バリュエーションのここに注目-安倍プレミアムが市場を押上げ

2017 年 3 月 3 日
第 93 号
バリュエーションのここに注目-安倍プレミアムが市場を押上げ
大和住銀投信投資顧問
部長
経済調査部
門司 総一郎
少し前になりますが、2 月 18 日付日本経済新聞の「スクランブル」で筆者の「長期では日本の PER
は政治の影響を受ける」とのコメントが引用されました。今回はこのコメントについて解説します。
2003 年以降の東証株価指数(TOPIX)の予想株価収益率(予想 PER、以下単に PER)の動きは、その水準
によって 3 つの期間に区分することができます。最初は 2003 年から 07 年までです。この間 PER は 15
倍から 20 倍という比較的高い水準で推移しました。
TOPIXの予想PE R ( 倍、今後12ヵ 月ベー ス)
30
25
20
15
10
2003年
2005年
2007年
2009年
2011年
2013年
2015年
2017年
出所:Thomson Reutersより大和住銀投信投資顧問作成
2008 年から 10 年にかけてリーマン・ショックの影響で株価とアナリストの業績見通しが共に大きく
振れたため、PER も短期間に上下しました。この期間は除いて考えるとして、PER が落ち着いてきた 2010
年後半から 12 年末にかけてが 2 番目の期間になります。この間 PER は 10-13 倍という低い水準で推移
しました。3 番目は 2013 年から現在に至るまでですが、PER は 2 番目の期間に比べて水準を切り上げ、
13 倍から 15 倍で推移しています。
このように 2003 年以降の日本株の PER は、その水準により 3 つの期間に分類できますが、その背後
にあるのが政治の状況です。2003 年から 07 年にかけては当時の小泉純一郎首相への期待感により、PER
が押し上げられました。特に 2005 年は郵政解散・総選挙を受けた熱狂的な小泉ブームにより、日本株
に資金が流入、PER が 15 倍強から 20 倍まで上昇しました。この PER の上昇は「小泉プレミアム」と呼
ぶことができます。
一方、2010 年から 12 年にかけての低 PER は、民主党政権への不信感によるものです。政権発足直後
から普天間基地の移設などを巡って迷走、その後も党内抗争に明け暮れて「決められない政治」と呼
ばれました。この民主党政権への不信感が投資家を日本株から遠ざけ、PER を低下させた原因です。
本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので
す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成
者の判断に基づくもので、今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることがあります。投資に関す
る最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。
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市場のここに注目!
2017 年 3 月 3 日
2012 年末の総選挙で自由民主党が勝利、第二次安倍晋三内閣が発足したことを受け、PER は水準を
切り上げました。この上昇は民主党政権の「決められない政治」が終わったことへの安心感によるも
のですが、第 1 次政権の時とは打って変わった安倍首相の安定感のある政権運営も PER の上昇に寄与
したと思われます。
ただしこの期間の PER はこれまでのところ 15 倍が上限となっており、小泉政権の 15-20 倍には届い
ていません。この点を見ると、現在の株式市場は安倍政権を「民主党以上、小泉以下」としか評価し
ていないことになります。
しかし、世間の評価は違います。政権発足後 4 年を越えた現在でも日本経済新聞など内閣支持率が
60%を超える世論調査は珍しくありません。控えめに見ても国民の安倍氏に対する評価は小泉氏と同等、
小泉氏を超えたといってもよいでしょう。
先日の日米首脳会談でもトランプ米大統領を相手にし、日本にとって望外といえる結果を勝ち取り
ました。海外でも安倍首相への評価は高まっています。最近筆者は東南アジアを訪問して、現地の投
資家に日本株の見通しを説明しましたが、「安倍首相は主要国で最もパワフルなリーダーの 1 人だ」
という筆者の説明には、みなうなずいていました。
先ほど述べたように株式市場は安倍政権を小泉政権以下と評価しているようですが、これは下方評
価であり、早晩修正されると予想しています。その場合、日本株の PER は、例えば小泉政権時の 15-20
倍まで上昇し、「安倍プレミアム」と呼ばれることになるとの見方です。
以上
本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので
す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成
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る最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。
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