特集 呼吸リハビリテーション:サイエンスからみた将来展望 COPD を中心とした薬物治療の 効果と検証:利点と限界 Effect and validation of pharmacotherapy in COPD: merits and limitations 聖路加国際病院呼吸器センター呼吸器内科医長 西村 直樹 Naoki Nishimura 運動耐容能,気管支拡張薬,タンパク同化ステロイド, 選択的アンドロゲン受容体修飾薬(SARMs),成長ホルモン,グレリン Summary 運動療法としての呼吸リハビリテーションをサポート そのアナログ)で筋力増加などの効果が示されているが, する薬物治療には,気管支拡張薬とタンパク同化剤があ 男性においては前立腺癌発育促進,女性においては男性 る。適切な気管支拡張薬使用による肺機能改善とそれに 化などの副作用が問題になる。近年,副作用の少ないタ 伴う運動耐容能増加は運動療法の補助になる。またタン ンパク同化剤として選択的アンドロゲン受容体修飾薬 パク同化剤は筋力増加と持久力維持が見込め,呼吸リハ (SARMs)やグレリン (もしくはグレリン様物質)が期待 ビリテーションに組み込まれることが期待されている。 されている。 これまでにタンパク同化ステロイド(テストステロンと 運動療法としてのリハビリテーション の減少),増悪の抑制,疾患進行抑制 とは異なる。包括的呼吸リハビリテー [ (1秒量 (FEV1)経年低下抑制],生活 呼吸リハビリテーションとは,理学 ションにおける薬物療法は,COPD で の質 (quality of life;QOL)改善,運動 療法や運動療法のみならず, 薬物療法, 期待される薬物療法の作用全部を期待 耐 容 能 改 善, 症 状 改 善,FEV1改 善, 栄養療法,酸素療法,社会資源の投入, しており,単に運動療法のために運動 などが挙げられる (図1)。本稿では運 患 者 教 育 な ど を 包 括 的 に 投 入 し て, 耐容能を上げるだけの薬物作用を期待 動療法としての呼吸リハビリテーショ 慢性閉塞性肺疾患 (chronic obstructive しているわけではない (図1) 。そうい ンとの接点という立場から,図1にお pulmonary disease;COPD)で失った肺 う 意 味 で は,COPD 薬 物 治 療 の 効 果 ける運動耐容能を改善する薬物療法に 機能,社会生活など,人としてのすべ (利点)として期待されるものは重要な ついて,科学的に検証された薬剤と呼 てを取り戻していくことであり,単に ものから順に,全生存の改善(死亡率 吸リハビリテーションへの応用が期待 はじめに 38( 374 ) THE LUNG perspectives Vol.24 No.4 SAMPLE Copyright(c) Medical Review Co.,Ltd.
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