平成28年度知的財産権制度説明会(実務者向け)テキスト 特許情報を利用した 技術動向分析について 平成28年度 平成28年度知的財産権制度説明会(実務者向け)テキスト 特許情報を利用した技術動向分析について 特許庁総務部 企画調査課 知財動向班 目次 Ⅰ.特許情報分析の重要性 Ⅱ.特許出願技術動向調査の概要 Ⅲ.平成27年度調査結果の紹介 Ⅳ.調査結果の入手方法 2 Ⅰ.特許情報分析の重要性 3 特許情報とは 発明者・企業等 技術開発成果の開示 (特許出願) 公開特許公報の例 発行国 特許庁 研究開発関連の情報が 得られる貴重な資料 どこへの出願か 出願人、発明者 特許分類 どのような技術か (大まかな分類) 出願日 誰の発明か 要約、代表図面 発明の概要について いつの発明か 4 特許情報を分析することが何故必要なのか? 研究開発 知恵の宝庫である特許情報を分析すると 発明 下記のような情報が得られる 技術のトレンドはどのようになっているのか。 どの国がどのような技術に強みを有するのか。 特許出願 どのような企業が研究開発を行っているのか。 特許公報 事業 研究開発活動、事業戦略等の分析を 行うことができる! 5 特許情報分析の具体例 -ウェアラブルコンピュータ- 腕時計型ウェアラブルコンピュータの出願人国籍別特許出願件数推移 (日米欧中韓への出願) 腕時計型のウェアラブルコンピュータは、今 後市場が大きく伸びると予測されている注目 分野であり、米国が先行している。しかし、 近年、各国が出願を増加させており、日本も 出願を急増させている。 韓 米 中 日 欧 注)2012年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全出願データを反映していない可能性があります。 出典:平成27年度特許出願技術動向調査「ウェアラブルコンピュータ」 6 特許情報分析の手段(所望のデータを得るためには) ①自分で解析する方法 お金:ゼロもしくは少額 労力:多大 ②調査会社に委託する方法 お金:多額 労力:ゼロもしくは微少 + 特許庁が行っている調査(特許出願技術動向調査) もご参考にしてください! お金:ゼロ 労力:ゼロ 7 Ⅱ.特許出願技術動向調査の概要 8 特許出願技術動向調査について 「技術動向の分析と情報発信」を行うために、国の政策として推進すべき技術分野、社会的に注目されてい る技術分野等について「特許情報」を活用した調査を実施。 特 関係府省 産業政策・ 科学技術政策 許 庁 特許出願技術動向調査 市場動向、政策動向、特許出願動向、論文発表動向 等を踏まえて、技術開発の進展状況、方向性を分析 の基礎資料 産業界 大学 研究機関 新規参入企業・研究機関の動向等を分析 特許情報から国際競争力の分析、我が国が目指すべ き研究開発・技術開発の方向性等を提言 研究開発戦略 M&A戦略 知的財産戦略 の策定支援 特許庁 審査部 審査の基礎資料 新規な技術分野に関する基礎資料 9 特許出願技術動向調査の進め方 特許出願技術動向調査の手順 1.市場環境調査 2.政策動向調査 → 調査仮説の設定 調査のアウトプットを導き出すための 仮説を立てる 技術俯瞰図の作成 市場環境調査、政策動向調査 競争のポイント、技術競争力等についての仮説 今後日本が目指すべき技術開発の方向性の仮説 仮説検証 3.特許動向調査 特許情報の検索範囲の設定 全体動向調査 仮説検証にあたり、特許情報の網羅的 な分析を行う 技術区分別調査 出願人別調査 仮説検証 4.研究開発動向調査 5.その他の調査 特許動向分析による検証を補強するために、特許情報以外の情報から適 切な調査項目を設定 総合分析 6.結 論 技術発展状況、研究開発状況及び将来展望 日本の技術競争力、産業競争力 取り組むべき課題 今後日本が目指すべき技術開発の方向性 10 調査項目のイメージ -平成27年度特許出願技術動向調査「ウェアラブルコンピュータ」より抜粋- 技術俯瞰図 調査対象技術の全体像 特許出願動向調査 出願人国籍別出願件数推移 市場環境調査 日米欧中韓台全体のウェアラブルコンピュータの市場規模推移 研究開発動向調査 研究者所属機関国籍別論文発表件数推移 政策動向調査 国内・国外における規制一覧 調査結果の分析と今後の提言 調査結果に基づく提言 ●競争上のポイントであり、日本国籍の活発 な取り組みが確認できる、小型軽量化、ユー ザビリティ、操作性の向上を機軸として、HMD・ 眼鏡型ウェアラブルコンピュータについて、よ り一層の注力が必要である。 ●腕時計型ウェアラブルコンピュータは、今後 市場が伸びていくと予測されるが、出願動向 では日本国籍からの出願は劣勢のため、取り 組みを強化すべきである。 11 特許出願技術動向調査テーマ一覧 最新の調査結果 (平成27年度) 12 Ⅲ.平成27年度調査結果の紹介 13 情報セキュリティ技術 -調査対象- 情報セキュリティ技術とは、コンピュータウイルス等の悪質なソフトウェアからシステムを保護するための技術 のことをいいます。 本調査では、「侵入検知、ウイルス・マルウェア検知1)」、「ログ解析、リバースエンジニアリング2)」、「暗号技 術」、「認証技術」等の情報セキュリティ技術を中心とした技術範囲を調査対象としました。 【技術俯瞰図】 要素技術的 システム技術的 適用領域・用途 応用 制御系システム・組込みソフトウェア 国家安全保障に関わる情報システム 企業等の情報システム ITセキュリティシステム 情報セキュリティ技術以外の技術のセキュリティへの応用 ビッグデータ解析 人工知能(AI)・機械学習 セキュリティ運用技術 攻撃等に対する防御能力の向上 攻撃等の早期発見・早期対処 データ管理・保護技術 基礎 効率的なセキュリティ運用の推進 認証技術 侵入検知技術、ウイルス ・マルウェア検知技術 攻撃防御システム技術 暗号化状態処理 登録 手口・感染経路 多層防御、組合せ対策 暗号化強度の向上 トークン 収集情報 被害・影響の局限化・高回復力 暗号危殆化対策 クレデンシャル管理 予防・抑制(侵入・異常対策) 実装上の安全性向上 匿名性強度の向上 認証プロセス 検知・判定手法 リスクマネジメントの高度化 難読化強度の向上 アサーション(認可) アクション デジタル・フォレンジック セキュア開発技術 データ解析・脆弱性検査技術 システムセキュリティ管理技術 暗号技術 暗号プリミティブ 暗号利用モード 対実装攻撃対策 安全性評価手法 ログ解析 リバースエンジニアリング 1)不正かつ有害に動作させる意図で作成された悪意のあるソフトウェア 2)製品そのものの動作を観察、分析することで、プログラムの分野では製造方法や動作仕様、設計図、ソースコードなどを調査し明らかにすること ポリシー管理・設定管理 調査範囲 14 情報セキュリティ技術 -市場動向- 情報セキュリティ技術の世界市場は、2015年で約12兆円であるものが、2017年には約15兆円に拡大していく と予測されています。 日本市場も、2017年には6,275億円に達する見込みです。 【情報セキュリティ技術分野のグローバル市場と日本市場の比較】 (億円) 160,000 5.1% 145,260 5.0% 140,000 131,945 120,000 市場規模 105,314 95,630 100,000 5.0% 4.8% 4.7% 4.6% 4.5% 4.3% 80,000 4.4% 60,000 4.2% 40,000 4.0% 20,000 5,222 4,914 5,560 5,927 6,275 0 Aに対するBの割合 117,419 5.2% 3.8% 3.6% 2013 2014 2015 グローバル市場(A) 日本市場(B) 2016 2017 (年) (予測) (予測) (A)に対する(B)の割合 出所)Alix Partners Web siteおよび野村総合研究所「ITナビゲーター2016年度版」をもとに野村総合研究所作成 15 情報セキュリティ技術 -特許出願動向- アメリカ、中国の出願人の出願が増加しています。 日本国籍の出願人は、「暗号技術」や「認証技術」については多くの出願をしているものの、「侵入検知、ウイ ルス・マルウェア検知」や「ログ解析、リバースエンジニアリング」についての出願件数は、米国籍出願人等 に比べて少ないです。 情報セキュリティ技術の特許出願動向 (出願先:日米欧中韓イスラエル、2009-2013年の出願) 技術区分別-出願人国籍別出願件数 出願人国籍別出願件数推移 7,000 6,000 優先権主張 2009-2013年 6,105 5,526 5,207 5,023 2009 2010 4,878 5,000 出願件数 4,000 3,000 2,000 1,000 0 日本国籍 2011 2012 2013 出願年(優先権主張年) 出願人国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 イスラエル国籍 その他 合計 注)2012年以降は、データベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で全出願データを反映して いない可能性がある。 出典:平成27年度特許出願技術動向調査「情報セキュリティ技術」 16 情報セキュリティ技術 -研究開発動向- 2009年段階では329本の論文数であったものが、2014年では640本に達しています。 特に発表件数の増加が著しいのが中国です。 研究者所属機関国籍別論文発表件数推移 (Web of Science)(発行年:2009-2014年) 700 633 640 600 500 485 470 文献数 400 329 332 2009 2010 300 200 100 0 2011 2012 2013 2014 出版年 First Author国籍 日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 イスラエル国籍 他国籍 不明 合計 韓国籍 出典:平成27年度特許出願技術動向調査「情報セキュリティ技術」 17 情報セキュリティ技術 -提言- 情報セキュリティ分野の国産技術・製品の技術開発、研究開発にインセ ンティブを付与すべき ● 特許動向調査から、日本の出願人は、暗号技術等については強いが、ウイ ルス・マルウェア検知等については海外の出願人に対して遅れをとっているこ とがわかりました。 ● その理由としては、海外では、侵入検知やウイルス・マルウェア検知にお いて、企業等が検知精度の向上のため、通信トラフィックなどの実データを収 集し分析することが可能である一方、日本においては、様々な規定により、海 外の企業等と同様の行為を行うことができない状況等が考えられます。 ● 規制緩和を行ってウイルス・マルウェア検知技術の技術開発、研究開発に インセンティブを付与すれば、ウイルス・マルウェア検知の技術競争力が好転 する可能性があります。 18 ウェアラブルコンピュータ ○腕時計型のウェアラブルコンピュータは、今後市場が大きく伸びると予測されている注目分野 であり、米国が先行していています。しかし、近年、各国が出願を増加させており、日本も出願 を急増(2013年は前年比約3倍1) )させている状況です。 ○日本が比較的注力している腕時計型の小型軽量化技術は、各国の出願が未だ少ない状況です。 腕時計型で先行する米国さえも、網羅的な特許網を構築できていない可能性があります。 ★ファッション性やブランド性が重視される腕時計型は、デザインの自由度向上に資する小型軽 量化が重要です。したがって、日本は引き続き腕時計型の小型軽量化の研究開発を強化すべきで す。 腕時計型の出願人国籍別特許出願件数推移 (日米欧中韓への出願) 腕時計型の技術課題別の出願人国籍別特許出願件数 (日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年)2009~2013年) 韓 米 中 日 欧 注)2012年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、 全出願データを反映していない可能性があります。 1)データベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等により、出願が新しいものほど データに反映されないため、実際には、より大きく増加している可能性がある。 19 自動車用予防安全技術 ○車両自身が自動制動等を行うことで事故を予防する自動車予防安全技術について、日本は、自国はもちろん海外各 国へも積極的に出願しています。自動車予防安全技術のうち、カメラや車間距離を測定するミリ波レーダ等の、車両か ら視認できる範囲を認知する技術では海外と比較し、圧倒的に多く出願しています。 ○一方、車両と歩行者等を繋ぐ通信技術等の車両から視認できない範囲を認知する通信技術についてはドイツが日本 よりも多く特許出願をしている状況です。 ★車両と歩行者間の事故を防ぐという観点では、車両から視認できない歩行者の存在を認知できる通信技術等のIoT 関連技術が重要となる可能性があります。日本の企業においても、こうしたIoT関連技術について必要な特許権を確保 しておく必要があります。 技術区分(認知方法)別の出願人国籍別出願件数 (日米欧中韓独への出願、出願年(優先権主張年):2006~2013 年) 注:欧州には独国を含まない。 20 衛星測位システム ○衛星測位システムは、衛星から送信される信号を利用して、物の位置や移動速度、方向、姿勢等を算 出するものであり、代表的なシステムとしてGPSがあります。 〇応用産業別の市場では携帯電話(53.2%)や自動車(38.0%)による利用が市場の大部分(91.2%)を占 めています。また、携帯電話等の受信機側の「省電力化技術」において、日本は出願件数、出願比率と もにトップであり、活発に出願をしています。 ★今後は日本が優位性を有する受信機側の「省電力化技術」を活用することで、携帯電話のみならず、 派生製品として、ウェアラブル機器としてのスポーツ機器や、高齢者等の見守り機器等への応用が期待 されます。 応用産業分野の市場に占める割合 省電力化技術の出願人国籍別出願件数 (日米欧中韓露印への出願、出願年(優先権主張年):2009~2013年) ロシア籍 0件 0.0% インド籍 2件 0.3% その他 38件 5.3% 韓国籍 79件 11.1% 日本国籍 258件 36.1% 中国籍 114件 16.0% 出典:「GNSS市場報告 ISSUE4」 European Global Satellite Navigation System Agency 欧州国籍 74件 10.4% 米国籍 149件 20.9% 21 Ⅳ.調査結果の入手方法 22 調査結果の入手方法 -特許庁ホームページ- ●特許庁ホームページより、特許出願技術動向調査の調査結果 概要を入手可能です。 特許庁HP>資料・統計>刊行物・報告書>特許出願技術動向調査等報告書 ホームページアドレス http://www.jpo.go.jp/shiryou/gidou-houkoku.htm 差し替え 23 調査結果の入手方法 -特許庁ホームページ- ●特許出願技術動向調査の報告書冊子は、以下の施設にて ご覧いただけます。 ・特許庁図書館(東京) ・国立国会図書館(東京、京都) ・知財総合支援窓口(東京を除く各都道府県) ●ご購入を希望される場合 「特許出願技術動向調査報告書(平成13年度から平成23年度)」については、(一 社)発明推進協会からCD-ROM版を出版しております。 24 ご清聴ありがとうございました 特許出願技術動向調査に関するお問い合わせは、 企画調査課知財動向班([email protected])までお願いします 25 ᲶஜȆǭǹȈƷϋܾƴ᧙ƢǔƓբƍӳǘƤέᲸ ཎᚩ࠻ዮѦᢿ˖ဒᛦ௹ᛢჷᝠѣӼྰ ᩓᛅᲴᲪᲭᲧᲭᲯᲲᲫᲧᲫᲫᲪᲫ ϋዴᲬᲫᲯᲯ E-mail: [email protected]
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