量子力学(16年度) 期末レポート問題

 量子力学 (16 年度) 期末レポート問題
(提出:1 月 11 日の授業時)
1. 20 世紀初頭の量子力学の誕生とその発展において重要な役割を果たした熱放射と光電効果に
ついて、以下の小問に答えなさい。 (1) 熱放射の強度曲線に関して、古典物理学から導かれる「等分配の法則」を用いたレーリー・ジー
ンズの公式では、どの様な事が説明出来なかったのか、述べなさい。また、この困難を救った
M. Planck の「エネルギー量子」の考え方とはどの様なものか、説明しなさい。
(2) エネルギー量子の考え方に基づき、絶対温度 T の場合の、振動数 f の光のエネルギーの平均値
hEi =
∑∞
n(hf )
− kT
n=0 n(hf )e
m(hf )
∑∞
− kT
m=0 e
を求めなさい。また、h → 0 という(形式的な)極限では、古典物理学の場合の等分配の法
則が導かれることを説明しなさい。
(3) 光電効果の実験データには、古典物理学では説明が困難な特徴がいくつかあった。どの様な特
徴か述べなさい。また、アインシュタインは「光子仮説」に基づいて、どの様にしてこれらの
特徴を自然に説明することが出来たのか、説明しなさい。
2. 量子力学では、電子の様な、それまで粒子であると考えられて来たものが物質波という波動
性をも併せ持つと考えられている。こうした、一見互いに矛盾する粒子性と波動性がどの様に両
立し得るのか、例えば、ヤングの実験の光源を電子源に置き換えた2重スリットによる干渉実験
の例を用いて、自分なりの理解に基づき説明しなさい。 3. ボーアの原子模型について以下の小問に答えなさい。
(1) 水素原子を、陽子の周りを電子が等速円運動(陽子を円の中心とする)しているものとモデル
化する。この時、電子の運動に関する運動方程式を、電子の質量 m と電荷 −e (e > 0 : 電気素
量)、等速円運動の半径 r と速さ v を用いて書きなさい。ただし、クーロンの法則の比例定数
を k とする。
h
(2) ボーアの量子化条件 rp = nh̄ (p : 運動量の大きさ、n : 自然数。またh̄ = 2π
) と (1) の運動方
程式を組み合わせて、電子の n 番目の許される円軌道の半径を (m, e, k, h̄, n を用いて) 求めな
さい。
(3) 電子が n 番目の軌道から m 番目の軌道 (n > m) に移る際に電子から放出される光の振動数を
求めなさい。
4. 古典物理学における波動方程式、および量子力学におけるシュレディンガー方程式に関する以
下の小問に答えなさい。
2
2
∂
2 ∂
(1) 古典物理学における波動方程式 ( ∂t
2 − v ∂x2 )y(t, x) = 0 の一般解は f, g という二つの任意関
数を用いて y(t, x) = f (x + vt) + g(x − vt) と書けることを説明しなさい。
(2) 質量 m の粒子に次のような力が働き x 軸にそって運動しているとする。この時の、
(時間に依
らない)シュレディンガー方程式を書きなさい (保存される力学的エネルギーを E とする): (a) x 軸方向の一定の大きさ F (> 0) の力。
(b) バネ定数 k のバネからの弾性力。ただし、バネの自然長は x = 0 の位置であるとする。
5. 確定した運動量(の x 成分)p を持ち、x 軸にそって運動する粒子の波動関数はどの様に書け
るか述べなさい。また、この波動関数を用いて、運動量(の x 成分)の期待値を、物理量の期待
値の一般的な計算方法に従って求めなさい。 6. 束縛状態のエネルギー固有値に関する以下の小問に答えなさい。
(1) 束縛状態ではエネルギーが量子化される(離散的に成る)。なぜ、束縛状態の場合にはエネル
ギーの量子化が起きるのか、その本質的な理由を自分なりの理解に基づいて述べなさい。
(2) 束縛状態の例として x 軸に沿った一次元的な運動を考える。質量 m の粒子が、
(無限大のポテ
ンシャルの障壁によって) 0 ≤ x ≤ a (a : 正の定数) の領域に閉じ込められているとする。た
だし、0 ≤ x ≤ a の領域では粒子に力は働かず、ポテンシャルは V = 0 であるとする。この
時、時間に依らないシュレディンガー方程式の一般解に境界条件を課すことで、量子化された
n 番目のエネルギー固有値 En (n: 自然数) を求めなさい。