowth 3/ → Classrom ReR Slides にある.
sources → PowerPoint⃝
本章では労働者の質の違いが国別所得格差の一因である
という考えを検討する.
• 人的資本 (human capital) 労働者により大きな生産量
をもたらし,それ自体は過去の投資の結果であるよう
な教育や健康といった性質.
人的資本と呼ぶ理由 (物的資本と類似点)
1. 生産的 (productive)
• 働けなかった人 → 働けるようになる → これによっ
て 1.25 倍増加
• 働いていた人 → より働けるようになる → これによっ
て 56% 増加
2 つの効果を考慮すると
1.25 × 1.56 = 1.95
200 年間の変化なので,年率で計算すると毎年生産量が
0.33% 増加したことになる.実際この期間イギリスの生産
量の増加は毎年 1.15% だったので,全体所得増加のうち 13
近くは栄養状態の改善によるものと考えられる.
2. 生産される (produced)
3. 収益を稼ぐ (earns return).ただし,収益を得る方法
は 2 つの間ではことなる.
• 人的資本はその所有者に,彼や彼女が働いてい
る限りにおいて,より高い賃金を与えるという
収益をもたらす.
• 物的資本はその所有者が海岸で悠然とレジャー
を過ごしている間もその有益を稼いでいる.
栄養 vs. 1 人当たり GDP
現代の先進国ではほとんどの人々はよい栄養状態である.
しかし,多くの発展途上国では栄養不良はまだいたるとこ
ろに見られる.
✓
Figure 1
✏
栄養と 1 人当たり GDP
4. 劣化し償却する (depreciates)
この章では
1. 健康と人的資本,
2. 教育と人的資本
について考える.
6.1
健康という形態の人的資本
✒
• 横軸: 1 人当たり GDP
• 縦軸: 一日 1 人当たりカロリー摂取量
• 右上がり
• 経済発展 → 健康状態 ↑
• 最も豊かな国では 1 日当たり 3,000kcal から 3,500kcal
• 健康状態 ↑ → 労働時間 ↑ → 生産 ↑ → 経済発展
• 最も貧しい国では 1 日当たり 2,000kcal 以下である
✑
第 6 章 人的資本
2
国内の食糧分布の不平等
健康と所得の相互作用
国の栄養状態は多くの国の栄養不良の真の広がりを過小
評価している.なぜならば,これは 1 国平均であって,国
✓
Figure 3
✏
健康と所得の相互作用
内の食糧分布の不平等を計算していないからである.
例えば,ラテン・アメリカでは,人口の富裕層 20% の 1
人当たり食糧消費は最貧層 20% よりも 50% 多いからであ
る.平均して十分な食糧をもつ国でも最貧層は栄養不良で
ある.
• 世界中で 1999 年に約 7 億 7,400 万人が栄養不良に悩
まされている.
✒
✑
• 横軸: 1 人当たり所得 (y)
栄養と健康
✓
✏
Figure 2
• 縦軸: 健康状態 (h)
• y(h) は健康状態が 1 人当たり所得水準に与える影響
平均寿命と 1 人当たり GDP
– h ↑ → y ↑ : 傾き (+)
• h(y) は 1 人当たり所得水準が健康状態に与える影響
✒
✑
• 横軸: 1 人当たり GDP
– y ↑ → h ↑ : 傾き (+)
✓
• 縦軸: 平均寿命
Figure 4
✏
所得の外生的シフトの効果
• 強い正の相関
• 世界の最も貧しい国は平均寿命が 60 歳以下
• 最も豊かな国では,平均寿命が 75 歳から 82 歳までに
ある.
例えば,貧血性不妊症の女性の比率は下位 25% の最貧国
の女性では 48% であるが,上位 25% の豊かな国ではわず
か 18% である.
• 健康状態の違い → 所得水準の違い
6.1.2
✒
✑
• 横軸: 1 人当たり所得
• 縦軸: 健康状態
健康と所得の相互作用モデル
栄養状態の改善は所得増加の

原因
結果
生産技術の進歩
である.
栄養について成り立つことは,もっと一般的に健康につ
いても成り立つ.
•
}
生産技術の進歩
−→ y(h) 曲線右にシフト
健康状態不変
• 豊かな人は健康によりよい投入ができる.
• より健康な人はよりよい労働者でもある.
人口 1000 人当たり医師の数
• A → B : 外生的シフト (exogenous shift) にとる所得
増加.もし,労働者の健康に変化がなければ,生産物
の増加は生産性の上昇に一致する.
• OECD: 2.2 人
• 発展途上国 (developing world): 0.8 人
• サブサハラ (sub-Saharan Africa): 0.3 人
• B → C : 健康の乗数 (multiplier) 効果による所得増
加.生産量の増加は労働者の健康を向上させ,健康の
向上は生産量の増加をもたらす.
第 6 章 人的資本
3
外生的健康状態の改善
•
教育水準の変化
6.2.1
健康状態の改善
生産技術不変
}
✓
−→ h(y) 曲線上にシフト
Table 1
✏
教育水準の変化, 1960-2000
• 健康状態の改善 → 生産量増加 → 健康状態の改善
• これらの健康の外生的向上は 20 世紀において特に顕
著になった.
• 死亡率を下げた多くの進歩は健康一般につながった.
✒
教育を全く受けていない (no schooling) 成人人口比率
✑
例
• 発展途上国: 34.4%
例えば,第 1 次世界大戦以前のアメリカ南部では貧血,疲
こうちゅう
労,肉体的・精神的成長の原因となるアメリカの 鉤虫 病
• 先進国: 3.7%
が経済発展を抑える大きな被害となった.当時ジャーナリ
ストが “怠け虫”と呼んだ鉤虫は 1910 年の南部人口の 42%
• アメリカ: 0.8%
にも達する感染者を生じ,この病を患った人の稼ぎは健康
な労働者の半分程度しかなかったと推定されている.集中
平均学歴 (Average Years of Schooling)
的な公衆衛生の努力の結果,この病の拡大は 1930 年代に大
• 発展途上国: 2.05 年 → 5.13 年,3.1 年増加
きく減少した.世界の多くの地区でマラリアの駆除,それ
は第 2 次世界大戦中に開発された殺虫剤 DDT の発明によっ
て大きく助けられたが,これも生産性に劇的効果を与えた.
✓
✏
■ 健康と 1 人当たり所得: 2 つの見解
✓
Figure 5
✏
• 先進国: 7.06 年 → 9.76 年,2.7 年増加
教育は人的資本形成への投資である.物的資本への投資と
同様にカネがかかる.
健康と 1 人当たり所得: 2 つの見解
教育費用
• 明示的費用 (obvious costs of education)
✒
✑
– 教員の給与,建物,教科書など
• 横軸: 1 人当たり所得,縦軸: 健康状態
• 黙示的費用 (subtle expense)
• (a) 健康仮説: 2 国の相違は健康環境にルーツが
あると仮定する.健康に影響を与える所得以外の
– 機会費用
諸事情が原因である.
• (b) 所得仮説: 2 国の相違のすべては健康とは無
関係な生産面にルーツがあると仮定する.
アメリカの場合
現実世界では国別の所得格差は両方の違いで説明され
ることに合意するだろう.
✒
GDP の 6.2% (2003 年基準)
✑
• 機会費用を考慮した教育費用: GDP の 12.4%
6.2
教育という形態の人的資本
先進国経済の個人の賃金決定は知的能力は身体能力より
もはるか重要である.この理由によって,人の知性を向上
させる投資 -つまり教育- は,人的資本へのもっとも重要な
投資形態となった.
• 投資: GDP の 19%
物的資本,人的資本の投資はほぼ同額になる.
✓
■ マラリアの経済効果
✏
✒
✑
第 6 章 人的資本
6.2.2
4
• 7 年教育を受けた場合:
教育と賃金
1.1344 × 1.1013 = 2.21 倍
経済学者は賃金データから人的資本の収益を推論する.
• 教育水準が高い → 高い賃金を得ている.
• 8 年教育を受けた場合:
• 市場がその人的資本に価値をおく証拠とみなすことが
できる.
✓
Figure 6
1.1344 × 1.1014 = 2.43 倍
✏
教育の賃金に与える効果
• 9 年教育を受けた場合:
1.1344 × 1.1014 × 1.068 = 2.60 倍
• 10 年教育を受けた場合:
1.1344 × 1.1014 × 1.0682 = 2.77 倍
✒
✑
• 横軸: 学歴
• 11 年教育を受けた場合:
1.1344 × 1.1014 × 1.0683 = 2.96 倍
• 縦軸: 非学歴者賃金に対する学歴者賃金の相対賃金
(wage relative to no schooling)
• 12 年教育を受けた場合:
1.1344 × 1.1014 × 1.0684 = 3.16 倍
6.2.3
教育の収益
もう 1 年長く学校教育を受けたら受け取る賃金の増加分を
教育程度に対する収益 (returns to education) と定義する.
• 最初の 4 年間の通学 (1 年生から 4 年生まで) は年
13.4% の収益
• 次の 4 年間 (5 年生から 8 年生まで) では年 10.1%
• 8 年以上の教育では 6.8% の教育収益となる.
非学歴者賃金に対して
• 1 年教育を受けた場合: 1.134 倍
• 2 年教育を受けた場合:
1.134 × 1.134 = 1.29 倍
• 3 年教育を受けた場合:
1.1343 = 1.46 倍
• 4 年教育を受けた場合:
1.1344 = 1.65 倍
• 5 年教育を受けた場合:
1.1344 × 1.101 = 1.82 倍
• 6 年教育を受けた場合:
1.1344 × 1.1012 = 2.00 倍
• 13 年教育を受けた場合:
1.1344 × 1.1014 × 1.0685 = 3.38 倍
• 14 年教育を受けた場合:
1.1344 × 1.1014 × 1.0686 = 3.61 倍
• 15 年教育を受けた場合:
1.1344 × 1.1014 × 1.0687 = 3.85 倍
• 16 年教育を受けた場合:
1.1344 × 1.1014 × 1.0688 = 4.11 倍
• 20 年教育を受けた場合:
1.1344 × 1.1014 × 1.06812 = 5.35 倍
• 24 年教育を受けた場合:
1.1344 × 1.1014 × 1.06816 = 6.96 倍
• 25 年教育を受けた場合:
1.1344 × 1.1014 × 1.06817 = 7.44 倍
• 26 年教育を受けた場合:
1.1344 × 1.1014 × 1.06818 = 7.94 倍
第 6 章 人的資本
5
• 27 年教育を受けた場合:
例
1.1344 × 1.1014 × 1.06819 = 8.48 倍
• 教育を全く受けていない労働者の賃金が$1.00
• 28 年教育を受けた場合:
1.1344 × 1.1014 × 1.06820 = 9.06 倍
• 教育を 5 年間受けた労働者の賃金が$1.82
• 29 年教育を受けた場合:
1.1344 × 1.1014 × 1.06821 = 9.67 倍
• $0.82 は人的資本による上乗せ
• 30 年教育を受けた場合:
1.1344 × 1.1014 × 1.06822 = 10.33 倍
• 35 年教育を受けた場合:
1.1344 × 1.1014 × 1.06827 = 14.36 倍
• 40 年教育を受けた場合:
• 人的資本による賃金比率:
0.82
1.82
= 45%
• raw labor による賃金比率: 55%
✓
1.1344 × 1.1014 × 1.06832 = 19.95 倍
■ アメリカのカレッジ・プレミアム
✏
• 大卒者プレミアム (college premium): 高校卒の
労働者の賃金と大学教育を受けた労働者の賃金
• 50 年教育を受けた場合:
1.1344 × 1.1014 × 1.06842 = 38.51 倍
• 60 年教育を受けた場合:
比率.
✓
Figure 7
✏
教育水準別労働時間投入比率, 1940 年-2005 年
1.1344 × 1.1014 × 1.06852 = 74.35 倍
• 70 年教育を受けた場合:
1.1344 × 1.1014 × 1.06862 = 143.56 倍
✒
• 80 年教育を受けた場合:
1.1344 × 1.1014 × 1.06872 = 277.16 倍
• 横軸: 年度,縦軸: 経済活動人口比率
✓
• 90 年教育を受けた場合:
✑
Figure 8
✏
高卒の労働者と大学教育を受けた労働者の賃金比
1.1344 × 1.1014 × 1.06882 = 535.11 倍
率, 1940 年-2005 年
• 100 年教育を受けた場合:
1.1344 × 1.1014 × 1.06892 = 1033.13 倍
• ??年教育を受けた場合: ??
• 教育程度に対する限界収益の逓減の可能性
6.2.4
賃金のうち人的資本の配分比率
資本所得
1
= ,
GDP
3
労働所得 →
労働所得
2
=
GDP
3
✒
✒
✓
✑
• 横軸: 年度,縦軸: 賃金比率
Table 2
✑
✏
通学年数と賃金による人口の分割
1. 労働者が所有する人的資本に支払われる
2. 人的資本を全く所有していない労働者 (raw labor) に
支払われる
✒
✑
第 6 章 人的資本
6
相対賃金
先進国の場合:
✓
✏
Figure 9
人的資本に支払われている賃金
2
= 65% × = 43%
GDP
3
発展途上国における賃金の人的資本シェア
発展途上国 < 先進国
以上の数値は発展途上国では人的資本に流れる国民所得の
比率は現在では物的資本が受け取るシェアに等しいが,もっ
と発展した国々では,人的資本に投資した収益を後年になっ
✑て手にしているという意味で,結局は “資本家 (capitalist)”
であるともいえる.
✒
• 横軸: 経済活動人口比率
• 縦軸: 非学歴者賃金に対する学歴者賃金の相対賃金
✓
Figure 10
先進諸国における賃金の人的資本シェア
3 つに分けて考える
✏
1.
物的資本に支払われる金額
GDP
2.
人的資本に支払われる金額
GDP
3.
✒
raw labor に支払われる金額
GDP
✑
• 横軸: 経済活動人口比率
ソロー・モデルの場合
• 縦軸: 非学歴者賃金に対する学歴者賃金の相対賃金
段階状の実線は教育水準に対応した賃金を表す.賃金の
高さは教育を受けない人がもらう賃金との相対比で示した.
横軸に平行な破線は通学経験のない労働者の賃金を表す.そ
うすると,教育レベルに応じて,実線と破線との差が人的
生産要素が資本と労働,2 種類しかないソロ・モデルの
場合
• α=
1
3
→α=
2
3
• α が大きいほど (1 に近いほど) 所得格差が説明しや
すくなる.
資本に払われる賃金総額を示すことになる.同じく破線の
下の領域は生の労働に払われた賃金である.これらの合計
– 実線の下にある面積すべて – は経済で支払われた賃金総
Ak モデル
額を表す.
α = 1 の場合 (資本の限界生産物が逓減しない場合),Ak
モデルという.
• 発展途上国の場合:
人的資本に支払われている賃金
= 49%
賃金総額
6.3
• 先進国の場合:
で説明できるのか?
人的資本に支払われている賃金
= 65%
賃金総額
6.3.1
✓
人的資本に支払われている賃金
GDP
賃金総額
人的資本に支払われている賃金
×
=
賃金総額
GDP
国際間の所得の違いうどの程度教育
通学年数の国別格差が与える影響の数量
分析
Figure 11
✏
通学平均年数と 1 人当たり GDP
(6.1)
発展途上国の場合:
2
人的資本に支払われている賃金
= 49% × = 33%
GDP
3
✒
✑
第 6 章 人的資本
7
• 横軸: 1 人当たり GDP
2 国間の定常状態における労働者 1 人当たり生産量の比率
• 縦軸: 平均教育年数
• 国 i と国 j
• 正の相関
• 生産性 (A),投資率 (γ),人口成長率 (n),減価償却率
(δ) は同様.
• h のみ異なると仮定
生産関数
今までの生産関数
α
1−α
Y = AK L
yiss
yjss
(6.2)
考える.
(6.3)
ろうと物語っている.
式 (6.2) と式 (6.3) から
Y = AK α (hL生 )1−α
(6.8)
• この式はもし国々の間でほかに相違がなければ定常状
態における労働者 1 人当たりの生産高比率は,労働者
1 人当たりの労働投入比率にちょうど等しくなるであ
総労働投入 (L) を生の労働 (L生 ) と人的資本 (h) に分けて
L = hL生
α ]
[ 1 (
) 1−α
γ
hi A 1−α n+δ
hi
= [
α ] =
(
) 1−α
1
h
γ
j
hj A 1−α n+δ
• もし,h の値が i 国で j 国の 2 倍ならば,労働者 1 人
当たりの定常状態の生産高も i では (j 国の) 2 倍に
なる.
(6.4)
• A: 生産性
例
• K: 資本ストック
• i 国: 平均学歴 12 年
• h: 労働投入水準 (教育水準)
• j 国: 平均学歴 2 年
• L生 : 労働者数
• 教育制度が全くない国の労働者 1 人当たり労働投入水
• hL生 : 総労働投入
準を h0
j 国の労働者 1 人当たり労働投入水準は
式 (6.4) は
1−α
Y = h1−α AK α L生
(6.5)
と書ける.A が h1−α A に変わった点を除けば,以前の生産
hj = 1.1342 × h0 = 1.29 × h0
(6.9)
i 国の労働者 1 人当たり労働投入水準は
関数と同様.
hi = 1.1344 × 1.1014 × 1.0684 × h0 = 3.16 × h0
式 (6.8) より
定常状態における労働者 1 人当たり生産量
3.16 × h0
yiss
hi
=
= 2.47
=
yjss
hj
1.29 × h0
以前,第 4 章では
1
y ss = A 1−α
α
( γ ) 1−α
n+δ
(6.6)
であった.式 (6.6) の A 代わりに h1−α A を代入すると
α
( γ ) 1−α
1
y ss = (h1−α A) 1−α
n+δ
α ]
[ 1 ( γ ) 1−α
= h A 1−α
n+δ
(6.10)
(6.11)
実績と予測
✓
Figure 12
✏
労働者 1 人当たり GDP の実績と予測
(6.7)
式 (6.6)
となる.
• この式は定常状態の生産水準は労働者 1 人当たりの労
働投入量の指標 h に正比例することを示している.
✒
✑
• 横軸: アメリカの 1 人当たり GDP に対する予測 1 人
当たり GDP の比率
第 6 章 人的資本
8
• 縦軸: アメリカの 1 人当たり GDP に対する実際 1 人
当たり GDP の比率
外部効果
• 外部効果 (externality): ある経済活動に,何の報酬も
なくもたらされる付随的効果.
• 国家間の人的資本の差によって所得格差の一部が説明
できる.
• 例えば,教育水準の高い国民は正直で効率的統治を受
けるのはありそうなことである.
ウガンダ (Uganda) の例
• 人的資本によるプラスの外部効果は政府が人的資本の
生産 (公的教育とか義務教育) に関与することが多い
理由を説明する.
物的資本の投資データを使うと,ウガンダはアメリカの
労働者 1 人当たり所得の 44%を得ていると予想される.一
方,通学年数のデータを使うと、アメリカ労働者 1 人当た
• 個人の思うままに任せると親自身のためあるいは彼ら
り所得の 52%を得ていると予想される.2 つの要素を合わ
の子供のために教育がどれだけの社会利益になるかを
せると,ウガンダはアメリカの所得の
計算に入れないから,親の選んだ教育量は社会的に最
0.44 × 0.52 = 23%
適量と思われるものより低くなるだろう.
に等しい労働者所得を得ていることになる.
エチオピア (Ethiopia) の例
南アフリカ共和国 (South Africa) とチュニジア (Tunisia)
の例
エチオピアについての研究では教育を受けた人が手にし
た直接的利益は彼が受けた教育が他の人に与えた外部的利
• 図 6.12 では南アフリカ共和国はチュニジアより 30%豊
かであると予想される.
益総計より少ない.つまり,村人のすべてが受けた利益の総
額は,教育を受けた個人の利益より大きいことが分かった.
• 図 3.7 ではチュニジアが南アフリカ共和国より 39%豊
かであると予想される.
6.4
• 事実は 2 国の所得水準はほぼ同じである.
✓
結論
⋆ memo
✏
■ 人間の完成と成長の鈍化
✑
✏
通学制度の質
✓
Figure 13
生徒の試験の成績と 1 人当たり GDP
✏
✒
✓
✒
✒
✑6.5
• 横軸: 1 人当たり GDP
• 縦軸: テストの成績平均
• 先進国 → 教育の質が高い
• 全体としてみると豊かな国は貧しい国よりも通学年数
も多い (more) だけでなく,学校の質もよい (better)
✑
基本用語
• human capital (人的資本)
• return to education (教育に対する収益)
• college premium (大卒プレミアム)
• externality (外部効果)
といえる.このような質の相違によって使っている人
的資本の指標 – 教育年数の格差 – は,国際間の労働
者がもつ人的資本水準の真の格差を過小評価している
といえる.
6.6
問題
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10