運動が誘発する息切れの緩和対策

特集
呼吸リハビリテーション:サイエンスからみた将来展望
運動が誘発する息切れの緩和対策
Measures to relieve the shortness of breath that exercise induces
岩手医科大学附属病院呼吸器・アレルギー・膠原病内科助教 長島 広相 Hiromi Nagashima
岩手医科大学附属病院呼吸器・アレルギー・膠原病内科教授 山内 広平 Kohei Yamauti
COPD,身体活動量,動的肺過膨張,呼吸方法,運動療法
Summary
運動時に息切れが伴うと身体活動量が低下し,さらに
をする」,「息を吐きながら動作を行う」,
「呼気と動作の
息切れが増悪する。息切れは階段の歩行,上肢を挙上す
開始を合わせる」,「歩行器を使用し,上肢や前腕で体幹
る動作,息をこらえる動作などで多い。慢性閉塞性肺疾
を支持する姿勢で歩行する」,「冷風を当てることや室温
患(COPD)患者は呼気が不十分な状態で吸気が開始され
を上げ過ぎないようにする」などがある。
るので動的肺過膨張が生じ,これは労作時呼吸困難の原
運動療法は継続が大切である。薬物療法による十分な
因となる。しかし息切れ対策には運動療法が大切である。
疾患のコントロール,呼吸法指導などを図りつつ,運動
運動時の息切れ対策として,
「口すぼめ呼吸や深呼吸
を継続させることが大切である。
といった気管支拡張薬などの薬剤,必
ることで引き起こされる呼吸に伴う不
要時の酸素投与,そして運動療法が重
快感であり,呼吸を行いにくい,空気
慢性呼吸器疾患の患者にとって息切
要である。
が少ない,胸痛,動悸や胸部絞扼感な
れの症状は非常に重要な問題である。
本稿では慢性呼吸器肺疾患,特に
どを患者は訴える。実際に低酸素を伴
運動時に強い息切れが伴うと患者は動
慢 性 閉 塞 性 肺 疾 患(chronic obstructive
うこともあれば,低酸素を伴わなくて
はじめに
くことを避けるようになり身体活動量
pulmonary disease;COPD)をもつ患者
も息切れを感じることがある。息切れ
が低下する。すると運動能力の低下,
を中心に,運動に伴う息切れの原因お
を自覚する活動には個人差はあるが,
骨格筋の機能低下をもたらし,後述す
よびそこから考えられる息切れの対処
上り坂や階段の歩行,上肢を挙上する
るように運動時の息切れをさらに増悪
方法について簡潔に述べたい。
動作,腹部に圧迫がかかる動作,息を
こらえる動作などで多く認められる。
させることになる。呼吸困難を改善さ
せる手段として図1 に示してあるよ
1)
うにチオトロピウムなどの抗コリン薬
やインダカテロールなどのβ2刺激薬
Ⅰ
息切れ悪化の原因の1つに骨格筋の
息切れの原因
機能低下がある。労作により息切れが
運動が誘発する息切れとは,運動す
SAMPLE
出現し,身体活動量が減少すると骨格
THE LUNG perspectives Vol.24 No.4 53
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