III-1 脳梗塞、慢性心房細動を背景にした遠位弓部大動脈瘤に対して低侵襲開胸手術を行った一例 吉武 勇 1)、服部 1) 相模原協同病院 努 1)、木村 玄 1)、白水 御代 1)、北島 心臓血管外科、2)日本大学医学部 史啓 1)、田中 正史 2) 心臓血管外科 症例は 67 歳男性、脳梗塞(失語、右片麻痺)、慢性心房細動(Caf)に対する加療中に最大径 6cm の遠位弓部大 動脈瘤を指摘され、胸骨部分切開下に上行送血、二本脱血(SVC, FV)にて人工心肺確立し、28℃循環停止、逆 行性脳分離体外循環併用下にオープンステントグラフトによる遠位弓部大動脈置換術(Less Invasive Quick open Stenting:LIQS)を施行。本例は CAHDS2 Score 3 点の Caf 患者であり、血栓塞栓症リスク軽減目的に冷 却中に同アプローチから左心耳二重結紮術を行った。遠位弓部大動脈瘤に対する低侵襲手術は TEVAR を主に発 展してきているが、弓部分枝との位置関係により開胸手術が望ましい症例も多く、本例のように合併手術を検 討している場合は、胸骨部分切開による MICS-LIQS 手術が有効と考えられたため、文献的考察を加え報告する。 III-2 偽腔開存 B 型大動脈解離に対して慢性期に TEVAR でエントリー閉鎖と真腔開大を行った一例 安藤 俊夫、荻原 康文、村場 医療法人社団日高会日高病院 祐司、古賀 敬史、久保 隆史、矢野 隆、大野 英昭 循環器内科 【症例】72 歳、男性。B 型大動脈解離の診断で入院。保存的治療を行い第 31 病日に退院。follow CT 検査で 左鎖骨下動脈直後のエントリーが開存し、腹腔動脈は偽腔から起始していた。遠位弓部大動脈径が 47mm と拡 大傾向であったためエントリー閉鎖目的で TEVAR 適応と判断。術前評価で右室内腫瘍と左前下行枝に有意狭窄 がみつかり、2期的手術の方針となった。まず右室腫瘍(血管腫)摘出、バイパス術(RITA-LAD)、上行大動 脈-左鎖骨下動脈バイパス(左鎖骨下動脈起始部は結紮)を行った。30 日後に TEVAR を実施。Bovine 末梢から SMA 中枢のリエントリーまでステントグラフトを挿入し、胸部大動脈の偽腔を血栓化できた。術後6日目に退 院。【結語】B 型大動脈解離に対しエントリーを閉鎖し、偽腔の血栓化に成功した。今後も注意深い follow が必要である。 III-3 Vector Flow Mapping(VFM)によるファロー四徴症の上行大動脈拡大機序の解析 高橋 努 済生会宇都宮病院 小児科 【背景】ファロー四徴症の上行大動脈拡大は aortopathy として成人期の重要な合併症で、血管弾性低下と容 量負荷が主因とされる。VFM で渦流やエネルギー損失 (EL) 、壁ずり応力(WSS)の解析が可能である。【目的】 大動脈騎乗により両心室から大動脈内に流入する血流を VFM でとらえ、渦流や EL、WSS を可視化し上行大動脈 拡大の機序を考察する。【症例 1】2 歳 4 か月女児。【症例 2】7 か月男児。いずれもファロー四徴症の心内修 復術前。 【結果】2 症例共、両心室からの血流が大動脈で合流する部位に一致して、渦流と高い EL(症例 1:194.0、 症例 2:132.0 J/m s)を認め、渦流近傍の大動脈壁で高い WSS を認めた。【考察】渦流と高い EL は血流ベクト ルが変動し、血液の粘性に伴い摩擦熱が発生していることを意味し、上行大動脈拡大の機序となっている可能 性がある。 III-4 脳梗塞発症を契機に診断された Klippel-Feil 症候群合併大動脈縮窄症の一例 岡村 由利子、小原 浩、久武 東邦大学医学部内科学講座 真二、八尾 進太郎、冠木 敬之、池田 隆徳 循環器内科学分野 症例は 20 歳代の男性。Klippel-Feil 症候群、高血圧ならびに脳梗塞の既往がある。ふらつきを主訴に来院し、 急性脳梗塞の再発と診断した。血圧は上肢で 160/90 mmHg、下肢で 90/65 mmHg と圧較差を認めた。経胸壁心 エコーの胸骨上窩アプローチにおいて、下行大動脈に狭窄部位を認めた。狭窄部末梢側の流速は最大 4.5 m/s と亢進しており、推定される圧較差は 81 mmHg と増大していた。胸部造影 CT 検査で左鎖骨下動脈分岐部末梢 の下行大動脈に最小径が約 3 mm 程度の狭窄部位を認め、単純型大動脈縮窄症と診断した。大動脈縮窄症は脳 出血を合併するが、脳梗塞を発症する例は稀である。加えて、Klippel-Feil 症候群に大動脈縮窄症を合併し た例は少ない。以上を文献的な考察を踏まえて報告する。 III-5 IgG4 関連炎症性腹部大動脈瘤の一例 稲垣 大、北條 典、吉田 林太郎、古谷野 康記、時岡 紗由理、宮原 聡、河村 岩成、中田 晃裕、永嶺 浩大、深水 誠二、渋井 敬志 精孝、宮澤 土山 高明、小宮山 大輔、新井 翔、増田 真理奈、宮部 新一郎、青山 倫 祐也、 東京都立広尾病院 症例は 86 歳男性。3 年前に感染性大動脈瘤の診断でステントグラフト挿入術施行。下腿浮腫を主訴に当院受 診。CT にてステングラフト周囲の軟部組織増大とそれによる下大静脈圧排の所見を認めた。また、採血にて 血清 IgG4、IgE 濃度の高値と高力価の抗核抗体陽性を認め、IgG4 関連炎症性腹部大動脈瘤の疑いでステロイ ド投与を開始した。その後、下腿浮腫は著明に軽快し、CT 上も腹部大動脈周囲の軟部影の縮小を認めた。本 症例では 3 年前、CT 所見から感染性大動脈瘤が疑われたが、振り返ると経過からはそちらも炎症性大動脈瘤 であった可能性が高いと思われた。炎症性大動脈瘤は、しばしば感染性大動脈瘤との鑑別が困難となるが、治 療法が全く異なるため正確な診断が望まれる疾患である。鑑別には様々な検査を併用し、慎重になることが重 要である。 III-6 腹部大動脈瘤を合併した虚血性僧帽弁閉鎖不全症・左室瘤・低左心機能の一治験例 片岡 紘士、上野 洋資、安藤 昭和大学江東豊洲病院 豪志、門脇 輔、光山 晋一、高垣 昌巳、山口 裕己 心臓血管外科 虚血性僧帽弁閉鎖不全症(IMR)と腹部大動脈瘤(AAA)はともに動脈硬化性因子を背景に持つ疾患であり、その治 療に関しては緻密な戦略を要する。今回我々は AAA に対して低侵襲治療であるステントグラフト法(EVAR)を施 行した後に、開心術を行い良好な結果を得たので報告する。症例は 71 歳男性、LAD 領域の AMI に対して 2 度 の PCI 施行歴と心不全入院歴がある。外来で経過観察中に AAA の拡大を指摘され、当科紹介となった。心エコ ーで重症 IMR と EF28%の低左心機能を認めた。開心術時に IABP の可能性もあり AAA に対する EVAR を先行し た。3 ヶ月後に開胸前に透視下で IABP 挿入し IMR に対してはグルタールアルデヒド処置を施した自己心膜を 用いて後尖拡大術を行い、左室瘤に対して左室形成術を安全に施行し得た。術後左室容量減少と MR の消失を 認め独歩退院となった。
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