丸紅株式会社 取引先や従業員にも恩恵

第2回 2013年度企業価値向上表彰 大賞受賞
丸紅株式会社
SPECI A L I N T ERV I E W
丸紅株式会社 会 長
朝田 照男 氏
取引先や従業員にも恩恵
∼丸紅が進める企業価値向上経営∼
丸紅が2013年度の企業価値向上表彰の大賞企業に選ばれた。
「独自の経営指標を用いて事業
リスクに見合ったリターンを追求する姿勢を貫いている」ことが評価された。丸紅は企業価値向上に
どのように取り組んでいるのか。朝田照男会長に聞いた。
―― いつごろから企業価値向上を意識した経営をするようになったのですか。
「1990年代後半に欧米で資本コストを意識した経営指標が重視されるようになり、当社で
もそうした経営指標を採り入れようとする動きがありました。そのときに『PATRAC(別項参
照)』という当社独自の経営指標の原型が生まれました。ただ、経営判断に活かされるようになっ
たのは2000年代初頭に大規模なリストラを余儀なくされてからです」
―― PATRACをどのように活用しているのですか。
「事業ごとにPATRACを算出し、毎月の経営会議でその事業を続けるべきか、やめるべきか
を議論しています。要求する水準の利益を3年間以上稼げていない事業は撤退の対象になりま
す。事業には担当者の思い入れがあり、続けたいという要望も寄せられます。ただ、私の経験から
すると、3年かけてもうまくいかなかった事業は、そこからさらに5年、10年かけたとしても上向
く可能性はほとんどありません」
「資本コストを上回る利益を生み出せる事業は、取引先やパートナーの企業にとっても利益貢
献が高いと言えます。優良な資産を積み上げていけば従業員に賃金増加という形で報いること
もできます。当社では、人事考課において、担当する事業のPATRACの水準を判断材料のひと
つに採り入れています」
―― 株主や機関投資家はどのように評価していますか。
「PATRACを採り入れた当初は信用してもらえませんでした。当社独自の指標のため、算定
根拠が見えにくいことが影響したようです。それでも総資産利益率(ROA)や自己資本利益率
(ROE)が着実に改善していくにつれて、当社を見る彼らの目も変わってきました。PATRAC
が資本効率向上につながっていることを理解してもらえたのだと思います」
丸紅独自の経営指標のPATRAC
∼黒字なら投資家の期待上回る利益に∼
丸紅独自の経営指標「PATRAC」は、純利益(PAT:Profit After Tax)からリスクアセッ
トコスト(RAC:Risk Asset Cost)を差し引いて求める。丸紅はリスクアセットコストを
資本コストの総額とみなしており、PATRAC が黒字なら、株主や投資家の期待を上回る
額の利益を生み出していることを意味する。