1.5 限界分析入門 限界効用 財は N 種類あるとする。第 i 財の限界効用 (Marginal Utility) とは、 MUi = 第 i 財の消費を 1 単位増やしたときの効用の増分 ・・ のことである。ただし、限界効用は限界代替率を導出するためだけに使う。経済学的には限界代替率にのみ量 的意味があるのであって、限界効用それ自体には意味がない*1 。 偏微分について 効用関数はたくさんの財 (x1 , x2 , · · · , xN ) に依存するが、第 i 財の限界効用を考えるときは、ほかの財の消費 量は定数とみなして、第 i 財だけの関数だと思って微分する。これを偏微分するといい、限界効用 MUi は、 MUi = ∂u ∂xi とかける。 限界代替率の限界効用による表現 財は2種類とする。消費計画は x = (x1 , x2 ) である。 ここで第1財を「ほんのちょっと」追加(∆x1 )するために第2財の消費の変化(∆x2 )をどのぐらい許容で きるかを考える。このとき、(x1 , x2 ) と (x1 + ∆x1 , x2 + ∆x2 ) は同じ無差別曲線上にあることに注意*2 。 したがって、「第1財の消費量の増加による効用の変化」と「第2財の消費量の減少による効用の変化」は相 殺されて、結果として効用の変化は0となる。 数式でかくと: 第1財の消費量の増加による効用の変化: (局所的な)無差別曲線の勾配 × x1 の変化 = ∂u ∂x1 × ∆x1 第2財の消費量の減少による効用の変化:(局所的な)無差別曲線の勾配 × x2 の変化 = ∂u ∂x2 × ∆x2 ∂u 合わせたものが0: ∂x × ∆x1 + 1 ∂u ∂x2 × ∆x2 = 0 これを変形して: − ∂u/∂x1 ∆x2 = ∆x1 ∂u/∂x2 左辺は無差別曲線の(局所的な)傾きの絶対値、すなわち限界代替率 MRS12 である。 上の式をかき直すと: MRS12 = ∂u/∂x1 ∂u/∂x2 となる。 *1 *2 林貴志『ミクロ経済学(増補版)』(2013)P.60∼61 に詳しい説明があります。 ∆x1 が正なら ∆x2 は負です。 1 最適消費の条件 最適消費計画問題の解となる消費計画 x∗ において、 MRS12 = p1 p2 が成り立つ。したがって、最適消費 x∗ は、 MRS12 = ∂u/∂x1 p1 = ∂u/∂x2 p2 と予算制約式 p1 x1 + p2 x2 = I をつかって求める。 2 ラグランジュの未定乗数法で最適消費計画 x∗ を求める 最適化問題をマニュアル的に解く方法。 財は2種類。消費計画は x = (x1 , x2 )。 効用関数は「だいたいの人」の選好をうまくとらえるコブ・ダグラス型で考える。 すなわち、u(x1 , x2 ) = xa1 x1−a とする。 2 1. まずは問題を定式化。 max xa1 x1−a 2 x s.t. p1 x1 + p2 x2 = I 2. ラグランジアン L という関数を、ラグランジュの未定乗数 λ(≥ 0) をつかって作る。 L = xa1 x1−a + λ(I − p1 x1 − p2 x2 ) 2 3. x1 , x2 とλ で偏微分して 0 とおき、得られた式を連立して解く。 ∂L = axa−1 x1−a − λp1 = 0 1 2 ∂x1 ∂L = (1 − a)xa1 x−a 2 − λp2 = 0 ∂x2 ∂L = I − p1 x1 − p2 x2 = 0 ∂λ (1) (2) (3) (1) の辺々を (2) で割って、 x2 a p1 · = 1 − a x1 p2 1 − a p1 · x2 = · x1 a p2 (4) (4) を (3) に代入して、 1−a · p 1 x1 = 0 I − p 1 x1 − a ) ( a 1−a − + p1 x1 = −I a a p1 · x1 = I a x∗1 = a · I p1 (5) (5) を (4) に代入して、 x∗2 = (1 − a) · I p2 (6) (5)、(6) より最適化問題の解である最適消費計画 x∗ = (x∗1 , x∗2 ) は、 ) ( I I ∗ (1 − a) · x = a· p1 , p2 3
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