MMF 規制改革による米国金融仲介構造の変化

金融資本市場
2017 年 2 月 23 日
全9頁
MMF 規制改革による米国金融仲介構造の変化
利上げとドル高が海外から米国にフィードバックされる仕組み
金融調査部
主任研究員
土屋 貴裕
[要約]

米国の MMF 規制改革が 2016 年 10 月に施行され、1 兆ドル規模のプライム MMF からガバ
メント MMF への資金シフトが生じ、MMF の資産構成に変化をもたらした。CP や CD での
運用が大きく減少し、米国債などとレポでの運用額が増加した。

MMF による CP の保有が大幅に減少し、CP による海外金融部門の調達が減少したように、
MMF の資金シフトの影響は、海外に波及した可能性が高い。

レポ市場での MMF の運用は大幅に増えた。レポ市場は海外部門が資金の取り手でも出し
手でもあり、同時に MMF などの資金を FRB(連邦準備制度理事会)が吸収している構造
となっている。主要な部門ながら海外部門の具体的な主体は明確ではない。

MMF の資金が政府債務に向かい、銀行間市場の相対的な位置づけは高まった。FRB の利
上げが重なり、インターバンク金利の LIBOR が押し上げられ、新興国通貨の減価につな
がっている可能性が考えられる。

MMF の規制変更によって、レポ市場が短期ホールセール資金調達の中心になり、海外主
体の存在感の高まりは金融仲介の構造変化と言える。低利で短期の資金調達環境に変化
が生じたことで、過剰流動性の巻き戻し懸念がある。新興国通貨の急落など、米国外で
の市場の動揺が生じた場合は、レポ市場を経由して米国に影響が及ぶ可能性がある。
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米国 MMF 規制改革の施行
2016 年 10 月に、リーマン・ショック(金融危機)の反省を踏まえた MMF への規制改革が施行
された。本稿では、MMF 規制改革に伴う資金シフトが、短期の金融仲介に構造的な変化をもたら
したことを確認し、構造変化がもたらす今後の論点を提示する。
2008 年のリーマン・ショック時に、規模が大きい MMF の一つが元本割れを起こし、他の MMF
でも元本割れが生じることが警戒されて、いわば取り付け騒ぎのように MMF からまとまった資
金が流出した。MMF は運用していた CP(コマーシャルペーパー)などから資金を引き上げ、CP
などで資金を調達していた主体が資金繰りに窮して保有資産を処分し、連鎖的に世界的な資産
価格の急落につながった1。
こうした反省を踏まえ、規制の主な変更点は、1 口=1 ドルで元本保証に近かった NAV(Net
Asset Value:基準価格)の算出方法を、運用資産の日々の時価を反映させて変動させる変動 NAV
の導入であり、MMF の透明性が高まることになる。ただし、市場が混乱する時に、投資資金の回
収が遅れれば損失を被るため2、早く資金を引き出す「取り付け」を防ぐことはできない。この
ため払戻手数料や一時的な解約停止を認める条項(ゲート条項)も盛り込まれた。
規制変更の主な対象は、CP や CD(譲渡性預金)といった信用リスクを取った商品に投資する
法人(機関投資家)向けプライム MMF である。リーマン・ショック時に、法人向けのプライム
MMF からは、わずか 1 ヵ月で 4,000 億ドル以上の資金が流出したためである。個人向けプライム
MMF であれば解約の一時停止条項などは設けられるが、変動 NAV を導入する必要はない。また、
大部分を国債や国債を担保とするレポなどで運用して、ほぼ信用リスクを取らないガバメント
MMF は規制変更の対象ではない。
プライム MMF の減少とガバメント MMF の増加
事実上、現金に近い扱いをされている MMF 運用での損失を嫌う投資家は多いとみられ、規制
改革の最終ルールが公表された 2014 年の夏以降、プライム MMF からガバメント MMF に資金がシ
フトし始めた。資金シフト需要を見越して、MMF の運用会社がプライム MMF をガバメント MMF に
衣替えする対応もあって、2016 年の前半から資金シフトは加速した。2016 年 12 月最終週の資
産残高(Total Net Asset)を、最終ルール公表直前の 2014 年 7 月 16 日を含む週と比べると、
ガバメント MMF が約 1.3 兆ドル増え、プライム MMF は約 1.0 兆ドル減少した(図表 1)。法人向
け MMF に限れば、ガバメント MMF は約 9,000 億ドル増、プライム MMF は約 7,600 億ドル減とな
1
MMF は ABCP(資産担保コマーシャルペーパー)の主要な投資家であった。ABCP の主な発行体は資産に証券化
商品など、負債に ABCP などを持つ証券化商品の導管体の SPV(Special Purpose Vehicle:特別目的事業体、SPC
などを含み SPE とも呼ばれる)である。MMF が ABCP のロールオーバーに応じず資金繰りに窮したが、保有する
資産は債務担保証券などで流動性が低く、流動性の高い売却可能な資産を売却したことで、価格急落が他の市
場に波及し、サブプライムローンとは直接関係がない市場でも価格が急落した。
2
リーマン・ショック時に、最初に元本割れを起こした MMF からは資産の半分程度の資金が流出し、資金の引き
揚げが遅れた投資家の損失が拡大した。
3/9
る。なお、MMF 全体の資産は緩やかに増加している。ファンド数においても、2000 年代初めに
400 以上あったプライム MMF のファンド数は 100 を切るところまで減少した。
図表 1
2.5
MMF の純資産残高の主な構成
(兆ドル)
リーマン・ショック
2.0
プライムMMF
1.5
1.0
ガバメントMMF
0.5
0.0
07/1
08/1
09/1
10/1
11/1
12/1
13/1
14/1
15/1
16/1 17/1
(年/月)
(出所)ICI、Haver Analytics より大和総研作成
MMF の運用先の変化
運用資産の構成は、プライム MMF では CP や CD がおよそ 6 割を占める。ガバメント MMF では、
国債とエージェンシー(政府機関)債、およびそれらを担保とするレポでの運用でほぼ全てと
なる。従って、資金がプライム MMF からガバメント MMF へシフトしたことで、MMF 全体での運用
資産のうち、CP や CD での運用が大きく減少し、米国債などと、レポでの運用額が増加した(図
表 2 左)。ただし、レポ取引のうち主に増加したのは米国債を担保とする取引であり、政府機関
債を担保とする取引も増加したが、それら以外の担保での取引は減少した。
金融商品の発行体の国別では、米国向け、ドイツ向けの運用額が増加したが、多くの国向け
の運用額は減少した。ガバメント MMF は米国債などでの運用が中心であり、その増加に伴い必
然的に米国向けの投資が増えた(図表 2 右)。プライム MMF の規模が縮小した影響は、米国外の
資金調達者において、より大きかったことになる。
残高加重平均での運用期間は、米国向けの運用期間が長期化したため、60-70 日程度から 80
日前後に長期化した。結果的に、信用リスクではなく、期間リスクを取ることで収益を確保す
るスタンスが強まったことになる。
米国以外の多くの国向けの運用期間はむしろ短期化した。主に海外の主体にとって、運用期
間が短期化した MMF の資金に資金調達を依存し過ぎることは、流動性ひっ迫時に資金繰りの問
題が表面化しやすい環境になっていることを示唆する。市場性ではなく、預金などの安定的な
ドル資金の調達手段が模索されることになろう。
4/9
図表 2
米国 MMF の主な運用先
(10億ドル)
2,000
(10億ドル)
2,500
主な商品別運用残高
主な国別投資先
1,800
1,600
その他債
務証券
1,400
2,000
米国
1,500
1,200
1,000
レポ
欧州
800
1,000
600
400
500
CP・CD
200
日本
0
0
11/1 12/1 13/1 14/1 15/1 16/1 17/1
11/1 12/1 13/1
14/1
15/1
16/1 17/1
(年/月)
(年/月)
(出所)FRB、Haver Analytics より大和総研作成
日本向けに限ると、2016 年の後半にかけて運用残高は前年から半減に近い減少であったが、
それでも相対的には、他の国向けの運用よりも減少幅は小さい。プライム MMF が日本向け投資
の大部分を占めていたが、プライム MMF の縮小をガバメント MMF の拡大でカバーできず、投資
総額は減少した(図表 3 左)。
商品別では、CP や CD とレポの合計が日本向け投資の大部分となる。CP や CD での運用が激減
し、米国債と政府機関債を担保とするレポ取引が増えて、CP や CD での運用を上回った(図表 3
右)。
図表 3
米国 MMF の日本向け運用資産動向
(10億ドル)
250
種類別投資残高
(10億ドル)
200
200
日本向けの主な商品別投資残高
150
150
CP・CD
プライム
MMF
100
100
レポ
ガバメント
MMF
50
50
0
11/1
12/1
13/1
14/1
15/1
16/1
17/1
(年/月)
(出所)FRB、Haver Analytics より大和総研作成
0
11/1
12/1
13/1
14/1
15/1
16/1
17/1
(年/月)
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CP 市場への MMF の投資減少
米国における CP の発行残高は、2008 年の金融危機によって大幅に減少した。米国経済が回復
し始めた 2010 年以降を均すと概ね 1 兆ドル前後で推移している。
CP 市場での資金の出し手として MMF は大きな位置を占め、資金シフトが生じる前は CP の 3 割
から 4 割程度は MMF が保有していた(図表 4 右)。CP に投資するプライム MMF から、CP に投資
しないガバメント MMF への資金シフトによって、MMF 全体での CP への投資額が大幅に減少し、
CP 発行残高に占める MMF の保有比率は 1 割程度まで減少した。
CP による資金の取り手としては、海外金融部門の調達が大きい(図表 4 左)
。2008 年の金融
危機以前は、米国内の金融部門が大きな存在だったが、銀行と ABS(資産担保証券)発行機関の
調達が大幅に減少した。足下では、金融会社の調達が増えているものの、米国内の金融部門を
合計しても、ようやく海外の金融部門と同程度である。米国の非金融部門の調達が増えている
ため、海外主体よりも米国内の主体による調達の方が多いが、相対的に海外金融部門の存在感
が高まっている。直近の 2016 年 7-9 月期に海外金融部門の調達が減少したように、MMF 規制改
革による資金シフトは、海外に影響を及ぼした可能性が高い。
図表 4
CP 市場の主な取り手と出し手
(10億ドル)
CP市場の資金の
主な取り手と調達残高
CP市場(BA市場含む)の資金の
主な出し手と運用残高
(10億ドル)
800
1000
900
海外金融部
門
800
700
非金融企業
ファイナンス
会社
400
300
ファンディン
グ会社
200
100
600
400
ファンディ
ング会社
海外
300
MMF
200
投信
500
600
500
700
ABS発行機
関
0
90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16 (年)
100
州・地方
政府
0
90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16 (年)
(注)BA は Bankers’ Acceptance の略で銀行引受手形。2016 年 9 月末の BA 市場残高はゼロであるが、金融部
門内で統計がネッティングされている可能性がある。
(出所)FRB、Haver Analytics より大和総研作成
リーマン・ショック以前、米国外の金融機関が米国で発行した CP の残高と株価にはほとんど
関係がなかった。ところが、リーマン・ショック以降は、両者に類似した傾向が見られるよう
になった(図表 5)。リーマン・ショック時に限界的な資金繰りに窮する主体が増えて、FRB(連
邦準備制度理事会)が超低金利政策と流動性供給策を相次いで打ち出した。多くの主体にとっ
て資金調達環境が改善し、過剰流動性の一部として、CP 市場で調達した資金でリスク性資産へ
の投資が行われていた可能性がある。
6/9
2014 年頃からは両者の関係が必ずしも同じ傾向を示さなくなり、CP で調達した資金によるリ
スクテイク行動が減り始めている可能性が指摘できる。背景として、MMF の資金シフトによって
CP での資金調達のアベイラビリティが低下したことと、FRB による QE3(量的緩和第 3 弾)の終
了と利上げ観測の高まりによるドル高で、投資資金が退出したことが考えられる。ドル高が進
むと自国通貨換算での返済コストが上昇するためである。リスク性の投資のファンディングに
CP での資金調達が向かなくなった、ということだろう。
図表 5
米国外の金融機関の CP 発行残高と米国株価
S&P500指数(前年比)
米国外金融機関のCP発行残高(右軸)
(億ドル)
3,500
ギリシャ・ショック
3,000
50%
2,500
25%
2,000
0%
1,500
-25%
1,000
欧州債務問題
米国債格下げ
リーマン・ショック
-50%
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
500
17
(年)
(出所)FRB、Haver Analytics より大和総研作成
レポ市場の構造変化
レポ市場は 2010 年以降を均せば 3.8 兆ドル程度の残高で推移している。この間、MMF が資金
の出し手として目立つようになった(図表 6 右)。ガバメント MMF はプライム MMF よりレポ市場
での運用が多く、MMF 全体への資金流入と MMF 間の資金シフトによってレポ市場での運用が増え
ていることになる。
レポ市場での主な資金の取り手は海外部門や外国銀行である(図表 6 左)。MMF の資金シフト
で CP での資金調達がしにくくなった一部の主体は、資金調達先を CP からレポに切り替えたと
見られる。また、資金の取り手として通貨当局である FRB が大きく台頭した。巨大なバランス
シートを抱えたまま利上げを開始したため、リバースレポで大規模に資金を吸収しているので
ある。
米国のレポ市場は、海外部門が資金の取り手でも出し手でもあり、同時に MMF などの資金を
FRB が吸収している構造となっている。レポ市場における海外部門の存在感の高まりは、具体的
な主体が明確ではなく、市場の混乱などが内外に波及する際にどのよう経路を辿るのか、わか
りにくくなっていると言えよう。
7/9
図表 6
レポ市場の資金の取り手と出し手
レポ市場(FF市場含む)の資金の
主な出し手と運用残高
レポ市場(FF市場含む)の資金の
主な取り手と調達残高
(10億ドル)
(10億ドル)
1000
1200
海外
800
600
400
通貨
当局
800
外国
銀行
600
REIT
米国
銀行
200
0
90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16 (年)
1000
海外
MMF
投信
400
外国
銀行
米国
銀行
200
0
90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16 (年)
(注)ディーラー・ブローカーを除く。
(出所)FRB、Haver Analytics より大和総研作成
銀行間金利の上昇
FRB の利上げがドル建て金利全般を押し上げているが、LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の
上昇と MMF の残高変動は高い連動性があり、特に 2016 年夏場の LIBOR の上昇は、MMF の資金シ
フトの加速と同じタイミングである(図表 7 左)。MMF の資金が政府債務に向かったことが、資
金調達の場として銀行間市場の相対的な位置づけを高めることになり、利上げとタイミングが
重なって、政策金利の引き上げ幅以上にインターバンク金利が押し上げられたとみられる。
非米系のドル資金調達者にとって、低利で短期のドル資金は、ドル建て資産への投資や、自
国向け資産への投資に利用されてきた。だが、LIBOR の上昇は調達コストを高め、低利で短期の
ドル資金を利用したトレードの魅力を低減させる。また、ドル高が進むと自国通貨換算でのコ
ストが上昇する。事実、中国の人民元は LIBOR の動きに類似しており(図表 7 右)
、中国のプレ
イヤーが調達したドルを返済するためにドルを買っていることを示唆する。
2016 年末頃には MMF の資金シフトが一服し、LIBOR の上昇もいったん落ち着いたと見られる
が、政権交代に伴う政策期待の高まりと、米国とその他の多くの中央銀行との金融政策の方向
性の違いで実効ベースのドルは再び上昇し始めている。MMF の資金シフト一服後も、資金需給が
引き締まった銀行間市場で LIBOR はさらに上昇すると予想される。なお、LIBOR が上昇を続ける
と、預金などの市場性ではないドル資金への需要が増えて、預金金利も上昇する可能性が高ま
る。LIBOR 連動の与信の利鞘は改善しても持続的ではないだろう。
8/9
図表 7
(%)
1.2
銀行間市場経由の波及
法人向けプライムMMFの残高と金利 (10億ドル)
法人向けプライムMMF残高
(右軸、逆目盛)
1.0
0.8
3ヵ月物ド
ルLIBOR
0
(%)
1.2
200
1.0
400
0.8
(元/ドル)
7.0
LIBORと人民元
人民元対ドルレート
(右軸、逆目盛)
6.9
6.8
6.7
6.6
0.6
600
0.6
0.4
800
0.4
6.5
6.4
0.2
1,000
FFレート
誘導目標
1,200
14/7
15/1
15/7
16/1
16/7
0.2
6.3
6.2
6.1
0.0
14/1
3ヵ月物
ドルLIBOR
0.0
17/1
6.0
14/1
14/7
15/1
(年/月)
15/7
16/1
16/7
17/1
(年/月)
(出所)FRB、ICE、ICI、Haver Analytics より大和総研作成
利上げ時の過剰流動性の巻き戻しリスク
超低金利で調達した短期資金の一部が、リスク性投資そのものや投資のレバレッジ拡大に振
り向けられているとすれば、それは過剰流動性と呼べるだろう。FRB の利上げと MMF 規制改革に
伴う短期の低コスト資金調達のアベイラビリティの低下は、過剰流動性の巻き戻しリスクに転
化し得ることになる。
米国の短期金融市場では、巨大な資金の出し手である MMF の規制変更によって、CP や CD では
なく、レポ市場が短期ホールセール資金調達の中心になりつつある。また、海外主体の存在感
が高まり、MMF 規制の変更が主に米国外の主体の資金調達に影響すると考えられる。金融仲介の
構造変化と言え、仮に米国経済に問題がなくても、海外で何らかの問題が生じた場合には、海
外部門の存在感が大きいレポ市場を通じて、米国経済に波及する可能性がある。海外経済の減
速や市場の混乱が直接、米国経済に影響する可能性は低いとみられるが、警戒すべきリスクの
波及ルートであろう。
例えば、ドル高などで新興国通貨の急落などが生じた場合である。1980 年代の中南米通貨危
機が米国に波及した際は、銀行与信が中心であったが、これからは同様にレポ市場を通じて米
国に波及するルートが想定される。すでにレポレートは四半期末を除くと跳ね上がる局面が VIX
指数と類似し、市場の緊張を表していると考えられる(図表 8)。市場でストレスが高まる場合
に、どのような経緯になるかはっきりしないが、レポ市場が利上げとドル高が海外経済に波及
した後、米国経済にフィードバックされるルートと考えられよう。
ただし、米国の銀行は、短期のホールセール資金調達が増えると必要とする資本が増えるな
ど、規制強化によって短期市場におけるプレイヤーとしての地位を低下させている。市場の混
乱が、短期市場を経由して米国の銀行部門に影響する程度は小さくなっているとみられる。
9/9
図表 8
VIX 指数とレポレート
(%)
1.4
45
40
35
VIX指数
翌日物レポレート(右軸)
1.2
1.0
30
0.8
25
0.6
20
0.4
15
0.2
10
0.0
12/1 12/6 12/11 13/4 13/9 14/2 14/7 14/12 15/5 15/10 16/3 16/8 17/1
(年/月)
(注)レポレートは米国債担保の加重平均値。
(出所)DTCC、CBOE、Haver Analytics より大和総研作成