博士(医学)の学位論文提出要項 乙∴類

授与機関名
順天堂大学
学位記番号
甲第 1610 号
A diagnostic approach for identifying anti-neuronal antibodies in children with
suspected autoimmune encephalitis
(自己免疫性機序が疑われる小児脳炎患者における抗神経抗体の解析)
中原
絵理(なかはら
えり)
博士(医学)
論文内容の要旨
近年神経細胞に対する自己抗体(抗神経抗体)が自己免疫性脳炎と呼ばれる病態と関連す
ることが明らかになり、新たな抗神経抗体が次々に発見されている。小児の臨床においても
自己免疫性脳炎が鑑別疾患として疑われる例が数多くあり、抗神経抗体の同定は重要である。
しかしこれらの抗体を個別に解析するには膨大な時間と労力が必要とされるため、効率的な
スクリーニング法の開発が望まれる。今回、我々は小児の自己免疫性脳炎の診断法確立のた
めに、小児期発症の自己免疫機序の疑われる 82 例の患者血清を用いて immunoblot、ラット
凍結脳切片を使用した免疫組織化学法(以下 IHC)、ラット神経初代培養細胞を使用した免
疫細胞化学法(以下 ICC)と cell-based assay による抗体検査の有用性を検討した。
Immunoblot、IHC、ICC、cell-based assay の陽性率はそれぞれ 15/39 例(38.4%)、22/39
例(56.4%)、25/39 例(64.1%)、1/39 例(2.5%)であった。IHC と ICC の結果には相関が認
められた。また IHC と ICC は immunoblot に比べて陽性率が高く、自己抗体のスクリーニ
ング法として有用と考えられた。Cell-based assay による抗 NMDAR 抗体陽性例ではいずれ
も ICC で dendrite に対する抗体が陽性だった。一方で immunoblot は IHC、ICC との相関
が不良で、その理由として蛋白変性の過程で抗原性の喪失を来すため細胞表面抗原に対する
抗体を同定できなかった可能性が考えられた。今回の結果から、IHC と ICC による解析は
抗神経抗体のスクリーニングに適しており、これらと cell-based assay を組み合わせて解析
を行うことで有用かつ経済的な抗神経抗体の解析が可能になると考えられた。