静岡県における研修交流の現状と課題: 盲・聾・養護学校での研修交流を

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静岡県における研修交流の現状と課題 : 盲・聾・養護学
校での研修交流を終えた教員への意識調査を通して
大塚, 玲; 吉田, 恵理子
静岡大学教育実践総合センター紀要. 13, p. 185-200
2007-03-30
http://doi.org/10.14945/00002806
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静岡大学教育学部附属教育実践総合 セ ンター紀要
m13p.185∼ 200(2007)
論文)
〈
静岡県 にお ける研修交流の現状 と課題
一盲・聾・養護学校 での研修交流 を終 えた教員への意識調査を通 して 一
A Research on Exchange Teacher Programs in Shizuoka Prefecture :
Analysis Based on a Questionnaire for Exchange Teachers to Schools for the Disabled
吉田恵理子
*・
大塚 玲
**
Enko YOSHIDA and Akira OTSUKA
l.は じめに
2003(平 成 15)年 3月 に提 出 された 「今後 の特別支援教育の在 り方 につ いて
において、 これ までの 「特殊教育」か ら、通常 の学級 に在籍 す る LDOADHD・
(最 終報告)」
高機能 自閉
症等の児童生徒 も含 め、障害のある児童生徒 に対 してその一人一人の教育的ニーズを把握 し適
切 な教育的支援 を行 う 「特別支援教育」へ の転換 を図るとともに、その推進体制を整備す るこ
とが提言 された。 この提言を受 け、文部科学省 は平成 15年 度 よ り全都道府県教育委員会 に対 し
「特別支援教育推進体制 モデル事業」を委嘱 し、特別支援教育 の体制づ くりに向け積極的な取
り組みを開始 した。
こうした動 きに対 して、小 0中 学校 では、専 門的な知識や経験 も十分でない教員が障害 の あ
る児童生徒 に対応で きるのか とい う、 とまどいの声が聞かれ る。 これ まで障害 の ある児童生徒
との関わ りが薄かった小・ 中学校の通 常 の学級 (以 下、通常学級 と略す)の 担任が、特別支援
教育 とい う新 たな課題 に取 り組 んでい くことに、不安や抵抗があるのはご く当然 のことで あろ
う (大 塚,2005)。 しか し、特別支援教育の構想 を実現す るためには、今後 は小 。中学校 の教
員 であって も障害のある児童生徒 についての基本的な知識・ 理解、実践的指導力を身 につ ける
こ とが不可欠 となろ う。 また、小・ 中学校 において特別支援教育を推進する上で 中心的な役割
を果 たす特別支援教育 コーディネ ー ター にあっては、 さらに高 い専門性 を有することが期待 さ
れ る。そのためには、都道府県教育委員会等が開設する現職研修 の受講や特別支援学校教諭免
許状 の取得、小 0中 学校等 の教員養成 カ リキ ュラムにおける特別支援教育 に関する内容の充実
を促進す る (中 央教育審議会,2005)と いった ことが必要 とな ろう。
こうした方法 に加 えて、教員 の専門性 を担保す る方策 として注 目されてい るのが、小・ 中学
校等 と盲・ 聾・養護学校間での教員 の人事交流である。
静岡県教育委員会 では、県立盲・ 聾・養護学校 と公 立小・ 中・ 高等学校間で、 3年 間 とい う
期限を決めた人事交流 (以 下、研修交流 と記す)を 実施 してい る。毎年約70人 の小・ 中・ 高等
学校籍 の教員が盲・ 聾・養護学校 に異動 し、 3年 間 の研修交流期間を過 ごした後、各学校籍 へ
*静 岡県立藤枝養護学校
**静 岡大学教育学部
吉田恵理子・ 大塚 玲
と戻 って い く。 また、毎年約 10人 前後 の盲・ 聾・養護学校籍 の教員が研修交流で小・ 中・ 高等
学校 へ と異動 してい る。平成 16年 度末人事異動 では、小・ 中学校籍 の教員が67人 、高等学校籍
の教員が 6人 、合計73人 が盲・ 聾・養護学校 に異動 し、盲・聾・ 養護学校籍 の教員 は小・ 中学
校へ 9人 、高等学校 へ 2人 、合計 H人 異動 してい る。 この ように研修交流 は、小・ 中 0高 等学
校籍 の教員が盲・ 聾・ 養護学校 へ、そして盲・聾・ 養護学校籍 の教員が小・ 中・ 高等学校 へ と
い う双方 の異動 に よ り成 り立ってい る。小・ 中学校等 において特別支援教育 に関す る専 門性 を
有する人材 の確保 とい う点では、盲・ 聾・ 養護学校 へ異動する小・ 中・高等学校籍 の教員を研
.修
交流 中にいかに育成 し、研修交流終了後 にいかに活用す るかが鍵 となる。
平成 14年 度末人事異動 より県教育委員会養護教育課 では、研修交流教員が小・ 中・ 高等学校
に戻 った後、特別支援教育 コーディネー ター (以 下、 コーデイネー ター と略す)と して特別支
援教育 を推進す る役割 を果たす ことを期待 し、それ に適する優秀な人材を送 つてほしい 旨を市
町村教育長や関係機関 に依頼 して きた註1)。
平成 16年 度 か らは、小・ 中学校、高等学校 にお ける特別支援教育を推進する人材 を育成す る
ことを目的 として、県教育委員会主催 で研修交流教員 を対象 とした 「特別支援教育研修」 を実
施 して い る。 また、所属す る盲・ 聾 0養 護学校 において、交流期間の 3年 間を通 じて基礎研修
を計画、実施するように各学校長 に通知註1)し てぃ る。
この ように研修交流教員 は、静岡県 の特別支援教育 を推進す る上で重要な役割を果 たす こと
が期待 され る存在であ り、その育成 につ いて計画的な取 り組みがなされつつ ある。 しか し、研
修交流期間 を終 えた教員が小・ 中学校 に戻 つた後、 どのような形で研修交流 の経験 を活か して
い るのか、あるいは経験 が どの程度役 に立って い るのか は明 らか にされていない。 また、人事
交流教員 に対す る盲・ 聾・ 養護学校 にお ける研修 は、各学校 に任 されてお り、研修交流教員 の
ニーズに合致 した研修が実施 されてい るのかな どの評価 もなされていない。
そ こで本研究では、盲・ 聾・ 養護学校 での 3年 間の研修交流 を終えて小・ 中学校 に戻 つた教
員 を対象 にア ンケー ト調査 を実施 し、盲・ 聾・ 養護学校 での経験 が小・ 中学校 において どのよ
うに活用 されてい るのか、 その現状 を明 らか にする とともに、特別支援教育 に係 わる人材を育
成する上での人事交流教員 に対す る研修 の在 り方 につ いて検討す る。
‖.方 法
1.調 査対象
静岡県内の県立盲・聾・養護学校 での研修交流 を経験 し、平成 15年 度末 に公立小・ 中学校 へ
異動 した教員64人 (退 職者 1人 を除 く)、 及 び平成 16年 度末 に小・ 中学校 へ異動 した教員63人 、
合計 127人 に対 して質 問紙 を送付 した。
2.調 査期間
2005年 8月 中旬∼ 9月 上旬であつた。
3.調 査内容
質問紙は、①研修交流経験教員の状況、②盲・聾・養護学校での3年 間の経験、③現在の学
校での特別支援教育推進に対する取り組み、④研修交流先での研修内容の4項 目で構成 した。
なお、③現在の学校での特別支援教育推進に対する取り組みについてはヽ2004年 に文部科学
静岡県 にお ける研修交流の現状 と課題
Table l 回答者 の内訳
平成 1.5年 度末異動教員
元所属校
小学校
聾学校
知的障害養護学校
3
19
肢体不 自由養護学校
5
病弱養護学校
2
合
計
31
計
平成 16年 度末異動教員
小学校
中学校
計
2
0
1
1
4
2
1
3
33
19
12
31
10
10
3
13
1
0
1
32
17
4
合計
3 7 4 3 5
6 2
2
1 4 5 2
盲学校
中学校
(人 数 )
102
省 よ り公表 された 「小・ 中学校 にお ける LD(学 習障害),ADHD(注 意欠陥/多 動性障害),
高機能 自閉症 の児童生徒 へ の教育支援体制の整備 のためのガイ ドライ ン (試 案)」 を参考 に、
コーデイネ ー ター、養護学級及び通級指導教室担当、通常学級担任 ごとに質問項 目を作成 した。
4.回 収状況
平成 15年 度末異動教員53人 (回 収率82.8%)、 平成 16年 度末異動教員49人 (回 収率77.8%)、
計 102人 (回 収率80.3%)よ り回答 を得た。回答者 102人 の内訳 は、Tablё lの 通 りである。
Ⅲ.結 果 と考察
1.研修交流経験教員の状況
(1)教 職経験
研修交流で小・ 中学校 か ら盲・ 聾・ 養護学校 へ異動するまでの教職経験年数 は、 3∼ 29年 と
大 きな幅があ り、平均年数は13。 0年 であった。Table 2に 示す よ うに、経験年数の分布 は、 10
∼ 14年 力Ml.8%と もっ とも多 く、約 7割 が経験 10∼ 19年 の教員であった。 1999年 に教育職員養
成審議会 によって取 りまとめ られた 「養成 と採用・ 研修 との連携の円滑化につ いて (第 3次 答
申)」 では、経験年数 10年 ∼20年 にある教員 を中堅教員 の段階 と位置付け、「特 に、学級・学年
経営、教科指導、生徒指導等 の在 り方 に関 して、 よ り広 い視野 に立った力量 の向上が必要であ
る。 また、学校運営上重要な役割を担 い、若手教員へ の助言・援助な ど指導的役割が期待 され
るこ とか ら、 よ リー層職務 に関す る専門的知識や幅広 い教養 を身 に付けるこ とが必要」 と述 べ
て い る。 中堅段階 にある教員が、盲・ 聾・ 養護学校 へ の異動 によ り、 よ り広 い視野 に立った力
量 を向上 させた り、障害のある児童生徒 の指導 に関する専門的知識を身に付けた りするこ とは、
ライフステージに応 じた資質能力 とい う観点か ら意義のあることだ と思われ る。
(2)研 修交流以前 に盲 0聾 ・養護学校 に行 った経験 の有無
研修 交流 以前 に盲・ 聾・ 養護 学 校 に行 った 経験 が 「なか った」 と回答 した教 員 は32人
(31.4%)、 「あ った」 と回答 した教 員 は70人 (68.6%)で あ った。「あ った」教員 に対 して、
「どのよ うな機会 に行 ったのか」 を尋ねた ところ、「初任者研修や 10年 研修 」 (26人 )、 「交流教
育や総合的な学習の時間等、児童生徒 を引率 しての訪間」 (17人 )、 「研究会や講演会」 (13人 )、
「養護学級担任時の研修 」 (11人 )等 があげられ た。 この ように、約 7割 の教員は、教 育委員
会が主催する研修 の一環 として、あるいは交流教育・福祉教育推進の流れの中で、盲・ 聾・ 養
吉田恵理子・ 大塚 玲
Table 2 教職経験年数 の分布 (N=98)
経験年数 (年 )
人数 (%)
0∼
4
6(6.1)
10 ^v 14
15 ^v 19
20 - 24
5∼ 9
14(14.3)41(41.8)31(31.6) 5(5。 1)
Table 3 盲・ 聾 0養 護学校免許所有者数
1(1.0)
(研 修交流経験教員 と小・ 中学校教員 の比較)
静岡県公立小・ 中学校教員
研修交流経験教員
免許所有者数
25 - 29
所有率
(%)
盲学校免許
100.0
聾学校免許
71。
養護学校免許
免許所有者数 *I 所有率 (%)
21
0:15
4
35
0。
31.5
590
24
4.12
*1:平成 16年 現在 の延べ人数
護学校 を訪間 した経験 を持っていた。 しか し、約 3割 の教員 は、研修交流 で盲・ 聾・ 養護学校
に赴任 し、初めて盲・ 聾・養護学校 の教育現場 を知 るとい う状況 であった。
本調査 では、研修交流希望の理由や障害児教育経験 の有無を問 う項 目を用意 していなかった
ため、それ らの ことについて明確 にす ることはできないが、盲・ 聾・ 養護学校 につ いての予備
知識 を持たず に研修交流を希望す る教員が少なか らず存在することが示唆された。
(3)所 有 してい る教員免許状
Table 3に 、研修交流経験教員 にお ける元所属校種 の免許所有者数 を示 した。盲学校経験
者 の盲学校教員免許所有率 は100%、 聾学校経験者 の聾学校教員免許所有率 は71.4%、 養護学
校経験者 の養護学校教員免許所有率 は31.5%で あ り、養護学校経験者 の所有率が低 かつた。 こ
れは、養護学校免許状取得 のための認定講習 を希望 して も人数制限のため受講 できない場合 が
あ り、盲・ 聾学校免許 に比べ、養護学校免許 を取得 しに くい状況 が影響 してい ると思われ る。
ところで、「静岡県 にお ける今後 の特別支援教育 の在 り方 につ いて 一共生・ 共育を目指 して
一」 に よると、静岡県 の公立小・ 中学校教員 にお ける盲学校教員免許所有率 は0.15%、 聾学校
教員免許所有率 は0.24%、 養護学校教員免許所有率 は4.12%と いずれ も低 い状況 にあ り、 これ
に比べ ると研修交流経験教員の免許所有率 は非常 に高 い とい える。
2.盲・ 聾・ 養護学校での 3年 間の経験 に関 して
(1)教 員生活 にお ける研修交流 の意義
研修交流 での 3年 間 の教員生活 にお ける意義 に関 して、「大変有意義 だつた」 と回答 した教
員 が82人 (80.4%)、 「有意義 だ つた」が19人 (18.6%)、 「あ ま り有意義 で なか った」が 1人
「有意義 でなかつた」 と回答 した教員 はいなか つた。「大変有意義 だった」 と 「有意
(1。 0%)、
義 だつた」 を合わせ 、99。 0%の 教員が教員生活 にお ける意義 を感 じていた。
伊藤 (1992)が 公立小・ 中・養護学校教員 を対象に実施 した教員 の転任人事 に関す る調査で
は、転任 が 当該教員個 々人 の職務能力 の 向上 に 「プラスに影響 して い る」 と回答 した教員 は
50%で あ り、「マイナスに影響 してい る」 は 4%、 「判断 しかね る」 は45%で あった。 また、特
殊教育諸学校 へ の転任経験教員 の記述 では、「教員 の研修 として貴重な経験」 と肯定的 に とら
える教 員 と 「まった く不本意」 と否定す る教員 に三分 されていた。
静岡県 にお ける研修交流の現状 と課題
Table 4 教育 に対する考 え方の変化 の内訳
考 え方の変化の内容
(複 数回答可)
人数
(%)
一人一人の実態をつかみ理解す るこ との大切 さ
49
50.5
一人一人に応 じた手立てを工夫す る こ との大切 さ
障害児者 への見方や接 し方
39
40。
16
16.5
長期的な視点を持つ こと
発達障害 への理解
11
11.3
11
11.3
わずかな成長をも見付 けること
10
10.3
8
8.2
長所 を活か し伸 ばす こと
2
保護者 との連携の大切 さ
5
5.2
教師の専 門性 と研修 の大切 さ
3
3.1
静岡県 の研修交流制度 においては、非常 に高 い割合で教員が その経験 を肯定的 に とらえてお
り、教員の希望 を尊重 した転任人事が行われて い る こ とがその要因 として推測 された。
(2)教 育 に対す る考 え方の変化
3年 間 の盲・ 聾・ 養護学校での経験 を通 して、教育 に対する考え方が変化 したか どうかにつ
いて尋ねた ところ、 100人 (98。 0%)の 教員が、「変化 した」 と回答 した。
その変化 の具体的な内容 について、97人 よ り得た回答 をカテ ゴ リー別 に分類 した (Table
「一人一人の実態をつかみ理解す ることの大切 さ」49人
二
(50.5%)、 「一人 人に応 じた手
4)。
立てを工夫する ことの大切 さ」39人 (40.2%)に おいて 自身 の考 え方が変化 した と回答 した教
員 が多 かった。次 いで、「障害児者 へ の見方や接 し方」 16人 (16.5%)、 「長期的な視点 を持 つ
こと」 H人 (H.3%)、 「発達障害への理解」 H人 (H.3%)等 があげられた。
山崎 (2003)は 、教員のライ フコース研究 において、「様 々 な問題 を抱えた子供 との出会 い
が教員 に転機 を生み出す」 ことを指摘 し、「障害児教育の世界 に関わる中で、子供 一人 一人 を
見 ること、子供一人一人 の成長 を把握す るこ との本当の意味を問 い直 し、それまで の子供観、
教育観 に変化が もた らされた」事例 をあげて い る。 また、徳永 (2005)は 、「子供 の障害や発
達の状態に応 じて、内容や方法を工夫す る こ とが特別支援教育の核 となる。そのために、『一
人一人 に応 じて』が基本的な方針 となる」 と述べ てい る。
盲・ 聾・ 養護学校での 3年 間の研修交流 を経験することは、教員 としての力量を形成 してい
く上での質 的な変換 をもた らす とともに、「今後 の特別支援教育の在 り方 につ いて (最 終報
告)」 にあげ られて い る 「一人一人 の教育的ニー ズを把握 し、適切な教育や指導 を通 じて必要
な支援 を行 う」 とい う特別支援教育の理念 その ものを習得する上で有効であることが明 らか に
なった。
,
(3)研 修交流 を通 して学 んだ こ と
研修交流 を通 して学 んだ こ とについて、複数選択可 として回答 を得た (Table 5)。 回答率
が高かったのは、「児童生徒一人一人の特性 に応 じた指導」91人 (89。 2%)、 「障害特性や病理」
84人 (82.4%)、 「児童生徒 の実態把握 の方法」76人 (74.5%)、 「教材・ 教具の工 夫の仕方」72
人 (70.6%)で あった。一 方、「保護者 との接 し方」 は41人 (40.2%)、 「地域や他 機関 との連
吉田恵理子 。大塚 玲
Table 5 研修交流 を通 して学んだ こと
(複 数回答可)
・ 合計
・
盲
聾
学
校曇
霧
曇
八ξ
墨
5属
人数
人数
(%)
人数
(%)
0
0
0
8
0
0
9
8
0
8
0
2
0
2
0
2
0
2
0
0
0
2
2
その他
8
保護者 との接 し方
地域や他機関 との連携 の仕方
9
障害特性や病理
教材・ 教具 の工夫 の仕方
0
5
5
実態把握 の方法
特性 に応 じた指導
(%)
人数
(%)
82.8
18
64。 3
76
74.5
59
92.2
23
82.1
91
89.2
55
85.9
21
75。 0
84
82.4
45
70.3
19
67.9
72
70.6
26
40.6
13
46.4
41
40.2
16
25.0
14
50。 0
32
31.4
5
7.8
4
14。 3
11
10.8
53
携 の仕方」 は32人 (31.4%)と 少 なかった。
元所属校別 に比較 をすると、「児童生徒 一人一人 の特性 に応 じた指導」や 「障害特性や病理」
「教材・ 教具 の工夫 の仕方」 に関 して は、学校間での有意 な差 は得 られなかつたため、 これ ら
は、盲・ 聾・養護学校 で共通 に向上す る職能分野 と推察 された。一方、「実態把握 の方法」 に
2(2)=
ついて学 んだ との回答 は、盲・聾学校 に比べ知的障害養護学校 が有意 に多かつた (χ
7.02Q p<。 05)。 知的障害養護学校 においては、児童生徒 の障害 の程度 が分 か りに くく知能検
査や 日々の行動観察を要す ること、 これ ら実態把握 の方法 は小・ 中学校 へ戻 つた後 も活用 で き
る ことによ り、有意 な差が生 じた と考 えられ る。 また、「地域や他機関 との連携 の仕方」 に関
2(2)
しては、盲・聾学校 や知的障害養護学校 に比べ肢体・ 病弱養護学校 が有意 に多かつた (χ
=6.320,p<.05)。 肢体・病弱養護学校 は、隣接す る医療機関や転入・転出先 である小・ 中学
校 との連携 を必要 とされ ることが理 由 として考 えられた。
この ように、研修交流で学 ぶ ことがで きる内容 は学校間で違 いがあるため、盲・ 聾・養護学
校 での研修 を計画す る際 には、研修交流教員が 自らの研修課題 を明 らか にしてお くと同時 に、
生徒 の状況や学校 の特徴 について十分 に把握 してお く必要がある。
3.現 在の学校での特別支援教育推進 に対する取 り組み
(1)現 在 の学校 での役割
研修交流経験教員が、小 。中学校 で どのような役割 を担 つてい るのかをTable 6に 示 した。
102人 の うち、38人 (37.3%)が コー デイネ ー ター に指名 され、 コー ディネ ー ター を指名 して
い る学校 (76校 )に おいては50。 0%の 割合 でその役割を担 つて いた。 また、33人 (32.4%)が
養護学級 の担任 であ り、養護学級設置校 (66校 )に おける割合 は50。 0%、 2人 (2.0%)が 通
級指導教室 の担当であ り、設置校 (7校 )に おける割合 は28.6%で あった。 コーデイネー ター
38人 に関 しては、 12人 (31.6%)が 養護学級担任、21人 (55。 3%)が 通常学級担任 との兼任 で
あった。 この ように、研修交流経験教員 の約 6割 が、養護学級担任 または通級指導教室担当
(以 下、養護学級・ 通級担当 と略す)や コーデイネー ター等、特別支援教育 の推進 を期待 され
る役割 を担つてい ることが明 らか となった。
また、平成 15年 度末異動教員53人 の うち、平成 16年 度 に コーディネー ター に指名 されたのは
静岡県 にお ける研修交流の現状 と課題
Table 6 現在 の学校での役割
コーディネーター 養護学級担任 巳級指導教室担当 通常学級担任
2(2.0)
38/76 (50。 0)
33/66(50.0)
2/7(28.6)
コーディネー ター との兼任・ 非兼任
数
級外
59(57.8)
兼任
非兼任
兼任
非兼任
兼任
非兼任
12
21
0
2
21
38
8(7.8)
雑5
設置校 に占める割合 (%)
人
33(32.4)
38(37.3)
平成 17年 度人数 (%)
非兼任
3
7人 であったが、平成 17年 度 は22人 であ り、 3倍 以上 に増 えて いた。平成 17年 度 か らコーディ
ネー ターの指名 を始めた学校 が多 く、現在 も各学校 において コーディネー ターの指名を含めた
支援体制の構築 が進 められてい る。 また、「特別支援教育を推進す るための制度 の在 り方 につ
いて (答 申)」 で提唱 されて い るよ うな特別支援教室の構想 の実現 に向けて、研修交流経験教
員 は小・ 中学校 において特別支援教育推進の中心的な役割を果たす ことへの期待が、
、今後 ます
ます増大 してい くもの と考えられ る。
(2)研 修交流経験 を活か した理解・ 啓発
研修交流で学んだ こ とを 「誰 に伝えてい るか」 とい う質問 に対 して、96人 よ り回答を得 た。
「同僚」が92人 (95.8%)と もっ とも多 く、次 いで 「児童生徒 69人
」
(71.9%)、 「保護者」39
「
「
人 (40.6%)、 管理職」32人 (33.3%)で あった。 また、 どの よ うな場面で伝 えて い るか」
とい う質問 に対 しては、「同僚 との会話 の 中」が87人 (90.6%)と もっ とも多 く、次 いで 「授
業」69人 (71.9%)、 「保護者懇談会」29人 (30.2%)、 「校内研修会」26人 (27.1%)で あった。
担任別 に比較 す る と、養護学級・ 通級担 当 は、「保護者」 (57.6%)や 「管理職」 (45.5%)
に対 して、「保護者懇談会」 (45.5%)や 「校 内研修会」 (36.4%)の 中で伝 える割合が 多 く、
通常学級担任 は、「児童生徒」 (78.6%)に 対 して、「授業」 (78.6%)の 中で伝 える割合 が 多
かった (Fig.1)。 コーディネー ター とコーディネ ー ターでない教員 (以 下、非 コーディネー
ター と略す)と を比較す ると、 コーディネー ター は、伝 える相手 としては 「管理職」 (45.7%)
の割合が、場面では 「校 内研修会」 (40.0%)の 割合が多かった (Fig.2)。
この ように、研修交流経験教員 は、異動先の小・ 中学校 での役割 に応 じて、盲・ 聾・養護学
校 で得 た知識や経験 に関す る理解・ 啓発 を図って い る状況が示 された。
(3)盲 ・ 聾・養護学校で の経験 の有効性
「盲・ 聾・養護学校での経験が、現在 の仕事 にどの程度役立 ってい るのか について 「 い
」
、 大
に役 立っている」「役 立ってい る」「あま り役 立 っていない」「役立 っていない」 の 4段 階で評
価 した。
1)コ ーディネー ター
コーディネ ー ターの役割 としての 6項 目に関 して、37人 よ り回答 を得 た。「大 い に」 または
「役立ってい る」 との回答 は、「校 内委員会の推進」 (83.7%)、 「担任教師への助言」
(83.7%)、
「校 内研修会の立案」 (83.7%)に 関 して多 く、「巡回相談や専門家 チー ム との連携
」 (62.1%)
に関 しては少なかった (Fig。 3)。 盲 0聾 0養 護学校で は、医療機 関や福祉 との連携 を図 るこ
とはあるが、巡 回相談 を活用す る機会 はないため、地域の巡回相談 とどのよ うに連携 し、活用
してい くかが分 か らないためだ と思われた。
吉田恵理子・ 大塚
玲
2)養 護学級・ 通級担当
養護学級担任及 び通級指導教室担当の役割 としての 8項 目に関 して、養護学級担任33人 、及
び通級指導教室担当 2人 、計35人 よ り回答 を得た。「学級 の学習計画 の立案」 (94.3%)、 「個別
の指導計画や支援計画 の作成」 (100%)、 「学級 の児童生徒 への支援」 (100%)、 「保護者 との連
携」 (91.4%)に 関 して、90%以 上 の教員 が 「大 いに」 また は 「役 立 って い る」 と回答 した
特 に、「個別 の指導計画や支援計画 の作成」 と「学級 の児童生徒 へ の支援」 に関
して は、「大 いに役 立ってい る」 との回答 がそれぞれ68.6%、 77.1%と 多かった。養護学級や通
級指導教室 に在籍す る児童生徒一人一人 の指導計画 を作成 し支援 を行 う上で、盲・ 聾・ 養護学
4)。
(Fig。
〈
学 んだ ことを誰 に伝 えて い るか〉
さ
〆 がどぎが
Fig。
1
仄
Fig。
2
が
抒
理解・ 啓発 (担 任別比較 )
(学 んだ こ とを誰 に伝 えて い るか〉
さが
(ど の よ うな場 面 で伝 えて い るか〉
♂ぎ が
〈どの よ うな場面 で伝 えてい るか〉
匁
彫
当
屏
当
⑮ 抒
理解 ・ 啓発 (コ ー デ イネ ー ター・ 非 コー デ イネ ー ター別比較 )
静岡県 にお ける研修交流の現状 と課題
校 内 委 員 会 の 推 進
保 護 者 :こ 対 す る 相 談
担 任 教 師 へ の 助 言
涎≦匡ヨオロ毒炎六→導早Fヨ 豪露うF――ノ
=2=σ
布ヨ月1● D引 旨琴妻言十口雪六→ヨ
=書
D美 塾壺害
震言十口雪dDイ ト月た
校 内 研 修 会 の 立 案
Fig。
3
経験 の活用
(コ
ーディネー ター)
学級の学習計画の立案
個別の指導計画や支援計画の作成
学級の児童生徒への支援
保 護 者 との 連 携
校 内の資源 の活用
学 校 外 との 連 携 した 支 援
通常学級 の軽度発達障害児への支援
担任教師への助言
Fig.4
経験 の活用 (養 護学級・ 通級担当)
80%
児 童 生 徒 の サ イン ヘ の 気 付 き
個 別 の 指 導 計 画 や支 援 計 画 の 作 成
学級 の児童 生徒へ の支援
保 護 者 との 連 携
校 内の 資源の 活 用
学 校 外 との 連 携 した 支 援
軽度発達 障害児への支援
担 任 教 師 へ の助 言
Fig.5
経験 の活用 (通 常通級担任 )
100%
吉田恵理子・ 大塚
玲
「
校 で の 経 験 は、非 常 に有効 で あ る こ とが 明 らか とな った。一 方、 校 内 の 資 源 の 活用」
「
「
(65。 7%)に 関 して、 大 いに」 また は 役 立って い る」 との回答 が少なかった。
3)通 常学級担任
「
通常学級担任 の役割 としての 8項 目に関 して、通常学級担任59人 より回答 を得 た。 学級 の
「
児童生徒 へ の支援」 (89。 8%)や 「軽度発達障害 児へ の支援」 (88.1%)、 担任教師へ の助言」
「
(84.7%)に 関 して 「大 いに」 また は 「役 立 って い る」 との回答 が多 かったが、 個別 の指導
「
計画や支援計画 の作成」 (45。 8%)、 「校 内 の資源 の活用」 (57.6%)、 学校外 との連携 した支
援」 (66.1%)に 関 して少なかつた (Fig.5)。
「
また、 コーデイネ ー ターが指名 されて いない学校 では、「担任教師へ の助言」 において 大
いに」 また は 「役 立 って い る」 (94。 4%)と 回答 した割合 が 高 く、研修交流経験教員 が コー
ディネー ター的な役割 を担って い ると考 えられた。
小学校 と中学校 との比較 では、「学校外 との連携 した支援」以外 のすべ ての項 目で、小学校
の方 が 「大 いに」 または 「役立ってい る」 と回答 した教員 の割合 が多かつた。教科担任制 の中
学校 に比べ、小学校 では学級の児童 と接す る時間が長 く、サイ ンヘの気付 きや具体的な支援 の
面 で盲・ 聾・ 養護学校 での経験 を活か しやすいた め と思われ た。
4)養 護学級・ 通級担当 と通常学級担任間の比較 .
養護学級・ 通級担当 と通常学級担任 への質問の うち、同 じ内容 の項 目について比較を行 つた。
2(1)=28。 780,p<.01)、 「学校
有意差が示 された のは 「個別 の指導計画や支援計画 の作成」 (χ
2(1)=5.833,p<.05)、 「保護者 との連携 」 (χ 2(1)=5。 374,p<.05)
外 との連携 した支援」 (χ
であ り、養護学級・通級担当の方が 「大 いに」 また は 「役立って い る」 との回答が多かつた。
特 に 「個別 の指導計画や支援計画 の作成」 につ いては差が顕著であつた。
盲・ 聾・ 養護学校 の個別 の指導計画や支援計画 は、少人数指導 の時間 を確保 できることを前
提 として作成 され、教科領域毎 に詳細な立案・ 評価 がなされ るため、養護学級や通級指導教室
では十分 に活用 で きるが、通常学級 での活用 は難 しい と考 えられた。
「学校外 との連携 した支援」 は保護者 の承諾 の もとに行われ る ことが多 いため、通常学級 で
「
は得 に くいことが考 えられた。一方、養護学級・ 通級担当 は、後述す る 工夫や配慮」 におい
てく元所属校 への相談等、盲・ 聾・ 養護学校 と連携 した支援 を行 つてい る状況が示 された。
「保護者 との連携」 については、盲・ 聾・養護学校 や養護学級、通級指導教室 と違 い、通常
学級 においては保護者 が子供 の状態 を理解 し障害を受容することが困難であるため と考 え られ
た。
(4)研 修交流 の経験 を活か した工夫や配慮
「研修交流 の経験 を活か し、仕事 を進める上 で工夫や配慮を して い ることはあるか」 とい う
質問 に対 して、 コーデイネ ー ター24人 (64.9%)、 養護学級・ 通級担当34人 (97.1%)、 通 常学
級担任46人 (78.0%)が 「ある」 と回答 した。
その工夫や配慮 の具体的な内容 をカテ ゴ リー別 に分類 した (Table 7)。
養護学級・ 通級担当 は、学習や個 別 の指導計画、支援 内容 にお いて、盲・ 聾・養護学校 で
行 つてきた ことを参考 に、現在 の学校 や担当す る児童生徒 の実態 に合 わせて改善 してい ること
があげられた。
「授業 の流れ を明確 に提示」「指示 はで きるだけ短 く、分 か りやす く」「板書
通常学級担任 は、
は、文字 の大 きさや色 を工夫 し見 やす く」等、すべ ての児童生徒 が分 か る授業 を目指す上 で
静岡県 にお ける研修交流の現状 と課題
Table 7 工夫や配慮 に関す る具体的な内容
内容 の領域
校 内委員会の推進
人数
%
(複 数回答可)
具体例
・ 心理検査や教育相談 を養護学校 へ依頼。
コーデ ィネ ー タ ー
10
41。
7
個別 の指導計画 の作成
6
25。
0
担任教師へ の助言
4
16.7
・ まず、 自分 の クラスの生徒 をモ デルに個別 の計
画 を作 り、教員へ の意識の向上 を図 る。
・ 目か らの情報 とな る物 の重要性等、担任 に支援
校内研修会
4
16.7
の方法 を助言。
・ 養護学校 と連絡 を取 って情報や資料 を交換 し、
・ 情報 を共有化 し、チームで対応。
校 内の教員へ の理解 を広 げる。
`
・ 障害 について、具体例 をあげて説明。
保護者 との連携
・ 診断す るのはあ くまで医師である とい う意識 を
3
12.5
児童生徒 へ の支援
20
58.8
保護者 との連携
10
29。
学習計画 の立案
9
26.5
先の見通 しを持 つて今の目標 を設定。
・養護学校 での具体 的な指導方法 (特 に国語・ 算
個別 の指導計画 の作成
2
5。
9
数)を 活用。
・養護学校 の ものを参考 に し、他 の担任 と共 同で
学校外 との連携
1
2.9
新 しく作成。
・ 困 つた ことや分か らない ことは養護学校 の元 同
16
34.8
持ち、保護者 と話。
養護学級 ・通級担当
0自 閉児 に対す る手立てや教材の工夫。
・ 見通 しが持 て、分かる授業。
授業 の工夫
4
・保護者面談で保護者 の考 えを把握 し、卒業後等、
僚 に相談。
・ 指示はできるだけ短 く、分か りやす く。
・ 授業 の流れを明確 に提示 してか ら行 う。
通常 学級 担 任
軽度発達障害児へ の支援
12
26.1
・ 板書 は、文字の大 きさや色 を工夫 し見やす く。
・ その子 に合 った 目標 を立て、スモ ール ス テ ップ
サイ ンヘの気付 き
10
21.7
で評価。
・ 朝 と帰 りの会で、子供 の表情 を一 人 一人見 て変
理解 0啓 発
8
17.4
化 を把握。
・ 養護学校 の子供 の様子や障害 についての話 を し
保護者 との連携
5
10.9
て理解 を図 る。
・保護者 との連携 を密 に し、課題 を共通理解 し長
校内の資源 の活用
1
2.2
所 を伸ばす ように心が けてい る。
・就学指導の対象 なのか、生徒指導上の問題 なの
かを見極 め、それぞれの担 当 と連携。
盲・ 聾・養護学校 での経験 を活 か して いた。そ して、「その子 に合 った 目標設定」、「サイ ンヘ
の気付 き」等、軽度発達障害児 を含 めた個 々の児童生徒 へ の配慮 において も経験 が活 かされて
いた。
また、 コーディネ ー ターや養護学級 0通 級担当 においては、「′
b理 検査や教育相談の依頼」
「校内研修会 に向けて資料や情報 を交換」「児童生徒 の指導 に関す る相
談」等 の記述 よ り、転
任後 も元所属校 と連携 を図 つてい る様子が明 らか となった。
吉田恵理子・ 大塚 玲
Table 8 仕事を進 める上での課題
内容 の領域
理解・ 啓発
コー デ ィ ネ ー タ ー
兼務 による時間的余裕
自らの専門性
人数
%
具体例
ll
33.3
・ 教員、保護者、児童 に、特別支援教育 を進 め る
10
30.3
7
21.2
校内支援体制作 り
5
15。 2
保護者 の理解
4
12.1
理解・啓発
3
保護者 の理解
時間的余裕
校内支援体制作 り
3 3
通常学級へ の支援
自らの専門性
3
3 2 4
養護学級 ・通級担当
管理職 の姿勢
担当す る学級 の指導
(複 数回答可)
9.1
40.6
を判断す るのが難 しい。
・ 全職員で、一人 一 人 の生徒 を支援 して い く体制
をどう作 つて い くか。
・ 該当児 が他機関 にかか つていな いため、保護者
の理解が得 に くい。
・ 管理職 があま り積極的でない。
・ 8人 の学級 を一 人で担当。個 へ の対応が難 しい。
・ 1対 1の ため適切 な集団が作れない。
37.5
・ 通常学級担任や 生徒 と、物 理的にも精神的 に も
12.5
距離がある。
・ 通常学級 で気になる子がいて も、言 いに くい。
・ 担任 一人で計画・ 実行・ 評価 して い るため、助
9.4
9.4
9。
18
方向を示 し、理解 と協力を得 ること。
・ 学級担任兼任 のため、他 の仕事量 が 多 く、 コー
ディネー トして い く時間的な余裕 が無 い。
・ どの子 を どの程度、 どの ように支援 して い くか
4
34.0
通常 学 級 担 任
理解・ 啓発
15
28.3
時間的な余裕
11
20.8
保護者 の理解
6
11.3
自らの専門性
3
5。
7
他機関 との連携
3
5。
7
言等がほ しい。
・ 学力のみを重視する保護者 が多 い。
・他 の業務 (分 掌等)が 多忙 で、余裕がない。
・ パニ ックを起 こした時、担任 一 人で は対応が困
難。
・ チームで取 り組 めるような校内支援体制 が必要。
・特別支援教育 に対する教員 の共通理解 が必要。
・ 周 りの児童や その保護者 の理解 を図 ること。
・他 クラスの担任 に相談 されて も、 自分 の クラス
の授業で手一杯 で、実態 を見 に行 く時間が無 い。
・ 特別支援教育 を受 けるように保護者 に啓蒙 して
てい くことが困難。
・ 特別支援教育 の対象 となる生徒 なのかを判断す
るのが難 しい。
・ 医療機関 とのつ なが りが希薄 で、情報 が学校 ま
で伝わ らない。
(5)仕 事 を進める上での課題
「現在 の仕事 を進める上で、課題 だ と感 じる事柄 はあるが」 とい う質問 に対 して、 コーデイ
ネ ー ター33人 (86.8%)、 養護学級・ 通級担 当32人 (91.4%)、 通常学級担任53人 (89.8%)が
「ある」 と回答 した。
その課題 の具体的 な内容をカテ ゴ リー別 に分類 した (Table 8)。
コーディネ ー ター は、「理解・啓発」や 「兼務 による時間的 な余裕」 に関 して、養護学級・
「
通級担当 は、「担当す る学級 の指導」や 「理解・ 啓発」 に関 して、通常学級担任 は、 校内支援
体制作 り」や 「理解・啓発」 に関 して、約 1/3の 教員が課題 を感 じていた。
静岡県 にお ける研修交流の現状 と課題
また、 コーディネ ー ターの21.2%、 養護学級・ 通級担当の9。 4%、 通常学級担任 の5。 7%が 、
「判断が難 しい、助言が ほしい」 とい うように、「自らの専門性」 に課題 を感 じていた。特 に、
特別支援教育 の対象 となる児童生徒か どうかを判断す る点において、 3年 間 の盲 e聾 .養 護学
校 の経験だけで は不充分であ り、力量不足 を感 じてい る教員 の存在 が明 らか となった。
‐方、横尾 ら (2005)が 全国小 0中 学校 の特別支援教育 コーディネー ター を対象 に行 った調
査 に よると、取 り組みの中で もっ とも課題 に感 じて い るこ とは、「兼任 に よる多忙」 (59.6%)、
「専門性 を身 に付 ける時間的な余裕 の無 さ」 (59.6%)で あ り、「他の教員 の理解・協力を得 る
こ と」 (5.9%)は 非常 に少なかった。 そのため、全 国調査 と比較 し、 より多 くの研修交流経験
教員が、それぞれが所属する小 中学校 の中で、特別支援教育 に関する理解 0啓 発 を図る上で
の困難を感 じてい る現状 が示唆 された。
0°
4.研 修交流先での研修 内容
「小・ 中学校 に戻 りそれぞれ の学校 で特別支援教育を推進するために ・ ・
、
盲 聾 養護学校で は
どのよ うな研修 を行 う必要があるか」 とい う質 問 に対 して、 もっとも多かったのは 「軽度発達
障害 の理解 と指導法」 (28回 答)で あ り、以下 「日々の実践 の充実」 (23回 答)、 「実態把握の方
法」 (21回 答)、 「様 々 な障害特性」 (17回 答)、 「特別支援教育の概要」 (15回 答)、 「他機関 との
連携」 (15回 答)、 「他 の学校 の見学」 (11回 答)、 「認定講習」 (3回 答)が あげられた (Fig。 6)。
研修交流経験教 員 の約 1/4は 、盲・ 聾・ 養護学校 での 日々の実践 を充 実 させ ることが、
・
小 中学校での特別支援教育を推進す る上で重要 だ ととらえていた。そ して、それだけでは不
充分であ り、在籍する児童生徒が少な く指導 の機会 が限 られて い る 「軽度発達障害児に対す る
指導法」 について も、研修交流期間中に学 んでお くべ きだ と考えていた。
「実態把握の方法」 に関 して も、盲・ 聾・ 養護学校 の障害種や実際に指 して い
導
る児童生徒
の障害 の状態 によ り、 日々の指導 の中で研修で きる内容 は限定 されてし る。特に、WISC等
の知能検査 を用 いた実態把握 は、小 0中 学校 では、児童生徒の特性をつかみ支援 の方法を探 る
,ゝ
(回 答 数
)30
25
20
15
10
♂
Fig.6
盲・ 聾・養護学校 において必要な研修
吉田恵理子・ 大塚
玲
上で重要な内容であるが、盲・聾・ 養護学校 では、研修や実施 の機会 が少ない と思われ る。
「他機関 との連携 」 に関 して は、盲・ 聾 0養 護学校 で学 んだ と回答 した教員 は少な く、特 に
巡回相談 の活用 の仕方や どの機関 とどのように連携を図 るかを把握できていない状況が本調査
を通 して示 されてい る。
.
また、盲・ 聾・養護学校 で用 いてい る個別の指導計画や教育支援計画 は、養護学級や通級指
導教室では活用 できるが、通常学級 においては活用 が難 しいこ とも示 されてい る。
このよ うに、盲・ 聾・ 養護学校 での実践経験 を通 して習得 され る内容 と、小・ 中学校 におい
て特別支援教育 を推進す る上で必要 とされ る専 門的知識 や スキルにはずれがあ り、研修交流教
員のニーズに合致 した研修 が実施 されてい るとは言 い難 い現状が示唆 された。吉利 ら (2005)
は、全国知的養護学校 を対象 とした 「センター的機能」 の実施状況調査 において、「LD児 等」
に関す る校内研修会を 3年 以内に開催 した ことが ない学校 が 7割 を占め、養護学校 は担当者 を
中心 に 「LD児 等」 に関す る専門性 を高 める段 階 にあることを指摘 してい る。そのため、軽度
発達障害 の指導法 をはじめ、地域 の特別支援教育 を推進す るための専門性 を高 めるように、
盲・ 聾・ 養護学校 の研修体制 を見直 してい くことは、研修交流教員 のみな らず盲・ 聾・ 養護学
校 のセ ンター的機能 の向上を図 るためにも重要 であるとい える。
また、研修交流教員が、認定講習等 を受講 し当該免許 を取得することは、体系化 された知識
を身 に付 けその専門性 を保証す る上で重要である。そのため、県教育委員会 においては希望す
る全員が受講 できるようにシステムを整備 して い くことが必要 であろう。
!V.ま とめ
本研究 では、静岡県 における研修交流 の意義や課題 を把握する ことによって、特別支援教育
推進 によ り寄与 しうる研修交流 の在 り方を検討す るために、それを経験 した教員への意識調査
を実施 した。その結果、盲・ 聾・ 養護学校 での 3年 間の経験 は、小・ 中学校 の教員 に教育観 の
変化 をもたらし、障害特性や特性 に応 じた指導方法を学 ぶ上で有効であること、養護学級や通
級指導教室 の業務 を遂行す る上で特 に活用 されてい ること、研修交流終了後 は、特別支援教育
推進 の中心的な役割 を担 い、 3年 間の経験 を活か した理解・ 啓発や所属 していた盲・ 聾・ 養護
学校 との連携 を図 つてい ることが明 らか となった。そのため、研修交流 は、特別支援教育 の理
念 を普及 させ、小・ 中学校 が特別支援教育体制 を構築 してい く上で意義 の ある制度であること
が示 唆 された。
しか し、研修交流 を希望す る教員 の課題意識、専門性 と研修 の在 り方、小・ 中学校 に戻 つた
後 の課題等、 い くつかの問題 が提起 された。そ こで、特別支援教育 を推進する人材 の育成 とい
う観点か ら、研修交流 の流れ に沿 つてその在 り方を検討 してい く。
①研修交流前 の小・ 中学校 において
この時期 は、研修交流 を希望する教員が、盲・ 聾・養護学校 での 3年 間 を有意義 にす るため
の準備段階である。 ここでは、研修交流 で何 を学びたいのか とい う課題意識 を明確 にしてお く
ことが重要で ある。そのためには、盲・聾・ 養護学校 に在籍 する児童生徒 の障害や教育課程 に
ついての概要 を理解 してお くことが必要であ り、実際 に盲・ 聾・養護学校 を訪問 し情報収集 し
てお くことが求 め られ る。 また、研修交流 の 目的 を周知させ るためには、教育委員会 において
事前 の説明会 を開催することも望 まれ る。
静岡県 にお ける研修交流の現状 と課題
②研修交流期間 において
研修交流教員 は、 その免許所有率 か ら、教員養成段階 において特殊教育を専攻 していた教員
は少ないこ とが予想 され る。埼玉県や神奈川県な ど、盲・ 聾・ 養護学校 の新担当教員を対象 と
した研修 を行って い る教 育委員会 もあるが、 そのような研修 が行われていない静岡県 において
は、盲・ 聾・養護学校で の 3年 間を見通 し、計画・ 実施するこ とが必要 である。そのため、1
年 目は特別支援教育の概要や障害理解、特性 に応 じた指導方法な ど幅広 い知識の習得 を主に し
た研修、 2年 目は実践 を通 した指導法 についての研修、 3年 目は小・ 中学校 に復帰 す ることを
前提 とした上で、地域の特別支援教育を推進す るための専門性向上 に関する研修 を、 自ら創意
工夫できるように支援す る体制の整備 が望 まれ る。
現在、徳 島県立 国府養護学校 (2003)で は、教員 に必要 とされ る専門性 を明 らかにし、教員
一人一人の専門性 を向上 させ る こ とを 目的 として、「専門性 マ トリックス」 を作成 して い る。
これによ り、養護学校の教員 として今必要 とされ る知識・ 技能 は何 かが明確 になるとともに、
チ ェ ックリス トとして個 々の教員が 自己評価 を行 うことも可能 となる。今後各盲・ 聾・養護学
校 において、 この よ うな リス トを作成 し、教員個 々のニーズ と専門性 に応 じた研修 を実施 して
い くことが望 まれ る。
③研修交流終了後 の小・ 中学校 において
研修交流 を経験 した教員が特別支援教育 の理解啓発 に対 して大 きな困難 を感 じてい る状況で
あるため、研修交流経験教員のネ ッ トワー クを作 ってい く必要がある。その際、盲・ 聾・養護
学校 が核 とな り、バ ックアップ と情報交換 を行 ってい くことは、盲・ 聾・養護学校 が地域 の特
別支援教育のセンター的機能 を向上 させ る上で も意義があると思われる。
これ ら①∼③ の研修体制 を確 立 して い くことが、特別支援教育推進 の中心 となる教員を育成
し、地域の小・ 中学校が独 自に支援体制 を構築 してい くための基盤 となってい くであろ う。
最後 に、小・ 中学校 の特別支援教育体制 の整備 に伴 い、研修交流 を希望する教員の課題意識
や研修 ニーズ も変化 してい くこ とが予想 され る。そのため、継続研究を通 して今後 も研修交流
の在 り方 について評価・ 改善 してい くことが望 まれ る。
註
1)こ の ことについては、平成 16年 7月 1日 付 けの県立盲・ 聾・ 養護学校長宛の養護教育課長通
知 (教 養号外)に 記載 されている。
文
献
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吉田恵理子・ 大塚 玲
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