特集 呼吸リハビリテーション:サイエンスからみた将来展望 呼吸リハビリテーションの 歴史的展開と将来の問題点 History and future in pulmonary rehabilitation 東北大学環境・安全推進センター/東北大学大学院医学系研究科産業医学分野教授 黒澤 一 Hajime Kurosawa 慢性閉塞性肺疾患,呼吸理学療法,運動療法,身体活動性,行動変容 Summary 呼吸リハビリテーションの端緒は,わが国では肺結核 らステートメントや運動療法および患者教育のマニュア であったが,その後,欧米の動きと同じく慢性閉塞性肺 ルが出版され,普及に寄与しているものの,まだまだ一 疾患(COPD)の治療の進歩とともに発展してきた。肺容 般臨床に浸透していく余地があり,発展途上である。 量減少手術(LVRS)などにおける経験などを経て,呼吸 COPD 以外の呼吸器疾患への展開,経済的なメリット リハビリテーションのエビデンスが確立され,独立した の理解の浸透,生活習慣の中で活動的に過ごす身体活動 治療としてゆるぎない位置づけを獲得している。学会か 性の向上と維持の概念の確立などが今後の課題である。 はじめに た疾患は,わが国では肺結核,欧米で 1974年に米国胸部疾患専門医学会 は慢性閉塞性肺疾患 (chronic obstructive (American College of Chest Physicians; 呼吸リハビリテーションは呼吸器疾 pulmonary disease;COPD)であったと 患の治療の中でも重要な位置を占める いわれている 。1900年代になって肺 員会は以下の定義を発表した4)。 ようになってきている。本稿では,こ 結核はわが国における最大の死因であ 「呼吸リハビリテーションは,個々 れまでの歴史的展開を概観するととも り,治療アプローチの1つとして呼吸 の患者にあわせた集学的プログラムを に,将来的課題について言及したい。 リハビリテーションの原型が始まった 立て,正確な診断,治療,情緒的支援, といわれる。また,欧米では,慢性肺 および教育を通じて,呼吸器疾患の生 疾患として多数を占める COPD への治 理学的ならびに心理的病態の双方を安 療介入として始まり,運動療法を含む 定ないしは回復させ,その呼吸器障害 チーム医療の取り組みが漸次開発さ や全般的な生活状況の制限という条件 れ,進展した 。 下で,患者に可能な限り最大限の機能 Ⅰ 呼吸リハビリテーション の歴史的展開 呼吸リハビリテーションの端緒となっ 1) 2) 3) SAMPLE ACCP)の呼吸リハビリテーション委 THE LUNG perspectives Vol.24 No.4 17 ( 353 ) Copyright(c) Medical Review Co.,Ltd.
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