中期事業計画(2013年度~2015年度)について

vol.
16
2013
1 中期事業計画(2013年度~2015 年度)について
2 新株予約権付社債及び新株予約権の取扱範囲の見直しについて
3 上場前預託が行われた外国株券等の権利処理の取扱い開始について
4
ルーマニアのDepozitarul Central 並びにトルコのMKK 及び
TAKASBANKとの情報交換及び相互協力に関する覚書締結について
5 届出事務等の制度参加者負担の軽減を目的とした制度改善について
http://www.jasdec.com
1
中期事業計画(2013年度~2015年度)について
ほふりは、資本市場の重要な基盤である決済インフ
(3)制度参加手続きの更なる効率化
ラとして、投資者、発行者、市場仲介者など利用者の視
制度利用者が行う諸手続きについて、全制度・サー
点に立った不断の改革を進めるべく、中期事業計画を
ビス横断的な視点から、引き続き、効率化・簡素化に向
作成しています。2013 年2月には、2013 年度~ 2015
けた更なる取組みを推進します。
年度を対象とする新たな中期事業計画を取りまとめま
した。本計画では、向こう3年間に重点的に取り組む
べき課題として、
以下の3つの柱を掲げています。
Ⅱ 事業基盤の更なる強化
(1)組織体制の強化
安定的な業務運営を確保するため、
リスク管理及び
Ⅰ 利便性・効率性・安全性の高いサービスの提供
(1)制度・サービスの安定運営及び更なる拡充
情報セキュリティーの体制の更なる強化を図ります。
決済システムに関する国際基準であるCPSS/IOSCO
現行の制度・サービスの安定的かつ効率的な運営を
の「金融市場インフラのための原則」に適切に対応し
確保しつつ、制度利用者の利便性の一層の向上のため
ます。
の取組みを推進します。
内外の環境変化に対応できる高い専門性・国際性を
次期システムにおいて、貸株取引における DVP 決済
備えた人材の育成・活用に向けた取組みを推進します。
を実現するとともに、各小委員会等を通じて制度利用
(2)BCPの強化
者から寄せられた要望を反映した機能拡充、制度改善
災害及びシステム障害等の発生時において業務を可
等に対応します。
能な限り継続し又は迅速に復旧できるよう、業務継続
(2)法制・税制への適切な対応
金融所得一体課税、少額投資非課税制度、社会保障・
体制の更なる強化に向けた取組みを行います。
(3)
システム基盤の強化
税に関わる番号制度及び海外における FATCA(外国税
より安全性・効率性の高いシステムの提供を目的と
務コンプライアンス法)等、国内外の法制・税制の改正
して、2014 年1月に、次期システムリプレース(ホス
に適切に対応します。
トの一部オープン化、システム構成の見直し等)を実施
します。
ます。
次期システム稼働後のシステム開発において、株式
わが国決済制度全般に関する諸課題について、海外
等口座振替サブシステムのオープン化、追加開発案件
の状況も踏まえ、調査・研究を行います。
等の実現に向けた検討を行います。
(2)国際標準化の推進
システム開発体制を一層強化する目的から、IT マネ
決 済 照 合 シ ス テ ム 及 び 振 替 シ ス テ ム に お い て、
ジメントの高度化に向けた取組みを行います。
ISO20022を導入するとともに、SWIFT Net 経由でのシ
ステム接続を実現します。また、その後の ISO20022
Ⅲ 金融・資本市場の競争力強化に向けた対応
の安定的なメンテナンス、利用者側の移行促進のため
の活動に取り組みます。
(1)
わが国金融・資本市場の整備・活性化に向けた
決済インフラとしての貢献
国際標準化を推進する団体への参画等を通じて、更
東京証券取引所と共同でコーポレートアクション情
報の配信サービスの拡充
(配信情報の拡充、ISO20022
の対応、ユニーク ID の付番等)を実施するとともに、一
なる国際標準化に向けた取組みを推進します。
(3)国際的な活動への取組み
層の STP 化について検討します。
社債市場の活性化、国債の決済期間の短縮等、関係者
と議論・協力しつつ、金融・資本市場の安定性・効率
WFC(World Forum of CSDs)
・ACG(Asia-Pacific
CSD Group)
やABMF
(ASEAN+3 Bond Market Forum)
等の活動への参画や MOU(情報交換及び相互協力に関
性をより高めるための取組みを推進します。
する覚書)締結先との交流を通じて、決済インフラを取
証券決済分野の業務のグローバル化に対応し、クロ
り巻く様々な課題に対応するとともに、各国機関との
スボーダー決済に係る利便性向上について検討を行い
連携強化を図ります。
■ 企業理念・経営基本方針・中期事業計画
企業理念
● 資本市場の重要な基盤である決済インフラとして、
その公共的な
● 資本市場を巡る国内及び国際的な環境・構造変化を踏まえつ
役割を認識し、信頼性、利便性及び効率性の高いサービスを提
供することにより、資本市場の機能向上に寄与し、社会の発展
に貢献する。
つ、投資者、発行者、市場仲介者など利用者の視点に立った不
断の改革を進める。
経営基本方針
●
株主たる機構加入者による直接的なガバナンスを通じて、利用
者本位の事業運営を行う。
● 世界の決済制度のベスト・プラクティスを常に念頭に置き、
国際
的に通用する機能の提供を目指し、業務の改善と新規事業の展
開に迅速かつ柔軟に取り組む。
●
決済インフラとしての業務集中とサービス範囲の拡大を踏まえ、
リ
スク管理を重視する企業風土の醸成とともに、一層のコスト削減
に取り組む。
● 事業の公共性を意識し、
ディスクロージャーを積極的に行い透明
性の確保に努める。
中期事業計画(2013年度〜2015年度)
Ⅰ
利便性・効率性・安全性の
高いサービスの提供
(1)制度・サービスの安定運営及び
更なる拡充
(2)法制・税制への適切な対応
(3)制度参加手続きの更なる効率化
Ⅱ
事業基盤の更なる強化
(1)組織体制の強化
(2)BCPの強化
(3)システム基盤の強化
Ⅲ
金融・資本市場の
競争力強化に向けた対応
(1)わが国金融・資本市場の整備・活性
化に向けた決済インフラとしての貢献
(2)国際標準化の推進
(3)国際的な活動への取組み
2
新株予約権付社債及び新株予約権の
取扱範囲の見直しについて
ほふりは、2013 年2月1日から、株式等振替制度に
望が寄せられていました。
おける新株予約権付社債及び新株予約権の取扱対象の
こうしたことを背景に、ほふりでは、金融機関に限定
範囲を拡大しました。
していた割当先に係る要件を撤廃することにより、取
これまでは、国内の金融商品取引所に上場する新株
扱対象の範囲を拡大しました。これにより、金融商品
予約権付社債及び新株予約権のほか、新株予約権の目
取引所に株式を上場している会社が国内で発行する新
的である株式が振替株式であることや国内で発行され
株予約権付社債及び新株予約権については、原則とし
たものであることに加え、割当先が証券会社や銀行等
て上場・非上場を問わずに株式等振替制度での取扱い
の金融機関であるものに限定して、非上場新株予約権
が可能となり、新株予約権行使や元利金処理の事務の
付社債及び非上場新株予約権を株式等振替制度の取扱
効率化等による制度利用者の利便性や決済の安全性の
対象としていました。
向上が図られることとなりました。 近年においては、企業の資金調達手段の多様化を背
今回の改正により、上場会社が発行する新株予約権
景に、事業会社への割当てや、特定目的会社
(SPC)、信
付社債又は新株予約権については、株主割当てにより
託の機能を活用した新たな形態の商品が発行されるよ
割り当てられる非上場の新株予約権を除き、
公募、
株主
うになってきています。一方で、これまでの非上場新
割当、第三者割当により発行されるもの全てがほふり
株予約権付社債及び非上場新株予約権の取扱要件にお
の取扱対象となります。なお、
ストックオプションにつ
いては、割当先の制限、割当先からの譲渡の制限、新株
いては、新株予約権の内容に譲渡制限が付されるのが
予約権行使の主体に係る制限により、これらの商品を
通常ですが、
このような新株予約権については、
振替法
振替制度で取り扱うことができなかったことから、制
上、振替制度の対象とすることができないため、
ほふり
度利用者より取扱対象の範囲を見直して欲しいとの要
の取扱対象とはならないと考えられます
(下記図参照)
。
■ 新株予約権付社債・新株予約権の取扱可否(取扱範囲の見直し前後)
振替法上の前提条件
••新株予約権の目的である株式が振替株式であること
••新株予約権の内容として譲渡制限が付されていないこと
新株予約権付社債
公募
株主割当
資金調達
資金調達
資金調達
買収防衛
上場
○→○
○→○
–
–
非上場
×→○
×→○
△
→○
※1
△
→○
※1
上場区分
第三者割当
新株予約権
上場区分
公募
株主割当
第三者割当
資金調達
資金調達
買収防衛
資金調達
買収防衛
ストックオプション
上場
–
○→○
–
–
–
–
非上場
×→○
×→×
※2
×→×
※2
△
→○
※1
△
→○
※1
×→○
※3
表の見方:矢印を挟み、左側が取扱範囲の見直し前、右側が取扱範囲の見直し後の取扱可否を示す。(○:取扱対象 △:一部取扱対象 ×:取扱対象外)
※ 1 社債、株式等の振替に関する法律
(平成 13 年法律第 75 号)
第 44 条第1項の金融機関又はそのグループ会社に対して、
第三者割当てを行う場合のみ取扱対象となる。
※ 2 株主割当てされる新株予約権については、現行システムでは取扱いができないため、
取扱対象とはならない。
※ 3 ストックオプションについては、
通常は新株予約権の内容に譲渡制限が付されるため、
実際には取扱対象とはならないと考えられる。
3
上場前預託が行われた外国株券等の
権利処理の取扱い開始について
ほふりは、2月 25 日から、一定の要件を満たす外国
の口座に対して全実質株主分の配当金額が分配される
株券等について、国内の金融商品取引所における上場
ことになります。しかし、ほふりは、配当金等の基準日
日前においても、権利処理を含む取扱いの対象とする
等がほふりの取扱開始日以降に到来した場合のみ権利
ことといたしました。
処理を行っているため、このような場合はほふりを通
これまで、
外国株券等保管振替決済制度においては、
じた権利処理ができませんでした。
外国株券等の上場日がほふりによる取扱開始日となっ
そこで、ほふりによる取扱開始日を、原則として、上
ており、
上場日到来前の外国株券等は、上場初日からの
場日ではなく、上場承認日とすること(発行会社、株式
売買を円滑に行うための上場準備行為としての預託及
事務取扱機関、ほふりとの株式事務に係る三者契約が
び振替に限り、
取扱いが認められておりました。
締結されていることも必要。)により、このような場合
こうした中、
仮に、ほふりに上記預託が行われた後か
でもほふりが権利処理を行えるよう、制度変更を行っ
ら上場日までの間に、配当金等の基準日が設定された
たものです。
場合には、
発行会社から、現地保管機関におけるほふり
■ 上場前外国株券等の権利処理イメージ図
改正前
上 場日
配 当 金 基 準日
三者 契 約 締 結 日
上 場 承 認日
基準日が上
場日前に到
来した場合、
権利処理は
不可能
取 扱 可
権利処理の条件:上場、三者契約締結
改正後
取 扱 可
上 場日
配 当 金 基 準日
三者 契 約 締 結 日
上 場 承 認日
上場承認後
は、三者契
約締結を条
件として 権
利処理が可
能に
権利処理の条件:上場承認、三者契約締結
4
ルーマニアのDepozitarul Central 並びに
トルコのMKK 及び TAKASBANKとの情報交換
及び相互協力に関する覚書締結について
ほふりは、2012 年 11 月1日にルーマニアの証券保
ています。
管振替機関
(CSD:Central Securities Depository)で
TAKASBANK は、イスタンブール取引所から分離
ある Depozitarul Central(DC)と情報交換及び相互協
した特別目的の銀行で、主に清算・決済業務、決済に係
力に関する覚書を締結しました。
る銀行業務、証券コード付番業務及び国内外の投資家
また、2013 年2月1日にトルコの CSD である MKK
向けにカストディサービスを行っています。
と、1 月 31 日には資金決済銀行である TAKASBANK
今回の MOU に基づき、ほふりは日本とルーマニア
とそれぞれ情報交換及び相互協力に関する覚書を締結
及びトルコ両国の金融市場の発展、クロスボーダー投
しました。
資の促進に向けて、更なる協力関係を築いていきます。
DCは、
主にブカレスト証券取引所で取引されるルー
今後、日本とトルコ両国の ETF の相互上場も見込ま
マニア国内証券の清算・決済サービスや3大陸の 20
れており、トルコの2機関との間ではそれに係る業務
カ国で登録されているルーマニア国外証券のクロス
での緊密な連携も行っていく予定です。
ボーダー決済等のサービスを提供しています。
ほふりは、今回の3機関を含む 17 の CSD 等の機関と
MKK は、主にトルコの国内資本市場において発行・
MOU を締結しており、海外 CSD との国際的な協力関
取引されるすべての電子化された証券の保管、コーポ
係、情報交換のネットワークを通じて、日本の証券市場
レートアクション、
法務及び報告サービスなどを提供し
の国際競争力強化に努めてまいります。
DCとのMOU締結
MKKとのMOU締結
TAKASBANKとのMOU締結
5
届出事務等の制度参加者負担の軽減を
目的とした制度改善について
ほふり及びほふりクリアリングが運営する7制度
○書類提出方法の電磁化
(株式等振替制度、
短期社債振替制度、一般債振替制度、
変更手続時の書類、業務上の書類及びシステム関連
投資信託振替制度、外国株券等保管振替決済制度、決
の書類等の提出方法を、原則、電磁的な方法によるこ
済照合システム及び一般振替 DVP 制度)では、制度毎
ととしました(一部の制度参加者及び一部の書類を
に届出事項の変更手続や提出方法を定めており、取扱
除く。)。
いの相違や手続の重複等が生じていました。そこで、
2013 年 2 月、制度参加者の事務負担の軽減を図る観点
から、
以下のような見直しを実施しました。
○変更手続書類の共通様式の制定
制度参加者の商号、本店所在地及び代表者等の変更
手続に用いる様式について、全制度共通の様式を制
定し、共通様式の提出で複数の制度の手続を可能と
しました。
○届出印等の取扱いの見直し
書類提出方法の電磁化を踏まえ、変更手続時の書類
や業務上の書類等に押印する代表者又は代表者代理
人の届出印制度の一部及び代表者代理人制度の一部
を廃止しました。
なお、ほふりでは、制度参加者による手続の簡素化・
合理化に更に取り組んでいく予定です。
業務統計
■ 制度参加者の状況(2013年3月末)
(社)
発行者
機構
加入者
間接口座
管理機関
資金決済
会社
その他(注)
3,635
189
101
64
29
494
67
45
142
20
2,613
86
435
142
203
❹投資信託振替制度
85
175
677
45
10
❺外国株券等保管振替決済制度
20
146
–
–
–
❶株式等振替制度
❷短期社債振替制度
❸一般債振替制度
❻決済照合システム
利用者
684
❼一般振替DVP制度
DVP参加者
決済銀行
52
3
(注)
その他には、株主名簿管理人、発行・支払代理人、受託会社等を含む。
■ 口座振替等の状況
一般振替
(区分口座間振替除く)
区分口座間振替
取引所取引振替
❶株式振替件数(一日平均)
❷株式振替株数(一日平均)
(千件)
(百万株)
200
6,000
5,384
164
150
151
141
106
136
128
108
105
123
122
123
91
91
87
148
153
141
143
88
93
85
103
101
4,496
4,632
152
4,000
130
116
100
89
132
5,000
109
2,781
3,000
2,000
0
1,000
2008
年度
2009
年度
2010
年度
2011
年度
2012
年度
2012年
11月 12月
2013年
1月
0
2月
3,254
2,942
2,837
2,746
2,765
2,711
2,721
2,652
3月
2,766
2,680
2,981
3,070
1,819
1,933
1,983
2月
3月
2,302
1,707
50
41
3,755
3,756
1,486
1,512
1,408
1,305
1,370
2008
年度
2009
年度
2010
年度
2011
年度
2012
年度
1,538
1,238
2012年
2013年
11月
12月
1月
(注)
「一般振替」は、取引所外取引振替に係る件数・株数、
「 区分口座間振替」
は、同一の機構加入者における区分口座間への振替に係る件数・株数。
■ 口座残高及び取扱銘柄数の状況
口座残高
(左軸)
銘柄数 (右軸)
❶株式等
(億株)
4,000
3,000
3,839
3,948
❷短期社債
(銘柄)
3,727
4,129
3,640
3,581
3,561
4,186
4,068
4,046
4,000
3,000
(銘柄)
(兆円)
7,000
25
5,869
20
18.7
6,000
4,730
15
2,000
2,000
1,000
1,000
0
5,000
4,447
3,926
14.1
14.0
13.6
13.7
10
2009年3月
2010年3月
2011年3月
2012年3月
2013年3月
0
❸一般債
73,298
240.2
71,202
245.5
80,000
1,000
2009年3月
2010年3月
2011年3月
2012年3月
2013年3月
0
(銘柄)
(兆円)
150
67,788
250.0
200
60,701
252.4
58,486
5,906
60,000
100
252.7
105.5
6,297
110.2
6,575
114.9
6,868
7,112
112.5
115.3
40,000
8,000
6,000
4,000
50
100
2,000
20,000
0
3,000
2,000
5
0
4,000
❹投資信託
(銘柄)
(兆円)
300
4,392
2009年3月
2010年3月
2011年3月
2012年3月
2013年3月
0
0
2009年3月
2010年3月
2011年3月
2012年3月
2013年3月
0
商
号
株式会社 証券保管振替機構(Japan Securities Depository Center, Inc.)
所 在 地
〒103-0025 東京都中央区日本橋茅場町 2-1-1
U
資 本 金
http://www.jasdec.com
42億5,000万円
株
証券会社、銀行、証券取引所、証券業協会など(133 社)
R
L
主
事業内容
株式等振替業務、短期社債振替業務、一般債振替業務、投資信託振替業務、
決済照合業務、外国株券等保管振替決済業務、その他
従業員数
231名
(2013 年 3 月末現在)