熊本市中心市街地の利用状況調査

平成 24 年 2 月
財団法人地域流通経済研究所
熊本市中心市街地の利用状況調査【要約】
若者に支持される熊本市中心市街地
はじめに
本年 4 月に全国で 20 番目の政令指定都市
ている。歩行者通行量の推移をみると、熊
として新たなスタートを切る熊本市では、
本市中心市街地の主要地点では減少の一途
政令指定都市に相応しい機能を拡充すべく
を辿っており、平成 15 年以降の推移をみる
様々な取組みが進められている。そのよう
と、代表的な 3 地点の通行量はいずれも減
な取組みの中の一つに、中心市街地の再開
少傾向にある。一方で、週末の夕方になる
発地区内における大規模コンベンション施
と、飲み会や友人との待ち合わせと思われ
設新設の計画がある。このような中心市街
る若者のグループがあちこちで談笑してい
地の都市機能の充実と魅力度向上に向けた
る光景を目にすることも少なくはない。
取組みは、九州新幹線の全線開業の効果を
そこで、通行量のような数字だけでは捕
高めるためにも、切望されるところである。
捉しにくい、中心市街地利用の実態につい
しかしながら、近年の熊本市中心市街地
て、当研究所の女性モニターを対象にアン
の賑わいは以前に比べると確実に薄れてき
ケート調査を実施し、訪問頻度の変化や訪
【調査結果の概要】
問目的等の考察を行った。
・ 熊本市中心市街地を訪問する頻度は「月に 1 回程度」が 20.1%で最も多い。「ほぼ毎日」などを
含め“月に 1 回程度以上”訪問する割合は過半数の 57.2%に上る。
・ 訪問頻度を年代別にみると、最もよく訪れているのは 20 代で、「ほぼ毎日」の 14.3%をはじめ、
“月に 1 回程度以上”訪問する割合は 8 割を超える。
・ 訪問する目的は、買物関連では「洋服の買物」48.0%、「贈答品の買物」43.1%が、サービス関連
では「飲み会」39.3%、「友人・知人と会う」36.3%などが上位となる。
【調査概要】
図表 1 中心市街地の歩行者通行量の推移
1.調査対象者:熊本市在住の20代から60代の女性モニター
2.調査時期 :平成23年11月9日~21日
3.調査方法 :郵送法
4.有効回答数:427人(回答率85.4%)
(平日と休日の合計)
100000 (人)
97,151
◆回答者の属性
実数
年齢
配偶者
職業
合計
20代
30代
40代
50代
60代
有
無
不明
専業主婦
フルタイム
パートタイム
自営
その他
%
56
89
97
94
91
305
119
3
125
141
109
24
26
427
13.1
20.8
22.7
22.0
21.3
71.4
27.9
0.7
29.3
33.0
25.5
5.6
6.1
100.0
◆本調査で言う「中心市街地」の地域は、上通(上乃裏通り
を含む)、下通、新市街の各商店街エリアと、熊本交通セン
ターから熊本城一帯(城彩苑を含む)エリアを指す。
80000
下通(ダイエー・櫻井総本店前)
上通(びぷれす熊日会館前)
新市街(パチンコプラザ前)
73,661
59,289
60000
47,178
51,145
40000
29,531
20000
15年 16年
17年 18年 19年 20年
資料)熊本市・熊本商工会議所「商店街通行量調査」
21年 22年
平成 24 年 2 月
財団法人地域流通経済研究所
1.中心市街地の訪問頻度
図表 2 中心市街地を訪問する頻度
まず、中心市街地を訪問する頻度をみる
0%
と、全体では「月に 1 回程度」が 20.1%で
20%
40%
60%
最も多く、以下「2~3 ヶ月に 1 回程度」
全体
5.94.73.5 8.2 14.8
20.1
17.8%、「月に 2~3 回程度」14.8%と続い
20代
14.3 10.7 3.67.1
25.0
ている。
“月に 1 回程度以上”訪問する割合
30代
10.1 4.52.27.9 14.6
40代
5.22.1
3.15.2 15.5
50代
3.25.34.3 9.6 8.5
は過半数の 57.2%に上り、「ほぼ毎日」も
5.9%となるなど、比較的“よく利用されて
いる”ようである。しかしながら「ほとん
60代0.0
3.34.4 11.0
ど行かない」の 13.1%をはじめ、「2~3 ヶ
17.8
19.1
22.7
21.3
26.4
3.67.1 7.1
10.1
20.6
17.0
100%
11.9 13.1
21.4
13.5
14.3
80%
18.0
13.4 12.4
12.8
18.7
18.1
14.3 7.7
月に 1 回程度」の 17.8%と「半年に 1 回程
ほぼ毎日
週に4~5回
週に2~3回
週に1回程度
月に2~3回程度
月に1回程度
度」の 11.9%を合わせた約 4 割があまり訪
2~3ヶ月に1回程度
半年に1回程度
ほとんど 行かない
れていない。
図表 3 訪問頻度の変化(年代別)
年代別にみると、最もよく訪れているの
0%
20%
40%
60%
80%
100%
は 20 代で、
「ほぼ毎日」の 14.3%をはじめ、
全体
“月に 1 回程度以上”訪問する割合は 8 割
0.0
34.6
38.5
26.9
20代
を超えている(82.1%)。一方、50 代では
1.3
42.0
44.2
12.4
18.1%、30 代では 18.0%が「ほとんど行か
30代
13.7
ない」としており、年代による訪問頻度の
40代
11.8
42.4
44.7
1.2
50代
7.8
49.4
40.3
2.6
60代
7.1
違いが表れている(図表 2)。
2.訪問頻度の変化(3 年前と比べて)
3 年前と比べた訪問頻度の変化をみると、
1.2
46.4
45.2
増えた
1.4
41.1
43.8
変わらない
減った
不明
全体では、
「変わらない」が 44.2%で最も多
図表 4 訪問頻度の変化(頻度別)
かったものの、
「減った」の 42.0%とほぼ同
じ割合だった。一方で「増えた」は 12.4%
0%
にとどまる。年代別にみると、
「増えた」が
全体
最も多かったのは 20 代で 26.9%、次いで
20%
12.4
60%
80%
44.2
1.3
52.0
20.0
週に4~5回
100%
42.0
48.0
ほぼ毎日
30 代の 13.7%となり、年齢が高くなるほど
40%
65.0
0.0
5.010.0
割合は減少する傾向にある。逆に、
「減った」
26.7
週に2~3回
は 60 代が 46.4%で最も多かった(図表 3)。
22.9
週に1回程度
また、訪問頻度別にみると、当然の結果
月に1回程度 2.3
「増えた」としており、逆に「減った」は
皆無であった。一方で、訪問頻度が低くな
2~3ヶ月に1回程度
るほど、「増えた」が減少し、「減った」が
5.3
半年に1回程度 2.0
増加する傾向にあり、
「半年に 1 回程度」で
増えた
は「減った」が 60.8%にも上る(図表 4)。
2
6.7
0.0
42.9
17.5
月に2~3回程度
かもしれないが“ほぼ毎日”では 48.0%が
66.7
44.4
38.4
変わらない
2.9
38.1
0.0
59.3
44.7
35.3
31.4
0.0
48.7
60.8
減った
1.3
2.0
不明
平成 24 年 2 月
財団法人地域流通経済研究所
3.訪問が増えた理由
図表 5 訪問が増えた理由
(複数回答)
訪問頻度が「増えた」人にその理由をた
0.0
20.0
40.0
ずねた結果、全体では「お気に入りの店が
できた(増えた)」と「勤務先・学校が近く
全体(n=46)
4.3
なった」が、共に 32.6%で最も多く、次い
で「よく外出するようになった」が 28.3%
20代(n=14)
0.0
となった。一方で、「街の魅力が高まった」
の存在は評価されているものの、中心市街
0.0
32.6
32.6
28.3
13.0
10.0
20.0
10.0
10.0
30.0
30.0
0.0
う数字にとどまり、年代別の分析は困難で
0.0
あるため、参考としてデータの掲載のみに
60代(n=6)
0.0
とどめる(図表 5)。
4.訪問が減った理由
よ く外出する
よ うになった
20.0
30.0
40.0
30.0
既述の通り、訪問頻度が「増えた」人の
割合は全体の 12.4%、実数では 46 人とい
勤務先・学校
が近くなった
40.0
40代(n=10)
50代(n=6)
お気に入りの
店ができた
(増えた)
35.7
42.9
28.6
14.3
14.3
地全体の魅力の高まりは感じられない結果
となった。
(%)
23.9
は 13.0%にとどまっており、魅力ある個店
30代(n=10)
60.0
街の魅力が
高まった
50.0
33.3
33.3
16.7
16.7
16.7
他の商業施
設やお店に
行かなくなっ
た
その他
33.3
16.7
50.0
図表 6 訪問が減った理由
(複数回答)
訪問頻度が「減った」人に、その理由を
0.0
20.0
40.0
60.0
たずねた結果、全体では「他の商業施設や
お店に行くようになった」が 62.8%で最も
全体(n=156)
多く、次いで多かった「あまり外出しなく
16.7
16.0
9.0
1.9
17.9
29.5
なった」の 40.4%を 20 ポイント以上上回
った。
20代(n=18)
年代別にみると、40 代の 71.1%をはじめ、
60 代を除くすべての年代で他の商業施設
30代(n=30)
やお店に行くようになった」が最も多くな
っている。60 代では「あまり外出しなくな
った」が 69.2%で最も多くなっており、年
40代(n=38)
齢が高くなるほど多くなる傾向がうかがわ
れる。また、
「通販・ネットショッピングを
50代(n=31)
利用するようになった」
が 20 代で 38.9%、
30 代では 33.3%と比較的多くなっている
ことも注目される(図表 6)。
60代(n=39)
3
5.6
16.7
5.6
0.0
11.1
62.8
40.4
66.7
38.9
38.9
13.3
33.3
23.3
16.7
6.7
3.3
26.7
25.6
17.9
12.8
10.3
5.1
12.8
(%)
他の商業施
設やお店に
行くよ うに
なった
あまり外出し
なくなった
通販・ネット
ショ ッピ ン グ
を 利用する
よ うになった
56.7
街の魅力が
低下した
71.1
28.9
28.9
15.8
18.4
10.5
0.0
15.8
25.8
16.1
16.1
9.7
0.0
22.6
80.0
勤務先・学校
に行かなく
なった
お気に入りの
店がなくなっ
た
51.6
45.2
交通の便が
悪くなった
66.7
69.2
その他
平成 24 年 2 月
財団法人地域流通経済研究所
5.訪問の目的
おわりに
中心市街地を訪問する目的をたずねた結
熊本市中心市街地の利用状況をみると訪
果、買物関連では「洋服の買物」が 48.0%
問頻度は減少しており、通行量調査の結果
で最も多く、以下「贈答品の買物」43.1%、
からも減少傾向は明らかである。しかしな
「靴・バッグの買物」33.5%と続き、サー
がら、20 代では訪問頻度が「増えた」割合
ビス関連では「飲み会」が 39.3%で最も多
が約 4 分の 1 を占め、
「減った」割合は他の
く、以下「友人・知人と会う」36.3%、
「食
年代に比べると少ない。また訪問目的をみ
事や喫茶」33.3%と続いている。
ると、買物からサービス関連まで多様であ
年代別にみると、20 代では買物、サービ
り、比較的“よく利用されている”ことが
ス関連を問わず全体を上回る項目が多くな
わかった。今回の調査対象は 20~60 代の女
っている。買物関連では「洋服の買物」
性に限定されたものであったが、若者の姿
66.1%、「靴・バッグの買物」57.1%、「ウ
が目立つ普段の上通や下通の状況をみても、
インドウショッピング」39.3%など 5 項目
このような結果に違和感はない。
が、サービス関連では「飲み会」67.9%、
「友
郊外に立地する大型商業施設の登場以来、
人・知人と会う」50.0%、「食事や喫茶」
中心市街地の衰退傾向は今なお続いている。
66.1%など 5 項目が、いずれも全体を 10 ポ
そのような中、20 代を中心とした若者に支
イント以上上回った。
持されている熊本市の中心市街地の存在は、
一方、20 代以外で全体を 10 ポイント以
政令指定都市に相応しい機能を備えたまち
上上回ったのは、60 代の「贈答品の買物」
づくりを進めていくにあたって明るい材料
54.9%と 30 代の「飲み会」50.6%だけであ
となるに違いない。
った(図表 7)。
図表 7 訪問の目的
買物関連
全体(n=427)
20代(n=56)
30代(n=89)
40代(n=97)
50代(n=94)
60代(n=91)
洋服の買 贈答品の 靴・バッ ウインド 食材の買 薬・化粧 お土産品 書籍・D 家庭雑貨 時計・メ レンタル 電気製品
ガネの買 ショップ の買物
品の買物 の買物
VD等の の買物
物
買物
グの買物 ウショッ 物
物
買物
ピング
205
48.0
37
66.1
46
51.7
36
37.1
39
41.5
47
51.6
飲み会
サービス関連
全体(n=427)
20代(n=56)
30代(n=89)
40代(n=97)
50代(n=94)
60代(n=91)
(複数回答、上段:人、下段:%)
168
39.3
38
67.9
45
50.6
42
43.3
26
27.7
17
18.7
184
43.1
19
33.9
40
44.9
40
41.2
35
37.2
50
54.9
143
33.5
32
57.1
30
33.7
19
19.6
28
29.8
34
37.4
124
29.0
22
39.3
34
38.2
30
30.9
24
25.5
14
15.4
70
16.4
7
12.5
9
10.1
22
22.7
10
10.6
22
24.2
63
14.8
17
30.4
16
18.0
12
12.4
13
13.8
5
5.5
62
14.5
7
12.5
8
9.0
10
10.3
15
16.0
22
24.2
56
13.1
14
25.0
11
12.4
14
14.4
9
9.6
8
8.8
49
11.5
7
12.5
14
15.7
11
11.3
11
11.7
6
6.6
39
9.1
7
12.5
11
12.4
5
5.2
9
9.6
7
7.7
12
2.8
3
5.4
5
5.6
3
3.1
0
0.0
1
1.1
7
1.6
0
0.0
2
2.2
2
2.1
2
2.1
1
1.1
習い事や 映画鑑賞 クリニッ カラオケ パチンコ その他
友人・知 食事や喫 祭・イベ 美容サロ 仕事・勉 音楽鑑
ク等への
賞・観劇 趣味の講
人と会う 茶
ント
ン
強(学
通院
座
校)
155
36.3
28
50.0
31
34.8
25
25.8
33
35.1
38
41.8
142
33.3
37
66.1
34
38.2
24
24.7
22
23.4
25
27.5
79
18.5
7
12.5
16
18.0
26
26.8
16
17.0
14
15.4
58
13.6
18
32.1
17
19.1
12
12.4
6
6.4
5
5.5
53
12.4
15
26.8
10
11.2
14
14.4
8
8.5
6
6.6
※太線囲みは、全体を10ポイント以上上回るもの
4
34
8.0
3
5.4
7
7.9
4
4.1
10
10.6
10
11.0
33
7.7
4
7.1
6
6.7
5
5.2
8
8.5
10
11.0
23
5.4
1
1.8
5
5.6
5
5.2
3
3.2
9
9.9
22
5.2
4
7.1
4
4.5
6
6.2
4
4.3
4
4.4
9
2.1
3
5.4
5
5.6
1
1.0
0
0.0
0
0.0
3
0.7
0
0.0
0
0.0
0
0.0
2
2.1
1
1.1
26
6.1
3
5.4
6
6.7
6
6.2
5
5.3
6
6.6