自然と人間 中学理科 3 年 3-3① 科学技術の利用と環境保全-地球温暖化とカーボンポジティブ 地球温暖化とカーボンポジティブ 地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の排出量と吸収量が同じであることを「カーボンニュートラル」といいま す。バイオマスなど植物由来の燃料を使うことで,大気中の二酸化炭素は増加しないという考えです。 これに対して,二酸化炭素の排出量より吸収量を多くして,大気中の二酸化炭素を減らすことを「カーボンポジティ ブ」といいます。カーボンポジティブの実現には,さらに進んだ環境対策が必要となり,容易なことではありません。 植林を例にとると,樹木の苗が成長していく段階で二酸化炭素を吸収してくれますが,その樹木を伐採して燃料 に使ってしまっては,吸収した分の二酸化炭素は排出されてしまいます。燃料に用いなくても,枯れた樹木はその うち微生物に分解されて二酸化炭素を排出してしまいます。しかも,植林を維持管理している段階でも,エネルギー を使って二酸化炭素を排出しているので,植林はカーボンニュートラルにするのですら難しいことになります。 そこで現在,カーボンポジティブを実現するために研究・開発されているのが,二酸化炭素回収・貯蓄(CCS) です。具体的には,工場などで発生する二酸化炭素を回収して,海底下の地層に二酸化炭素を閉じこめる技術の ことです。 回収については,各家庭や自動車,飛行機など分散型の排出源から回収するのは効率が悪く困難なため,工場 や火力発電所など大規模な排出源からの回収になります。例えば,燃料電池の場合,都市ガスを各家庭に供給し て水素を取り出す方式では,発生した二酸化炭素を回収するのは困難です。しかし,水素を工場でメタンなどから 製造して各家庭や水素ステーションに送る方式では,二酸化炭素は容易に回収でき,各家庭や自動車から二酸化 炭素は発生しません。CCSを考える上では,水素の集中的な製造が必要となります。 回収した二酸化炭素を貯留する方法として現在研究されているのは,地下の帯水層(利水可能な地下水が飽和し ている地層)への封入,地中の油田などへの封入,深海底でハイドレート(水分子のかご状の構造の中に二酸化炭 素などの分子が入りこんだもの)にして固定するなどです。日本で進んでいるのは,地下深くの帯水層への貯留技 術で,北海道苫小牧沖で実証実験が始まっています。 これは二酸化炭素を海底下1100 ~1200mと2400 ~ 3000m にある砂岩の層に閉じこめる技術で,閉じ こめられた二酸化炭素は,長い年月をかけて少しずつ周囲の水に溶けたり,岩石と化学反応をして炭酸塩鉱物となっ たりして固定されると考えられています。今後,閉じこめた二酸化炭素が漏れないかどうかなど,環境への影響を 調べていく計画です。 温暖化対策として,二酸化炭素の排出を減らしていくことは大事ですが,排出を0 にしない限り大気中の二酸化 炭素は増加します。そこで,積極的に大気中の二酸化炭素を固定して減らす技術が研究されていることにも触れら れれば,有意義な学習となるでしょう。 さらにくわしくお知りになりたい場合 啓林館教師用指導書詳説 3 年 研究編 p460 教授用資料 中学 3年 自然と人間 総合的・多面的に自然を見るためのアイデアカード ●「人間と環境」 ,または人間と自然環境の関わりについての学習に関して,コピーして配布するとよいでしょう。 記入例 ・棚田の景色 ・水のせせらぎ ・鳥の声 ・ホタルの光 ・動植物の色や形 ・生き物の採集・飼育・栽培 ・泥遊び ①美しい地球 ・合理化された土地利用 ・化学物質の登場 ・機械化 ・棚田の造成・荒廃・労力 ②人間の影響 ・農業 ・田舎暮らしを 始めた人 ・博物館学芸員 ・JA職員 田んぼ ⑦興味・職業 ⑥大きい空間 ●総合的・多面的に自然を見るためのアイデアカード ・平地の田と棚田の比較 ・人の営み ・生き物の数・種類 ③科学技術の進歩 ④システム ⑤時による変化 ・田んぼの四季 ・今・昔(戦前) ・未来 (経済性の追求) ・機械化 ・品種改良 ・遺伝子組換え ・乾田化 ・ダム・用水路 ・水の循環と利用 ・生態系 ・人の営みと生き物とのかか わり ・田んぼのはたらき(食料生 産・地滑り予防・水辺の生 態系)
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