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解答例
この記事は、社会的な広がりを見せている障害者の短時間雇用の取り組みを紹介した
ものである。記事の内容を踏まえて、この取り組みにどのような社会的意義があるのか
を考えてみたい。
まず、一つは、障害者雇用に対する捉え方に変化をもたらしたという点が挙げられる。
現在の法制度で障害者雇用として認められるには、週20時間以上の雇用を行わなけれ
ばならない。それゆえ、企業はこの時間に満たない短時間雇用に消極的だったのだろう。
だが、記事に紹介された取り組みは、より短時間の勤務を可能にしたことで、身体的・
精神的な制約を抱えた障害者の雇用の枠組みを広げる役割を果たしている。
もちろん、この取り組みでは法の義務を達成したことにはならないが、企業の社会的
責任を果たし、社内の業務改善につながるという利点がある。そして、それが多数の企
業からの注目を集めていることを考えれば、この取り組みは障害者雇用を、国や自治体
から課された義務としてではなく、より大きな社会的意義を持つものとして捉え直す契
機を与えてくれていると言えよう。
また、二つ目に、この取り組みが、働き方の多様化を促す可能性がある点を挙げるこ
とができる。そもそも、この取り組みが障害者雇用において、一定の成果を挙げている
要因には、短時間労働が可能になったことだけではなく、業務の内容が固定されている
ことを挙げることができる。個人の適性に合わせた業務が継続して与えられることで、
その時々に与えられた雑務に対するよりも、責任を持って仕事に従事することができる
だろう。
そして、このような働き方を求めているのは、障害者だけではない。例えば、体力的
な衰えが出始める高齢者や、介護や育児で時間的な制限が多い人のように、フルタイム
で多様な業務に携わるような働き方が難しい人は、少子高齢化が進む今日、ますます増
えていくだろう。障害者にどのような仕事を担ってもらうかを考えることは、多様な事
情を抱える人々が能力を発揮する環境を整える上でも役立つはずだ。
このように、障害者の短時間雇用の取り組みには二つの意義があると考えられる。今
後、障害者雇用に積極的に取り組んでいく企業は増えていくだろう。ただし、こうした
取り組みが上手く機能するには、障害者が担う仕事が適切なものかを見極める第三者機
関の存在が必要だ。このような点検を通すことで、この取り組みの社会的な有用性がよ
り高まると考えるからである。