P2-67 第 7 回日本LCA学会研究発表会講演要旨集(2012 年3月) 下水処理施設の評価に基づくウォーターフットプリント用原単位の構築 Construction of the standard physical unit for waterfootprints based on evaluation of sewage disposal plant ○降籏 駿一*1)、若林 竜也 2)、伊坪 徳宏 1) Shunnichi Furuhata, Ryuya Wakabayasi, Norihiro Itsubo 1) 東京都市大学, 2) 横浜市 環境創造局 *[email protected] 1. はじめに 今日人口の急激な増加や社会の発展に伴い、多くの国 で水不足が深刻化している。また、水質悪化による健康 被害等への対応も強く求められている 1)。 対応策の一つとして、複数団体によりウォーターフッ トプリント(以下 WF)が提唱されている。WF とは、製 品の生産から廃棄するまでに消費された「水の量」と「汚 染された水量」を算定の対象とするものである。WF は、 国際規格化作業(ISO14046)が始まっており、今後、幅 図 1 廃棄段階の水使用量の計算方法 広く利用されるものと期待されている。 しかし WF には課題点がある。廃棄段階の算出方法を 表 1 横浜市下水道システムの水使用量の算定方法 「環境水質基準に基づいて汚染物質を同化するのに必要 2) となる水量」 と定義付けているため、実際に必要な水 計算方法 WF=∑(活動量×原単位 4)) 量が過剰に投入されていると指摘されてきた 3)。 評価対象 横浜市の下水道システム※ 家庭や工場の一部で発生した汚水は、水により同化さ ポンプ場(26 か所) れるのではなく、下水処理場で処理される。しかし、既 下水処理場(11 か所) 存の廃棄段階の計算方法では、下水処理が反映されてい 汚泥処理施設(2 か所) ない。また、それを検討している研究もない。 従って、本研究では、下水処理を反映した廃棄段階の データの収集 横浜市環境創造局の一次データ 5-6) 機能単位 1 年間の下水道システムの活動 水使用量を算定できる計算方法の作成を目的とする。計 ※算定結果では、下水道システム 11 か所を示した。 算方法は、他の事例研究にも適用できるように、汚水量・ ポンプ場、汚泥処理施設を下水処理場へ実際の配送工程 水質汚濁物質ごとに排水量が算定できる計算方法の構築 と同じように配分した。 を目指す。 3. 結果 2. 方法 3.1 横浜市の下水道システムの結果 本研究での廃棄段階の水使用量は、図 1 の下水道シス テム(ポンプ場・下水処理場・汚泥処理施設)での水使 用量(①)と放流水に含まれる水質汚濁物質の希釈水(②) を足し合わせることで、算出する。 ①は原単位を作成し、活動量を掛け合わせて算出でき るようにする。②は既存の計算方法 2)で算出を行う。 ①の汚水量ベースの原単位は、横浜市下水道システム の水使用量を横浜市下水道システムの汚水量で除して作 成した。①の水質汚濁物質ベースの原単位は流入した水 図 2 横浜市下水道システムでの水使用量(㎥) 質汚濁物質に横浜市下水道システムの水使用量を富栄養 試算結果は 11 か所平均で 3.7E+5(㎥)となった。 化値に応じて配分し横浜市下水道システムの水使用量を 中部・南部・西部の処理方法は通常処理、それ以外の 水質汚濁物質で除して作成した。 地区は高度処理となっており、高度処理の地区は相対的 表 1 は横浜市下水道システムの水使用量の算定方法で に高い水使用量となった。(図 2) ある。 - 382 - 第 7 回日本LCA学会研究発表会講演要旨集(2012 年3月) また、11 か所全ての下水道システムで、下水処理場段 3.4 横浜市における廃棄段階の使用量 3.3.1 で作成した原単位・計算方法と横浜市に流入した 階が最大となった。下水処理場段階での内訳は、電力の 汚水量 5)を用いて、横浜市における 1 ㎥の汚水浄化に対す 負荷が 7 割を占めた。 1 ㎥の汚水を浄化するときに使う水の量(㎥/㎥)と 1 る水使用量を求めた。 全ての地区で水質汚濁物質の希釈水が 9 割を占めた。 ㎥の汚水を浄化するときに使う電力の量(kwh/㎥)の相関 関係をみたところ、 「y = 0.0183x + 0.0009 R² = 0.8725 」 下水道システムにおいて、水質汚濁物質を浄化する意義 の相関関係を得ることが出来た。 の大きさを確認することが出来た。また、廃棄段階の水 高度処理を使用した場合、電力量が多くなり、水使用 量が多くなると推測できる。 使用量が流入した汚水量の約 8%を占めていることが分 かり、既存の計算方法より大幅に水使用量が減尐する結 果となった。 3.2 結果の検証 横浜市の年間の結果を年間の使用金額で除して、金額 ベースの原単位を作成し、既存の原単位 4)と比較した。 表 2 は、水の種類別で比較した結果の一部である。比 較した全 8 種類とも、原単位に対しての割合が近似する 結果を得ることが出来た。 原単位の数値は、大きな差異を得た。要因の一つ目は、 評価対象地区の料金が横浜市と全国で異なるため、使用 金額が異なっていると考えられる。二つ目は、用いたデ 図 3 横浜市における 1 ㎥の汚水浄化に対する水使用量 ータが本研究は一次データであり、 WF 用原単位は産業連 関表であることが挙げられる。 4. おわりに 表 2 原単位の比較 本研究原単位(ℓ/円) WF 用原単位 4) 本研究では、下水処理を反映した廃棄段階の水使用量 原単位 利用水 消失水 0.0202 0.0195 0.0007 0.1192 0.1109 0.0092 を算定できる計算方法の作成を行った。 下水道システムの評価では汚水量に対して電力の量が、 結果に大きく寄与しているということが分かり、処理方 <下水道>(ℓ/円)※ 法が一つの原因と考える。また、横浜市の生活排水にお ※システム境界を揃えるため、運用段階のみとした。 ける水使用量を求めた結果、廃棄段階が全体の 8%を占め ていることが分かり、既存の計算方法より大幅に水使用 量が減尐する結果となった。 3.3 廃棄段階の水使用量の計算 しかし本研究では、建築・解体段階を含められていな 3.3.1 水量データを用いて廃棄段階の水使用量を求め る計算方法 い点や処理方法を詳細に分析できていない点が課題点だ ①(下水道システムの水使用量)+②(水質汚濁物質の希釈 と思われる。以後、これらを重点的に考慮することでよ 水)=廃棄段階の水使用量 り精度の高い結果を導くことができると考えられる。 ① :水量(L)×0.0054 (L/L) ② :水量(L)×流入下水の水質(mg/L)5)×(1-浄化率 6))÷環境 6) 水質基準(mg/L) 参考文献 1) 国際協力出版会:“国連開発計画(UNDP) 人間開発報 告書 2006-水危機神話を超えて:水資源をめぐる権 2) (②は、算出結果が最も大きい水質汚濁物質を適用する ) 力闘争と貧困、グローバルな課題-” 3.3.2 水質汚濁物質データを用いて廃棄段階の水使用 2) 平成21 年度水環境保全におけるフットプリント導入 検討業務報告書 財団法人地球環境センター(2011) 量を求める計算方法 ①(下水道システムの水使用量)+②(水質汚濁物質の希釈 3) 衣服と洗濯における LC-CO2 およびウォーターフッ トプリント 小沼ら(2011) 水)=廃棄段階の水使用量 4) ① : N の浄化:N(mg)の量×1.81E-3(L/mg) ウォーターフットプリントへの応用を指向した水イ ンベントリデータベースの開発 小野ら(2009) P の浄化:P(mg)の量×2.14E-2(L/mg) 5) COD の浄化:COD(mg)の量×1.41E-5(L/mg) 6) 理年報” ② :水質汚濁物質(mg)×(1-浄化率 )÷環境水質基準 6) 6) (mg/L) 横浜市環境創造局:平成 21 年度下水処理場等運転管 2) (②は、算出結果が最も大きい水質汚濁物質を適用する ) - 383 - 横浜市環境創造局:“下水道事業の環境レポート~環 境会計の視点から(平成 21 年度決算版)~”
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