量子力学はどのスケールまで適用できるのか? ψ

未来を
切り拓く
基礎研究
巨視的な電流での実在性の破れを確認する超伝導デバイス
量子力学はどのスケールまで適用できるのか?
E-2
観測された物の状態が、観測前から確定していることを「実在性」と呼びます。実在性は日常の世界では成り立っているように見えますが、
量子力学で記述される微視的な世界では破れていることが知られています。本研究では量子性が極めて高い独自の超伝導回路を用い、
膨大な数の電子からなる「電流」という巨視的な量においても実在性が破れ、量子重ね合わせが実現されていることを検証しました。
■ 巨視的実在性(日常世界の常識)
観測
特
■ 巨視的非実在性
量子力学
■ 超伝導磁束量子ビット*1を用いて毎秒一兆個の電子の流れで
ある電流という巨視的な量での量子重ね合わせを初めて確認
観測
適用可能?
例え見ていなくとも、月は存在
見ていなくともサイコロの目は確定
見るまで目が決まっていない
量子サイコロ
観測による状態の
乱れ:|de|,|dg|
■ 超伝導磁束量子ビットの状態: ψ
観測の有無による
状態の差:|dρ|
|+1⟩
有意な差
0.00
0.02
0.04
0.06
0.08
測定結果の観測依存性
実在
ψ =
2µm
0.10
2µm
+
■ 左回り電流状態と右回り電流状態の巨視的な量子重ね合わ
せ状態もまた、観測によってどちらか一方の状態に確定する
ことを確認
■ ジョセフソン接合*2を利用して、高速かつ被測定系への影響が
小さい量子系の読み出しを実現
■ 理論研究成果により実在性の破れを検証する実験手法の
単純化に成功し、実験精度が劇的に向上
量子サイコロ(巨視的量子重ね合わせ)は存在し得るのか?
■ 実験結果*3
徴
|−1⟩
巨視的な電流の左回り状態と右回り
状態が同時に重ね合わさることを確認
利用シーン
■ 量子力学がさらに大きなスケールまで適用可能かという基礎
物理に関わる実験
■ 超伝導磁束量子回路が真の量子性を持ち、量子デバイスと
して動作し得ることを保証
非実在
*1 超伝導磁束量子ビット: 複数のジョセフソン接合を含む超伝導回路で、右回り|−1⟩と左回り|+1⟩の2つの電流状態をもつ量子二準位系です。
*2 ジョセフソン接合: 超伝導-絶縁体-超伝導の接合で、臨界電流以下の超伝導電流を流す性質があり、非線形インダクタとして働きます。
*3 実験結果: この実験では、実在性が正しければ測定結果に差は生じません。一方、量子重ね合わせ状態が実現していれば、観測の有無で
測定結果に差dρが生じます。この差dρが観測による状態の乱れde、dgよりも有意に大きいことを確認しました。
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