取材協力/ スカパーJSAT(株)24時間365日、宇宙から私たちの生活を支えている 取材・文/小島俊介(ことり社) イラスト/有留ハルカ 人工衛星。この連載では、テレビ番組から災害対策まで 大活躍する 「通信衛星」 のしくみや働きを徹底研究するゾ! ロケット打ち上げを行う射場に は、 衛 星 メ ー カ ー や 打 ち 上 げ サービス会社のスタッフ、スカ パー JSAT の社員が集結。衛星 にフェアリング(カバー)をか ぶせてロケットの上に載せたら いよいよ打ち上げだ。写真はス カパー JSAT の通信衛星「スー パーバード C2」の打ち上げに使 われたヨーロッパのアリアンス ペース社が運用する「アリアン 5」ロケットの打ち上げ。射場は 南米フランス領ギアナの宇宙セ ンター。 大 研 究 つくって、宇宙に運び、軌道に乗せるまで Vol.6 通信衛星を打ち上げろ! 通信衛星を飛ばすのは ビッグプロジェクトだ! お話を伺ったスカパー JSAT 株式会社 衛星 技術本部衛星技術部の 櫻井 修さん。 「打ち上げが成功したとき、現場は喜びに包まれ 通信衛星 は ここに乗っているゾ! いよいよ ロケットで 宇宙へ! 宇宙からキミを支える! ますが、私たちはまったく気が抜けません。衛星 メーカーと協力して静止軌道まで運び、通信衛星 がきちんと機能するかどうかをチェックして横浜 の衛星管制センターに引き渡すことで、はじめて 大成功といえます。静止軌道に乗るまで約 10 日、 衛星の試験を行いサービスがスタートできるまで 1 ∼ 2 か月かかります」 (櫻井さん) ロケットから切り離された衛星は、 静止トランス ファー軌 道という楕 円 の軌 道に入る(下 図 )。 少 しずつ軌道の輪を大きくしていって、 約 10 日かけ て静 止 軌 道に乗 せるのだ。 そしてさまざまな試 験 をクリアした衛 星は、 衛 星管制センターからの運 用でついに衛星通信のサービスを開始する。 ⓒ2008 ESA-CNES-ARIANESPACE/ Photo Optique Vidéo CSG 宇 宙 からみんなの生 活 を支 える通 信 衛 星。将 来、通信衛星に関わる仕事をしたいと思った人も ここまで通 信 衛 星 のさまざまな役 割や衛 星を 通信衛星の製作とともに重要なのが、衛星を打ち 多いんじゃないかな? この連載は今回でひとまず 管 理 する仕 事 について見 てきたけれど、今 回は 上げるロケット選び。ここ最近、 海外の民間ロケッ 最終回だけど、KoKa はこれからも通信衛星の情 通 信 衛 星 がどのようにつくられ、宇 宙 に運 ばれ ト会社が増え、ロケットの種類、 打ち上げ費用など 報を追いかけていくから、みんなも注目だ! るのかをダイジェストで見ていくゾ! 第2段エンジン噴射 の選択肢も広がった。コストを抑えることは大 事だ 衛星通信のサービスを提供するスカパー JSAT が、つくった衛星を確実に宇宙へと運ぶ信頼性も重 は、まずどんな通信衛星をつくったら良いサービス 要。 さまざまな面を考慮して、衛星を打ち上げるロケッ が提 供できるか、 みんなの生 活がもっと便 利にな トを決定するのも、スカパー の仕事なのだ。 フェアリング JSAT 第1段エンジン分離 新しい通 信 衛 星 の企 画が決まったら、 衛 星をつく 衛星を分離してからが勝負! るメーカーに製作を依頼。衛星の設計が出来上がっ 厳しいテストをクリアし完 成した通 信 衛 星 はロ たら、 部品の調達や組み立てが行われる。衛星を ケットを打ち上げる射場に運ばれ、ロケットの先端 発注するまでに 1 ∼ 2 年、 そして実際にメーカー 部分に収納される。ロケットが無事飛び立ち、 30 と一 緒につくり上げるまでには、さらに 2 ∼ 3 年 分ぐらいで衛 星が分 離。この段 階 でロケット打ち はかかるビッグプロジェクトなんだ。 上げは成功だ。 補助ロケット 分離 衛星メーカーに 発注する 2 新しい衛星を 企画する 衛星通信のサービスをより 便利にするための新しい通 信衛星の企画を考える。プ ロジェクトのスタートだ。 32 2016.1 3 衛星分離 大気圏脱出! フェア リングが外される。 フェアリング 分離 第1段エンジン分離 スカパー JSAT の新しい通信衛星が、 2016 年 の 初 め に ケ ネ デ ィ 宇 宙 セ ン ターより、スペース X 社のロケットで 打ち上げ予定! 遠地点 地球の大気を抜け る ま で、 衛 星 は フェアリングで守 られている。 トランスファー軌道 打ち上げる ロケットの 準備をする 4 人工衛星 衛星のテストを行う 信頼性や価格、打ち上げのタイ ミングなどを考えながら、ロ ケット会社を選定。決定したら、 打ち合わせをしながらロケット 打ち上げ準備を進める。 静止軌道 人工衛星 打ち上げ時に故障しないことを確認するために衛星を台の上に乗 せて振動させたり、 大音量にさらしたり、 宇宙の高温・低温環境 の中にさらしたり……さまざまな厳しい環境に置いて試験する。 打ち上げ 打ち上げ最新情報 第2段エンジン噴射 補助ロケット 分離 通信衛星が宇宙に行くまで 新しい衛星の企画をメー カーと検討して、衛星の設 計・製作を行う。 衛星分離 分離 るかを考える。ここからプロジェクトが始まるんだ。 1 通信衛星は第 2 段エンジン で静止トランスファー軌道 まで運ばれ、投入される。 打ち上げ 通信衛星が 静止軌道に 乗るまで 楕円の形をした静止トランスファー軌道の端 (遠地点)は静止軌道に届いている。ここで エンジンを噴射して加速することで楕円を大 きくしていき、3 ∼ 4 回の加速で静止軌道 に乗ることができる。 2016.1 33
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