週次レポート 平成 29年 2月 6日 ドル安圧力の持続と一服を見極め FRB幹部発言、米指標と米債入札、首脳会談焦点 今週の為替相場でドル/円は、ドル安圧力の持続と一服を見極める展開が想定されよう。週間予想はドル/ 円が 111.00 -114.20円、ユーロ/ 円が 120. 50-12 3.50円。前週末の米 1月雇用統計は改善したものの、平均 賃金の伸び悩みによって米 FRBの 3月利上げ観測が後退した。米トランプ政権による保護主義懸念やドル安 志向などもあり、ドル戻り売り圧力が意識されやすい。その中で今週の為替相場については、FR B幹部発言 や米国指標、米国債入札、豪 NZ中銀会合、日米首脳会談などが焦点となる。 雇用改善で賃金停滞、FRB幹部の受け止め方注目 今週の為替相場を占ううえで、注目されるのは米 FR B幹部の発言だ。前週末 3日には米 1月雇用統計で平 均賃金が伸び悩み、FRBによる 3月利上げ観測が後退した。今週の FRB幹部の講演などで、改めて賃金イン フレの抑制が強調されたり、米トランプ新政権の「政策動向待ち」といった様子見姿勢が示されると、早期 の利上げ観測後退がドルの戻り売り材料となりやすい。 もっとも 3日には雇用統計の発表後、米サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁が、 「リスクバランスが 上向きつつある中では、3月の利上げは理にかなっている」、「年内 3回の利上げは妥当な推測」などと利上 げ前向き発言を行った。1月の雇用統計自体は改善しており、先行き新政権の経済対策や米国企業の国内回 帰、移民規制などにより、人手不足の流れが賃金の底上げに遅行波及していく可能性を秘めている。その中 で今週以降、FR B幹部から微妙に利上げ前向きの発言が見られるようなら、ドルの下げ止まりに作用しやす い。 ただし、FRBの次回利上げ地ならし始動は、高値警戒感がくすぶる米国株にマイナス材料となるものだ。 米国株市場は決算発表の終盤入りで新規の材料も乏しくなっており、米国株市場が「3月や 6月の利上げ警 戒」や「予算教書などの材料待ち」で高値警戒売りに押されると、為替相場でもクロス円主導でリスク回避 の円高が後押しされる可能性をはらむ。 続いて今週の米国市場では、経済指標が注目される。7日の 12月貿易収支に関しては、米国の内需回復や 資源相場の反発などを受けた輸入の増加が焦点になる一方、輸出はドル高打撃による伸び悩みが警戒される。 改めて「輸出-輸入」の差し引きによる貿易収支で、赤字の拡大傾向が確認されると、トランプ政権による 保護主義政策やドル高牽制のリスクが警戒される。 その他の米国指標に関しても、9日の新規失業保険申請件数や 10日のミシガン大学消費者信頼感指数に関 しては、前回までの改善の反動減速や過度な政策期待の一段落などがネガティブ要因となりやすい。また、 10日の 1月輸入物価指数に関しては、資源反発や世界経済の復調を受けた物価の下げ止まりが注目されそう だ。 今週の米国債市場に関しては、米国債入札が注目イベントになる。7日に 3年債、8日に 10年債、9日に 30年債の入札が実施されるが(応札結果発表は日本時間の各翌日付け未明)、当座の利上げ遅延観測や債券 価格面での割安感(金利は上昇)などで順調に消化されると、金利低下(債券価格は上昇)とドル安が後押 しされる。 もっとも米国では 2月中旬にかけて、新政権による予算教書が控えている。財政出動の実際の動向は読み にくく、FRBの利上げスケジュールに対する不透明感もあって、今週の米国債入札は「手控えの様子見」が 広がる可能性も消えていない。入札低調の場合は米債金利の上昇とドル高を促すという、短期波乱の余地を 秘めている。その他の注目ポイントは以下の通り。 <豪州と NZの中銀政策委員会> 今週は 7日に豪州中銀、9日に NZ中銀の金融政策委員会が開催される。それぞれ商品相場の反発や米欧中 など世界経済の持ち直し、昨年までの金利低下の累積効果などで景気が下げ止まりに転じてきた。先行きの 緩和打ち止めや、微妙な利上げ地ならしへの移行が示唆されると、豪ドルや NZドルの上昇が支援されやすい。 一方で現在は世界的に米国の保護主義が懸念されている。前週には英国中銀の政策委員会があり、会合ま では「先行きの利上げ示唆期待」でポンドが上昇したが、実際は景気見通しに慎重姿勢が示され、 「失望や材 料出尽くし」でポンドは反落となっている。豪ドルや N Zドルは対ドル、対円で基本的な下限切り上がりのト レンドは固めつつあるものの、今週の中銀会合前後では上昇と反落の短期的な上下動が警戒される。 <10日の日米首脳会談> 今週の為替相場で、最大の注目材料となるのが 10日予定の日米首脳会談だ。日本政府は政治的な円高圧力 を未然に防御すべく、米国内インフラ投資への技術面・資金面での協力や、米国内での雇用創出支援プログ ラムを提示する予定となっている。 日本の年金などによる米国内インフラ・ファンド投資といった対米資金還流は、先行きドル高・円安要因 となるものだ。同時に日本政府は対米貿易黒字(米国は赤字)の是正に向けて、米国からのシェール資源や農 産物、軍備製品の輸入を増強させる可能性がある。かたや日本企業による米国向けビジネスは当面、輸出よ りも現地生産を拡充せざるを得ず、中長期スパンでは「米国の貿易赤字減少」と「日本の貿易黒字減少」の 逆ベクトルを支援。先行きドル高・円安へと作用していく可能性を秘めている。 もっとも米国のトランプ大統領の言動には、予測不能の不透明性がある。これから本格化する日米 2カ国 による通商交渉を優位に運ぶため、10日の日米首脳会談の前後から「先制攻撃」で円安牽制や日銀緩和封じ 込めのカードをチラつかせてくる可能性は無視できない。 <ドル/円と米 10年債金利のテクニカル> テクニカルで為替相場のドル/円は、フィボナッチ分析で昨年 11月以降のドル安値から高値の 38.2%押 し・111.99円前後の維持攻防が続いている。その他、下値メドとしては週足・一目均衡表の雲の上限 111 .35 円前後、65週移動平均線 110.59円前後、基準線 109. 1 0円前後などが焦点となっている。その他、重要な下 値ポイントとしては、一目均衡表の基準線 112 .40円前後を巡る攻防も注目されそうだ。198 0年代以降の過 去実績として、上下動を経ながらも基準線を上抜けている間はドル高基調、完全に下回るとドル安基調とい うパターンが見られてきた。 反対に当座のドル上値メドは、4週移動平均線 113. 8 0円前後、13週線 114.71円前後、転換線 115.36円前 後などとなっている。 一方、ドルの動向を左右する米 10年債金利については、月足・一目均衡表チャートで 2 -6月にかけて先 行スパンの雲の下限 2.23 %、雲の上限 2.5 7%に挟まれる「雲の圏内でのレンジ入り」に進入し始めた。1982 年以降、月足で雲の上限を完全に上抜け定着した前例は乏しく、当座の強力な上限抵抗ラインとして注視さ れる。その意味で米 10年債金利はいったん日柄調整的な横這い化、踊り場入りする可能性があり、目先はド ル/円も 112 -116円、短期的なオーバーシュートを勘案すると 109 -118円を中心としたレンジ相場と日柄調 整が続く可能性をはらんでいる。 お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提供、再 配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。 情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、これらの情報によ って生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を負いません。本レポートの内容は、 投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっての最 終判断はお客様ご自身でお願いします。 ---------------------------------Japan Economic Pulse Co.,Ltd. ----------------------------------
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