ゴム取引の基礎知識

ゴム取引の基礎知識
I
目次
ゴム取引の基礎知識 ................................................................I
第1章
ゴム取引のポイント.................................................... 1
第1節
天然ゴムの世界需給 ............................................................................................ 1
第 2 節 最近のゴム相場の変動要因(トピック) ............................................................. 9
第3節
季節的変動要因 ..................................................................................................13
第4節
世界の景気と自動車タイヤの生産 ......................................................................15
第5節
為替動向 .............................................................................................................16
第6節
ゴムと石油の関係 ...............................................................................................18
第7節
地政学的リスク ..................................................................................................19
第8節
市場介入 .............................................................................................................20
第2章
新ゴムの需給及び需給データ ...................................... 21
第1節
世界の新ゴム需給 ...............................................................................................21
第2節
日本の新ゴム需給 ...............................................................................................26
第3章
ゴムの商品知識 ....................................................... 34
第1節
ゴムの商品特性 ..................................................................................................34
第2節
天然ゴムの種類と生産方法.................................................................................36
第3節
合成ゴムの種類と製造工程.................................................................................40
第4章
ゴムの商流と物流 .................................................... 45
第1節
天然ゴムの生産地域 ...........................................................................................45
第2節
天然ゴム産地の物流経路 ....................................................................................47
第3節
天然ゴムの国内流通 ...........................................................................................48
第4節
天然ゴムの商流 ..................................................................................................49
II
第5章
世界のゴム市場と商品先物取引所................................. 50
第1節
国内市場 .............................................................................................................51
第2節
海外市場 .............................................................................................................53
第6章
取引戦略 ................................................................ 56
第1節
リスクヘッジ ......................................................................................................56
第2節
買いヘッジと売りヘッジ ....................................................................................56
第3節
クロスヘッジ ......................................................................................................59
第4節
ロール・オーバー(ローリング・ヘッジ/スイッチ取引) ..................................59
第5節
裁定取引 .............................................................................................................62
第6節
リスク管理と周辺制度 ........................................................................................64
第7節
モダン・ポートフォリオ理論 .............................................................................70
第8節
効率的市場仮説 ..................................................................................................75
第7章
参考資料 ................................................................ 76
第1節
用語解説 .............................................................................................................76
第2節
統計資料と情報入手先 ........................................................................................82
III
第 1 章 ゴム取引のポイント
天然ゴムは、国際商品であり、中でも東京商品取引所のゴム市場の価格は、世界の指標価格として注目さ
れており、世界の景気動向や需給動向等の様々な要因により変動している。
ゴム価格に影響を与える変動要因などゴム取引を行う上でのポイントについて本章で解説する。
第 1 節 天然ゴムの世界需給
基本的に商品の価格変動要因で重要な要因として挙げられるのは需給である。
東京商品取引所で上場されているゴムは、天然ゴムの中の「RSS(Ribbed Smoked Sheet)」であり、
天然ゴムの需給がどのような要因により変化するかを予測することが重要である。
世界の天然ゴムの需給規模は、1983 年までは 400 万トンにも満たない水準であったが、1988 年に 500
万トンを突破すると、その後も順調に拡大傾向をたどり、2000 年には 700 万トン台に、2003 年には約 2 倍の
800 万トンに達し、2015 年には 1,200 万トンと約 3 倍の規模に拡大している。
また、1954 年以降の 50 年間を見ると、天然ゴムの生産量は平均で年率 3.0%の割合で増加しており、消
費量の増加率 3.2%と比較すると、生産量と消費量の伸びの間には大きな乖離は見られない。
しかし在庫率は、この 20 年間では 1999 年の 38%が最高で、それをピークに 2000 年以降は下降に転じて
いる。2000 年、2001 年は適正水準といわれる在庫率 30%の水準をほぼ維持したものの、2002 年以降は
30%を下回っており、この在庫の変化が天然ゴム相場を変動させる要因の一つにもなっている。2007 年後半
からの世界的な景気減速に伴い、消費量は 2008 年、2009 年は前年比減となったが、2010 年からは増加
に転じている。
一方、2010 年、2011 年は急激な需要の回復に生産が追いつかず、在庫率は 14%、16%と低い水準に
とどまったが、2012 年以降在庫率は上昇に転じ、20%台で推移しており、2015 年は 28%に上昇した。
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1.世界の天然ゴム需要
世界の天然ゴム消費量は 2001 年から拡大を続け、2007 年には 1,017.8 万トンとなり過去最高を記録
したが、2008 年に微減すると、2009 年は 928.9 万トンに大幅減となり、2010 年にはその反動で 1,075.9
万トンと大幅増となった。その後 2011 年は 1,103.4 万トンに増加し、2015 年は 1,216.7 万トンと、増加傾
向となっている。2015 年の天然ゴムの消費量およびシェアの上位 5 ヵ国を見てみると、中国(468.0 万トン、
38.5%)、インド(98.7 万トン、8.1%)、米国(93.7 万トン、7.7%)、日本(69.1 万トン、5.7%)、
タイ(60.1 万トン、4.9%)の順となっているが、近年の天然ゴム需要拡大の牽引役は、やはり中国である。
中国の天然ゴムの消費量と輸入量は、急速な経済成長を背景に右肩上がりで伸長し、その伸び率は群を
抜いている。この 20 年間における天然ゴム消費の増加分は 300 万トンを超え、その増加分は米国の年間消
費量の 4 倍に達する。世界最大の消費国は 2000 年までは米国であったが、2001 年に逆転して中国となっ
た。その後の中国の毎年の急増により、2010 年には米国の 5 倍以上に膨らんでいる。また、中国の天然ゴム輸
入量は、1999 年まで 40 万トン前後であったが、2015 年には 414.4 万トンにまで増大している。
2.天然ゴム主たる需要
天然ゴムは、様々な工業製品に使用されているが、その中で大きな比重を占めるのは、タイヤ用の需要であ
る。
天然ゴムの需要の推移をみると、2008 年のリーマンショックに端を発した世界的金融危機の影響で、米国や
日本の先進国の需要低下に伴って減少したが、その後は、中国やインドをはじめとした新興国の需要増加を受
けて堅調な推移を見せている。
同様に世界の自動車販売台数の推移をみると、2008 年のリーマンショックに端を発した世界的金融危機の
影響で先進国の自動車販売台数が、2008 年 2009 年と連続して落ち込んだが、その後は、新興国の販売
台数の増加を受けて同様の推移となっている。
その中でも中国は、WTO に加盟した 2001 年頃から所得水準の向上、道路インフラの整備や自動車に関
する関税引き下げによりモータリゼーションが急速に進み、2004 年に 510 万台(中国汽車工業協会の発表)
だった自動車販売台数は、輸入数量の制限が撤廃された 2005 年以降は、急速な経済成長に支えられて
2009 年には約 2.6 倍の 1360 万台に達し、2015 年には 2450 万台へとさらなる拡大を見せた。
その間、中国の天然ゴムの消費量は、1990 年代前半には年間 80 万トン前後であったものが、2000 年に
115 万トン、2004 年に 200 万トンを超え、2014 年には 451 万トンに達している。 中国の需要の増大が、
世界需要の拡大の要因となっており、その動向は無視できない。
さらに、新興国のうち 12 億人の人口を有するインドも自動車販売台数は世界第 6 位(2014 年中国汽車
工業協会発表)まで成長し、天然ゴムの消費量も世界第 2 位の 101 トンに拡大してきており、今後の経済発
展を含めて目が離せない存在となっている。
なお、ゴムの木の樹液である「ラテックス」からは、手袋、医療品などの生活用品が作られている。近年、鳥イン
フルエンザや新型インフルエンザなどの健康問題によってラテックスの特需が発生し、高値を記録したが、このよう
なラテックス価格の変動が天然ゴム価格全体に強い影響を与えるとともに、RSS 価格の変動要因になることもあ
る。
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3.世界の天然ゴム供給
2015 年の世界の天然ゴム生産量は、1,231.4 万トンとなった。旺盛な需要とゴム価格の上昇に支えられ、
2000 年以降、生産各国では増産傾向が顕著となっており、生産が拡大している。
現在の天然ゴムの生産国を生産量の多い順に並べるとタイ、インドネシア、ベトナム、中国の順となっている。
1980 年代まではマレーシアが世界最大の生産国であったが、タイが国家主導で天然ゴムの生産に力を注いだ
ことにより、1980 年代後半から劇的な増産が行われ、1991 年から 1992 年にかけての時期を境に、マレーシ
アはタイとインドネシアに抜かれ一気に第 3 位にまで後退した。中でも大きくシェアを伸ばしたのがタイで、1970 年
代までは 10%以下だったシェアが、現在では 30%を超えるまで拡大している。2015 年の天然ゴムの生産シェ
アは、タイ 36.4%、インドネシア 25.6%、ベトナム 8.3%、中国 6.5%となっており、これら上位 4 カ国合計で
76.8%を占めている。
タイでは、天然ゴム産業を国の基幹産業として位置づけ、天然ゴムは重要な輸出品目として政府が増産を
奨励している。特に 1990 年頃からマレーシアで開発された高収量クローンの導入・植え替えによって、単位面
積当たりの収量が飛躍的に増大し、それが増産の大きな要因となっている。また、ゴム樹栽培面積の拡張や内
需拡大にも積極的に取り組んでいる。
インドネシアは、ゴム樹栽培面積がタイの 1.2 倍と広大であるものの、単位面積当たりの生産性が低く、生産
量はタイの 86%程度に止まっている。近年は需要の伸びとゴム価格の上昇に支えられ、2002 年以降、順調に
生産を増加させてきた。リーマンショックによる世界的な金融不況の影響で 2008 年から 2009 年にかけて生産
量が減少したものの、近年は再び生産量は回復傾向にある。現在の生産性の低さを考慮すると、潜在的な生
産能力は最も高い国と考えることもできる。
マレーシアではマハティール政権が成立した 1981 年以降、工業化政策(ルック・イースト・ポリシー)がとられ、
これに伴い、脱一次産品化が進んだ。それでも 1980 年代は年間 150 万トン前後の天然ゴムを生産していた
が、1990 年代以降はゴム離れが顕著となり、2001 年の生産量はピーク時 1988 年の約半分の 88.2 万ト
ンまで減少した。しかし最近、政策転換がはかられ、ゴム樹栽培は国家目的に即した重要な役割を担うものとし
て見直され始めてからは、天然ゴムの生産量も徐々に回復しつつあったが、2007 年以降は再び減少傾向に転
じた。2014 年は 66.8 トン、2015 年は 72.2 万トンなっている。
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4.天然ゴムの供給国
天然ゴムは、ゴム樹から樹液を採取して生産されるため、ゴム樹の生育に適した赤道を中心とした南・北 15
度圏内の一年中高温多湿で強風の吹かない東南アジア、中南米、中部アフリカで生産がおこなわれてきた。
近年では、ゴム樹の品種改良も進み中国やブラジルでも栽培されているが、天然ゴムの純輸出国である主要
生産国は、タイ、インドネシア、ベトナム、マレーシアの 4 カ国で世界の天然ゴム生産に占めるシェアは 76.2%
(2015 年)と大部分を占め、一部の特定地域に生産が限られている特徴がある。
また、ゴム樹からの樹液の採取は、ゴム樹の植樹から数年後でなければ採取できず、急速な需要増加にも対
応し難いという側面を持っている。
したがって、東南アジアのそれも生産国での気象現象や景気動向等によって、この地域が生産減となると、大
幅な価格上昇を招くことがこれまでも度々あり、その生産に影響を与える要因について着目する必要がある。
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5.天然ゴムの需給に起因する過去の価格変動
(1)2001 年~2008 年
東京ゴム先限は 2001 年 11 月の安値 62.0 円を起点として上昇トレンドへ転換した。この上昇
相場は、リーマンショックが起こった直前の 2008 年 6 月の 356.9 円に至るまで継続し、結果的
に、約 4 年半で 5 倍を超える大幅な上昇に及んだ。
この最大の原因は中国の台頭である。中国の急速な経済成長とともに、天然ゴム消費が顕著に
拡大したことに伴い、世界の天然ゴム消費が急拡大するとともに天然ゴム需給も急激に引き締ま
ったことが価格の上昇につながっている。IRSG(国際ゴム研究会)の統計によると、中国の天然
ゴムの消費は、2000 年の 108 万トンから、2008 年には 294 万トンとなり約 3 倍の急拡大を記
録している。
参考までに、中国の国内総生産(GDP)は、2000 年の 1198 兆ドルから 2008 年には 4522 兆ド
ルへと鋭角に増大し、この 8 年間の増加率は約 3.8 倍である。このように中国の経済成長が伸び
た分だけ、天然ゴムの消費が伸び、構造的な供給不足を招き、急速な価格上昇をもたらした。
(2) 2008 年~2011 年
2008 年に米国でサブプライムローン問題が発生し、それが引き金となって未曾有の世界金融
危機が起こった結果、金融大手リーマンブラザーズが経営破綻し、
「リーマンショック」が引き起
こされた。これに伴い、多分野にわたる金融資産価値の暴落が起こり、この危機を打開するため、
米金融当局は 3 次に及ぶ量的緩和(QE)政策を実施した。この金融危機が起こる直前まで、300
円を大きく上回り 356 円台まで上昇していた東京ゴム先限は同年 12 月に一時 99.8 円まで下落
した。わずか約半年で 3 分の 1 以下まで暴落するに至った。
ところが、この 100 円割れの値位置から、東京ゴム相場は再び上昇に転じ、2009 年、2010
年、2011 年と 3 年連続で過去最大の上げ幅を記録する急騰となった。この結果、2011 年 2 月
に過去最高値となる 535.7 円を示現している。
この背景には、リーマンショックで一時的に落ち込んだ中国の消費が再び増大したことが挙げ
られる。2008 年から 2011 年に至るまでの中国の天然ゴム消費は 294 万トンから 362 万トン
(123%増)となった。同時に、2011 年時点の中国の消費規模は日本(2011 年の日本の天然ゴ
ム消費 77 万トン)の 4.7 倍もの規模に拡大した。
(3)2011 年~2016 年
2011 年に 535.7 円(先限)まで上昇した東京ゴム相場は、その後、約 5 年をかけて、2016
年 1 月に高値から 4 分の 1 の水準となる 144.5 円まで下落した。
この原因の一つは、2011 年頃を境にして中国の経済成長の速度が鈍るとともに、少しずつ景
気が減速したことにより、中国の天然ゴムの消費の伸びも緩やかになったことである。
また、もう一つの大きな原因は、天然ゴム生産国の増産である。2001 年の安値から 8 倍以上
にも高騰したゴム価格を受けて、タイ、インドネシアの大手生産国は、大増産に走り供給の急速
な増加につながった。
特にタイでは、それまで生産地として適さないと考えられていたルーイ県を中心としたタイ北
部にゴム園を開発して増産体制を強化する動きを示した。
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なお、IRSG(国際ゴム研究会)の統計では、2010 年に 39 万トンの供給不足となっていた状
況から、2011 年に 5 万トンの供給過剰に変化し、2012 年が 58.7 万トン、2013 年は 69.4 万
トンと供給過剰が拡大する状況となている。
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第 2 節 最近のゴム相場の変動要因(トピック)
本節では、最近のゴム相場の変動要因として挙げられた主なトピックと価格の動きについて解説する。
1.世界最大の消費国・中国の景気減速
上海価格と TOCOM 価格
中国は世界最大の天然ゴム消費国であり、2015 年の消費実績は 468 万トンとなった。
これは、世界全体の消費量 1,234 万 3,000 トンに対して 39.1%に当たり、中国は世界の天然ゴムの約 4
割を消費する大国である。
したがって、中国の天然ゴム消費が落ち込めば、世界の天然ゴムの需給バランスが崩れる。2015 年 8 月に
中国の景気を判断する上での指標の一つである製造業購買担当者景気指数(PMI)が、2009 年 3 月以
来約 6 年半ぶりの低水準になり、中国では内需や輸出需要が減退し大幅な景気減速の可能性が懸念される
内容となった。
生産は約4年ぶりの低水準となり、国内・輸出受注の縮小も加速し、企業は人員整理を行った。
ゴム市場もこの影響を強く受け、中でも特に強い圧迫を受けたのが上海ゴム市場であり、2011 年 2 月の高
値 4 万 2,900 元から 2015 年 8 月には一時 1 万 1,060 元まで下落し、4 分 1 以下となった流れを受けて、
東京ゴム市場も売り圧力が強まり、同時期の価格でみると 528 円/kg から、168 円/kg と 360 円/kg
(約 68%)の下落となった。
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2.中国の上海ゴム市場での投機的な動きと規制当局の規制
中国では、2016 年 4 月から5月にかけて株式市場などに投資されていた大量の資金が、天然ゴムをはじめ
とした鉄鉱石、綿花、鶏卵等の商品先物市場に流入する投機的な動きが原因で、価格が急騰した。
そのため、中国証券監督管理委員会(CSRC)は、マーケットの更なる影響を懸念し、中国国内の主要先
物取引所に対し、投機的取引の制限を指示し、主要取引所では取引手数料など取引費用を引き上げること
で投機的な資金の流れを抑制する取り組みを進めた結果、価格は急落した。
中国は世界最大の天然ゴム消費国であり、中国の上海ゴム市場の価格変動の影響力は大きく、これを管
轄する中国規制当局の動向も注視する必要がある。
3.中国を震源地とした世界同時株安
CRB Index と TOCOM 価格
中国では、2014 年に表沙汰となったシャドーバンキング問題、理財商品への投資拡大に伴う金融不安問
題が表面化し、金融システム不安が広がるとともに、景気後退色が一段と濃くなり、世界的に投資の動きはリス
クオフの傾向が強まった。
中国の景気動向を示す指標となる上海総合指数は 2015 年 6 月半ばの 5,200 から急落し、7 月中旬に
は 3,400 付近まで大きく下落した。また、8 月下旬には記録的な 7%超の大幅下落となって一気に 3,500 を
割り込んだ。
この上海株の急落は、世界同時株安につながり、米国株式市場は、主要 3 指数が軒並み約 4%下げ、NY
ダウは寄り付き直後に 1,000 ドルを超える暴落となった。
また、世界同時株安からコモディティも連動安となり、コモディティの主要な指標である CRB 商品指数も一時
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185.13 まで下落した。この安値は 8 月上旬の高値 202 からは 8.4%安、2011 年の高値 370 からはちょう
ど 50%安である。4 年で半値まで下げたことを意味する。東京ゴム市場では、同時期に 528 円/kg から 168
円/kg と約 68%値位置を下げている。
4.原油相場の下落を受けた連動安
WTI と TOCOM 価格
原油相場もゴム相場に影響を与えたと考えられる。
過去の原油相場とゴム相場との相関係数は高い正の相関となっており、原油が下落するとナフサ安、合成ゴ
ム安の動きとなり、それに伴い天然ゴムも連動して下落する確率が極めて高くなる。
2015 年に入って原油相場は、米国やカナダの北米を中心としたシェール革命が起こったことに起因する原油
需給の緩和が価格の下落に拍車をかけた。
さらに、原油価格が下落を続けているにもかかわらず、OPEC が生産調整に踏み切らず、生産枠を維持する
政策をし続けていることが供給過剰に拍車をかける結果となり、WTI 原油は 2015 年の年初の 52 ドル/バレ
ルから 8 月には約 6 年半ぶりの安値となる 36 ドル/バレルまで下落した。東京ゴム市場もこの流れに追随するよ
うに 214 円/kg から 168 円/kg と約 21%値位置を下げた。
なお、その後は WTI 原油の上昇傾向を受けて、2016 年 2 月の安値を起点として天然ゴム相場は上昇に
転じている。
WTI 原油は、2016 年 6 月に一時 51.67 ドルまで上昇し約 11 カ月ぶりの約高値をつけ、その後一時修
正安となったものの 9 月に開催された石油輸出国機構(OPEC)総会で加盟 14 カ国の減産合意を受けて 9
月中旬から再び上昇に転じ、10 月には一時 51.93 ドルまで年初来高値を更新する上昇となったが、東京ゴム
相場も 7 月の 145.9 円/kg から 10 月中旬には 184.6 円/kg と約 27%上昇している。
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5.産地タイなどのアジア通貨安
ドル・バーツと TOCOM 価格
タイ、マレーシア、インドネシアの主要な天然ゴム産地国の通貨安も圧迫する要因の一つとなっている。現地
通貨が下落すると、同じ現物成約価格であれば通貨が下落する分だけ収益が増し、また現物成約価格が下
落しても通貨安で損失分が補填されるため、輸出業者や生産者は安売りしても耐えられる状況となる。
このため、タイなどが増産期を迎えて供給量が増え、対外的なオファー価格を安唱えすることができるのは、通
貨の下落に助けられているためである。
参考までに、2015 年のチャイナショックにより新興国通貨が全面安となった流れに沿って東京ゴム市場価格
も連動安となる情勢を呈した。
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第 3 節 季節的変動要因
第 1 項 各地域における季節的変動要因
ゴムの樹液は、原則 1 年を通じて生産される。しかし、生産周期があり、ひとつは、一般的に落葉期(ウィンタ
リング)から 1 ヶ月程度ずれた時期の「減産期」、もうひとつは、多雨季の「増産期」、これ以外の時期は通常の
生産期となる。
1.タイのウィンタリング等
① ウィンタリング=落葉期又は減産期
11 月から 12 月頃に雨季が終了すると、タイでは乾季が到来し、その後、4~6 月の間は減産期に入る。ゴ
ムの木の古い葉が落ち、新芽の準備のため樹液の出が悪くなることと、ゴム樹の保護という観点から、生産者は
タッピング(樹液の採取)を一時的に休止する。このため、天然ゴムの生産はこの時期著しく低下することにな
る。
② 通常の生産期
タイでは、5 月頃から雨季に入り雨量が増えるとゴムの木の新芽が出てその成育が早まり、タッピングが開始さ
れる。7 月から 10 月頃までの通常の生産期では、ひどく生産が落ち込むこともないが、増産にも至らない生産状
況が続くことが多い。
③ 増産期
年末の 10 月~12 月にかけて多雨季に入り、それが明けると 1 月~3 月にかけて大増産期になる。雨季明
け直後は最も樹液が採取でき、ゴムの生産量も増加することになる。従って、在庫の積み増し時期でもあり、在
庫の激増により需給バランスが崩れることもままある。但し、異常な雨量になると樹液の採取そのものが行えない
こともあることに注意する必要がある。
2.マレーシア・インドネシアのウィンタリング
タイの落葉に続き、マレーシアやスマトラ北部でもやや遅れて落葉し、ウィンタリングに入る。その他のインドネシ
アでのウィンタリングは、スマトラ北部ではマレーシアと同様で、南半球地域では 9 月~11 月前後で、生産地帯
が広大であるため、全体としての生産量の落ち込みは表れにくく、減産幅は 1 割程度と言われている。
以上の主要生産国におけるウィンタリングの時期や生産量は、季節的変動や価格動向によって、年によって
異なっていることに留意する必要がある。また、特に乾季が長引き減産が予想される場合には、結果的に極端
な減産期となり、「ハード・ウィンタリング」、または「ダブル・ウィンタリング」と呼ばれ、需給タイト化の兆しと見られて
いる。
第 2 項 異常気象
近年の地球温暖化等により世界的規模で異常気象現象が発生し、地域的な大雨や干ばつが繰り返される
ことによって、天然ゴムをはじめ多くの農産物の生育に悪影響が及ぼされている。
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特に、ウィンタリングの時期に異常気象が重なると、超干ばつや大雨による洪水の被害が甚大になる。WMO
(世界気象機関)によれば、竜巻、高潮、熱波などの災害によって、500 億から 1,000 億ドルの損害が出て
おり、その被害の多くがアジア地域に集中しているとの統計がある。代表的な異常気象として「エルニーニョ現象」
「ラニーニャ現象」がある。
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第 4 節 世界の景気と自動車タイヤの生産
ゴムの基本的な需要の要因は、世界の景気動向、とりわけ自動車の生産・販売台数に左右される。特に、
天然ゴムは 70%以上がタイヤの生産に使われており、自動車の生産台数等の動向に大きな影響を受けてい
る。
その自動車の生産台数は経済成長や景気動向に伴うところが大きく、世界最大の自動車生産国・天然ゴ
ム消費国となった中国、主要な自動車生産国である米国と日本や欧州における景気動向と自動車の生産・
販売台数は最も注目すべきと言える。
世界最大の消費国である中国では、政府が、2015 年 10 月から 2016 年末まで、景気てこ入れのため、
排気量 1600cc 以下の小型乗用車を対象に自動車取得税の税率を半分にした。中国自動車工業協会が
まとめた 2016 年 9 月の新車販売台数は前年同月比 26.1%増の 256 万 4000 台となっている。
なお、一般的に日・米・欧のタイヤ・メーカーの工場稼動は、季節によって変化し、夏季休暇やクリスマス休暇
の時期は、ゴムの買い付けを控え、秋口と年初は稼働率が高まり、ゴムの買い付けが活発になる。
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第 5 節 為替動向
ゴムの貿易取引は、FOB シンガポールベースで値決めされ、その価格指標となっているのがタイ・オファー価格
と東京商品取引所のゴム市場の先物価格である。双方の価格が相互に影響し合って価格形成されていること
は勿論のこと、その双方の価格を参考に貿易価格が決定しているが、タイ・オファー価格もシンガポール価格を参
考にしているので、これら三つの価格関係は三つ巴の影響関係になっていると言える。
生産者はタイ・バーツとインドネシア・ルピアで、輸入国はドル、ユーロ、円、元などの自国通貨で最終決済する。
その交換レートになる為替の動きは、ゴム市況に直接的な影響をもたらすため、その動向を注視することも重要
になる。例えば、東京商品取引所のゴム相場動向を見るとき、為替相場がドルに対し円安となれば相場の上
昇要因となり、逆に円高となれば、相場の下降要因となる。これと同様に産地の通貨の動きによって、産地から
提示される提示価格(オファー)にも変化が出てくる。過去の例では、1997 年 7 月に始まったタイ・バーツ危機
は、インドネシア・ルピア、マレーシア・ドルの暴落を呼び、さらに、一連の通貨安がアジアに金融危機をもたらした
が、これを背景に東京商品取引所のゴム相場は、1996 年から 2000 年までの 4 年間、価格低迷が続いた。
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第 6 節 ゴムと石油の関係
第 1 項 石油・合成ゴム・天然ゴムの価格関係
石油価格が高騰すると、ゴム価格は上昇し、逆に石油安となるとゴム価格が下落するという連動性が見られ
ることがある。その要因は、合成ゴムと天然ゴムの相互代替(100%ではない)の関係で、合成ゴムは石油製
品である石化原料のナフサから作られるため、一般的に原油や石油製品価格が上昇するとナフサの価格も上昇
し、合成ゴムの価格上昇に繋がる。しかしその後、逆に、合成ゴム価格が上昇しすぎると天然ゴムの割安感が強
まり、天然ゴムの需要が増加し、天然ゴム価格が上昇するという循環になる。一方、石油安であれば、合成ゴム
の価格が下がってその需要が増加し、天然ゴムの価格を押し下げる要因にもなる。ただし、2008 年秋以降は、
各商品の価格が全般的に似た動きを示す傾向にあり、このような関係は明確には現れなくなっている。
第 2 項 原油高とインフレ懸念
原油高によるインフレも天然ゴムの価格に影響を与える。原油高によって、コスト・プッシュ型のインフレ経済が
呼び込まれ、この流れによって天然ゴムを含めた一次産品価格が上昇するという流れである。過去のケースでは、
1973 年と 1979 年の 2 度にわたり、石油危機が起こったが、当時の天然ゴム価格もそのトレンドに乗じ、第二
次オイル・ショックの 1980 年 2 月に上場来最高値(東京ゴム先限・388.9 円)をつけた経緯がある。
NY 市場の WTI 原油期近は、2008 年 7 月に 147 ドルを記録して、過去最高値を更新する状況となった
が、それ以後、世界的な金融危機による市場における過剰流動性の解消と、金融危機に端を発する世界同
時不況による石油需要の減退などが相乗効果となって、2008 年 12 月には 30 ドル割れ目前まで水準を大幅
に引き下げた。しかし、同月 19 日に 32.40 ドルで底入れした後は、世界的な景気回復基調とドル安傾向によ
り再び上昇基調に転じ、2011 年 5 月 2 日には 114.83 ドルまで上昇した後、2014 年前半まで 75~100
ドル前後のレンジで推移してきたが、増産による供給過剰から値を下げ、2016 年 1 月には一時 30 ドルを割り
込み、2016 年 10 月現在は 50 ドル台となっている。
18
第 7 節 地政学的リスク
第 1 項 地政学的リスク要因
2001 年の米国同時多発テロ以降、世界的に地政学的リスク要因は高まっている。
最近では、過激派組織イスラム国(IS)をはじめとした、中東地域を中心に地政学的リスク要因が噴出し、
世界全体に先々の不透明感を与えているが、ゴムの主要生産国においても、様々な政治的・宗教的な不安
要素を抱えている。
タイでは、タクシン元首相が伝統エリート層や保守層の反発を招き,職権濫用や汚職の噂に端を発した政
治的な混乱の中、2006 年 9 月軍部によるクーデターが発生した。2007 年 12 月に下院議員選挙が行われ
民政復帰が実現したものの、タクシン元首相系の政府に対し,再び反対運動が高まり、2010 年 4 月デモ隊と
治安部隊との間で衝突が発生し、多数の死傷者を出す事態となった。この一連の混乱による死亡者数は,約
90 名にのぼった。
その後、2011 年 8 月タクシン元首相の実妹のインラック氏を首相とする政権が発足し、2012 年まで比較的
安定的に政権運営を行われたが、2013 年に大規模な反政府デモが繰り返され、バンコク都内各地で大規模
な路上デモが行われ、首相府他の政府庁舎が占拠される事態に発展し、タイ国内の商流・物流に大きな悪影
響があった。
その後もタイ国内では、都内のデモ拠点において死傷者が発生する等緊張が高まり、2014 年 5 月軍事クー
デターが発生し、現在も軍事政権が続いているが、2016 年 8 月には、連続爆破テロが発生しており、未だに政
情不安は解消されてない。
また、タイは「国王を元首とする民主主義制度」を統治原則としているが、タイの国民からの絶大な信頼と敬
愛を受け、70 年間タイ政治の調整役であり、タイ社会の安定の要となっていたプミポン国王が、2016 年 10 月
に死去したことで、今後、タイ社会に動揺が広がる可能性もあり、政治・経済情勢の動向には、注意を払う必
要がある。
インドネシアは、人口は 2 億 3000 万人を超える世界第 4 位の国であり、多民族国家で大多数をマレー系
が占めているが、世界最大のイスラム教徒(ムスリム)人口を抱える国としても知られている。
インドネシアでは、過去、過激派組織が各地でテロを行うなど、治安の悪化が外国からの投資を妨げていたが、
近年の経済発展要因のひとつに、国内の過激派の押さえ込みに成功したことが挙げられている。
しかし、最近では、ISIL が出現し、世界最大のムスリム人口を抱えるインドネシアで、若者に対する勧誘活動
が活発化したことで、弱体化しつつあった国内のテロ組織が再び活発化する可能性が示唆されている。
マレーシアでは、近年、大規模テロは確認されておらず、治安情勢は比較的安定しているとされるが、過去に
は、2001 年にイスラム過激組織が摘発されたほか、2002 年までに 80 人以上のイスラム過激派活動家が拘
束されたとされる。
近年、このマレーシアでも ISIL 関連の摘発が増加しており、シリアにおいては、マレーシア人やインドネシア人な
ど、マレー語圏出身者で構成される ISIL の部隊が新たに結成されたとの報道もある中、今後、過激派のネット
ワークが再構築され、活動が活発化することが懸念される。
19
第 8 節 市場介入
1.生産国政府の市場介入
生産国政府による市場介入の歴史は古く 1920 年代に大英帝国インド庁による市場介入が行われている。
1970 年代の第一次石油ショックの後には、当時の最大生産国であったマレーシアの政府により3度の市場介
入が行われた。
1990 年代後半にはタイ国政府により市場介入が行われた。同国政府は、その後も市場介入を行っており、
最近では 2012 年と 2014 年に市場介入を行っている。
最近の市場介入では、2016 年 2 月 4 日の天然ゴム主要生産・輸出国であるタイ、マレーシア、インドネシ
アで構成された国際 3 カ国ゴム協議会(ITRC)における閣僚会議で、低迷する価格の引き上げを目的に、3
月から 8 月までの 6 カ月間にわたり輸出量を 61 万 5000 トン減らす(月平均では 10 万 2500 トンの輸出
削減)で合意した。
天然ゴム国際価格は、供給過剰を背景にして価格下落が顕著となりシンガポール TSR 期近は 2016 年 1
月時点で一時 102 セント台まで下落を強め、2008 年 12 月の金融危機以来の低水準まで落ち込んでおり、
生産大手が協調して輸出を制限することによる価格上昇を狙ったものである。
輸出削減量は、国ごとの輸出量に合わせて、タイが 32 万 4000 トン、インドネシアが 23 万 8740 トン、マレ
ーシアが 5 万 2260 トンと割り振られた。また、3 カ国は、輸出量を削減することで余剰となった天然ゴムを国内
消費するよう努力することについても合意した。国内消費は主に、道路や鉄道建設用、港湾施設用などのイン
フラ整備にあてる方針とされている。
なお、2016 年 8 月一杯で ITRC 加盟の生産大手による輸出削減策が失効することとなっていたが、7 月に
9 月から 12 月までの 4 カ月間、削減策を延長することで合意がなされており、。この間の合計削減量は 3 カ国
合わせて 8 万 5000 トン(月平均では 2 万 1250 トン)に設定されている。
2.国際機関による市場介入
天然ゴムの緩衝在庫の購入・売却操作によって価格の安定を図り、安定供給の持続性を確保するため、
1979 年に国際天然ゴム協定(INRO)が成立した。しかし、INRO は、消費国が構成国の半数を占めてい
たことなどから、価格安定制度の維持に困難が生じ、1999 年に解散した。
2002 年 8 月、タイ、マレーシア及びインドネシアの 3 カ国は、現物買い付けや供給量の調整(生産量と輸
出量の削減)を行うことでゴム価格の高値安定化を図り、もって生産者(とりわけスモールホルダー)の収入確
保することを目的に 3 国間国際天然ゴム公社(International Tripartite Rubber Corporation:
ITRCo)を設立した。
2003 年 10 月、ITRCo は国際ゴム公社(International Rubber Consortium Limited:IRCo)
となり組織・名称変更がなされた。
20
第 2 章 新ゴムの需給及び需給データ
本章では、ゴム製品の原料としてのゴムのうち、再生ゴムや屑ゴムを除外した新しいゴム原料である「新ゴム」
の需給について説明する。新ゴムは、天然ゴムと合成ゴムに大別される。
第 1 節 世界の新ゴム需給
東京商品取引所で上場されているゴムは、天然ゴムである「RSS」なので、主に世界の「天然ゴム」の需給を
把握することが重要になる。しかし、天然ゴム同様、タイヤ等のゴム製品の原料になっている「合成ゴム」の消費
比率は天然ゴムを上回っており、合成ゴムの需給動向にも注目する必要がある。
合成ゴムは石化原料のナフサから作られるため、シンガポール・ナフサ(OTC 市場)や東京オープンスペック・
ナフサ相場の影響を受けやすい特徴がある。
第 1 項 新ゴム(天然ゴム+合成ゴム)の需給
1.需要
(1)天然ゴムと合成ゴムの消費比率
2015 年の世界の新ゴムの消費量は 2,673.1 万トン(内、天然ゴムは 1,216.7 万トン、合成ゴムは
1,456.4 万トン)で、新ゴム消費量のうち、天然ゴムと合成ゴムの消費比率は、ここ 10 年間は、ほぼ 4:6 で
推移している。
(2)需要全体の傾向
1990 年以降、世界の新ゴムの消費量は平均 2%程度の伸び率を示しているが、年によって増減の起伏が
激しく、1995 年、2000 年、2003 年、2004 年は 5%以上の成長を記録したものの、1990 年、1991 年、
1993 年、1998 年、2001 年はマイナス成長となった。2002 年以降は概ね拡大傾向にある。
(3)需要拡大の牽引役としての中国
近年の新ゴム需要拡大の大きな要因は、中国の消費量の増大にある。中国は 1990 年代半ばから加速度
的に消費量を伸ばし、1997 年には日本を抜いて世界第 2 位の消費国となり、さらに 2001 年には米国をも追
い抜き、世界最大の消費国となった。2015 年の中国の新ゴム消費量は 881 万トンで、世界全体の 33%を
占めるまでに至っている。
21
22
2.世界の新ゴム供給
(1)天然ゴムと合成ゴムの生産比率
2015 年における世界の新ゴムの生産量は 2,677.4 万トン(内、天然ゴムは 1,231.4 万トン、合成ゴム
は 1,446.0 万トン)で、前年の 2,629.4 万トンから 1.8%上昇した。近年の新ゴムの生産量における天然ゴ
ムと合成ゴムの比率も、消費量におけるそれと同様、概ね天然ゴムが約 40%、合成ゴムが約 60%という割合
になっている。
(2)供給全体の傾向
1990 年以降、世界の新ゴムの生産量は平均 2.5%程度の伸び率を示しているが、1995 年を境に横ばい
から上昇のトレンドに入ったという傾向が見てとれる。すなわち 1990 年代半ばまでは、世界の新ゴムの生産量は
1,500 万トン前後で推移していたが、1990 年代後半から増加のトレンドに入り、特に今世紀に入ってからは、
世界的に旺盛な需要拡大に応えるかたちで、生産量の伸び率も高まっている。こうした近年の新ゴム生産量の
増加は、天然ゴムと合成ゴム双方の増産によって支えられている。合成ゴムは原料である原油が 2008 年に
100 ドル/バレルを突破してから一時減少に転じたが、同年の世界同時不況からの若干の持ち直しにより、
2009 年後半から回復傾向を示しており 2012 年から 2015 年にかけての生産量も増加となった。
(3)在庫数量
新ゴムの生産量については、天然ゴム・合成ゴムともに増加傾向にあるのに対して、在庫率に関しては、天然
ゴムが 1999 年をピークに減少傾向を示し、合成ゴムは 1993 年以降上昇傾向を示しているといった異なる傾
向が見られる。
23
第 3 項 合成ゴムの需給
世界の合成ゴムの消費量は 2015 年の数値で 1,456.4 万トンと、天然ゴムより多い。1980 年代までは合
成ゴムの割合は天然ゴムの 2 倍前後の消費量で推移していたが、天然ゴムの価格が 1980 年代以降 2000
年代前半まで 20 年以上にわたって安値低迷を続けてきたこと、また新ゴム全体の需給規模が拡大してきたこと
から、天然ゴムの比率が高まり合成ゴム比率は相対的に減少しつつある。
合成ゴムの需給推移のグラフを見ると、全体に天然ゴムよりも起伏が大きく、特に 1980 年から 1982 年、
1990 年から 1991 年、1992 年から 1993 年の各時期には大きな落ち込みが見られた。これは一般に、天然
ゴムよりも合成ゴムのほうが景気に左右されやすいことを示していると考えられる。また在庫量は、この 20 年間、
ほぼ右上がりの傾向をたどっており、2007 年に 300 万トン台に乗せ、2015 年末には 343.2 万トンとなってい
る。在庫率は近年、減少傾向にある。
出所:IRSG
24
出所:IRSG
1.需要
1990 年代以降の世界の合成ゴム消費量は、1993 年の 862 万トンを底にほぼ拡大を続け、2015 年に
は 1,456.4 万トンとなった。2015 年の合成ゴムの消費量およびシェアの多い上位を順に並べると、第1位に中
国(412.5 万トン、28.3%)、第 2 位に米国(196.9 万トン、13.5%)、第 3 位に日本(89.6 万トン、
6.2%)、第 4 位にドイツ(60.6 万トン、4.2%)、第 5 位にインド(54.9 万トン、3.8%)、第 6 位にロシ
ア(53.5 万トン、3.7%)となっている。
2.供給
世界の合成ゴムの生産量は、今世紀に入ってから増加の一途をたどり、2007 年には 1,334.7 万トンを記
録した。近年は原油、ナフサの価格高騰を背景とする原料コストの高まりに伴い、合成ゴム価格も上昇し、合成
ゴム・メーカーの増産意欲を促していたが、原料モノマーの逼迫により生産が伸び悩み、その後エネルギー価格が
落ち着いてきたことや世界的な景気悪化による需要減などにより、2008 年秋以降は生産量が減少傾向にあり、
2009 年は 1,240.9 万トンと 2005 年の水準近くまで低下したが、その反動で 2010 年に増加に転じると、
2015 年は 1,446 万トンと過去最高を記録した。
25
第 2 節 日本の新ゴム需給
第 1 項 新ゴム(天然ゴム+合成ゴム)の国内需給
1.需給規模
2015 年の国内における天然ゴムと合成ゴムを合計した新ゴム消費量は 158.6 万トン(前年比 4.5%減)
で、これに輸出(同 3.7%増)を含めた日本の新ゴム総需要量は 242.9 万トン(同 1.8%減)であった。こ
れに対して天然ゴムの輸入量と、合成ゴムの生産量および輸入量を合計した「総供給量」は 251.7 万トン
(同 2.4%増)となっている(日本ゴム工業会等統計)。
2.天然ゴムと合成ゴムの比率
2015 年の日本国内における天然ゴムの消費量は 69.1 万トン、合成ゴムの消費量は 89.5 万トンとなって
おり、新ゴムの消費量全体に占める天然ゴムと合成ゴムの比率は、この 10 年間、ほぼ 4:6 の割合で推移して
いる。
かつて天然ゴムの比率は 30%そこそこ(1976 年に 31.5%)まで低下した時期もあったが、トラック・バス用
タイヤなど大型タイヤの生産量の増大と、タイヤのラジアル化の進展により、2001 年以降 40%台を維持してい
る。
3.用途
日本の新ゴムの約 80%はゴム工業関連向けの消費であって、そのまた約 80%がタイヤ部門で消費されてい
る。
ゴム工業関連でタイヤ部門以外の用途としては、自動車部品や産業用のゴムホース、ゴムベルトなどが、また
ゴム工業関連以外の消費とは、紙加工、合成樹脂製造ブレンド、繊維処理、電線、接着剤、塗料・顔料など
が、それぞれ挙げられる。
26
出所:日本ゴム工業会
<2015 年の部門別新ゴム消費量>
(単位:千トン)
27
第 2 項 天然ゴムの国内需給
1.需要
日本における天然ゴムの国内消費量は、ゴム需給調査会の統計によると 1980 年が 42.7 万トン、1990
年が 67.7 万トン、2000 年が 75.2 万トン、2010 年が 75 万トンとなっている。2008 年には 85.8 万トンま
で拡大したが、2009 年に大幅に減少した。2010 年は約 75 万トンまで回復したが、2012 年以降減少傾向
となっている。
日本のバブル経済が崩壊した 1991 年を境として 1992 年から 1994 年までの 3 年間は低迷したものの、
天然ゴムの消費量は、1995 年以降、再び増勢を示している。その天然ゴムの消費の約 90%はタイヤ部門が
占めている。
出所:日本ゴム輸入協会
2.供給
日本では天然ゴムの供給は 100%輸入に依存している。そのため、日本における天然ゴムの供給量は輸入
量そのものであり、2015 年におけるその数量は 68.2 万トンである。
次に国別に輸入比率を見ると(バラタ(※)等の天然ゴムを除く。)、2015 年の数字では、インドネシアが
全体の 62.4%を占め最も多く、2 番目はタイで 34.3%となっている。マレーシアは 1991 年までタイに次ぐ輸入
先であったが、1992 年以降はインドネシアに抜かれ、現在は 1993 年以降、増加傾向にあるベトナムとともに
0.6%程度にとどまっている。
タイは、もともと RSS の生産比率が高く、RSS 指向が強かった日本の需要家とちょうどマッチしていたため、天
然ゴムの輸入に関しては長年にわたって日本とは深い関係にある。現在、タイからの輸入の 57.9%が RSS で、
39.6%が TSR(Technically Specified Rubber:技術的格付けゴム) 、ラテックスが 0.7%、その他が
28
1.9 となっている。
また、インドネシアから輸入される天然ゴムの 97.4%は TSR である。
マレーシアはラテックスが 72.9%、RSS が 6.3%、TSR が 20.3%となっている。
2015 年の天然ゴム輸入の品種別構成比をみると、RSS が総輸入量の 20.5%、TSR が 76.6%、その他
が 2.2%、ラテックスは 0.6%となっている。RSS は 2000 年までは天然ゴムの輸入量の 50%以上を占めてい
たが、2002 年以降は TSR が RSS を凌ぎ、それ以降は TSR の比率が最も高くなっている。
※注:南米産アカテツ科のゴムの一種。主にゴルフボールのカバーに合成ゴムと混ぜて使われることが多
い
29
30
3.在庫
日本国内の天然ゴムの需給を判断する上で重要な役割を果たすのが、日本ゴム輸入協会が発表する「天
然ゴム営業倉庫在庫推移」である。毎月 10 日、20 日、月末の 3 回、港別の在庫量がまとめられている。
しかし、近年、大口需要家であるタイヤメーカーが、産地から直接ゴムを買い付け、港湾に陸揚げされたゴム
はコンテナ積みのまま陸送され、営業倉庫を経ずに直接タイヤ工場に搬入されるケースが増えてきている。そのた
め商社経由で輸入されるゴムの数量は、かつてに比べると大幅に減少している。
出所:日本ゴム輸入協会
第 3 項 合成ゴムの国内需給
1.需要
2015 年の日本における合成ゴムの国内消費量は 89.5 万トンであり、2008 年までの 10 年間はほぼ 110
万トン前後で推移していたが、2009 年に大幅に減少した後、2010 年には若干回復し、その後は再び減少傾
向にある。
国内のゴム工業用途のうち、天然ゴムの約 9 割はタイヤ部門で消費されており、合成ゴムの消費におけるタイ
ヤ及びタイヤ・チューブの割合は約 70%となっている。
2.供給
2015 年の日本における合成ゴムの供給量は 184 万トンであった。このうち、国内生産は 166.8 万トンで、
輸入は 16.6 万トンとなっている。
日本では天然ゴムが 100%輸入に依存しているのに対して、合成ゴムの供給量の約 90%は国産で賄われ
ている。
31
第4項 天然ゴムの主な需給統計データ
1.世界の需給統計データ
世界のゴムの需給統計としては、国際ゴム研究会(International Rubber Study Group=IRSG)*
が発表する「ゴム統計(Rubber Statistical Bulletin)」がある。この統計は、世界の天然ゴムの国別の供
給と消費、同じく合成ゴムの供給と消費、更に在庫や輸入、輸出別などを分類してデータが整理されている。
*【国際ゴム研究会の概要】
1.設立年月日:1944 年 8 月
1934 年より活動していた国際ゴム規制機構(IRRS)の発展的解消を受けて、1944 年 8 月に設立。
国際天然ゴム機関(International Natural Rubber Organization=INRO、1999 年 10 月
協定終了)は天然ゴムのみを対象としていたのに対し、IRSG は天然ゴムと合成ゴムを対象としている。
2.本部所在地: シンガポール
3.加盟国(2016 年 10 月現在):日本、EU、シンガポール、インド、ロシアなど
4.目的
(1)天然ゴムおよび合成ゴムの生産、消費、取引に影響を及ぼす問題を議論するフォーラムの開催、
ゴム市場およびマーケット・トレンドの透明性向上に資する世界のゴム産業の包括的な統計情
報の収集と普及
(2)目的達成に関連した他の国際団体との協働
5.最近の動き・今後の課題
(1)1999 年 10 月に国際天然ゴム協定が終了したため、INRO の活動の一部(一次産品共通
基金プロジェクト等)を引き継ぐことになり、活動規模が拡大した。
(2)事務局のホスト国である英国が 2008 年 6 月末をもって脱退したため、2008 年 6 月に事務
局をシンガポールへ移転した。
(出所:外務省 HP、IRSG 資料を元に東京商品取引所作成)
2.日本国内のゴム需給統計データ
国内の需給統計には、日本ゴム輸入協会が発表する「天然ゴム営業倉庫在庫推移」があり、10 日毎に公
表されている。近年、大手ユーザーは直接産地から天然ゴムを買い付けるケースが多く、営業倉庫に在庫され
ないゴムが増加する傾向にあることから、営業倉庫の在庫水準は過去の統計と比較すると極めて低くなっている。
したがって営業倉庫の在庫水準だけで国内の需給動向を判断することについては注意が必要になる。
一方、営業倉庫の在庫の中には、東京商品取引所のゴム指定倉庫在庫も含まれているが、指定倉庫の
在庫については、東京商品取引所が 10 日毎に発表している。これは、東京都、神奈川県所在の営業倉庫の
入庫、出庫及び在庫の統計データとなっている。また、この統計データには、RSS1 号、RSS2 号、RSS3 号、
RSS4 号、RSS5 号及びその他の等級別にした在庫明細も示されているので、先物市場における現物受渡し
による価格動向を占う上での参考資料にもなっている。
この他に、国内の需給関連統計としては、財務省が毎月月末近くに公表する「貿易統計」における天然ゴム
32
輸入通関実績、経済産業省が毎月発表する「ゴム製品統計」、一般社団法人日本自動車タイヤ協会が毎
月発表する「自動車タイヤ・チューブ生産、出荷、在庫実績」及び日本ゴム輸入協会が毎月発表している「月
別天然ゴム輸入統計」がある。
33
第 3 章 ゴムの商品知識
本章では、天然ゴム・合成ゴムの商品特性、歴史、生産・製造工程等について説明する。
第 1 節 ゴムの商品特性
第 1 項 天然ゴムと合成ゴム
自動車や航空機のタイヤ、各種産業用ゴム製品、競技用ボール、医療用手袋などゴム製品を作る原料には、
天然ゴム(Natural Rubber)と合成ゴム(Synthetic Rubber)が使用される。合成ゴムが主として石油
化学工業で生産される化学製品であるのに対して、天然ゴムはゴム樹(学名ヘベアブラジリエンシス=Hevea
Brasiliensis)から採取される一次産品である。いずれも強くて弾力性があり、金属や繊維、プラスチックなど他
の材料とは一線を画す材料であるといえる。
天然ゴムと合成ゴムの使用割合は、国際ゴム研究会(IRSG)の統計によると、2015 年の全世界のゴム消
費量(2,673.1 万トン)のうち天然ゴムは 1,216.7 万トンで 45.5%、合成ゴムは 1,456.4 万トンで
54.5%を占めている。天然ゴムの比率は 1960 年代半ばから 1990 年代まで 30%台(ただし 1978~
1980 年は 29%台)であったが、2000 年以降、40%台で推移している。
日本における天然ゴムの需要構造は、消費量全体の約 90%をタイヤ用途が占める。これに比べ合成ゴムで
は約 50%と小さく、天然ゴムのタイヤ依存度がきわめて高いことがわかる。天然ゴムの特性は一般的には弾力・
伸長・粘着・耐久性に優れていることだが、タイヤ用材料としては内部発熱が低く、破壊強度が大きく、また金属
との接着性がよいなどの特性をもっている。このため乗用車用の小型タイヤよりもトラック・バス用の大型タイヤに、
より多くの天然ゴムが使用される。
ゴムという言葉はチューインガム、アラビアゴムなどの植物性樹脂のガム( gum)からきている。ラバー
(Rubber)は英語で「こすって消す」(rub out)という意味で、字消しに由来する。またドイツ語でゴムを意
味するカオチューク(kautchuk)やフランス語のカオチュー(caoutchouc)はインディオの言葉で「涙を流す
木」を意味しており、ゴム樹が白い樹液を出すことに由来するといわれている。
34
第 2 項 ゴムの歴史
1.コロンブスの発見
ゴムを文明社会に初めて紹介したのはコロンブスといわれている。彼は 2 回目の新大陸渡航(1493~
1496 年)の際にハイチ島に上陸し、原住民の子供たちが弾むボールを使うのを見て、この奇妙なボールをヨー
ロッパに持ち帰った。しかしその時は実用化されることはなく、その奇妙な物質が本格的に注目され出したのはコロ
ンブスの発見から約 240 年後のことであった。
1736 年、フランスのパリ学士院は緯度観測のため南米に探検隊を派遣した。その一員だったラ・コンダミンは、
南米ペルー地方ではヘベーと呼ばれる樹木から樹液を採取し衣服や靴に塗り防水の役目を果たしているという
報告書と、黒い固まりをパリに送った。その後、次第にゴムは科学者たちの研究の的になった。
2.大英帝国のゴム支配
天然ゴムの学名は「ヘベアブラジリエンシス」という。もともと野生のゴム樹が繁殖したのはブラジルのアマゾン川
流域だけで、“黒い黄金”と呼ばれるほど高価な貴重品であった。
18 世紀から 19 世紀前半にかけ産業革命に成功したイギリスでは、天然ゴムの使用量は増加したが供給源
はアマゾン川流域に限られていたため、野生の天然ゴムを移植してイギリス圏である東南アジアでゴム農園を作り、
ゴムを独占することを企図した。
イギリスの H・ウィッカムは 1876 年、ヘベアブラジリエンシス(トウダイグサ科・ヘベア属・半落葉族)の種子 7
万粒を、禁輸政策をとっていたブラジルから持ち出すことに成功し、種子は直ちにイギリスの植物園に蒔かれ約
2,800 粒が発芽した。その苗木はセイロン島やシンガポールなどに運ばれ、これらが成長してマレー半島周辺が
栽培ゴム樹の母体となった。現在の天然ゴムが基本的にヘベア樹一種なのは、この時の事情によるものである。
オランダも帝国主義的な天然ゴムの移植・栽培を試みたが不成功に終わり、イギリスは第二次世界大戦で
日本軍が東南アジアを占領するまでの長い間、天然ゴムを独占することになった。
3.「加硫ゴム」の発見
原料ゴムにカーボン等の補強材を混合し、さらに少量の硫黄と助剤を加えて成形したのち加熱すると、強靭で
弾力性をもったゴム製品ができあがる。これを「加硫ゴム」と呼ぶ。また加硫前のゴムを「未加硫ゴム」という。この
加硫の発見が、天然ゴムの需要増大につながる結果となった。
加硫を発見したのは米国・コネチカット州生まれのチャールズ・グッドイヤーである。いくつか説があるが、その内
の一説は以下の通りである。グッドイヤーは 1839 年冬のある日、研究室で眠ってしまい、彼のゴム靴に薬品
(硫黄)がこぼれ、それがストーブによって加熱された。翌朝、彼が目を覚ますとゴム靴の弾性が強くなっているこ
とに気づいたというわけである。
さらに 4 年後の 1843 年には、イギリス人トーマス・ハンコックが加硫ゴムの本質がゴムと硫黄の化学結合の産
物であることを見抜き種々の加硫法を開発、ゴム加工技術としての加硫技術を確立した。これにより天然ゴムは
工業材料として需要が増加し、近代ゴム工業が本格的に開花することになった。ハンコックが“ゴム工業の父”と
呼ばれる所以である。
35
第 2 節 天然ゴムの種類と生産方法
天然ゴムはラテックス(Latex)、視覚格付けゴム(VGR=Visually Graded Rubber)、技術的格付
けゴム(TSR= Technically Specified Rubber)に大別される。また視覚格付けゴムの代表は RSS
(Ribbed Smoked Sheet)であるので、天然ゴムは①ラテックス、②RSS、③TSR の 3 種類に分類される
こともある。
1.ゴム樹の切り付け(タッピング)
ゴム樹は植樹してから 6~7 年で採液可能となり 12~14 年で最も多くの樹液を産出する。その後 25~30
年で産出が少なくなり植え替え時期となる。近年のクローン技術の進展により、収量の多い新種のゴム樹も開
発されている。
天然ゴムの生産は、ゴム樹の幹を特殊ナイフで切り付け、流出した樹液(フィールドラテックス=Field Latex)
を収集するところから始まる。具体的には、根元から 1 メートルほどの高さのところを特殊ナイフで 2mm ほど削り
ながら斜めに溝を切り付け、そこから滲出(しんしゅつ)する乳液状のラテックスを容器(カップ)で受け、収集する。
この採液法を「タッピング」と呼ぶ。ラテックスは日に当たると自然凝固してしまうので、タッピングは通常、早朝に行
う。
2.ラテックス(Latex)
タッピングにより収集されたフィールドラテックスには 25~30%のゴム分が含まれている。これに自然凝固を防
止するためアンモニア(安定剤)を加え、遠心分離機にかけ濃度を 60%程度に引き上げる。その濃縮された
液状のゴムをラテックスと呼ぶ。タイヤコードのディッピングをはじめ糸ゴム、ゴム手袋、あるいは接着剤などに使用さ
れている。
3.視覚格付けゴム(VGR):RSS
視覚格付けゴムは、品質格付けを「天然ゴム各種等級品の国際品質包装規格(通称グリーンブック)」と、
これに基づき調整された公式国際見本に準拠した視覚検査により行う。フィールドラテックスを凝固させシート状
に成型するので「シートラバー(ゴム)」とも呼ぶ。その中で代表的種類が RSS(燻煙シート)である。
RSS の生産方法は、まずフィールドラテックスに酸(蟻酸、酢酸など)を加えて凝固させたのち、シーティングロ
ールにかけ水分を絞り、厚みを調整(3~4mm)したうえ、別の波状成形ロールに通してシート表面に波状
(Rib)を作る。この波状がシートとシートの粘着を防ぐ役割を果たすほか、シートの水分乾燥を容易にする。こ
れを USS(Un Smoked Sheet、未燻煙シート)と呼ぶ。色は白色である。
次に、集められた USS を水洗いし付着した異物を取り除いたのち、燻煙室に 1 週間ほど吊るして燻煙・乾燥
する。そこでシートはアメ色または褐色になる。燻煙を終えたシート(Smoked Sheet)は一枚一枚等級ごと
に選別・格付けしたのち、計量のうえ成型用ボックスの中に積み重ねてプレス成型し、直方体のベールを作る。
出来上がったベールには、ベールとベールの粘着防止とマーキング下地のために白色のタルカンパウダーを全面に
塗る。このコーティングもグリーンブックに基づき行われる。1 ベールの標準的サイズは縦・横約 48cm×高さ約
60cm、重量は 111.11kg である。最後にマークを刷り込み、出荷される。
選別・格付けは、グリーンブックに基づき、外観、色、ゴムの中に含まれるゴミなどの不純物の度合いやキズ、燻
36
煙の程度により 1X 号、1 号、2 号、3 号、4 号、5 号に等級分けされる。1X 号が最上級品だが数量がほとん
どなく、実質 1 号から 5 号までの 5 等級に分類されることになる。このうち最も生産量が多く、国際取引量も多い
のが 3 号である。この RSS3 号は東京商品取引所、また海外ではタイ先物取引所(Thailand Futures
Exchange)(2016 年にタイ農業商品先物取引所(AFET)から移管。)とシンガポール取引所(SGX)
(2011 年 5 月にシンガポール商品取引所(SICOM)からゴム市場を移管)、および上海期貨交易所
(SHFE)に上場されている。
4.技術的格付けゴム:TSR(Technically Specified Rubber)
TSR は、技術的規格に基づき格付けされたもので、その形状から「ブロックラバー(ゴム)」と呼ばれている。マ
レーシアで開発され 1965 年から生産が開始された。マレーシアではこれを標準マレーシアゴム(SMR=
Standard Malaysian Rubber)と呼ぶ。SMR のほかタイ(STR=Standard Thai Rubber)、インドネ
シ ア ( SIR = Standard Indonesian Rubber ) 、 シ ン ガ ポ ー ル ( SSR = Standard Singapore
Rubber)、中国(SCR=Standard China Rubber)、ベトナム(SVR=Standard Vietnamese
Rubber)などの国別標準規格がある。
TSR は、等級により使用する原料構成が異なるのが特徴である。上級品ではフィールドラテックス 100%
(凝固させてから使用)や、純度の高い原料(凝固ゴム)を使用する。TSR20 など中級グレードでは、カップ
ランプ(ゴム液が収集カップの中で自然凝固したもの)か USS、あるいはそれらをブレンドしたものを原料に使用
する。
TSR の製造方法は、これら原料を機械で粉砕、細粒化し、水洗いしたのち、熱風により短時間で乾燥させ、
プレス成型してポリエチレンシートで包装する。成型後、ベールごとにサンプルを抜き出し分析試験を行い、その測
定結果から技術的規格に基づき格付けする。試験項目はゴミ・灰分・窒素含有量・揮発性物質・ウォーレス可
塑度・可塑度残留率で、これらすべてに合格したものに検査証明書が添付される。標準的なベールの大きさは
約 70×40×15cm くらいで、合成ゴムのベールとほぼ同じである。重さは 1 ベール 35kg あるいは 33.33kg が
主流である。
5.RSS と TSR の代替性
用途によっては TSR グレードと RSS グレードの物性に差が出る場合があり、各ユーザーのニーズにより使い分
けがされているのが現状である。日本国内ではタイヤやその他の自動車部品においては RSS の強度等の特性が
必要とされる用途があり、TSR に完全にリプレースすることが難しいケースもある。しかし海外ユーザーには同じ用
途であっても RSS を使用しないというケースもあり、ここはユーザーのニーズと言えなくもない。国内のタイヤ以外の
ユーザーの場合は歴史的に RSS を好んで使用してきた経緯もあり、どちらかといえば RSS の物性を好むケースが
多い。用途によっては物性的に RSS と TSR は同一ではないと認識しているユーザーも多くいるものの、ユーザー
の技術力等個別の理由による場合が多く、一概には説明できないのが現状である。
ただし、最近は RSS と TSR の価格差が一時的に大きく拡がり、TSR が大幅に割安となることが多いため、
タイヤメーカー等の大口ユーザーは、従来 RSS を使用していた用途を TSR でも代替できるよう技術的な改良を
進めている。
37
一口メモ
ここでゴムラテックスについて補足する。ゴムラテックスは水中にゴムが分散した懸乳濁液をいい、タイヤやゴムベ
ルトのコード用のほか塗工紙用、繊維処理用、プラスチック用、建築資材用、接着剤など需要分野は多岐にわ
たる。天然ゴムラテックスが世界で約 100 万トン、合成ゴムラテックスが約 200 万トン生産・消費されていると推
測されている。「ラテックス」という言葉はもともと“液体”を意味する中世ラテン語で、19 世紀の初めに植物学者
が樹木から出る乳状の液体に対して名付けた言葉である。19 世紀の後半からゴム工業でも用いられるようにな
った。
38
39
第 3 節 合成ゴムの種類と製造工程
1.合成ゴムの種類
(1)合成ゴム開発の歴史
合成ゴムは、天然ゴムの化学構造の研究からスタートした。1860 年に C.ウィリアムスが天然ゴムの基礎単位
がイソプレンであることを発見したことが契機となり、その後 1879 年から 1913 年にかけて多くの学者により合成
ゴムをつくる研究がほぼ確立された。合成ゴムの工業化は、天然ゴムの生産拠点を持たず天然ゴムの入手に苦
慮していたドイツや米国が中心となり進められた。2 つの世界大戦を経る過程で軍需用の資材として開発が進め
られ、また第二次大戦後は世界のモータリゼーションに伴い、自動車のタイヤや部品材料として多種多様な種類
が開発され発展してきた。
1933 年、ドイツの IG(イー・ゲー)社はナトリウム触媒を用いて最初の合成ゴム「ブナ S」(スチレンブタジエ
ンゴム=SBR)の開発に成功、翌 1934 年には耐油性ゴム「ブナ N」(アクリロニトリルゴム=NBR)の開発に
も成功している。こうしてドイツは世界に先駆け合成ゴムの工業化を果たした。この頃政権を握ったヒットラーは軍
需資材としてゴムの重要性を理解し、すべて軍需向けに増産の計画を推進、その結果、1943 年には「ブナ S」
の生産量は 11 万トンに達することとなった。
一方、米国では、第二次世界大戦までイギリスから天然ゴム、ドイツから「ブナ S」および「ブナ N」を輸入するこ
とができたが、1942 年に日本軍がマレー半島などを占拠したため天然ゴムの輸入ルートが絶たれ、またドイツと
の開戦によりブナ系ゴムの入手も不可能となった。このため当時のルーズベルト大統領が、合成ゴムの製造を国
家プロジェクトとして推進した結果、ブナ系ゴムの国産化に成功し 1945 年には 82 万トンの生産量に達した。こ
のゴムは、Government Rubber の頭文字をとって「GR-S」(SBR)および「GR-A」(NBR)と呼ばれ
た。また米国では 1931 年に、ナイロンの発明者であるデュポン社の W・H・カローザスが最初の本格的特殊合
成ゴムであるクロロプレンゴム(CR)の開発に成功していた。
このほか欧米では 1940 年代にアクリルゴム(ACM)、ブチルゴム(IIR)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、
1950 年代に入るとクロロスフォン化ポリエチレン(CSM)、フッ素ゴムなどの特殊合成ゴムが次々と開発された。
1954 年米国の化学会社数社がチーグラー・ナッター触媒を用いて新しい構造をもつポリイソプレンゴム(IR)
の開発に成功、このポリイソプレンゴムこそ、天然ゴムと同一の分子構造(シスポリイソプレン単位)をもつ「合成
天然ゴム」であった。
さて、日本で合成ゴムが国産化されたのは 1959 年で、翌 1960 年の生産量はわずか 2 万 3,000 トン。そ
の年の天然ゴム輸入量は 17 万 2,500 トンであった。その後、モータリゼーションの進展とともに合成ゴムの需要
は拡大し、国産化 7 年後の 1966 年には 23 万 2,700 トンを生産、その年の天然ゴム輸入量 22 万 9,000
トンを上回った。その後も順調に生産量を伸ばし続け、1978 年には 100 万トンの大台を突破した。近年は、
中国の急伸で相対的地位が下がったものの、それでもわが国の年間生産量は 166.8 万トン(IRSG 統計、
2015 年実績)に及び、中国、米国に次ぐ世界第 3 位である。
(2)合成ゴムの種類
合成ゴムの形態は、固形ゴムが大部分を占めるがゴムラテックス、液状ゴム、粉末ゴムなどの形態もある。これ
ら市販されている合成ゴムの種類は約 100 種類を超えるとされ、それぞれの特性を生かした使われ方をしている。
40
例えばタイヤ 1 本でも部材によって使われるゴムが異なる。代表的な種類はスチレンブタジエンゴム(SBR)、ポ
リブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、アクリロニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エ
チレンプロピレンゴム(EPDM、EPT ともいう)、ブチルゴム(IIR)などがあげられる。
機能別に分類すると「汎用ゴム」と「特殊ゴム」に大別できる。汎用ゴムは比較的安価で幅広い用途に使用さ
れるゴムの総称であり、タイヤ、履物、防振ゴムなど耐油性や高度な耐老化性などの性能を必要としない用途に
使用される。SBR、IR、BR がこの分類に属し、また天然ゴムもこの汎用ゴムに分類される。
特殊ゴムは、耐油性・耐熱性・耐候性など天然ゴムにない特性をもち、主に工業用品に用いられる IIR、
EPDM、CR、NBR に加え、卓越した耐油性や耐熱性をもち比較的価格の高いシリコーンゴムやフッ素ゴム、ア
クリルゴムなどがある。
(3)汎用ゴム
最大の汎用ゴムといえば天然ゴムだが、合成ゴムでは SBR が該当し、自動車タイヤの主原材料として天然ゴ
ムとともに必要不可欠な存在である。SBR には重合法(製造方法)によって乳化重合 SBR(E-SBR)と
溶液重合 SBR(S-SBR)があるが、一般に SBR といった場合は E-SBR を指す。
その特性は天然ゴムに最も近く、耐熱性・耐摩耗性にも優れ、また加工性が良く天然ゴムや他の合成ゴムと
のブレンドも容易というバランスのとれたゴムで、汎用合成ゴムの王様といえる。
しかし 20 年程前から天然ゴムの使用比率の高いラジアルタイヤが台頭し、またタイヤ自体の差別化が進むに
つれ標準化されたグレードは減少し、むしろ味付け(分子構造の設計)が自在な S-SBR を始めとしたスペシ
ャリティ製品のウエートが高まってきている。
BR はゴム弾性が最も高く、また耐摩耗性・耐屈曲性に優れるためゴルフボールのコア材料としても使用されて
いる。タイヤでは摩耗性の要求されるトレッドやカーカスに多く使用される。
IR は「合成天然ゴム」と称されるだけあり、天然ゴムによく似た、最もゴムらしいゴムと言われ、あらゆる用途で
天然ゴムの代替に使用されてきた。しかし天然ゴムとの価格競争が厳しく、なかなか需要は伸びてこなかった。
(4)特殊ゴム
IIR は空気を通しにくい性質(気体不透過性)から、かつてはタイヤのチューブ材料として使用されたが、チュ
ーブレスタイヤが一般的となった今日では、改良品種(塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム)が SBR や天然
ゴムとブレンドしてインナーライナーやサイドウォール用に使用されている。また、耐候性・電気絶縁性に優れること
から電線・電纜に、また振動減衰性を生かし防振・防音材などにも使用されている。
EPDM は唯一、耐油性でない特殊ゴムである。その特性は、耐オゾン性・耐候性・耐熱性・耐薬品性・低温
特性が優れており、自動車部品用途に需要を伸ばしてきた。
CR は耐熱・耐候・耐オゾン・耐油・耐疲労・耐焔性など全般にわたりある程度の特性をもつ、“丸みのあるゴ
ム”として工業用品を始め広い分野で使われている。また輸出も多く国内生産の半分以上を占めている。
NBR は耐油性特殊ゴムの代表である。耐油性のほか耐熱性、耐ガス透過性、電気特性、機械的強度に
優れることから、オイルシール、ホース、ダイヤフラム、ロールなど自動車部品や工業用品に広く用いられている。
シリコーンゴムは耐熱 200℃以上、耐寒マイナス 70℃以上と温度に極めて強いゴムである。また電気絶縁
性・難燃性・無毒性なども備えることから自動車部品、電子・電気機器部品、医療関係など幅広く使用されて
いる。
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アクリルゴムは自動車と自動車部品の進歩に伴い開発されたゴムである。耐熱性・耐潤滑油性・耐オゾン性
に優れた性質をもつ。
フッ素ゴムは 250℃以上の連続使用にも耐える、最も耐熱性に優れたゴムである。耐熱性以外にも耐油・耐
薬品・耐溶剤・耐焔・耐候・耐オゾンなどあらゆる性能で他のゴムを寄せ付けない高度な性質をもち、他のゴム
では耐えられないような過酷な環境で用いられる特殊ゴムである。
(5)合成ゴムの生産量
世界の合成ゴム生産量は 1,446 万トン(IRSG 統計、2015 年実績)で、21 世紀に入り増加傾向にあ
る。このうち日本は 166.8 万トンで世界の 11.5%を占めており、ここ数年は生産量に大きな変動が見られな
い。
近年、大幅に生産を伸ばしているのは中国とロシアである。中国は 2001 年に 105.2 万トンだったが、2015
年は 273.7 万トンまで大きく増加し 2008 年以降トップの座を維持し、ロシアも 91.9 万トンから 140.5 万ト
ンと増加を示している。
わが国では、合成ゴム総出荷量 141 万トン(日本ゴム工業会、2015 年)のうち SBR が約 68.1 万トン
で全体の 48.3%を占め、さらにそのうち 52 万トンが SBR ソリッド(固形ゴム)である。BR は 34.4 万トンで、
次いで EPDM が約 16.2 万トンとなっている。
2.合成ゴムの製造工程
合成ゴムの大半は石油化学工業で生産されるゴムである。原油を川上とすれば合成ゴムは最も川下に位置
する。原料からの流れをたどると、まず原油は石油精製会社で精製され、ナフサ、灯油、軽油、重油、液化石油
ガスなどの石油製品になる。このうちのナフサが石油化学工業の元原料になり、このナフサを 700~800°C の高
温で熱分解するとエチレン、プロピレン、C4 留分、C5 留分、分解油等に分離する。これらは“石油化学工業の
基礎製品”と呼ばれ、これらを原料として多くの誘導品が生産される。汎用ゴムの SBR と BR、耐油性特殊ゴム
の NBR は C4 留分から抽出されるブタジエンを主原料としている。
SBR では E-SBR、S-SBR ともにブタジエンとスチレンを原料とする。石鹸水の中で重合させて作る(乳
化重合法)のが E-SBR で、溶剤の中で重合させて作る(溶液重合法)のが S-SBR である。もう少し詳し
くみると、E-SBR はブタジエンとスチレンに水と乳化剤、開始剤などの薬液を加え、一定の反応率まで重合させ
る。そこから未反応なブタジエンとスチレンを回収してできたのがラテックスである。天然のラテックスはゴム樹によって
自然生成されるが、合成ゴムラテックスはこのように化学的に作り出される。
そのラテックスを濃縮すれば乳化状の SBR ラテックスとして出荷されるが、濃縮せずに劣化防止剤や伸展油を
加えて凝固させ、細かい固まりにしたのち、脱水→乾燥→計量・成型→包装の手順を経れば、固形の SBR と
して出荷されることになる。E-SBR の場合、通常の結合スチレン含有量は 23.5%であるが、スチレン含有量
が 50~60%と高い SBR をとくにハイスチレンゴム(HSR)と呼び、主にレーシングタイヤのトレッドコンパウンドと
して使用される。
BR も同様にブタジエンが原料である。これに溶剤、触媒を反応器に入れ連続的に重合する。得られた重合
物から未反応ブタジエンおよび溶剤を除去し、乾燥→成型工程を経て包装される。NBR はブタジエンと繊維原
料でもあるアクリロニトリルを原料とする。
IR は C5 留分から抽出されるイソプレンを原料とする。溶剤に原料モノマー(イソプレンモノマー)を加え有機
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金属化合物を触媒として溶液重合法により重合する。このポリマー溶液から未反応イソプレンと溶剤を回収し、
得られたゴムを脱水→乾燥→計量・成型→包装して製品となる。EPDM はエチレンとプロピレンの共重合体に
第 3 成分を少量加え溶液重合法によって作り出される。
43
3.合成ゴムと天然ゴムとの代替性
タイヤの品質面で天然ゴムが合成ゴムと比べ①接着性に優れている、②内部発熱の度合いが低い、③破
壊強度が優れている、などの特徴があり日本ではタイヤ製造において、天然ゴムの比率が若干高くなっている。ま
た、一般的に、比較的小径な乗用車用タイヤでは合成ゴムの比率が高く、トラック・バス用の大径のタイヤでは、
天然ゴムの比率が高いといわれている。
各ユーザーにより、天然ゴムと合成ゴムの代替性は異なるが、一般的には天然ゴムはその特性上、合成ゴム
のスチレンブタジエンゴム(SBR)との代替性が高いといわれている。タイヤ用途では、全体のゴム使用量の数パ
ーセント程度は天然ゴムと合成ゴムの代替ができると言われており、メーカーは価格差に応じて使い分けをしてい
る。一般的にはバイアス(クロスプライ)タイヤのほうがラジアルタイヤに比べ柔軟に代替できるが、ラジアルタイヤ
の場合には代替できる部分がより狭くなる。
合成ゴムはナフサあるいはポリマー市場の価格がベースとなること、ユーザーの代替基準(価格差)もまちまち
であることから天然ゴムとの理論的な価格差を具体的に導き出すことは難しい。
44
第 4 章 ゴムの商流と物流
第 1 節 天然ゴムの生産地域
ゴム樹は赤道を中心とした南・北 15 度圏内の一年中高温多湿で強風の吹かない東南アジア、中部アフリカ、
中南米などの熱帯地方で栽培されてきたが、近年では品種改良により北緯 18 度以北に位置する中国の海南
島(北緯 18-20 度)や雲南省(同 22 度以北)、あるいはブラジルのサンパウロ(南緯 25 度)でも栽培
されるようになってきた。
ゴム農園の栽培面積は世界全体で約 1,271 万 ha である。このうちインドネシアが 360.6 万 ha と世界最
大で、第 2 位はタイの 281.6 万 ha、第 3 位は中国の 114.7 万 ha、第 4 位はマレーシアの 106.5ha で、
上位 4 カ国で全世界の約 7 割を占めている。エステートと呼ばれる 100 エーカー(約 4,047 ㎡)を超えるゴム
農園よりもスモールホールディングと呼ばれる 100 エーカー未満の小規模ゴム園のほうが栽培面積の大部分を占
めている。
生産品種はその国の生産構造によって異なる。マレーシアではラテックスと TSR が多く、インドネシアでは TSR
が大半を占め、いずれも RSS の割合は低いと推測されている。RSS の生産比率が高いのはインドとスリランカで
ある。タイでは伝統的に、スモールホールディングの大半がアンスモークトシート(USS)を生産しているという事
情があり、長年シートゴムを好んで使用してきた日本ではタイからの RSS の輸入が多くなっている。しかし、タイで
も近年は需要構造の変化に対応して、2015 年は生産量の 4 割近くを TSR が占め、RSS は 2 割程度となっ
ている。
45
46
第 2 節 天然ゴム産地の物流経路
ここでは、非常に物流経路が複雑なタイを例にとって産地での物流の状況を紹介する。一般にエステートでは
タッピングから加工処理まで、時には輸出までを一貫して行うが、スモールホールディングではタッピングから USS の
成型まで、あるいはカップランプの生産までを行っている。
これらの原料ゴムは、店舗を持たないコレクターが毎日自転車やバイクで村落を回って買い集め、ディーラー
(店舗や倉庫を持つ)へ売り渡している。もちろん生産者からディーラーに直接売り渡すケースもある。USS は
多くの場合、このようにディーラーを経てシッパー(輸出業者)へ渡り、その処理施設(スモークハウス)で燻煙
され、RSS として選別・格付け、パッキングされたのち輸出される。このようにシッパーがプロセッサー(燻煙・パッキ
ング業)を兼ねるのが一般的だが、独立したプロセッサー(パッカーともいう)で燻煙、パッキングされたゴムがシッ
パーの手を経て輸出されることも少なくない。
TSR については、ほとんどの TSR 工場がシッパーの所有である。TSR の原料となるカップランプやラテックスの
原料のゴム液についても、スモールホルダー(零細農家)の場合はディーラーに売り渡し、その後 TSR 工場やラ
テックス工場へ渡るというのが一般的である。
このディーラーは、産地での物流で農民とプロセッサーを結ぶ重要な役割を果たしている。ディーラーは、プロセッ
サーとの間で相対取引を行っている他、「CENTRAL MARKET」と呼ばれる公設市場でも取引を行っており、こ
れらが USS 市場を構成している。USS 相場が下落すれば生産者の収入は途端に減少し、困窮してしまうとい
う構図にある。有力ディーラーやプロセッサーの中には国内取引だけでなく国際取引を行うケースもある。
輸出取引は数カ月先船積み条件の契約が一般的である。タイから輸出される際の船積み港はバンコク港、レ
ムチャバン港と南部国境地帯のパダンブサール駅(マレーシア・ペナン港で積み替え)がほとんどで、半島東海
岸のソンクラ港、半島西海岸のカンタン港とプーケット港なども利用される。このうち日本向け貨物は主としてバン
コク港、レムチャバン港とパダンブサール駅経由ペナン港から積み出されている。
タイに限ったことではないが、ここ数年、最終消費者であるタイヤメーカーが産地で工場運営を行ったり、工場を
リースしたり、あるいは農園経営に参画するという動きが進んでいる。大手タイヤメーカーにとっての課題である原
料供給の安定化に加え、自社スペックに合わせた原料調達をすることがその狙いと考えられる。
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第 3 節 天然ゴムの国内流通
シッパーから国内需要家までの流通ルートを以下に示す。
まず、FOB 条件で船積みされたコンテナが日本の港に海上輸送され、例えば関東地区であれば横浜港などに
到着する。コンテナは陸揚げされ、一旦、港湾のコンテナヤードに積み上げられるが、通関を経て、日本国内に
入着する。
荷物の多くは、タイヤメーカーなどの需要家によって直接、コンテナなどで自社の倉庫(タイヤ工場など)へ陸
送される。また一部は、倉庫会社の倉庫に搬入される。これがいわゆる港湾倉庫在庫であり、営業倉庫在庫と
なる。
近年、需要者側のスピードと確実性に対する要望から、貨物輸送全般にわたって物流体制が見直され、輸
送効率と貨物の保全状況が飛躍的に向上してきた。天然ゴムの輸入陸揚げにおいても、かつてのバラ積みから
コンテナ輸送に切り替ったため、取扱作業時間が大幅に短縮され、輸送過程におけるゴムの荷姿・品質の損傷
は減少している。日本の大手タイヤメーカーでも、商社を通じての輸入から直輸入に切り替えているところが多く
なってきた。商社は産地から直接購入していない国内のユーザーに対して輸入販売を行っており、東京商品取
引所ゴム市場等の価格を参考に円建で国内での販売価格を設定している。商社はこうした取引の中で東京
商品取引所市場を利用したヘッジや海外市場との裁定取引を行っている。
また、コンテナ輸送のため、天然ゴムの国内在庫もコンテナヤード在庫、営業倉庫在庫(港湾在庫)、タイヤ
メーカーによる内陸倉庫在庫 3 つの形態に分かれる。このため、現在ではゴムの在庫は営業倉庫在庫だけでは
ないことに注意する必要がある。
天然ゴムの生産地から日本国内への取引ルート
産地の輸出業者(シッパー)
国内ユーザーの現地工場
国内商社の現地工場
海上輸送
通関(コンテナヤード)
商社・現物商・問屋
東京商品取引所ゴム市場
国内の生産メーカー (ゴム製品の製造工場)
出所 : 東京商品取引所
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第 4 節 天然ゴムの商流
TSR と RSS で商流に関して大差はない。以下では天然ゴム消費者の代表として、最終ユーザーのうち最
も消費量の多いタイヤメーカーの買付けについて解説する。
物流がコンテナ化される以前は商社経由の輸入が主流であった日本のタイヤメーカー各社は、品質管理という
観点から、産地からの直買いを増やしてきた。現在では調達の大部分の割合を産地積出港 FOB 条件での買
い付けで賄っている。大手タイヤメーカーは現物取引の活発なシンガポールに購買拠点を構え、タイ、インドネシ
ア、マレーシアのシッパー、在シンガポールのディーラー、日本を含む海外ディーラーから日々買付けを行っている。
契約の形態としては、日々の相場で随時個別の契約を行うスポット契約、契約数量を予め決めておき先物
市場連動フォーミュラで価格を確定していく長期契約、あるいは先物市場での売り買いを利用した EFP 取引等
がある。それぞれのタイヤメーカーにより契約形態のニーズは異なるが、昨今では安定供給確保を目的とし、長
期契約での買い付け分が増加する傾向にある。
タイヤメーカーのポジションはナチュラル・ショート(*)であり、潜在的な買いヘッジニーズがある。このうち一部
分をディーラーやシッパーとの先渡契約でヘッジしている。一方、先渡契約の売り手であるディーラーやシッパーは
タイヤメーカーに対する売契約のヘッジ買いを行う必要があり、東京、シンガポールの先物市場が利用される。逆
にディーラーがユーザーへの販売に先行して、先渡契約で現物の買い付けを行うケースや、シッパーが先渡契約
の数量を上回る原料を持つ場合には先物市場は売りヘッジ先として利用される。昨今は情報化が進み、産地
シッパー他海外ディーラーが日本国内の先物市場を積極的に利用するようになってきている。
(*)現物取引のポジションについて、その現物価格が下落すると利益が発生する状況をナチュラル・ショート、
反対に現物価格が上昇すると利益が発生する状況をナチュラル・ロングという場合がある。
49
第 5 章 世界のゴム市場と商品先物取引所
世界のゴム市場は、豊富な生産量を背景としたアジアを中心に形成されている。ゴム市場は、現物市場とそ
の派生市場である先物市場から構成されている。これらの市場はお互いに影響し合っており、現物価格は、先
物市場の価格と密接に関係している。ゴム市場では、先物市場である東京商品取引所の価格指標性が高く、
アジア域内に限らず世界の市場に対する情報発信の役割を果たすとともに、価格変動リスクのヘッジの場として
様々なプレーヤーに利用されている。
アジア
東京商品取引所(TOCOM):RSS3
SGX(シンガポール):RSS3、TSR20
TFEX(タイ):RSS3
SHFE(上海):天然ゴム(SCR WF/RSS3)
※
50
第 1 節 国内市場
第 1 項 東京商品取引所
世界の天然ゴム市場にとって最も指標性が高い市場が東京商品取引所(TOCOM)のゴム市場である。
東京商品取引所の前身の一つである旧東京ゴム取引所は、1952 年 12 月 12 日、ゴム輸入業者による東京
ゴム取引所設立世話人会が母体となり、輸入ゴム取扱協議会による取引所設立準備委員会を経て設立され
た。
現在は、1984 年 11 月に、経営基盤の強化と経済的合理性を目的とした旧東京繊維商品取引所、旧東
京ゴム取引所ならびに旧東京金取引所の統合により設立された、東京商品取引所で運営されている。
出来高は 1995 年に 1428 万 7783 枚と過去最高を記録、取組高も同年 3 月 8 日に 50 万 3388 枚の
過去最高を記録した。2015 年の東京ゴム市場の年間出来高は 241 万 1,306 枚で、取組高は 2015 年
12 月末で 2 万 1,306 枚であった。
東京ゴム市場の特徴としては、海外からの当業者参入割合の高い点が挙げられ、東京市場が世界のマーケッ
ト・プライスリーダーであることから、ヘッジ市場としての役割を担っているといえる。海外からの当業者として、タイの
シッパーを中心に、シンガポールのブローカー等も積極的に取引に参加している。
51
第 2 項 東京商品取引所の取引ルール
1.取引要綱
東京ゴム市場は、昭和 27 年(1952 年)12 月 12 日に旧東京ゴム取引所に上場以来、長年にわたり、
世界の天然ゴム価格の指標として貢献してきた。立会時間は、日中立会が午前 8 時 45 分から午後 3 時 15
分まで、夜間立会は午後 4 時 30 分から午後 7 時までとなっている。なお、日中立会は昼休憩を設けない、連
続立会である。
ゴム取引要綱(別ページ)
2.建玉制限
「ゴム市場管理細則」第 2 条 参照
3.ヘッジ玉の取扱い
「ゴム市場ヘッジ玉取扱要領」 参照
4.受渡制度
現物先物取引では、当月限の建玉について納会日までに差金決済を行わず、「売り」「買い」の建玉を保有
した場合、現物の受渡しを行うことになる。(詳細はこちら)
ゴムの受渡しに関する規定については、東京商品取引所ホームページに掲載されている業務規程・ 第 2 編第
7 章第 1 節「現物先物取引における受渡し」、ゴム市場管理細則及びゴム受渡細則を参照のこと。
5.EFP 取引
(1)EFP 取引とは
「Exchange of Futures for Physicals」の略であり、現物取引の売買契約を締結した売方及び買方が、
当社に対して同一価格の先物の買付注文と売付注文の申出を行い、当社の承認をもって、当該申出価格に
基づき、個別競争売買によらずに当該注文の売買約定を成立させる取引をいう。
(2) EFP 取引について(別ページ参照)
(3) EFP 及び EFS 取引実施細則(別ページ参照)
※EFP・EFS 取引については、東京商品取引所 「業務規程」第 32~35 条も参照のこと。
6.立会外取引(別ページ参照)
52
第 2 節 海外市場
第 1 項 シンガポール市場
シンガポールでは、2011 年 5 月 16 日に、シンガポール商品取引所(SICOM: Singapore Commodity
Exchange)からシンガポール取引所(SGX)にゴム市場が移管され、引き続き RSS3 と TSR20 の取引が
行われている。SICOM 設立以前は、同国のゴム取引問題を所管していたシンガポールゴム協会(RAS=
Rubber Association of Singapore)がゴム市場の中心的役割を担っていた。
天然ゴムの輸出中継地点として発達したシンガポールにおけるゴム市場の歴史は古く、1920 年代からゴムの
先物取引が行われ、1980 年代までは、このシンガポールゴム先物市場が国際的な指標性を持っていた。現在
では、世界の指標市場は東京市場に移行しているが、シンガポール市場は世界の天然ゴム取引センターとして、
今でも産地市場を中心に参考市場として重要視されている。
現在、SGX で取引されている天然ゴムは、RSS3 と TSR20(FOB 約定)の 2 種類。取引時間は現地
時間の午前 7 時 55 分から午後 6 時まで(日本時間の午前 8 時 55 分から午後 7 時まで)で、取引単位は
RSS3、TSR20 ともに 5 トン、呼値は 1kg 当たり US セントとなっている。
第 2 項 タイ市場
タイは世界最大の天然ゴム生産国であり、ゴム取引の長い歴史を持つ。タイは世界で最も輸出量が多かった
ものの、昔から値段の決め方が買い手主導となっていたため、自身の国で価格の主導権を持ちたいとの意向から、
1990 年代にタイで 2 番目に大きい商業都市である南部のハジャイにあるタイゴム研究所内に現物取引所
(Central Rubber Market)を設立した。この Central Rubber Market とは農民がゴムを持ち寄り、値決
めをして売買する市場で、ここで値付けされた値段が、対外オファー(売り提示値段)の基準値となっている。
現在、タイの現物市場は全国で 3 カ所に増え、ハジャイの他にスラタニとナコンシータマラートにある。最近の取
引量の傾向としては、ハジャイ以外の地域が増加傾向を強めている。
日本は伝統的にタイ産 RSS3 の取引量が多いため、日本市場では、タイのシッパーが日々提示する対日商
社向けオファーをもとに算出される輸入採算価格が参考視されている。なお、タイのオファー価格を邦貨換算する
計算式は、([タイの現物オファー×為替)+輸入諸経費]となる。一般に、オファーは当該月より 2~3 カ月先
であるため、先積みに相当する為替先物を乗じて、それに海上輸送費(フレート)や輸送保険料(インシュラ
ンス)、輸入関税等の諸経費を加算する。
一方、2000 年 4 月に「農産品先物取引法」が施行されたことに伴い、2001 年 9 月、商品取引所「タイ農
業商品先物取引所(AFET:The Agricultural Futures Exchange of Thailand)」が設立されると、
2004 年 5 月に RSS3 号、2005 年 9 月に STR20、2006 年 3 月にラテックスの取引が開始された。取引
は、ザラバ仕法で行われており、バーツ建てである。
タイにおける商品先物取引所の設立の背景には、農業分野が同国にとって非常に重要な位置を占め、全人
口の 40%がこの分野に関わっていること、また農産品の輸出が外貨獲得の主要な収入源となっていること等が
ある。同国の農産品の輸出規模は、2011 年時点では年間 1 兆 4,477 億バーツで、中でも天然ゴムは約
53
4,409 億バーツと 30%を占め、同国農産物のうち最大の輸出品目となっている。タイにおいては、従来は価格
変動によるリスクをヘッジできる場が国内になかったことから、農産品の市場流通システムに責任を持ち、またこの
効率化をはかるための商品取引所設立が不可欠となっていた。
しかしながら、長期に亘る取引低迷により 2016 年に AFET では全商品の取引停止を行うこととなり、現在
は「タイ先物取引所(Thailand Futures Exchange)」にて RSS3 号のみが取引されている。
第 3 項 マレーシア市場
マレーシアの天然ゴム先物市場は廃止されている。一方、現物については、マレーシア一次産業省に属するマ
レーシア・ゴム局(MRB:Malaysian Rubber Board )の中にあるマレーシアゴム取引所(MRE:
Malaysian Rubber Exchange)が、天然ゴムの価格算出とその価格を公表する業務を所管しており、この
公表価格は、同省のホームページに日々掲載されている。
天然ゴム価格の算出は、MRB メンバーの中から任意に抽出された、SMR20 のプロデューサーとディーラーから
のヒアリングによって集計される。ヒアリングした価格の平均値に調整を加えたものが、公表価格となる。公表価
格については、MRB のゴム特別委員会で定期的にチェックされている。問題が生じた場合は、マネージメント委
員会に報告され、審議を行うことになっている。
第 4 項 インドネシア市場
世界第 2 位の天然ゴム生産国であるインドネシアには、まだ公設の取引所が設立されていない。現物取引に
関しても、昔ながらの相対取引であり、産地の輸出業者がオファーを提示し、それに対し、輸入業者がビッド
(買い付け希望価格)を入れて値段を決めるというオーソドックスな取引形態となっている。
しかし、世界的に最も汎用されているスタンダード・グレードであるブロック状ゴム(TSR)はこのインドネシア産
が最も多く、米国の天然ゴム輸入のほとんどがこのインドネシア産 TSR で占められている。将来的には、タイを抜
いて世界最大の天然ゴム生産・輸出国となる可能性が高いことから、商業的な整備が急がれるところである。
第 5 項 中国市場
中国では、上海期貨交易所(SHFE : Shanghai Futures Exchange)に天然ゴムが上場されており、
同所では、ゴムの他に銅、金、亜鉛、アルミ、燃料油等の先物取引が行われている。
中国では、近年の急速な工業化に伴い、新ゴム消費量が伸びており、天然ゴム、合成ゴムともに世界最大の
ゴム消費国となっている。中国の自動車産業は 2002 年の WTO 加盟以来、劇的な成長を遂げ、中国経済の
高度成長を後押しする牽引車となりつつある。中国の 2009 年の販売台数は 1,383 万台に達し、米国を超え
て世界一となり、2010 年には 1,826 万台と、一国の年間自動車生産台数としては史上最高を記録し、その
後も増加を続けている。こうした背景もあり、2010 年の SHFE におけるゴム先物の年間出来高は 1 億 6,741
万枚に達し、ゴム市場としても世界一の規模となった(2011 年は 1 億 429 万枚、2014 年は 8,863 万枚と
なり、世界最大を維持している)。今後も、ゴム需給の観点から中国の経済動向に注目する必要がある。
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第 6 項 ゴムの OTC 市場(ゴム・フォワード市場)
ゴムの OTC 取引は、シンガポールで活発に行われている。シンガポールの OTC 市場は、「インター・ディーラー
市場」と呼ばれ、ゴム・ディーラー、シッパー、日本商社などがプレーヤーとなって TSR20 を中心に取引を行ってい
る。
また、SGX では TSR20 を対象とした OTC クリアリングを行っている。
55
第 6 章 取引戦略
第 1 節 リスクヘッジ
企業は事業活動を継続していく上で様々なリスクを抱えている。例えば、原材料の調達や製品売却の際の
価格変動リスク、資金調達・運用のリスクなど、企業活動の側面には多様なリスクが存在する。
リスクヘッジとは、このようなリスクを回避することである。例えば価格変動リスクについては、先物市場を利用し
て将来の価格変動から生じる不確定要素を排除することが可能である。リスクヘッジ機能は、先物市場における
最も重要な役割の一つである。企業はリスクヘッジを行うことにより、将来の価格変動から生じるリスクを回避し、
利益の確保を図ることができる。また、受け入れたくないリスクを回避することにより本業に資源を集中させることも
できる。
商品先物市場におけるヘッジ取引は主に、生産リスク(原材料の購入価格の変動リスク)や販売リスク(製
品の販売価格の変動リスク)を回避するために行われている。
*ヘッジ(Hedge=保険つなぎ)
第 2 節 買いヘッジと売りヘッジ
現物市場と先物市場の価格連動性を利用して、双方の市場で反対の取引を行うことにより、互いの利益と
損失を相殺するのがヘッジ取引である。つまり、現物取引で損失が発生する場合には、先物取引の利益でその
損失を相殺させるというポジションをつくる取引である。
基本的なヘッジ取引には、将来の購入のため値上がりに備える「買いヘッジ」と、将来の売却のため値下がりに
備える「売りヘッジ」の 2 種類がある。
第 1 項 買いヘッジ(ロング・ヘッジ=Long Hedge)
将来のある時点で原材料の購入を予定しており、今後の価格変動に係りなく現在の価格に近い価格で原
材料を購入したい場合に用いるのが買いヘッジである。
<買いヘッジの例>
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ゴムのタイヤメーカーである A 社は、6 ヶ月後にゴム 100t を購入する計画がある。現時点の現物価格
(250.0 円/kg、税抜き)であれば、利益は充分に確保できるものの、6 ヶ月後に購入価格が大幅に上昇し
てしまうと採算が採れない可能性もある。
そこで、A 社はゴム価格が値下がりし、収益を増加する機会を犠牲にしても、原材料の値上がりによる損失を
回避することを決定し、先物市場で 6 ヶ月後の限月(240.0 円/kg)の取引を利用してリスク・ヘッジを行うこ
とにした。
A 社はゴム先物市場 6 ヶ月後の限月にゴム先物の買ポジションを 20 枚(1 枚あたり 5,000kg×20 枚=
100t)建てた。(取引単位:5,000kg、受渡単位:10,000kg とした場合)
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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
6 ヶ月後、A 社の懸念通りゴム価格が 260.0 円/kg(税抜き)に値上がりした。現物価格と先物価格は連
動するという前提で、先物価格も 260.0 円/kg になったとする。
そのとき、先物取引で得られる利益は
(260.0(円)-240.0(円))×5,000(kg)×20(枚)=200 万円
一方、ゴムの購入費用は
260.0(円)×1,000×100(t)=2,600 万円
よって、購入に係る費用は
2,600 万円-200 万円=2,400 万円
つまり、A 社は当初の計画通り、1kg あたり 240.0 円でゴムを仕入れることができたことになる。
反対に、ゴム価格が 6 ヶ月後に 230.0 円/kg に値下がりしたとする。現物価格と先物価格は連動するというこ
とを前提においているので、先物価格も 230.0 円/kg になったとする。
この場合の先物取引の損失は
(230.0(円)-240.0(円))×5,000(kg)×20(枚)=-100 万円
一方、現物の購入費用は
230.0(円)×1,000 ×100(t)=2,300 万円
よって、購入に係る費用は
2,300 万円-(-100 万円)=2,400 万円
つまり、この場合も A 社は計画通り 1kg あたり 240.0 円でゴムを仕入れることができ、A 社はヘッジ取引により
購入費用を 1kg あたり 240.0 円で価格を固定できたということになる。
ここで、当初の時点で A 社はゴムを購入して保管しておくという選択肢よりも、先物取引を利用した方が有利で
ある点に注目したい。
もし、当初の時点でゴムを購入していれば、購入価格は 1kg あたり 250.0 円で、その他にも金利や保管費用
までも負担することになり、さらに、6 ヶ月後までその商品が不要であれば、保有することにより生じる便益(コンビ
ニエンス・イールド)の価値もないからである。
57
第 2 項 売りヘッジ(ショート・ヘッジ=Short Hedge)
将来のある時点で商品の売却を予定しており、今後の価格変動に係りなく現在の価格で商品を売却 した
い場合に用いるのが売りヘッジである。また、現在保有している商品の価値が下がることに対する、価格下落リス
クを避けるためにも使用される。
<売りヘッジの例>
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ゴムの輸入商社である B 社は、3 ヶ月後にゴム 100t を売却する契約を結んだ。現在のゴム価格は 250.0 円
/kg で、この契約により B 社は 3 ヶ月後のゴム価格が 10 円(1kg あたり)上昇すれば収入が 100 万円(10
円×100,000kg)増加し、逆に価格が 10 円下落するごとに収入が 100 万円減少することになる。
そこで、B 社は値下がりによる損失を回避するために、ゴムの先物取引を利用して、リスク・ヘッジを行うことにし
た。
B 社はゴム先物市場 3 ヶ月後の限月に 260.0 円/kg で 20 枚売りポジションを(1 枚あたり 5,000kg×20
枚=100t)建てた。(取引単位:5,000kg、受渡単位:10,000kg とした場合)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
3 ヶ月後、B 社の懸念通りゴム価格が 240.0 円/kg に値下がりしたとする。現物価格と先物価格は連動すると
いう前提により、先物価格も 240.0 円/kg になったとする。
そのとき、先物取引で得られる利益は
(240.0(円)-260.0(円))×5,000(kg)×(-20(枚))=200 万円
一方、現物売却の収益は
240.0(円)×1,000×100(t)=2,400 万円
先物取引とあわせた収益は
2,400 万円+200 万円=2,600 万円
つまり、この場合も B 社は 1kg あたり 260.0 円でゴムを売却することができ、B 社はヘッジ取引により売却価格
を 1kg あたり 260.0 円で固定できたことになる。
今までの例でみたように、ヘッジ取引によって価格変動リスクを回避して、将来の現物取引に伴う利益を確保す
ることができるが、反対に利益増大の機会も失うことにもなる。しかし、ヘッジ取引の目的は、将来の不確実性を
取り除き利益を確保するということであるから、その目的が満たされている点を評価するべきである。
58
第 3 節 クロスヘッジ
ヘッジ取引では、ヘッジ対象資産と同じ商品が取引所に上場されていることを前提としたが、実際にはヘッジし
たい商品が先物市場に必ず上場されているとは限らない。しかしそのような場合でも、ヘッジ対象資産と同じよう
な値動きをする先物取引市場があれば、その商品を利用してヘッジすることは可能である。このようにヘッジ対象
資産と異なる商品の先物取引市場を利用してヘッジを行うことをクロスヘッジ取引という。
例えば、TSR やラテックスなどの天然ゴムについて、東京商品取引所に上場されている RSS3 号を利用してヘ
ッジすることができる。
第 4 節 ロール・オーバー(ローリング・ヘッジ/スイッチ取引)
第 1 項 ロール・オーバーとは
ヘッジャーがヘッジの期間を延長するために行う取引のことをロール・オーバー、あるいはローリング・ヘッジまたは
スイッチ取引とよんでいる。
ロール・オーバーは、ヘッジャーの行うヘッジ対象期間が長期間の場合、先物市場の流動性が乏しい市場や 6
ヶ月以上先の限月の設計がない市場が多いことから、短期間の流動性の高い限月を複数回乗り換えて決済
期限を繰り延べることで、長期間のリスク・ヘッジと同じ効果を得ることを目的とする。一旦建てたある限月のヘッ
ジポジションを手仕舞いし、目標価格確保が可能と思われる期先の限月へもう一度同様のポジションを建て直
すもので、期先の限月に取引の評価損益を繰り延べし、かつ、現物ポジションを動かさずに、先物ポジションを入
れ替えるコストだけで、新しいヘッジ・ポジションを組成することができる。
第 2 項 ロール・オーバーの例-ゴム先物市場で買いヘッジ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ゴムのタイヤメーカーが東京商品取引所のゴム先物市場を利用して、長期間先のゴムの値上がりリスクをロー
リング・ヘッジする。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
①1 月限を 1 枚買建てし、約定価格は 1kg あたり 250.0 円であった。
②1 月になり、スポット価格と同じ 255.0 円/kg で手仕舞いし、同時に 2 月限を 1 枚買建てる。このときの約
定価格は 260.0 円/kg であった。
③この時点での買いヘッジによる 1 枚分の調達コストは、255 円/kg になる。
255 円/kg=260 円/kg-(255 円/kg-250 円/kg)
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第 3 項 ベーシスリスク(Basis risk)
これまでの例においては、現物価格と先物価格が全く同じ動きをするなど、ヘッジ取引がうまく機能した場合を
想定したが、実際は以下のような理由により、意図したヘッジ取引が行えないことがある。
・ ヘッジ対象資産の現物価格と、先物価格が正確に一致しない可能性がある
・ 商品をいつ購入もしくは売却するか、およその期日しかわからない
・ 納会日以前にヘッジ取引を決済しなければならないときもある
ここで、問題となるのがベーシスリスクである。ヘッジ取引においてのベーシスは一般的に以下のように定義され
る。
ヘッジ対象資産と先物市場の原資産が全く同じ場合は、現物価格と先物市場の受渡値段は一致し、ベー
シスはゼロになるはずであるが、納会日以前には需給バランスや保有便益(コンビニエンス・イールド)の変動な
どにより、ベーシスはプラスにもマイナスにもなりえる。また、現物と先物の原資産が違う場合は、ベーシスリスクは
通常大きくなる。
つまり、ベーシスリスクとは現物取引での損失(利益)と先物取引での利益(損失)が相殺されないリスク
である。
ベーシスが生じる要因としては、主に以下のものが挙げられる。
・ カレンダーベーシス:ヘッジ対象玉とヘッジの価格決定の時間の差に伴う価格差
・ 地理的べーシス:現物取引と先物取引の受渡場所の違いから生じる価格差
・ 品質ベーシス:ヘッジ対象資産と先物市場の原資産との品質や等級の相違から生じる価格差
このようなベーシスが変化することにより、ヘッジ取引の損益も変化することになる。
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< ベーシスのリスク例>
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ゴム製品の製造会社である C 社が、3 ヶ月か 4 ヶ月後にゴム 100t の購入を予定している。そこで、ヘッジのた
めにゴム先物市場の 5 ヶ月後の限月を 20 枚(1 枚あたり 5t×20 枚=100t)、250.0 円/kg で買い建て
た。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
その後、C 社は 3 ヶ月後にゴムを購入したので、先物取引を決済することにした。このとき、現物価格は
270.0 円/kg、先物価格は 265.0 円/kg であった。
この時ベーシスは、「現物価格- 先物価格」なので
ベーシス=270.0 円-265.0 円=5.0 円
先物取引による利益は、「決済価格- 建玉時の価格」なので
先物取引による利益=265.0 円-250.0 円=15.0 円
よって、C 社にとっての実質的なゴム購入価格は、1kg あたり、
ゴム購入価格=270.0 円-15.0 円=255.0 円
これは、先物市場での買いポジションを建てたときの「先物価格+ベーシス」であるといえる。
先物価格+ベーシス=250.0 円+5.0 円=255.0 円
このようにベーシスの存在によって、意図したヘッジ取引と誤差が生じる可能性があるが、適切な市場設計がなさ
れた流動性の高い先物市場であれば、その価格は現物価格と完全に一致しないまでも、ほぼ連動した動きとな
る。したがって、現物価格と先物価格が大きく変動することはあっても、ベーシスは大きく変動する可能性は低い
といえる。ヘッジ取引とは、価格変動の高いリスクを、ベーシスリスクという低いリスクに変換する行為とも考えられ
るので、ヘッジ取引を行う際はベーシスを理解することが重要となる。
61
第 5 節 裁定取引
裁定取引(アービトラージ:Arbitrage)とは、ある 2 つ以上の市場価格の間に一定の関係が存在すると
の仮定のもとに、一定の関係から大きく逸脱した価格が形成されていると判断し、かつ将来的にその関係と整合
的な価格水準に収束することが予想される場合に、相対的に高いほうを売って、安いほうを買うことで利益を上
げようとする取引のことである。
ゴム市場において、活発に行われる裁定取引としては、異地点間(場所の違いによる)裁定取引(ロケーシ
ョン・アービトラージ)、異時点間裁定取引(タイム・アービトラージ)、グレード間アービトラージが挙げられる。
以下では、これらについて詳しく解説する。
第 1 項 ロケーション・アービトラージ(Location Arbitrage)
東京ゴム先物市場とシンガポール・ゴム先物市場などの関係に着目して、理論値に比べ、相対的に高いほう
を売り、相対的に安いほうを買い、理論水準に価格が収斂したときに反対売買をすることで利益を上げるオペレ
ーションをロケーション・アービトラージと呼ぶ。
(例)シンガポール・ゴム RSS3 の価格(FOB)が 250.00¢/kg、円建換算 275.00 円/kg、輸入諸経
費 13.00 円/kg とすると輸入採算価格は、288.00 円/kg となる。
将来的には東京ゴム先物市場の価格が輸入採算価格に収束されると予想される場合は、裁定取引を行う
ことで利益を獲得することが期待できる。ただ、上記の関係は、取引に伴い通常発生する手数料や税金等を無
視しているため、実際にはこのような手数料や税金等を考慮しても利益が上がる場合に、はじめて裁定取引が
行われるため、あるレンジで価格は変動することになる。
第 2 項 タイム・アービトラージ(Time Arbitrage)
基本的には先物価格が現物価格から計算した理論値から乖離したときに、相対的に高いほうを売って、安い
ほうを買うことで、将来、理論値に収束すれば利益をあげることができる。現物と先物の値差をベーシス、あるい
はサヤと呼ぶ。この現物と先物とのベーシスに着目した裁定取引をタイム・アービトラージという。現物に対して先
物が高い場合を順ザヤまたはコンタンゴといい、逆に先物が安い場合を逆ザヤ、バックワーデーションあるいはディ
スカウントという。また、先物の納会日までの期間と先物価格の関係をグラフに描いたときの曲線をフォワード・カー
ブといい、期間によるフォワード・カーブの形状のことを期間構造という。
また、理論値に収束するまでの期間がどのくらいかは判断がつかないことが多く、長期にわたり理論値からの乖
離が継続し、相場の好転が見られない状況で手仕舞いしなければならないこともあるため、裁定取引といえども
ある程度のリスクは存在することは認識しておかなければならない。
62
先物
価格
先物
価格
順ザヤ時の
フォワード・カーブ
逆ザヤ時の
フォワード・カーブ
期間
期間
第 3 項 グレード間アービトラージ
天然ゴムには RSS グレード及び TSR グレードという異なるグレードが上場されている。これらの異なるグレード
間の値差は一定ではなく、それぞれの需給関係に基づき伸び縮みしている。しかし、いずれも天然ゴムであること
には変わりなく、価格差によっては代替が促進されるため、一定の値差に収斂する習性がある。この習性を利用
することにより、一方のグレードで売り、他方のグレードで買う裁定取引が行われている。
63
第 6 節 リスク管理と周辺制度
企業は取引先の信用リスクや訴訟などのリーガル・リスクあるいは為替や金利変動といった市場リスク、天変地
異による災害リスクなど、様々なリスクに直面している。リスク管理という言葉が聞かれるようになって久しいが、どう
いったリスクを対象とするかで、リスク管理の手法も異なる。商品先物市場に関係するリスクとは前述の市場リス
クの中の商品価格の変動リスクや市場自体の流動性リスク、あるいは取引の相手方の信用リスクなどであろう。
これらのリスクを管理するサービスを我々商品先物業界では当業者に対し、提供しているのである。この中で特
に当業者として関心のあるのは価格変動リスクとそのヘッジの場としての商品先物市場である。
昨今、リスク管理の視点から、先物市場を取り巻く周辺制度が急激に変化している。これらの環境変化から
一層、商品先物に対する当業者のリスク管理ニーズが高まる可能性が大きいため、この点について以下で整理
して説明する。
第 1 項 会社法と金融商品取引法の施行
会社法は、商法の一部と有限会社法等を改正し、これらを引き継ぐ形で 2006 年 5 月 1 日に施行された
法律である。会社法では、企業規模や業種を問わず「株式会社の業務の適正を確保するために必要なものと
して法務省令で定める体制(いわゆる「内部統制」)の整備」に関わる事項が取締役会の専決事項として新
たに盛り込まれ、さらに会社法上の「大会社(資本金 5 億円以上もしくは負債総額 200 億円以上の株式会
社)」では、「内部統制システム」の構築が義務付けられている。さらに、この内部統制システムの具体的内容
の一つとして「損失の危険の管理に関する規程その他の体制」が会社法施行規則で規定されている。つまり、こ
れからは大会社に分類されればリスク管理体制を構築しなければならないことになる。
また、金融商品取引法では、上場会社に対し、経営者による内部統制報告書の作成と公認会計士による
監査を義務付けており、内部統制の状況を開示し、第 3 者のチェックを受けなければならないことになっている。
会社法と金融商品取引法のこれらの規程が適用されるのは 2008 年 4 月 1 日より開始される事業年度からと
なっており、リスク管理に対する体制の整備とその開示並びにその適正性の確保が求められる時代になってきた
のである。
例として、企業が取扱っているアルミニウムの価格の変動についてのリスク管理に係わる内部統制について考え
てみよう。これからはアルミニウム価格の変動リスクに係わる内部統制の不備が原因で、アルミニウム価格の変動
によって多額の損失が発生した場合は、会社法上の内部統制構築義務違反となる可能性があり、株主代表
訴訟の対象となる。
第 2 項 棚卸資産の評価基準の変更
さらに時期を同じくして、在庫の評価に関する会計上の取り扱いが変更される。つまり、これまでは原材料の
調達にあたり、著しく時価が下がり、かつ回復の見込みがない場合を除き、原則として取得時の原価で在庫で
ある原材料を評価すればよかったが、2008 年 4 月 1 日より開始される事業年度から、通常の販売目的で保
有する棚卸資産は、期末における正味売却価額(時価から売却にかかわる諸経費を控除した額)が取得原
価より下落している場合、当該正味売却価額で評価しなければならなくなる。この会計上の取り扱いの変更は、
前に説明した会社法や金融商品取引法の施行と一見無関係に見えるが、実は経営上は極めて関係がある。
なぜなら、これまでは在庫に含み損が発生していても、取得時の価格で評価すればよかったため、損失として表
64
面に出てくることはなかったが、今後は価格が下がっている場合は時価(正確には「正味売却価額」)で評価
するため、損失が表面化することになる。即ち、これまでであれば、意図するかしないかは別として、決算上の数
値をある程度調整することができたが、今後は在庫の評価損失が表面化し易い環境になる。こうした環境変化
により、価格変動に対するリスク管理に関する内部統制の整備について、先に述べた経営者の責任にこれまで
以上に目が向けられることにつながるわけである。つまりリスク管理に対する内部統制を整備しているか否かが結
果としてより明確に経営成績に表れるようになり、それに対して投資家の目にも付き易くなるということである。
こうした環境変化により、自社で扱っている商品の価格変動リスクに対するリスク・ヘッジの場である先物市場に
対する当業者のニーズが高まることが期待される。
具体的な数値例でこの点を確認する。ある商品を仕入れて販売している流通業者を例にとる。期初 棚卸と
して評価額 100 円の商品 1 個の在庫が存在したとする。今期、新しく商品 1 個を仕入れたが、200 円/個に
値上りしていた。一方、売上げについては、仕入値の上昇を反映して販売価格を 300 円/個として 1 個販売し
た。期末在庫は 1 個であるが、期末時点では商品は 100 円/個に値下がりしていたとする。
この例について、会計上の利益を求めたのが、図「会計方針による在庫評価の違い」である。仕入高や在庫の
評価方法によって会計上の利益が違ってくるが、在庫に評価損がある場合、新ルールが適用されることで、より
利益が保守的に計上されていることになり、より実態に近い姿になっていることがわかる。
・(旧)原価法(*1) 取得した原価で在庫を評価する会計処理方法
(含み損益が発生する)
・(新)原価法 通常の販売目的で保有する棚卸資産について、収益の低下による簿価切り下げを行う会計
処理方法
(含み損は発生しない)
65
◆仕入と売上の対応による会計方針の種類
・先入先出法 先に仕入れたものから順に販売していくという前提に基づく会計処理方法
・後入先出法(*2) 後に仕入れたものから先に販売していくという前提に基づく会計処理方法
・個別法 仕入れた商品ごとに着目し、販売されたか否かを判定する会計処理方法
・総平均法 一定期間の総仕入に対し、平均単価を求め、総販売を対応させる会計処理方法
・売価還元法 値入率等の類似性に基づく棚卸資産のグループごとの期末の売価合計額に、原価率を乗じて
求めた金額を期末棚卸資産の価額とする会計処理方法
*1:2008 年 4 月 1 日以降に開始される事業年度から廃止。
*2:2010 年 4 月 1 日以降に開始される事業年度から廃止。
66
第 3 項 ヘッジ会計とリスク・ヘッジ
1. ヘッジ会計とは
ヘッジは実施したら、それで終わりというものではない。ヘッジの結果を会計処理し、財務報告し、それに基づき
納税が行われて、はじめてヘッジに係わる一連の手続きが完了したことになる。つまり、ヘッジを実行した後の会
計処理も、ヘッジの極めて重要な一部分を構成しているのである。
折角ヘッジしたのに、会計上の取り扱いとしてはヘッジをしていないように扱われてしまうのではヘッジの効用も薄
れてしまう。そこで重要となるのがヘッジ会計である。
ヘッジ会計とは「ヘッジの手段として用いられた取引とヘッジ対象との間の会計上の損益認識時期のずれを調
整する会計処理」をいう。ヘッジ会計は現在のところ「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第 10 号)
に規定されており、2000 年 4 月 1 日以降開始された会計年度より適用が認められた比較的新しい制度であ
る。現在の税制は企業会計基準を前提としているため、ヘッジに係わる会計処理が適切に行われなければ、た
とえヘッジを行ったとしても、ヘッジ対象の損益とヘッジ取引による損益とは別のものとして切り離され、両者の損
益は相殺されることなく税金を徴収されてしまう。さらに会計上の数字が悪化すると、クレジット・リスクが高まり資
金調達で不利になるなど、会計上の取り扱いは企業実態にも影響が及ぶことになる。
2. ヘッジ会計の具体例
それではヘッジ会計の具体例を見てみよう。3 月末を決算期とする航空会社の A 社は 3 月 1 日時点で、夏
場の需要期にあわせて灯油先物取引でジェット燃料の価格変動リスクのヘッジを行うことにした。3 月 1 日におい
て灯油の現物価格は 50,000 円/kl であり、A 社は同日、先物市場で 7 月限の灯油先物を 50,000 円/kl
で 1 万 kl 分のポジションを買い建てた。その後、3 月末の決算期末時点では、灯油の先物価格と現物価格は
ともに 51,000 円/kl に値上がりしていたとする。
このときの先物取引の評価益は 1,000 円/kl×1 万 kl =1,000 万円となる。しかし、これはあくまで来期 7
月の燃料購入に対するヘッジ取引に伴う評価益である。一方、現物価格は 1,000 円/kl 値上がりしているが、
実際には仕入は発生していないため、現物取引では損益は 3 月時点で発生していない。このため、A 社として
は、先物取引の評価益を当期の利益とはせずに、現物取引が行われる来期の 7 月まで繰り延べることとしたい。
このとき先物取引により発生している利益 1,000 万円を来期の利益として繰り延べる会計上の手続きがヘッジ
会計である。
ヘッジ取引とはそもそも、ヘッジ対象の損益をヘッジ手段の損益と相殺することで、損益を固定化することに意
義がある。したがって、ヘッジがうまく機能している場合は、ヘッジ終了時点でヘッジ対象の損益はヘッジ手段の損
益で相殺される。しかし、仮にヘッジ会計が認められなければ、ヘッジの途中で決算期をむかえると課税が行われ
ることにより、税金分だけ損益にずれが生じることになる。
この例で、ヘッジ会計が適用されれば、先物取引から発生する利益は、現物取引の損失によって相殺される
ため、課税は原則として発生しない。しかし仮にヘッジ会計が認められず、3 月末時点でヘッジ手段である先物
取引の評価益 1,000 万円について、税率 50%で課税された場合を考える。3 月以降相場の変動がないとす
ると、7 月時点で、実際の現物仕入価格は 51,000 円/kl となり、ヘッジ対象である現物取引は 1,000 円/kl
のマイナスが発生していることになる。一方、ヘッジ手段である先物取引では、3 月時点で 1,000 万円の利益に
対し、既に 500 万円が税金として徴収されているので、先物取引についての税引き後利益は 500 万円となる。
67
ヘッジ対象とヘッジ手段の損益を通算すると、税金の 500 万円分がマイナスとなってしまう。
3. ヘッジ会計の対象となる取引
「金融商品に関する会計基準」によれば、ヘッジ会計が適用されるヘッジ対象は、①「相場変動等による損失
の可能性がある資産又は負債で相場変動等が評価に反映されていないもの」、②「相場変動等が評価に反映
されているが評価差額が損益として処理されないもの」、③「資産又は負債に係るキャッシュ・フローが固定され、
その変動が回避されるもの」と規定されている。
たとえば上記①の例としては、取得原価で評価されているガソリンや灯油などの商品在庫が挙げられる。持ち
合い株式などの有価証券は①の例であり、防衛省への入札による固定価格での軽油の売買契約は②の例に
あたる。
また、ここで想定されているのは、現存する資産・負債だけでなく、「予定取引」により発生が見込まれる資産
又は負債も含まれる。この「予定取引」とは、「未履行の確定契約および契約は成立していないが、取引予定
時期、取引予定物件、取引予定量、取引予定価額等の主要な取引条件が合理的に予測可能であり、それ
が実行される可能性が極めて高い取引」をいう。したがって、受注生産・受注販売だけでなく、見込み生産・見
込み販売も対象となり得る。
4. ヘッジ会計の適用要件
ヘッジ会計を適用することで、結果として利益の繰延べが可能となる。したがって、ヘッジ会計がその趣旨に反し
て適用されると、利益操作による納税の回避が可能になるばかりか、財務諸表の利用者である投資家の判断
を誤らせることになる。このため、ヘッジ会計の適用は厳格に審査され、事前と事後の要件を満たさなければなら
68
ないことになっている。
事前要件とはヘッジ取引を行う前に満たしておくべき要件である。具体的には、ヘッジ取引が企業のリスク管理
方針に従ったものであることが、取引時に、次の①、②のいずれかによって客観的に認められることとされている。
即ち、①「当該取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが文書により確認できること」、または②「企
業のリスク管理方針に関して明確な内部規定および内部統制組織が存在し、当該取引がこれに従って処理さ
れることが期待されること」のいずれかが事前に確認されている必要がある。
事後要件は、「ヘッジ取引時以降において、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益が、高い程度で相殺される状態、
又はヘッジ対象のキャッシュ・フローが固定され、その変動が回避される状態が、引き続き認められることによって、
ヘッジ手段の効果が定期的に確認されていること」とされている。
5. ベーシス・リスクとヘッジ会計の関係
事後要件としてのヘッジ有効性の判定は、原則としてヘッジ開始時から有効性判定時点までの期間において、
ヘッジ対象の相場変動又はキャッシュ・フロー変動の累計とヘッジ手段の相場変動又はキャッシュ・フロー変動の
累計とを比較し、両者の変動額等を基礎にして判断する。両者の変動額の比率がおおむね 80%から 125%
の範囲内にあれば、ヘッジ対象とヘッジ手段との間に高い相関関係があると認められ、ヘッジ会計の適用が認め
られる。ここでいうヘッジ対象とヘッジ手段の価格変動の差とは、ベーシス・リスクのことである。したがって、ヘッジ会
計の適用にあたっては、ベーシス・リスクの大きさが判断基準となる。
6. ヘッジ会計制度とリスク管理
ヘッジ会計は利益操作に悪用される危険性があるので、その適用は厳格に判定しなければならない。しかし、
あまりに厳格に過ぎると、ヘッジ会計が適用されずに、企業活動の最終成果である会計上の利益がヘッジ行為
とは無関係に評価されてしまい、企業のリスク管理に対する意欲を減退させる危険性がある。このようにヘッジ会
計は諸刃の剣で、誤って利用された場合の弊害が大きいものの、適正に利用された場合のメリットも大きく、企
業におけるヘッジに対する姿勢やリスク管理の定着に重要な意味を持っている。特にリスク管理を前提とした経
営が求められる世界的規模での自由競争時代において、ヘッジ会計制度の充実は喫緊の課題である。
69
第 7 節 モダン・ポートフォリオ理論
「ポートフォリオ」(portfolio)は、一般には「書類カバン」や「携帯書類入れ」をさす言葉だが、経済・金融
分野では、株券などの有価証券を入れる書類カバンから転じて「資産構成」「資産の組み合わせ」などの意味で
使われている。
伝統的な投資理論におけるポートフォリオの概念でも「一つの籠にすべての卵を盛らない」など経験的理解は
古くからあったが、分散投資の効果が数学的に証明され、リスクとリターンを定量化してコンピュータプログラムで計
算可能なものになったのは、1952 年、シカゴ大学の大学院生だったハリー・マコービッツ(Harry Markowitz)
が著した博士論文「ポートフォリオセレクション:分散投資理論」が最初だった。
マコービッツがこの論文で提唱した「平均・分散アプローチ」と「ポートフォリオの最適化」は、その後、シャープが考
案した資本資産価格理論(CAPM 理論)などを経て、1990 年代にほぼ完成し、それまでのポートフォリオ理
論に対して「モダン・ポートフォリオ理論(MPT)」と呼ばれるようになった。マコービッツはこの業績が認められ、
1990 年に、同じシカゴ大学のマートン・ミラー、スタンフォード大学のウィリアム・シャープと共にノーベル経済学賞
を受賞した。
ポートフォリオ・セレクション(資産の組み合わせ)の考え方
ポートフォリオを組む理由の第一は、一つの投資の成績が振るわなくても、別の投資がそれをカバーできるほど
高いリターンを上げることができれば運用成績の振れが小さくでき、全体の収益も確保されることにある。そのため
には、互いに相関のない投資商品のポートフォリオを組成することがリスクを軽減する手段の一つになるというのが、
MPT のまず画期的な点だった。
仮に、「ハイリスク、ハイリターン」の資産 A と「ローリスク、ローリターン」の資産 B を組み合わせたとする。両者がま
ったく同じ値動きをすれば、ポートフォリオの期待リターンは資産 A と資産 B の中間になる。
しかし、MPT では、もし資産 A と資産 B の値動きとリターンの連動性(相関)が低ければ、理論上、ポートフ
ォリオ全体のリスクは低くなるとしている。
相関関係を読み取るポイントは、資産のリターンが同じ方向に動く傾向にあるか、逆の方向に動く傾向が強い
かにある。お互いのプラスとマイナスを打ち消すように逆の方向に動く傾向にある投資対象を「相関が低い」とい
う。
例えば投資対象 A と B の過去 5 年間のリターン(収益)を比べて見る。
70
<投資対象 A と B の過去 5 年間の収益推移>
1年
2年
3年
4年
5年
平均
標準偏差
資産 A
60
80
40
-20
20
36
38.47
資産 B
-10
-5
60
60
60
33
37.01
A+B 合成
50
75
100
40
80
69
24.08
それぞれをみると、両者ともリターンの平均値からの散らばり具合を表わす標準偏差が大きい反面、リターンは
1年目で B が-10であるのに対して A は60、4年目は逆に B が60、A が-20となるなど、両者の連
動性(相関)は低い。しかし両者を合成してみると、リターンの振れは小さくなり、標準偏差も小さくなっている。
このことから、ポートフォリオによるリスクコントロールに重要な役割を果たすのが、投資対象間の相関関係である
ことが分かる。この連動性の度合いを示す相関係数は+1から-1までの範囲にあり、相関係数が+1であれ
ばまったく同一のパターンで変動する(一方が 1%値上がりすれば、もう一方も 1%値上がりする)。-1であ
れば、まったく逆に動き、0であれば 2 つのデータの変動の間には何の関係もない。
安全資産(国債や預貯金の利子)での運用と、上記の資産Aと資産Bのリスク資産を組み合わせた場合の
期待収益率とリスクの関係は下図の曲線上の点で表わされる。
注目されるのは、この曲線上に資産 B よりも収益率が高く、リスクが小さな点 D が存在することである。このこ
とから、AとBの組み合わせによっては、B以下のリスクにすることができるということになる。
このポートフォリオにおいて、投資家がなるべくリスクを低くし、利益を大きくしたいと思うなら、安全資産の点Fか
71
ら曲線に引いた接線との交点(点E)における保有比率が最適なAとBの保有比率となる。
MPT に基づいて、リスク・リターンの異なる投資対象を組み入れたポートフォリオの効果を最大にする組み合わ
せ比率を求めることができる。そして、リスクが最小でリターンが大きい組み合わせの範囲(上図では曲線上の点
D より右上の部分)を有効フロンティアと呼んでいる。
有効フロンティアを作成するためには、投資対象ごとに収益のヒストリカルデータから期待リターン、リスク(分散・
標準偏差)を求め、相関係数と期待リターンに基づいて、ポートフォリオにおける各投資対象の組み入れ比率を
変えていく。
これを元に、期待リターンに対してリスクが最小となるポートフォリオを組んだ時のリスク・リターンを示す有効フロン
ティアの曲線を作成することで、リスクを小さくして、リターンを最大にするポートフォリオを構成することができる。ち
なみに、MPT は現在では、株や商品ばかりでなく、不動産投資や生命保険などのビジネスにも応用されている。
次に、商品と伝統的資産(株、債券)の相関係数を具体的に見てみよう。サンプルは 2002 年 1 月 4 日か
ら 2012 年 12 月 28 日までの国内市場のデータである。これを見ると、とうもろこし、ゴム、金ともに日経 225、
為替、JGB(日本国債)との相関が低いことがわかる。
<商品と伝統的資産の相関係数>
日経 225
JGB
ドル円
とうもろこし
ゴム
日経 225
1.00
JGB
0.32
1.00
ドル円
0.35
0.22
1.00
とうもろこし
0.32
0.11
0.27
1.00
ゴム
0.40
0.14
0.24
0.41
1.00
金
0.27
0.08
0.24
0.38
0.37
72
金
1.00
<コラム>
◆商品投資とモダン・ポートフォリオ理論◆
商品先物市場は、伝統的な投資に対する分散投資の対象として位置づけられる。
米国の商品先物市場で、MPT が初めて注目されたのは 1983 年、ジョン・リントナーが、マコービッツの理論を用
いて、株式と債券のポートフォリオに原油や貴金属、穀物などの商品先物市場に投資する商品ファンド
(Managed Futures)を加えることで収益が安定するという論文を発表してからだといわれている。
実際に米国で作られた商品ファンドの第一号は、1949 年にリチャード・ドンシャンが設立した公募型ファンド「フュ
ーチャーズ・インク」だとされているが、リントナーが論文を発表するまでの商品ファンドは、理論的な裏付けに欠け
ており、運用金額もごくわずかだった。
し か し 、 リ ン ト ナ ー の 論 文 発 表 以 後 、 商 品 フ ァ ン ド の 運 用 マ ネ ー ジ ャ ー ( Commodity Pool
Operator:CPO)たちが、その成績を分析する資料の中に、株式や債券などの伝統的な運用資産価格と原
油や貴金属、穀物などの商品価格との非相関関係を示した数字や、伝統的なポートフォリオの中に、商品を加
えた時のリスクとリターンを MPT を使って検証したグラフなどを加えたことで、州や大学、企業の年金基金なども注
目し始め、特に米国株式市場が大暴落した 1987 年 10 月のブラックマンデー以降、その運用金額は 86 年の
約 20 億ドルから 93 年には約 226 億ドルへと急速に拡大した。
運用総額の 5%から 10%の証拠金で取引できる先物取引は、もともと商品から生まれた。天候の異常や輸
送・生産コストの変動など様々なリスクがあることから、将来の一定の時点で幾らになっているか分からない商品
価格を、現時点で売り買いする商品先物取引は一種の保険の役割を果たしている。その取引相手として、積
極的にリスクを引き受けようとする多数の投機家の存在は必要だが、機能そのものは、その商品に関わる生産者
や加工業者、販売業者などにとって価格の安定化に役立つものであると理解されてもいる。
しかし、株式市場では、先物取引の対象となっているのが個々の株式でなく指数の売買であることから、少ない
証拠金で取引できる先物取引が増えすぎると、現物の需給関係に大きな影響を与えると危惧する声は、株価
指数先物を世界に先駆けて始めた米国でも当初から少なくなかった。とりわけ裁定取引(アービトラージ)は、
現物市場では先物市場とは反対の売買を伴うことから、現物市場に大きな影響を与えるとの見方が多かった。
そのため、ブラックマンデーは、一方で、先物市場が現物市場の暴落に拍車をかけたという「先物罪悪論」も生ん
だのだが、その一方で、商品ファンドは高い運用成績を継続したために、改めて商品と他の金融資産との非相関
関係を裏付ける契機にもなったのである。
商 品 フ ァ ン ド 資 金 を 商 品 先 物 市 場 で 実 際 に 運 用 す る 商 品 投 資 顧 問 ( Commodity Trading
Advisor:CTA)の数も、82 年の 117 社から 80 年代後半には 600 社、90 年代中盤には 1600 社へと増
加した。
CTA たちは、90 年代後半に入ると、運用資産が拡大したために、米国の商品先物市場ばかりでなく、世界中
の様々な金融・商品の先物市場でも取引するようになり、ヘッジファンドを名乗ることも多くなった。これに伴い、
73
米国の商品ファンド協会(Managed Futures Association:MFA)も、名称を「マネージド・ファンド協会」
(Managed Fund Association:MFA)に改称。同協会がまとめている商品ファンドの成績も統計上、ヘッ
ジファンドに組み込まれるようになった。ヘッジファンド全体の運用金額は、2013 年末には 2 兆 4,000 億ドル
(Hedge Fund Research 社調べ)を超える水準まで達している。
74
第 8 節 効率的市場仮説
ポートフォリオ理論は、市場が効率的であることを前提としている。効率的な市場とは、「価格が利用可能な
すべての情報を常に反映している市場」のことである。効率的な市場では、次に発生する新たな情報は予測不
可能であり、結果として価格はランダムウォークに従うことになる。1970 年にユージン・ファーマはこうした市場に対
する捉え方として「効率的市場仮説」を提唱した。ファーマによれば市場の効率性のレベルは以下の3つに分け
られる。
・ウィークフォームの効率性…過去の価格情報を用いても超過収益を得ることはできない。すなわち、ウィークフォ
ームの効率性が確保されている市場では、過去の価格データを分析することで、超過収益を得ることはできな
い。したがってこの場合、テクニカル分析は有効ではないと考えられる。
・セミストロングフォームの効率性…公開情報を用いても超過収益を得ることはできない。すなわち、セミストロン
グフォームの効率性が確保されている市場では、公開情報をもとに、超過収益を得ることはできない。したがっ
てこのときは、ファンダメンタル分析は有効ではないと考えられる。
・ストロングフォームの効率性…未公開情報を用いても超過収益を得ることはできない。すなわち、ストロングフォ
ームの効率性が確保されている市場では、未公開情報をもとに超過収益を得ることはできない。したがって、こ
の効率性が確保されている場合、インサイダー情報を得ようとしても無駄という帰結になる。
こうした市場に対する見方・捉え方は、実際の市場に必ずしもあてはまっているわけではない。例えば効率的
市場仮説を信じ、すべての市場参加者が情報収集や分析をやめてしまった場合、情報が価格に反映されず、
その瞬間に市場は効率的でなくなる。この時、あるひとりの投資家のみが情報収集し分析を行い、結果その投
資家だけが買い時だという情報を得たとすると、この情報は他の誰も持っていないため分析を行った投資家のみ、
誰よりも先に行動することができ利益を得ることができる。しかし、その投資家が分析により利益を上げたという情
報が他の市場参加者にも伝われば、多くの投資家が分析を始め、市場は効率的になり、その意味で他の投資
家を出し抜けず、分析は意味のないものになる。
分析しても意味がないと誰もが思って分析しなくなると、また分析した投資家だけが利益を得る状態になると
いう状態の繰り返しで、誰もが市場は効率的と思えば、分析が行われていないことで結果的に効率的ではなくな
り、効率的でないと思えば効率的になるというような存在といえる。
また、こうした市場の効率性に対する見方の違いによって、投資のスタイルも異なる。アクティブ運用は、市場
が完全には効率的ではなく、非効率なところもあると考えて情報収集と分析に力を入れることで収益を上げると
いう投資スタイルである。
一方、パッシブ運用は分散投資により、市場パフォーマンスに追従した投資リターンを追及する投資戦略であ
る。パッシブ運用は、市場は効率的だと考え、情報収集と分析に力を入れても市場を上回るパフォーマンスは得
られないので、むしろ市場で取引されている多くの銘柄に分散して投資することにより、市場パフォーマンスと同じ
収益を上げていこうとする投資スタイルである。
75
第 7 章 参考資料
第 1 節 用語解説
•アクリロニトリル
化学式 CH2=CH-C≡N で表わされる無色透明で特有の刺激臭のある液体。アクリル繊維や合成樹脂
の原料として利用され、ブタジエンと重合して得られる合成ゴムとして、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)
がある。NBR は、アクリロニトリルの含量によってゴムの性能が決まり、アクリロニトリルを多く含むものほど耐油性、
耐熱性が高くなり、ブタジエンが多いほど耐寒性が向上する。耐油性があることから自動車用部品、オイルシ
ールなどに利用されている。
•RSS(Ribbed Smoked Sheet)
リブドスモークドシート。ゴム樹から採取したゴム液を凝固させ、シート状に圧延したものを燻煙して仕上げる。
天然ゴムの代表品種で、目視により最上級 1X 号から以下 1 号、2 号、3 号、4 号、5 号まで 6 等級に格
付けされる。
•イソプレン
分子式 C5H8 で表わされる炭化水素で、動植物の体内でも生成されるものであるが、工業的には、ナフサ
などの熱分解の副生成物として得られる。天然ゴムと構造が極めてよく似ており、イソプレンを重合して作られ
るポリイソプレンは、合成天然ゴムと呼ばれる。天然ゴムに比べ、振動吸収性や電気特性が優れ、品質が均
一、透明で色調が明るく、臭いも少ないといった特徴を有する。また、機械的強度が大きく、物性のバランスも
よい。また、重合が行われる際の基質となる物質をモノマーといい、高分子(ポリマー)であるポリイソプレンの
基本構造の構成単位として、イソプレンモノマーとも呼ばれる。
•IR( Isoprene Rubber)
ポリイソプレンゴム。天然ゴムに最も近いといわれる合成ゴムで、イソプレンを重合してつくる。従来のゴムに比
べて分子構造の規則性が極めて高く、弾性、耐摩耗性、耐熱性にすぐれている。
•IRA(International Rubber Association)
国際ゴム協会。天然ゴムの生産流通、消費、各分野の業界団体によって構成される全世界規模の業界
任意団体。設立は 1971 年。
•IRCo(International Rubber Consortium Limited)
国際ゴム公社。天然ゴムの主要生産国であるタイ、インドネシア、マレーシアの 3 カ国が、現物買い付けや
供給量の調整(生産量と輸出量の削減)を行うことでゴム価格の高値安定化を図り、もって生産者(とり
わけスモールホルダー)の収入確保することを目的に設立した有限責任会社。ゴム買い付け機関であった旧
ITRCo(3 カ国国際天然ゴム公社)が 2003 年 10 月に転じたもの。
•インナーライナー
チューブレスタイヤにおいてチューブに相当する部分として、タイヤ内部に貼り付けられたゴムシート。気密保
持性の良い素材が使われ、釘が刺さったときなどの急激なエア漏れを防ぐ役割を果たす。
•ウィンタリング(wintering) 落葉期または減産期。
ゴム樹の落葉期。毎年 1 回 2~4 月に落葉し、新芽が出る時期を指す。その時期と期間は地域や、その
76
年の気象状況によって多少異なるが、最も北緯に位置する生産地である中国の雲南省・海南省が 12~2
月、タイ、ベトナム、スリランカが 1~3 月、マレーシアが 2~4 月、インドネシアは地域が広いため特定の時期を
指すのが難しいが、だいたい 9~11 月となっている。落葉期の気候は乾期で雨量が極端に落ちる。タッピング
しても、ほとんど生産が上がらないため、生産者は生産活動を休止するのが一般的。一般に、ウィンタリングか
ら 1 ヵ月~1 ヵ月半程度ずれた時期を減産期といい、落葉期とは区別される。タイの場合、減産期は 4~6
月が中心。減産する度合いは、その年々の天候状況にもよるが平均 15~30%。ウィンタリングの期間が長く
減産の度合いが大きい場合をハード・ウィンタリングあるいはダブル・ウィンタリングと呼ぶこともある。需要タイトな
期間が長くなるため、一般的に相場は上昇しやすくなる。
•ANRPC(Association of Natural Rubber Producing Countries)
天然ゴム生産国連合。インドネシア、マレーシア、パプアニューギニア、シンガポール、スリランカ、タイ、インド、
ベトナムの 8 カ国で構成する。1970 年 10 月発足。
•SMR(Standard Malaysian Rubber)
マレーシア産の TSR。
•STR(Standard Thai Rubber)
タイ産の TSR。
•SIR(Standard Indonesian Rubber)
インドネシア産の TSR。
•SSR(Standard Singapore Rubber)
シンガポール産の TSR。
•SCR(Standard China Rubber)
中国産の TSR。
•SVR(Standard Vietnamese Rubber)
ベトナム産の TSR。
•エステート(estate)
ゴム樹を栽培し、ラテックスを採取する生産農園のうち、40 ヘクタール以上の規模のものをエステートという。
多収量の優良樹への植え替えを定期的に行い、土壌の改良その他の管理も行きとどいて、単位当たりの収
穫量が多い。国営のところが多く、タイでは REO(Rubber Estate Organization=ゴム農園機構)が有
名。
•SBR(Styrene-Butadien Rubber)
スチレンブタジエンゴム。合成ゴムの汎用銘柄で自動車タイヤに大量に用いられる。
•MRRDB(Malaysian Rubber Research and Development Board)
マレーシアゴム開発局。マレーシア産ゴムの研究開発業務を行う政府機関。
•エラストマー(elastomer)
弾性のある高分子物質をいう。ゴム業界では、産業用素材として天然ゴムおよび合成ゴムのゴム類全般を
指していう。
•エルニーニョ現象
太平洋赤道域の中央部(日付変更線付近)から南米のペルー沿岸にかけての広い海域で海面水温が
平年に比べて高くなり、その状態が 1 年程度続く現象。エルニーニョ現象の原因はまだよくわかっていないが、エ
77
ルニーニョ時には、日付変更線から南米大陸にかけての赤道太平洋で平年よりも海面水温が高まり、西部
熱帯太平洋では海面水温が平年よりも低くなる傾向がある。このような水温分布の変化が降雨の分布に影
響して、地球全体に異常気象をもたらす原因となると考えられている。
•オファー
売り出し値段。生産地の輸出業者が、買い手に対して売りたい提示値段のこと。
•オープンマーケット(open market)
ディーラー、ブローカー等の中間業者を通じて売買契約、輸出船積みがなされる国際市場。
•カーカス
トレッド、ビードワイヤーともに、タイヤを構成する 3 要素の一つである。カーカスは、ゴムで被覆した繊維コード
を貼り合わせ、層にして作られ、タイヤの構造を保持する骨格となる。カーカスがタイヤの中心から放射状に配
置されているタイヤはラジアスタイヤと呼ばれ、カーカスを斜めに配置し、複数枚重ねているものをバイアスタイヤ
という。ラジアスタイヤは高速安定性、耐久性等に優れ、乗用車用タイヤのほとんどに使用されている。一方、
ラジアスタイヤは乗り心地に優れ、トラック、バス用タイヤなどに使用されている。
•カップ・ランプ(cup lump)
ゴムの樹液を採取するためカップをゴム樹にとりつけるが、そのカップの中で樹液が自然に凝固したものをいう。
TSR の原料である。
•加硫
天然ゴムに硫黄を加えて熱すると、化学反応によって粘着性を防ぎ弾性も強化することができる。また、温
度の上昇により可塑性も加わる。加硫はゴム製品の実用的価値を高めるので、加工工程中最も重要なもの
である。また加硫後のゴムを加硫ゴム、加硫前のゴムを未加硫ゴムという。チャールズ・グッドイヤーがこれを発
見したといわれる。
•緩衝在庫(buffer stock)
天然ゴムの安定供給をはかるため、国際協定に基づいて政府・民間より資金を拠出して在庫を保有する。
現在のものは国際天然ゴム協定に基づくもので、在庫枠は 55 万トン(通常は 40 万トン、緊急時は 15 万
トンの積増しを行う。)である。
•グリーン・ブック
米国ゴム工業会、米国ゴム取引業者協会をはじめ各国ゴム業界団体が承認した天然ゴムの品質包装の
規格書。International Standards of Quality and Packing for Natural Rubber Grades という。
•合成ゴム(synthetic rubber)
石油化学コンビナートの一次製品エチレン・プロピレン、ブタン・プチレンからモノマーの重合体をつくり、精製し
た鎖状高分子合成物質。天然ゴム状の弾力を持っている。最も広く使われているのは、汎用銘柄の SBR
(スチレン・ブタジエン・ゴム)であるが、ほかに NBR(アクリロニトリル、ブタジエン・ゴム)、IR(ポリイソプレ
ン・ゴム)、ネオプレン・ゴム、ブチル・ゴムなど用途に応じて種類は多い。
•国際規格
天然ゴムの国際品質包装規格。各国の天然ゴム生産者、取扱業者、ゴム製品製造業者団体によって採
択承認された天然ゴム各品種等級の規格。「グリーン・ブック」に記されている。
•国際ゴム研究会( IRSG:International Rubber Study Group)
ゴムの需給統計のとりまとめ、情報収集を行っている各国政府加盟の調査機関。1934 年から活動してい
78
た国際ゴム規制機構(IRRS)の発展的解消を受けて、1944 年 8 月に設立した。加盟国は 27 力国
(2015 年 7 月現在)で、日本、米国、欧州各国、タイ、インドネシア、マレーシアなどである。消費国と生
産国の双方が加盟するゴムの国際組織としては最も影響力をもっている。活動の目的は、1.世界ゴム事情
の研究、特にゴムの需給状況及びその見通しに関する研究、2.世界ゴム消費拡大を目的とした方策の考究、
3.現在または将来における特別な問題に対する適切な対策を立案し、その問題に関する報告および勧告の
加盟国政府への提出など。シンガポールに事務局がある。
•サイドウォール
タイヤが最もたわむ部分で、スムーズに屈曲することで役割を持つ。タイヤの側面でタイヤサイズやメーカー名
などが表示されている部分で、この部分が変形することで衝撃や遠心力への耐久性を発揮し、乗り心地や走
行性能を左右する。柔軟で対候性、対老化性に優れた素材が使われる。
•シッパー(shipper)
天然ゴムの場合生産地よりの輸出業者をいう。農園より集荷したシートゴム、クレープ類を選別包装するパ
ッ カ ー ( packer ) を 兼 ね る こ と が 多 い 。 TSR の 場 合 は 、 原 料 ゴ ム を 加 工 す る 工 場 、 プ ロ セ ッ サ ー
(processor)も自ら輸出業務を行う。
•新ゴム
ゴムの需給統計上、生産量及び消費量について天然ゴムと合成ゴムを合算したものをいう。合成ゴム使用
比率は、合成ゴム消費量の新ゴム消費量に対する比率である。
•スチレン
スチレン(モノマー)は化学式 C6H5-CH=CH2 で表わされ、合成ゴムや合成樹脂の重合用の原料とし
て利用される無色透明の液体。特有の強い臭いがあり、一般的には、原油やナフサなどから得られたエチレン
とベンゼンを化学反応させてできるエチルベンゼンから、水素を取り除くという製法で造られる。
•スモールホールディング(small holding)
ゴム農園のうち面積が 40 エーカー未満の小農園をいう。タイでは、このスモールホールディングの占める割合
が全体の 90%と高い。インドネシア、マレーシアは 80%台。なおタイの場合、平均的なスモールホールディング
の保有ゴム栽培面積は 2.4ha といわれている。また、スモールホールディングを保有する零細農民をスモール
ホルダーという。
•ターミナルマーケット(terminal market)
消費地の工場向けの陸揚げ港をひかえ、生産地の一次市場と同様の役割を果たす集散地市場。
•タイヤコード
タイヤコードとはタイヤ補強に使用されるコードのこと。タイヤのトレッド面の内側に入っている繊維で、ゴムに
覆われている。タイヤの骨格部分にあたり、タイヤの強度と耐久性を向上させる役割をもつ。
•ダイレクト・トレード(direct trade)
天然ゴム市場において生産者(大規模農園、加工業者)と大口消費者(自動車タイヤメーカー等)と
の間で現物市場、中間業者を経由しないで契約される取引。
•タッピング(tapping)
成長したゴム樹から樹液を採取するために樹皮の皮質部に切りつけを行うことをいう。樹の周囲の 1/3~
1/4 を毎日午前 4 時前後の早朝に切り、樹の表面を一定の期間で位置を変えながら切っていく。またタッピン
グする作業者のことをタッパーという。
79
•TSR (Technically Specified Rubber)
技術的格付けゴム。その形状からブロックゴムあるいはクラムラバーともいう。上級品はラテックス原料から、中
級品はカップランプを主原料に作られる。需要家の要望により、USS を混入させる場合も多い。成型後にサン
プルを抜き出し品質検査を行い、その結果により格付けするので技術的格付けゴムといわれる。米国を中心
に、欧米で最も利用されており、日本でもタイヤメーカーの使用が増加し、年間輸入量の半分以上を占める
ようになった。
•ディッピング
ディッピングは「ドブ漬け」ともいわれ、タイヤコードの製造工程のひとつ。タイヤコードは、撚糸された有機繊維
コードをすだれ織し、その織物を大型設備でラテックスにディッピングして生産される。
•天然ゴム(Natural Rubber)
ゴム含有植物には様々な種類があるが、今日、栽培の対象となっているへベアブラジリエンシス種のゴム樹の
樹液を原料として生産したゴム。加工された形状により、シートゴム、ペール・クレープ、ブランケット、クレープ、
ブラウン・クレープなどに分かれる。これらとラテックス、TSR を総称して天然ゴムという。
•トレッド
タイヤの路面と接する部分をトレッドといい、トレッドパターンと呼ばれる立体的な模様が刻まれている。トレッ
ドパターンはその形状によって、リブ型、ラグ型、リブラグ型、ブロック型等に分類され、雨に強い、駆動力・制動
力が強い、走行騒音が低いなどといったタイヤの性能を特徴付ける要素となっている。
•トレッドコンパウンド
タイヤのトレッド部分に使用されるラバーコンパウンド。硬さの程度によってタイヤのグリップや自動車の燃費性
能に影響を与える。
•パッカー(packer)
農園、スモーキングハウス、加工業者、集荷業者等から入手したシートゴム、クレープ類を選別包装する業
者をいう。
•ビッド
買い出し値。オファーに対し、今度は買い手が買いたいとする値段を提示する値段のこと。
•ブタジエン
炭素数四個で二重結合二個をもつ鎖式不飽和炭化水素で、分子式 C4H6 で表される。2 種類の異性
体があるが、単純にブタジエンといった場合は、通常、1,3-ブタジエン(CH2=CH-CH=CH2)のことを指す。
これは、無色・無臭の気体で容易に液化する性質を持ち、工業的には石油分解ガスからの抽出で得られ、
様々な合成ゴムの原料となる。このうち、ブタジエン・ゴム(BR)は、ブタジエンのみの共重合体として作られ
る合成ゴムで、耐摩耗性、反発弾性、耐老化性、低温特性などに優れ、透明性も良く、代表的な汎用ゴム
として、卓球のラケット、タイヤのトレッド、サイドウォール、ベルト、ホース、その他工業製品に使用されている。
•ヘベアブラジリエンシス
天然ゴム採取用に栽培されている大戟科に属する南米ブラジル原産の落葉喬木。近年はゴム樹液(ラテ
ックス)の流出の多い多産樹への品種改良が進んでいる。
•USS(unsmoked-sheet:未燻煙シート)
ラテックスを凝固させたものをローラーにかけて圧延し、型付けをした状態で未だ燻煙していないものをいう。
•ラジアル・タイヤ
80
タイヤトレッド部分の内部を特殊な構造により強化し、走行安全性、耐磨耗性のほか、ロードグリップ、制動
力など操縦性・安全性に優れた自動車タイヤ。乗用車タイヤの場合合成ゴム主体ながら天然ゴムの混入割
合が大きい。
•ラニーニャ現象
エルニーニョ現象とは逆に、同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象。エルニーニョと同じく世界
の異常気象発生の原因となると考えられている。
•フィールドラテックス
ゴム樹から滲出する乳液状のゴム液のこと。フィールドラテックスのゴム成分量は、通常 30~40%である。
•ラテックス(latex)
ゴム園から採取されたフィールドラテックスに凝固防止のため安定剤(アンモニア等)を加えた後、遠心分離
機でゴム成分量を 60%に濃縮したものをいう。
81
第 2 節 統計資料と情報入手先
表1 日本の新ゴム需給推移(1953年~2015年)
(単位:トン)
暦年
1953
1954
1955
1956
1957
1958
1959
1960
1961
1962
1963
1964
1965
1966
1967
1968
1969
1970
1971
1972
1973
1974
1975
1976
1977
1978
1979
1980
1981
1982
1983
1984
1985
1986
1987
1988
1989
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
資料:ゴム需給調査会
天然ゴム
輸入
93,740
84,700
91,920
112,910
132,560
131,500
160,180
172,500
185,680
192,990
187,920
215,410
212,050
229,360
243,470
257,850
281,060
292,230
315,990
292,090
365,830
307,800
299,110
292,280
304,520
366,430
376,410
457,440
446,000
412,950
494,150
514,730
539,550
534,180
569,730
656,640
665,420
663,000
690,600
675,700
633,600
644,300
696,200
724,100
730,400
678,000
755,400
801,487
713,300
771,800
791,800
800,700
848,600
885,921
850,002
849,189
596,770
747,190
785,310
700,110
721,740
689,447
682,172
供 給
合成ゴム
輸入
1,500
1,501
5,000
10,000
13,520
16,850
41,860
51,640
44,550
49,970
54,460
57,230
49,820
47,860
48,660
60,760
45,190
31,230
30,700
23,820
26,160
25,850
15,770
22,900
25,660
36,680
53,710
49,420
53,280
60,160
55,180
56,910
66,510
80,880
76,970
88,260
84,810
79,600
92,600
87,800
103,900
122,300
97,900
87,800
111,100
97,800
122,200
170,748
164,553
175,100
185,700
185,500
194,200
191,357
204,836
222,380
138,370
172,290
200,990
180,540
157,910
168,467
166,056
生産
18,580
51,130
69,340
90,980
121,960
161,320
232,000
280,590
380,670
526,480
697,530
779,770
819,360
967,470
857,940
788,600
941,280
971,000
1,028,860
1,107,250
1,094,080
1,010,270
930,740
1,002,510
1,160,490
1,158,040
1,153,400
1,191,900
1,298,850
1,351,860
1,426,000
1,377,000
1,390,000
1,310,000
1,349,000
1,498,000
1,519,900
1,591,500
1,520,100
1,576,700
1,591,700
1,465,500
1,522,000
1,577,400
1,616,100
1,626,900
1,607,041
1,654,625
1,662,706
1,303,190
1,595,440
1,611,200
1,627,370
1,643,620
1,599,189
1,668,282
需 要
小計
1,500
1,501
5,000
10,000
13,520
16,850
41,860
70,220
95,680
119,310
145,440
179,190
211,140
279,860
329,250
441,430
571,670
728,760
810,470
843,180
993,630
883,790
804,370
964,180
996,660
1,065,540
1,160,960
1,143,500
1,063,550
990,900
1,057,690
1,217,400
1,224,550
1,234,280
1,268,870
1,387,110
1,436,670
1,505,600
1,469,600
1,477,800
1,413,900
1,471,300
1,595,900
1,607,700
1,702,600
1,617,900
1,698,900
1,762,448
1,630,053
1,697,100
1,763,100
1,801,600
1,821,100
1,798,398
1,859,461
1,885,086
1,441,560
1,767,730
1,812,190
1,807,910
1,801,530
1,767,656
1,834,338
合計〔A〕
95,240
86,201
96,920
122,910
146,080
148,350
202,040
242,720
281,360
312,300
333,360
394,600
423,190
509,220
572,720
699,280
852,730
1,020,990
1,126,460
1,135,270
1,359,460
1,191,590
1,103,480
1,256,460
1,301,180
1,431,970
1,537,370
1,600,940
1,509,550
1,403,850
1,551,840
1,732,130
1,764,100
1,768,460
1,838,600
2,043,750
2,102,090
2,168,600
2,160,200
2,153,500
2,047,500
2,115,600
2,292,100
2,331,800
2,433,000
2,295,900
2,454,300
2,563,935
2,343,353
2,468,900
2,554,900
2,602,300
2,669,700
2,684,319
2,709,463
2,734,275
2,038,330
2,514,920
2,597,500
2,508,020
2,523,270
2,457,103
2,516,510
国内消費
天然ゴム
88,670
89,590
87,420
110,700
130,300
129,900
161,050
168,400
178,800
193,000
195,500
206,000
201,500
216,000
243,000
255,000
268,000
283,000
295,000
312,000
335,000
312,000
285,200
302,000
320,000
355,000
390,000
427,000
436,000
439,000
504,000
525,000
539,500
535,000
568,000
623,000
657,000
677,000
690,000
685,000
631,000
640,000
692,000
714,500
713,000
707,300
734,200
751,800
729,200
749,000
784,200
814,800
857,400
873,700
887,400
858,400
635,600
750,400
753,400
733,400
710,300
709,000
691,000
合成ゴム
1,700
2,100
4,300
9,000
12,900
16,800
34,950
61,600
85,200
106,000
127,500
162,000
175,500
222,000
273,000
348,000
426,000
496,000
525,000
588,000
710,000
615,000
584,800
658,000
690,000
741,000
830,000
885,000
851,000
797,000
851,000
915,000
947,500
910,000
946,000
1,042,000
1,103,000
1,133,000
1,118,000
1,081,000
1,022,000
1,026,000
1,085,000
1,124,500
1,163,000
1,115,700
1,132,900
1,137,500
1,085,100
1,096,000
1,110,700
1,146,300
1,156,000
1,170,800
1,162,200
1,170,705
831,900
987,200
963,100
956,600
953,700
951,400
895,100
82
輸出
小計
天然ゴム 合成ゴム
90,370
91,690
91,720
119,700
143,200
146,700
196,000
230,000
120
264,000
0
5,730
299,000
0
6,300
323,000
0
8,410
368,000
560
17,910
377,000
4,800
31,320
438,000
300
49,980
516,000
460
58,490
603,000
100
87,070
694,000
150
119,780
779,000
50
192,480
820,000
60
261,240
900,000
70
263,010
1,045,000
50
267,570
927,000
170
231,720
870,000
60
244,620
960,000
60
271,760
1,010,000
30
297,100
1,096,000
30
274,240
1,220,000
600
249,780
1,312,000
50
229,780
1,287,000
30
210,000
1,236,000
10
196,490
1,355,000
0
199,470
1,440,000
20
211,950
1,487,000
10
257,170
1,445,000
10
275,540
1,514,000
0
299,250
1,665,000
80
286,840
1,760,000
50
296,270
1,810,000
85
308,400
1,808,000
67
307,000
1,766,000
50
343,100
1,653,000
72
378,900
1,666,000
61
442,100
1,777,000
115
451,300
1,839,000
141
477,400
1,876,000
191
493,500
1,823,000
150
489,900
1,867,100
193
557,100
1,889,300
2,527
536,327
1,814,300
740
488,500
1,845,000
5,277
574,700
1,894,900
9,031
557,000
1,961,100
1,942
602,400
2,013,400
588
525,000
2,044,500
885
492,947
2,049,600
853
531,449
2,029,105
715
523,430
1,467,500
740
625,470
1,737,600
400
753,780
1,716,500
390
699,470
1,690,000
270
749,020
1,664,000
290
843,010
1,660,400
230
812,740
1,586,100
280
793,910
小計
120
5,730
6,300
8,410
18,470
36,120
50,280
58,950
87,170
119,930
192,530
261,300
263,080
267,620
231,890
244,680
271,820
297,130
274,270
250,380
229,830
210,030
196,500
199,470
211,970
257,180
275,550
299,250
286,920
296,320
308,485
307,067
343,150
378,972
442,161
451,415
477,541
493,691
490,050
557,293
538,854
489,240
579,977
566,031
604,342
525,588
493,832
532,302
524,145
626,210
754,180
699,860
749,290
843,300
812,970
794,190
合計〔B〕
90,370
91,690
91,720
119,700
143,200
146,700
196,000
230,120
269,730
305,300
331,410
386,470
413,120
488,280
574,950
690,170
813,930
971,530
1,081,300
1,163,080
1,312,620
1,158,890
1,114,680
1,231,820
1,307,130
1,370,270
1,470,380
1,541,830
1,497,030
1,432,500
1,554,470
1,651,970
1,744,180
1,720,550
1,813,250
1,951,920
2,056,320
2,118,485
2,115,067
2,109,150
2,031,972
2,108,161
2,228,415
2,316,541
2,369,691
2,313,050
2,424,393
2,428,154
2,303,540
2,424,977
2,460,931
2,565,442
2,538,988
2,538,332
2,581,902
2,553,250
2,093,710
2,491,780
2,416,360
2,439,290
2,507,300
2,473,370
2,380,290
〔A〕-〔B〕
4,870
-5,489
5,200
3,210
2,880
1,650
6,040
12,600
11,630
7,000
1,950
8,130
10,070
20,940
-2,230
9,110
38,800
49,460
45,160
-27,810
46,840
32,700
-11,200
24,640
-5,950
61,700
66,990
59,110
12,520
-28,650
-2,630
80,160
19,920
47,910
25,350
91,830
45,770
50,115
45,133
44,350
15,528
7,439
63,685
15,259
63,309
-17,150
29,907
135,781
39,813
43,923
93,969
36,858
130,712
145,987
127,561
181,025
-55,380
23,140
181,140
68,730
15,970
-16,267
136,220
表2 日本の天然ゴム輸入量の推移(1960年~2015年)
(単位:トン)生ゴムとラテックス(DRC重量)の合計①②
暦年
1960
1961
1962
1963
1964
1965
1966
1967
1968
1969
1970
1971
1972
1973
1974
1975
1976
1977
1978
1979
1980
1981
1982
1983
1984
1985
1986
1987
1988
1989
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
資料:財務省貿易統計、日本ゴム輸入協会
輸入先
タイ
③インドネシア
41,666
3,915
42,871
5,823
49,949
2,906
58,960
1,188
81,101
35,812
57,946
83,142
59,860
96,469
72,945
78,704
77,262
51,359
98,494
43,277
135,943
34,839
165,232
44,395
184,059
24,977
185,654
37,513
186,681
27,306
205,463
26,526
197,428
25,566
211,664
28,353
250,862
30,934
268,850
33,747
315,658
44,577
321,885
41,081
320,440
31,702
321,531
47,515
329,159
57,830
352,254
54,570
363,653
52,223
387,268
63,715
445,285
79,419
440,978
90,520
437,783
95,843
468,382
96,036
491,778
89,033
474,612
72,178
504,137
61,985
545,228
71,165
520,052
132,526
526,412
133,071
522,369
98,247
566,431
144,607
604,480
150,908
507,878
160,872
533,372
211,892
537,948
234,680
515,320
259,361
529,063
293,097
492,080
366,171
430,900
395,982
402,858
421,924
267,563
311,633
331,546
397,518
338,449
427,305
285,276
398,456
287,692
418,055
264,187
406,702
234,151
425,975
④マレーシア
115,705
130,927
131,999
117,086
74,305
45,671
53,775
69,683
104,355
114,274
108,186
92,345
68,037
128,149
86,165
62,180
62,817
53,590
76,866
68,698
90,941
75,700
52,346
116,141
118,835
114,950
103,403
111,247
121,826
123,799
127,183
124,918
92,790
83,594
72,616
71,728
62,585
63,518
47,189
34,728
37,993
35,514
23,971
18,717
19,556
18,204
18,847
13,462
10,722
7,752
6,675
6,820
5,065
4,877
4,714
3,766
ベトナム
* 1,811
518
* 3,314
4,327
5,750
6,881
6,061
7,487
* 6,365
4,202
2,520
3,383
4,151
1,958
1,753
* 573
* 1,211
744
781
610
669
75
120
595
347
0
48
0
0
32
0
0
38
1,323
2,837
3,551
3,565
3,925
3,572
4,782
6,117
7,515
9,851
9,823
9,782
10,181
11,180
11,337
11,302
8,314
9,340
10,008
9,623
9,095
10,105
10,473
スリランカ
シンガポール
8,418
89
5,038
139
3,978
603
4,063
486
3,287
11,405
4,457
8,216
5,264
2,937
5,084
5,595
4,812
9,037
4,077
12,237
4,104
4,362
2,354
4,673
1,809
2,213
2,714
3,713
1,827
1,949
921
966
898
1,138
979
1,007
1,095
941
918
2,621
903
4,118
1,970
4,623
4,457
3,579
4,500
3,404
5,017
3,210
13,930
3,431
11,572
3,112
5,054
2,209
3,803
5,717
3,335
6,620
3,619
8,361
3,660
7,113
3,362
7,096
3,395
6,682
3,258
6,748
3,246
7,862
3,734
7,900
3,577
7,088
3,440
8,491
3,281
6,418
3,186
6,254
2,900
4,033
2,184
66
2,724
1,059
2,388
206
2,532
29
2,364
16
2,289
120
2,083
300
1,488
0
1,936
0
2,326
0
1,483
140
1,725
0
1,783
0
1,616
0
その他
897
366
237
1,802
3,770
5,732
5,014
3,960
4,640
4,502
2,238
3,605
6,840
6,132
2,117
2,482
3,221
8,185
4,948
959
572
665
299
465
334
415
167
241
587
143
504
150
632
180
767
124
844
492
701
1,217
1,104
310
681
389
583
343
345
974
705
21
175
394
62
302
302
6,190
(注)
① ラテックスの1988年以降分には感熱、酸性及びプリバルカナイズドラテックスを含む。
② 国別分類は1990年現在の分類による。
③ マレーシアには東部マレーシア(サバ、サラワク)を含む。
④ ベトナムは1976年以前分は南・北別に分類集計されていたが、*印の年は南・北合計、それ以外の年は北からの輸入は無く、南のみ。
83
合計
172,501
185,682
192,986
187,912
215,430
212,045
229,380
243,458
257,830
281,063
292,192
315,987
292,086
365,835
307,798
299,111
292,279
304,522
366,427
376,403
457,438
445,999
412,943
494,151
514,732
539,550
534,178
569,734
656,637
665,427
673,293
700,259
684,729
641,963
652,346
702,904
731,207
738,084
684,009
761,465
810,042
719,022
782,017
805,340
807,196
853,450
891,004
855,065
849,894
596,771
747,190
785,302
700,105
721,746
687,793
682,171
表3 東京ゴム先限価格の推移と月間出来高・取組高・受渡枚数の推移
(単位:円/㎏、枚)
始値
2000年1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
2001年1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
2002年1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
2003年1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
2004年1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
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9月
10月
11月
12月
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152.5
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高値
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安値
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152.0
147.7
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138.4
145.4
139.0
124.4
131.0
出所:東京商品取引所
先限平均値 月間出来高 月末取組高 最高取組高
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88.7
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152,074
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80.3
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175,095
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175,211
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170,957
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207,593
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164,601
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64,043
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84
2005年1月
2月
3月
4月
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6月
7月
8月
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10月
11月
12月
2006年1月
2月
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5月
6月
7月
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10月
11月
12月
2007年1月
2月
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9月
10月
11月
12月
2008年1月
2月
3月
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6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
2009年1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
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12月
2012年1月
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7月
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9月
10月
11月
12月
2016年1月
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6月
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8月
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152.1
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224
352
131
156
91
528
92
258
136
204
279
情報入手先
株式会社東京商品取引所
経済産業省
株式会社日本商品清算機構
日本商品先物取引協会
日本商品先物振興協会
日本商品委託者保護基金
日本商品投資顧問業協会
シンガポール取引所
マレーシアゴム取引所
上海期貨交易所
タイ先物取引所
タイゴム協会(TRA)
タイゴム研究所
マレーシアゴム製品輸出促進協会
インドネシアゴム協会(GAPKINDO)
中国ゴム工業会
国際ゴム研究会(IRSG)
国際ゴム協議機関(IRC)
日本ゴム工業会
日本ゴム協会
日本ゴム輸入協会
日本自動車工業会
日本自動車タイヤ協会
日本自動車販売協会連合会
日本二輪車協会
ゴム報知新聞
ラバー・ステーション
米ラバー・ニュース
米ラバー・ワールド
欧州ゴム・ジャーナル
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