新しい観測方式"観測体制の完全自動化"は 本当に「安全性」を担保できる

新 し い 観 測 方 式 "観 測 体 制 の 完 全 自 動 化 "は
本当に「安全性」を担保できるのか
☆☆☆ すでに一部で始まっている後退した基準の「無人観測」通報 ☆☆☆
み な さ ん 、 ご 存 知 で す か 、 新 し い 観 測 基 準 に よ る 「 自 動 METAR/SPECI報 」 の 配 信 の 開
始 。 気 象 庁 は 2016( 平 成 28) 年 12月 6日 か ら 、 MetAir( 注 ) で 関 西 国 際 空 港 ・ 福 岡 空 港
( 24時 間 運 用 空 港 )、 与 論 空 港 ・ 与 那 国 空 港 ( 委 託 観 測 SCAN空 港 ) の 4 空 港 の 「 自 動 ME
TAR/SPECI報 」 の 配 信 を 開 始 し ま し た ( 試 行 運 用 )。 こ れ は 、 2017年 3月 か ら の 本 運 用 を
計 画 し て い る も の で す 。 こ の 計 画 そ の も の は 、 現 在 気 象 庁 ホ ー ム ペ ー ジ ( HP) で 公 開
されていますが、運航に直接携わるパイロットや実際に観測に従事している気象庁の
職員に対する説明は極めて不十分なまま進められようしています。
す で に MetAirで デ ー タ が 配 信 さ れ て い る に も 関 わ ら ず 、 航 空 路 誌 で の 公 示 は 、 AIC( 航
空 情 報 サ ー キ ュ ラ ー ) で 2017( 平 成 29) 年 1月 5日 発 行 ( 発 行 日 に 有 効 )、 AIP改 訂 版 ( R
VRの 観 測 範 囲 、 与 論 の 風 向 風 速 計 増 設 を 含 む ) は 2月 2日 発 行 ( 3月 8日 有 効 ) の 予 定 と
なっており、対象空港の空港事務所やエアラインの運航関係者の現場の職員が内容を
理解する十分な周知期間が確保されているか疑問な状況です。
気 象 庁 は 11月 に HPで "航 空 気 象 観 測 の 完 全 自 動 化 "を 導 入 し た 理 由 を 、「 自 動 METAR/SP
ECI 報 は 、 欧 米 各 国 で の 実 績 を 踏 ま え つ つ 、 最 新 の 観 測 技 術 ・ ア ル ゴ リ ズ ム の 開 発 ・
導 入 に よ り 、 現 在 の METAR/SPECI 報 と 同 等 以 上 の サ ー ビ ス レ ベ ル を 実 現 す る 。 自 動 MET
AR/SPECI 報 で は 、 現 在 の METAR/SPECI 報 に 比 べ 、 現 象 及 び そ の 変 化 を さ ら に 的 確 か つ
客観的に観測でき、滑走路付近の気象状態を適切に通報することが可能となる」とす
る 一 方 で 、「 器 械 に よ る 自 動 観 測 通 報 に は 、 現 在 の 観 測 通 報 と 差 異 が あ る こ と や 技 術 の
限 界 が あ る こ と 、ま れ に 機 器 障 害 に よ り 欠 測 が 生 じ う る こ と に も 留 意 す る 必 要 が あ る 」
と説明しています。
特 に 「 視 程 は 滑 走 路 付 近 に 設 置 し た RVR( 又 は 視 程 計 ) の 気 象 光 学 距 離 ( MOR) を 使
用 し 、 卓 越 視 程 と は 異 な る 」、「 雷 電 ( TS) 以 外 の 空 港 周 辺 の 現 象 や 、 部 分 的 な 霧 の 状
況 は 通 報 で き な い 」、「 現 在 の 技 術 で は 、 固 形 降 水 の 種 類 の 判 別 も 限 定 的 」 と し て い ま
す。つまり気象庁自ら、従前の有人観測とは異なるということを認めており、観測精
度 の 後 退 を 自 ら 明 言 し て い ま す 。 た と え ば 、 24時 間 離 着 陸 の あ る 関 西 国 際 空 港 で も 試
行 運 用 と し て 「 自 動 METAR/SPECI 報 」 が す で に 行 わ れ て い ま す が 、 雪 な ど の 固 形 降 水
が予想される場合などには、従来の目視観測・通報を行わざるを得ず、その体制をと
っています。
気象庁 HP に掲載された留意事項(自動 METAR/SPECI 報)<気象庁 HP より抜粋>
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kouku/2_kannsoku/27_jidoka/jidoka_gaiyo.pdf
「航空気象観測の完全自動化」と「自動 METAR/SPECI 報」について(平成 28 年 8 月)
」P4
器械による自動観測通報には、現在の観測通報と差異があることや技術の限界があること、まれに機器障害により
欠測が生じうることにも留意する必要があります。後述のとおり、自動 METAR/SPECI 報では、雷電(TS)を
除き空港周辺の現象を観測・通報することはできません。また、現在の技術では、固形降水の種類の判別も限定
的となります。
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無 人 化 に よ る 自 動 観 測 で 火 山 灰 ( VA) も
凍 雨 ( PL) も 観 測 で き ず 通 報 さ れ な い ?
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「 自 動 METAR/SPECI報 」 は 、 現 行 の METAR AUTO報 や SCAN報 と 比 較 し て 、 TSや CBが 通 報
で き る 等 の メ リ ッ ト が あ り 、 運 用 時 間 外 に METAR・ SPECIが 通 報 さ れ て い な い 空 港 ( 大
阪 、 仙 台 、 函 館 、 新 潟 、 長 崎 、 鹿 児 島 、 熊 本 等 ) で 運 用 さ れ る こ と に な れ ば 現 行 の MET
AR AUTO報 よ り 詳 細 に 実 況 の 推 移 が 確 認 で き 、 エ ア ラ イ ン の 飛 行 計 画 作 成 に 有 効 と 考
えます。
しかし、上記で説明した「現在の観測通報と差異がある」とされているように、特
別 観 測 実 施 基 準 と な っ て い る「 航 空 機 の 運 航 に 影 響 の あ る 天 気( FC、VA、FZRA、PL等 )」
が通報されなくなるという、安全上大きなデメリットがあると考えられます。
気 象 庁 HPで は 航 空 気 象 通 報 式 の 全 文 と 新 旧 対 照 表 が 掲 載 さ れ て い ま す が 、 気 象 庁 職
員でも内容を理解するのに時間を要することは想像に難くありません。このような運
航 に 関 わ る 重 要 な 変 更 の 周 知 期 間 が 短 い た め 、 情 報 を 利 用 す る 運 航 関 係 者 が 、 3月 8日
の本運用開始までに「航空気象観測の完全自動化」の内容を理解できるかが懸念され
る こ と か ら 気 象 庁 HPで も 周 知 す る こ と に な っ た の で は な い か と 推 察 し ま す 。
2016年 11月 、 大 阪 で 開 催 さ れ た 航 空 安 全 会 議 全 国 幹 事 会 で は 、 参 加 し た ほ と ん ど の
乗員から「事前に会社から『航空気象観測の完全自動化』の話は聞いていない」とい
う 状 況 で 、「 特 別 観 測 実 施 基 準 と な る 気 象 現 象 が 観 測 も 通 報 も さ れ な け れ ば 、 乗 員 は こ
れ ら の 重 要 な 気 象 現 象 が な い 前 提 で 運 航 す る の か 。」「 最 終 的 に 運 航 の 可 否 を 決 め る の
は 機 長 で あ り 、 気 象 官 署 か ら 今 ま で 通 報 さ れ て い た 天 気 ( FZRA、 VA、 FC、 PL等 ) が 通
報 さ れ な い の で は 、 安 全 運 航 の 判 断 材 料 が な く な り 非 常 に 問 題 だ 。」 と の 強 い 意 見 が 出
されています。
羽田に現れた竜巻(ろうと雲)
一部の方向に広がる霧
☆☆☆ もうすぐ本運用へ
このままでいいのか? ☆☆☆
上記のように「航空機の運航に影響がある天気」のうち、今後は通報されなくなる
観 測 要 素 が あ る こ と に つ い て は 、「 実 際 は こ れ ら の 現 象 が あ る の に 、 無 い と 認 識 さ れ て
運航されてしまう可能性はないのか」との疑問が挙げられていますが、さらに、レー
ダ ー や LIDEN障 害 時 の "TS CB NO"と い う 通 報 文 は 「 雷 や 積 乱 雲 が な い 」 と 誤 解 を 与 え る
可 能 性 の あ る こ と や 、「 周 回 進 入 や 視 認 進 入 で 重 要 と な る 場 周 経 路 の VIS・ シ ー リ ン グ
が 観 測 で き な い 」、「 方 向 視 程 が 通 報 さ れ な い 」 こ と に 対 し て も 疑 問 の 声 が 出 さ れ て い
ます。
約 15年 前 に 「 徳 之 島 空 港 の 委 託 観 測 化 」 が 強 行 さ れ た 当 時 に 開 催 さ れ た 航 空 安 全 会
議 全 国 会 議 で は 、 乗 員 か ら 「 SCAN報 は 観 測 通 報 さ れ る 要 素 が 少 な い こ と は 知 ら な か っ
た 」、「 SCAN報 は 特 別 観 測 実 施 基 準 が な く 、 気 象 状 況 が 変 化 し て も リ ク エ ス ト し な い と
定時報以外の時間帯は通報されないことを知らなかった」という意見が多く出されま
した。今回は、ホームページ上には「留意事項」として「現在の観測通報と差異があ
る 」 と 述 べ ら れ て お り 、 与 論 や 与 那 国 の よ う に 通 報 式 が SCAN方 式 の 空 港 で は 、 通 報 さ
れる情報量は増えますが、運航に必要な天気等が通報されない問題について、改善を
求める強い指摘があります。
繰 り 返 し に な り ま す が 、 気 象 庁 HPに "航 空 気 象 観 測 の 完 全 自 動 化 "の 説 明 が 掲 載 さ れ
た の は 2016年 11月 で 、 ま だ 、 航 空 の 職 場 で 働 く 現 場 の 理 解 が ほ と ん ど 進 ん で い な い 状
況 で す 。 過 去 、 航 空 安 全 会 議 か ら の 要 請 に よ り 、 "VCTS"と い う 現 在 天 気 に つ い て 現 在
の運用に改善されましたが、今回の「完全自動観測化」の問題も今後、運航乗務員を
はじめとした運航関係者から出された意見をもとに、対応を要請していく必要があり
ます。
<自動METAR/SPECI 報(観測通報体制の完全自動化)の問題点(まとめ)>
① 自 動 METAR/SPECI 報 で は 、 航 空 機 の 運 航 に 影 響 が 大 き い 大 気 現 象 で あ る あ ら れ ( GS) 、 ひ ょ う
( GR) 、 着 氷 性 の 降 水 ( FZRA) 、 周 辺 の 霧 ( VCFG、 BCFG、 PRFG) 、 地 霧 ( MIFG) 、 火 山 灰 ( VA) 、
黄 砂 ( SA) 、 ろ う と 雲 ( FC) の 判 別 が 行 え な い 。
※ 自 動 METAR/SPECI 報 で は 通 報 で き る 降 水 の 種 別 は 、 雨 ( RA) 、
雪 ( SN) 、 み ぞ れ ( RASN/SNRA) に 限 定 さ れ 、 固 形 降 水 ( あ ら れ ( GS) 、
ひ ょ う ( GR) な ど ) 及 び 着 氷 性 ( FZ) の 判 別 が 行 え ず 通 報 さ れ な い 。
火 山 灰 ( VA) が 降 っ て い て も 観 測 で き ず 通 報 さ れ な い 。
② 視 程 計 や 滑 走 路 視 距 離 観 測 装 置 に よ る MOR観 測 で は 、 視 認 進 入 や 周 回 進 入 の 経 路 で あ る 場
周経路の視程が観測できず、場周経路上の雲底の高さも空港内に設置されているシーロメータ
では観測できない。
③ 観 測 機 器 更 新 が 完 了 す る ま で の 数 年 間 は 、 現 行 の METAR・ SPECI報 、 SCAN報 、 METAR AUTO
報 と 、 AIMOS( 新 観 測 装 置 ) に よ る 自 動 METAR/SPECI 報 を 適 用 す る 空 港 が 混 在 す る 。
※それぞれの通報方式が異なる基準・特徴を持っており、どの空港がど
の通報式なのか、特に悪天繁忙時等に混乱する可能性が懸念される。