度の上昇に応じて発現が増加する。さらにメタノール酵母は FA 代謝酵素

度の上昇に応じて発現が増加する。さらにメタノール酵母は FA 代謝酵素群やメタノール
代謝の場であるペルオキシソーム(Ps)の形成因子群を AOD よりも優先的に発現させ、
細胞の FA 毒性に対する対策を完成させた後に、満を持して FA を生産する AOD を発現さ
せることで細胞内の FA の蓄積を防いでいる。
Ⅱ.メタノール酵母の酸素認識機構とメタノール代謝制御
酵母のメタノール代謝は、Ps に局在する AOD による酸素を用いたメタノールの酸化に
より開始されるが、エネルギー獲得のため代謝の末端のミトコンドリア(Mt)呼吸鎖でも
大量の酸素が必要である。つまり、メタノール代謝では環境中の酸素を Ps—Mt 間でいかに
効率よく利用するかが最大の懸案であり、細胞が生育環境の酸素状態を認識し、それに応
じて Ps—Mt 間の酸素消費バランスを厳密に調節する必要がある。
1)AOD アイソザイムによる酸素代謝制御とメタノール代謝
P. methanolica における AOD アイソザイムの発現は生育環境下の酸素濃度に依存し、低
酸素下では低 Km 型サブユニット Mod1p を、高酸素下では高 Km 型 Mod2p を支配的に誘導
する。つまり、P. methanolica はメタノールと同様に生育環境下の酸素濃度を的確に認識し、
生育環境に合わせた AOD アイソザイムを構築していることがわかる。
2)細胞内酸素消費バランスの制御によるメタノール代謝制御
先述の通り、メタノール代謝を円滑に保つためには AOD と呼吸鎖の酸素消費バランス
の制御が必要不可欠である。実際、Mt 遺伝子欠損株 ρ0 株では AOD の発現は見られなくな
る。さらには呼吸鎖を阻害すると、高阻害条件下では Mod1p が支配的に誘導され、その阻
害率を下げるにつれて Mod2p の発現比率が高くなってくる。この AOD アイソザイムの発
現パターンは酸素濃度に対する挙動と非常に類似していることから、細胞は呼吸鎖で酸素
濃度を感知し、自身の活性に合わせて AOD アイソザイムの発現を制御することで両者の
酸素消費バランスを調節し、メタノール代謝を巧妙に制御しているものと思われる。
このようにメタノール酵母は外環境のメタノール・酸素濃度を的確にモニタリングしな
がら、メタノール代謝に関与する様々な因子をそれぞれの機能に応じて、活性発現の時期、
場所さらには発現順序までを統括的に制御するシステムを持ち合わせている。これら協調
的なメタノール代謝の活性発現制御システムによって細胞内 FA レベル・酸素代謝バラン
スを巧妙に管理し、円滑なメタノール代謝を行っていることが明らかとなってきた。これ
ら知見を基盤としてスーパーメタノール酵母の分子育種にチャレンジしたい。
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プロフィール:
1999 年 京都大学大学院農学研究科農芸化学専攻 博士後期課程修了 博士(農学)
同年 東京農業大学生物産業学部 助手、 2001 年 同 講師、2007 年 岐阜大学応用生
物科学部 准教授、2013 年 同 教授、現在に至る