航空気象観測の完全自動化に関する問題点

表 天気略語表:自動 METAR/SPECI 報と現在の METAR/SPECI 報
羽田に現れた竜巻(ろうと雲)
⭐︎⭐︎⭐︎もうすぐ本運用へ このままでいいのか?⭐︎⭐︎⭐︎
上記のように「航空機の運航に影響がある転機」のうち、今後は通報されなくなる観測要素
があることについては、「実際はこれらの現象があるのに、無いと認識されて運航されてしまう
可能性は無いのか」との疑問が挙げられていますが、さらに、レーダーや LIDEN 障害時の “TS
CB NO” という通報文は「雷や積乱雲がない」と誤解を与える可能性があることや、
「周回進入
や視認進入で重要となる場周経路の VIS・シーリングが観測できない」、方向視程が通報されな
い」ことに対しても疑問の声が出されています。
約 15 年前に「徳之島空港の委託観測化」が強行された当時に開催された航空安全会議では、
乗員から「SCAN 報は特別観測実施基準がなく、気象状況が変化してもリクエストしないと定
時報意外の時間帯は通報されないことを知らなかった」という意見が多く出されました。今回
は、ホームページ上には「留意事項」として「現在の観測通報と差異がある」と述べられてお
り、与論や与那国のように通報式が SCAN 方式の空港では、通報される情報量が増え改善され
ない問題が強く指摘されています。
繰り返しになりますが、気象庁 HP に “航空気象観測の完全自動化“の説明が掲載されたのは
2016 年 11 月で、まだ、航空の職場で働く現場の理解がほとんど進んでいない状況です。過去、
航空安全会議からの要請により、 “VCTS” という現在天気の運用について現在の運用に改善さ
れましたが、今回の「完全自動観測化」の問題も今後、運航乗務員をはじめとした運航関係者
から出された意見をもとに、対応を要請していく必要があります。
<自動 METAR/SPECI 報の問題点(まとめ)>
①自動 METAR/SPECI 報では、航空機の運航に影響が大きい大気現象である、あられ(GS)、
ひ ょ う ( GR )、 着 氷 性 の 降 水 ( FZRA )、 周 辺 の 霧 ( VCFG 、 BCFG 、 PRFG )、 地 霧 ( MIFG )、
火山灰(VA)、黄砂(SA)、ろうと雲(FC)の判別が行えず通報されない。
※ 自 動 METAR/SPECI 報 で 通 報 で き る 降 水 の 種 別 は 、 雨 ( RA )、 雪 ( SN )、 み ぞ れ
(RASN/SNRA)に限定され、固形降水(あられ(GS)、ひょう(GR)など)及び着氷性(FZ)
の判別が行えず通報されない。
②視程計や滑走路視距離観測装置による MOR 観測では、視認進入や周回進入の経路である場周
経路の視程が観測できず、場周経路上の雲底の高さも空港内に設置されているシーロメータでは
観測できない。
※ 視認進入や周回進入の最低気象条件は RVR ではなく卓越視程
③観測機器更新が完了するまでの数年間は、現行の METAR・SPECI 報、SCAN 報、METAR
AUTO 報と、AIMOS(新観測装置)による自動 METAR/SPECI 報を適用する空港が、どの空
港がどの通報式なのか、特に悪天繁忙時等に混乱する可能性が懸念される。