「新たなコメ需要の創出に向けて」(PDF)

新たなコメ需要の創出に向けて ◆ Outlook by Takeshi Kanai
展 望
JAの進むべき道
新たなコメ需要の創出に向けて
米の需要が年々 8 万 t 減少してい
は少ないといわれていたが、近年、
る。国の配分がない平成30年産以降
日本でも0.7%、潜在的には100万人
も生産調整を確実に達成するために
近くの患者がいるともいわれてお
は、需要に基づき主食用米生産を行
り、世界中でグルテンを摂取できな
うことが必要である。
い人が増えている。シンガポールか
食料自給率を維持・拡大し、生産
らは、グルテンを含まない米粉のパ
調整を達成するためには、麦・大豆
等の生産を拡大することが必要であ
るが、農業の多面的機能を維持する
金井 健
(JA全中常務理事)
ンを輸出してほしいとの要望があっ
た。
グルテンフリーはこれらに対する
ためには、162万 ha の水田を維持することが
食餌(食事)療法であり、欧米諸国のレスト
重要であり、米の作付を維持することが必要
ランではグルテンフリーメニューの選択、
である。このため、飼料用米、加工用米、備
食品売り場ではグルテンフリーコーナーを設
蓄用米の作付で対応しているが、新たな米の
置しているところが増えている。パリでは、
需要創出が必要である。
日本人シェフが米粉に加え、ひよこ豆やジャ
新 たな 需 要 先として、JAグ ル ープ は、
ガイモなどを活用して、本格的なフランス料
2016年に輸出額 8 億円の米の輸出を、2020
理を展開しているグルテンフリーレストラン
年には50億円に拡大する目標を設定し、国別
もある。
戦略と体制の再構築等を進めている。
グルテンフリーのためには、まずはごはん
このほか、大きく期待されているのが、グ
食、つまり和食の推進である。加えて、これ
ルテンフリーなどの米の機能性に着目し付加
まで米粉パンなどを推進していたが、さまざ
価値を高めた商品開発である。
まなグルテンを含んだ食品の代替原料として
欧米諸国では、小麦などに含まれているた
米粉の需要拡大が期待できる。わが国でグ
んぱく質の一種であるグルテンを摂取するこ
ルテン問題が拡大することは健康問題として
とによって、さまざまな体調不良を起こすセ
決して望ましいことではないが、米粉による
リアック病や、小麦アレルギー、グルテン過
グルテンフリーが国民の健康維持への貢献策
敏症などが深刻な問題となっている。セリ
として、同時に水田の多面的機能の維持と食
アック病は欧米諸国では 1 %程度の潜在患者
料自給率の向上ができる取り組みとして期待
がいるといわれている。これまで有色人種で
している。
2017/03
月刊 JA
15