原単位管理の考え方

H28年度エネルギー使用合理化シンポジウム
正しい「原単位」の管理方法
「エネルギー消費原単位」
入力÷出力
1%改善
「ベンチマーク」
指標達成
業種別トップランナー
指標相当
2017.2版
近畿経済産業局 エネルギー対策課
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「原単位管理(1%改善)」はどこに?
「基本方針」
告示268号
「国の役割」
「判断基準」
告示269号
「みなさん」の役割
(法4条)基本方針に沿って、エネルギー使用合理化に努める事
(法14条)「中長期計画書」の作成提出
(法15条)「定期報告書」の作成提出
経産省「(告示269号)エネルギー使用合理化に関する判断基準」
Ⅱ.目標部分の「前段」
・エネルギー消費原単位を「年平均1%」以上低減・・こと。
・定期報告書(特定-4表、指定-6表イメージ)
99.0%
以下
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2016 「(近畿局)原単位目標」の達成状況?
(出典)
近畿局「2016定期報告書」2100社の中から、327社を連続サンプリング
ナゼだ !
・H28年度から、事業者「クラス分け」制度も始まりました。
・約6割以上の事業者が「昨年比、5年平均」とも達成しています。
・しかし、中には「110%以上」悪化した事業者もありました。
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2016 「(全国)業種別」の達成状況?
工場系
事務所系
・達成率は、「(左側)工場系」が低く、「(右)事務所系」が高い
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「原単位」が活動の実態を示しているか?
省エネ活動はやっているが、生産量が減少して
「原単位」が悪化してしまう?
分母の選択に、単純な「面積」「数量(生産量等)」が圧倒的に多い。
原単位「分母」を安易に選択していませんか?
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なぜ? 「原単位」管理がうまく行かない
原単位管理が
うまく行かない
Ⅰ.「回帰分析」
で探す
内部要因
外部要因
Ⅱ.「換算生産量」
方式
「生産量」との相関図
エネル ギー量
(kL)
10,000
9,000
R² = 0.3189
8,000
①活動不足
②分母選定
不良
⑦市場不況
生産減少
⑧市場変化
高付加価値シフト
③固定エネルギー
大
④研究開発、
試運転エネルギー
⑨環境対策
⑩為替レート変動
②相関があるとは言えない
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
①ばらつきが大
③原点(0,0)を通らない
0
200
400
600
800
1,000
生産量(千ton)
Ⅲ.「補正生産量」
方式
⑤事故、故障
⑥事業統廃合
Ⅳ.「みなし生産量」
方式
⑪気象変動
Ⅴ.「基準値補正」
による説明
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一番多い原因は?
「分母」の選定(特性)不良
(例)分母が「生産量ton」のとき
「生産量」との相関図
エネル ギー量
(kL)
10,000
9,000
R² = 0.3189
8,000
②相関があるとは言えない
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
③原点(0,0)を通らない
1,000
0
0
200
400
①ばらつきが大
600
800
1,000
生産量(千ton)
(理想的な特性図)
(現実的な特性図)
・ ①②バラツキ
・ ③原点を通らない
(固定分がある)
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(対策①) 「最適分母」の選定方法
・月次データを活用して「回帰分析」をしましょう
・相関の高いものが複数あれば、「数式化」が必要です
(Step1)
分母候補の抽出
のべ床面積(m2)、のべ営業時間(hr)、テナント入居率(%)
、平均気温(℃)、売上金額(百万円)、利用者数(人)
(Step2)
候補の分析評価
売上げ、電気ガス等の
「月報」を集める
△
○
×
△
各候補「回帰分析」による○×評価
(Step3)
シミュレーション
・(新)「分母」「数式」の検証評価
・「数式」は、Excelで求める(回帰式、重回帰式)
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過去数年に亘って原単位変化を試算する(理想的には±5%変動幅位を目指す)
(対策②) 「固定分」が大きいとき
(事例)現状の特性
「補正生産量」という考え方
Y=X’
(生)生産量を「補正」して、エネルギー特性に合わせれば、
結果的に1 : 1の特性となる(原点を通る)
Y=a・X+b → X’=a・X+b → X=(X’-b)/a → Y=a・(X’-b)/a+b → Y=X’
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(対策③) 「多品種生産」事業者の場合
製品が「高品質」「高付加価値」「高エネルギー消費型」になってきた。
「換算生産量」という考え方
kL
製品c
製品a
製品b
生産ton
「製品C」が多くなり、
原単位が年々悪化する。
例え、それぞれの「単位」が違っても
「エネルギー消費換算係数」で単位を統一できます。
(将来の品種、数量の変化に耐える事が可能)
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(対策④) 「研究開発」の影響が大きいとき
生産を伴わない研究開発、試作品のエネルギーが年々増加
してきたが、競争力を高めるためにはやむを得ない。
「みなし生産量」という考え方
研究開発部門等の消費エネルギーを
「製造原単位」で生産量に換算すれば影響を避けられます。
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(対策⑤) 「基準値補正」して報告
為替レート、気温等々、外部による影響は(特定-5、指定-7表)で説明
「基準値補正」という考え方
「円/ドル」為替レートの推移
2008.12-2017.1
基準レート=100円
「もし○○が基準値だったら、原単位はこうなる」と定量的に「補正」して説明する
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まとめ
皆さんの地道な省エネ努力が、生産活動の中に埋没しない方法を考えましょう。
一度、近畿局にご相談ください。
社内コンセンサス
得られたか?
数式化?
身近なデータ?
合理的か?
(計量値、計算値)
当局に相談
したか?
試算結果?
複雑過ぎない?
相関性は?
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(付録) Q&A
最近の具体的事例から
2017.2
- 説明省略 -
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(Q1) 「原単位」の計算ルール?
①1工場、1分母のルール
1つの工場で、原単位分母を複数使用することはできません。
(例え「事務所」「工場」「研究所」があろうとも、分母は1つ)
②「分母」はエネルギーと密接な関係を持つこと
「回帰分析」等で十分シミュレーション(検証)すること
③「分母」はエネルギーそのものではならない
④「分母」は数式でもよい
むしろ「数式」になる方が多い
⑤「原単位」は4ケタ表記すること
123,456→123,500、0.123443→0.1234、0.00123456→0.001235
⑥「平均原単位変化(%/年)」は、4√で計算すること
4√(95.6*102.3*99.1*115.6)=102.9
(95.6+102.3+99.1+115.6)/4=103.2 ← 単純平均
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(Q2) 1工場、1分母と言うが?
①生産ラインあり、事務所有り、研究施設あり。どうしたらよいか?
そのような場合は「換算生産量方式」を使用する。
生産ライン(ton)
事務所(m2)
研究施設(研究時間hr)
②それぞれの単位を、エネルギー消費量を基にして「生産量」に換算する
(10P参照)
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(Q3) 「数式型」の分母にしたいが?
「商業施設」であるが、床面積m2に関係するのはわかるが、それだけではない?
営業時間や来客数等で大きく変化するようだ。
①数式型の設定方法(8P参照)
・予想される「分母」の候補をいくつか挙げる
・それぞれの相関関係を「散布図」確認し、もっとも関係するものを選ぶ
・関係するものが複数あるときは「数式」とする
②数式型の注意
・足し算か? 掛け算か?
一般的に「足し算」が多い
・関係分母候補2つの時、いずれがゼロでもエネルギー量がゼロの時は「掛け算」
例えば「公民館」分母=「床面積m2」×「イベント日数(日)」
など
・複雑にならないこと
・身近なデータであること
・社内で十分コンセンサスを得ること
・当局への説明には、分析資料を添付すること
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(Q4) 「原料」か、「製品」か?
生産量にしたいが、「原料」が良いか、「製品」が良いかの判断に迷う
・「原料」にすると、歩留まり改善が反映されない
・「製品」にすると、多品種生産の場合にカウントが難しい
・原料の種類(品種)により、エネルギー消費量が大きく変動するときは「原料」とする
(Q5) 「発電量」か、「送電量」か?
発電事業者であるが、「発電量」が良いか、「送電量」が良いかの判断に迷う
・「発電量」にすると、所内電力改善が反映されない
・「送電量」にすると、それはなくなる
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(Q6) 「半製品」を他工場に出荷するようになった
工場の統廃合により、半製品を代替製造、出荷するようになり、結果的に「原単
位」が悪化してしまう。
・「換算生産量」方式を使用して、半製品をカウントに含める
(Q7) 「歩留まり率(%)」を分母にしたい?
製造業にとって「歩留まり」改善は永遠の改善テーマであり、それを「原単位」の分
母に使用したい。
・(例)「歩留まり率(%)」= 製品量(ton)/原料量(ton)
・結論的に「歩留まり」は分母としては適切ではない
・エネルギー消費量は、歩留まりよりも生産量との相関が大きい
・従って、同じ歩留まり率%でも、生産量が増えれば「原単位」は悪化してしまう
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(Q8) 「面積」もいろいろあるが?
自治体施設であるが、事務棟、食堂棟、地下駐車場、倉庫等々いろいろある。
単純に足して「分母m2」にして良いか?
・それぞれのエネルギー消費率を加味して加算するのが良い
・(例)
のべ床面積(m2)=事務所m2+0.5×食堂m2+0.2×駐車場+0.1×倉庫
(Q9) 増築により、途中から「面積」増加した?
学校であるが、年度の途中で増築して面積が増加した。
この場合、増築前、後いずれの面積を使用するのが正しいか?
・期間のべ面積とする(10月増築の場合)
(例) (10,000m2×6ヶ月 + 20,000m2×6ヶ月)/12ヶ月
= 15,000m2 を使用する
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(Q10) 工場統廃合により生産縮小、「原単位』悪化
工場であるが、全社的統廃合により生産ラインの一部を他工場へ移転した。
このため、生産効率が悪くなり「原単位」が悪化してしまつた。対策はないか?
・省エネ法では、個別事業所共々 全社原単位の改善を強く要望している。
このため、一部の事業所で原単位が悪化するのはやむを得ない。
・従って、このような事業所は、
(指定-7表)にて、再編等により原単位が悪化した旨説明する
(Q11) 設備の故障でライン停止、「原単位」が悪化
設備保全は最大の省エネ改善項目である。
しかしながら、不慮の事故故障によるライン停止等は避けられないものである。
・従って、このような場合も
(指定-7表)にて、不意の事故等により原単位が悪化した旨説明することになる。
そして、この事故が無ければ原単位はこうなると定量的に記載する。
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(Q12) 「ベンチマーク」「電力平準化原単位」は達成している
大型装置産業であり、経年劣化等により年々性能が低下して原単位が悪化するが、
「ベンチマーク(BM)」、「電気平準化評価原単位」は日々の努力で達成している。
クラス分け制度も始まったが、評価してもらえるか?
・「原単位」「ベンチマーク(BM)」のいずれかが達成しておれば「S」クラス評価となる
・「原単位」が悪化しても「電気需要平準化原単位」の日々成果が達成されて
おれば原単位達成と見なされる
(Q13) やはり「原単位」分母を見直したいが?
いろいろ社内でも検討したが、原単位の「分母」が正しくないことがわかった。どの
ような手続きをしたら良いか?
・まず「(新)分母」を見つけ(8P参照)、社内でオーソライズすること
・過去5ヶ年に遡ってシミュレーション(検証)してみること
・所轄の経済産業局並びに主管省庁窓口に「説明資料」を添えて説明すること
(このとき、新分母が十分な相関があると言うことを証明する資料添付)
・了解が得られたら、次回の定期報告書に反映する
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経産省 近畿経済産業局 エネルギー対策課
06-6966-6043 までお電話下さい
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