別紙様式第2号 横浜国立大学 学位論文及び審査結果の要旨 氏 名 大野

別紙様式第2号
横浜国立大学
学位論文及び審査結果の要旨
氏
名
大野 大典
学 位 の 種 類
博士(工学)
学 位 記 番 号
工府博甲第503号
学位授与年月日
平 成 28年 9月 16日
学 位 授 与 の 根 拠 学位規則(昭和28年4月1日文部省令第9号)第4条第1項及び横浜国
立大学学位規則第5条第1項
学 府 ・ 専 攻 名 工学府
機能発現工学 専攻
学 位 論 文 題 目 新規高耐熱機能性樹脂の開発と実装材料への応用
(Development of new functional high heat resistant resins and
application for electronic materials)
論文審査委員
主査
横浜国立大学
教授
羽深 等
横浜国立大学
教授
大山 俊幸
横浜国立大学
教授
上田 一義
横浜国立大学
教授
吉武 英昭
横浜国立大学
客員教授
高橋 昭雄
論文及び審査結果の要旨
情報化社会がますます進展していく状況において、低誘電特性の絶縁材料、誘電正接がよ
り小さい材料、ハロゲン系難燃剤を用いずに難燃化する材料が求められている。更に、融点
が高い鉛フリー半田が採用されていることから、より高い耐熱性を有する材料が求められ
ている。これらの背景から電子材料に用いられる樹脂として、高耐熱性、低誘電特性、難燃
性、低吸水性、等の研究開発を目的とした。本論文は、上記内容について5章に分けて詳細
を論じている。
第一章では社会的な背景を説明し、次世代の情報通信機器に必要な要件から素材に求め
られる要求特性を整理し、素材開発の方向性を論じた。情報化社会の進展においては、大容
量高速化の流れにより通信のエネルギー効率を向上させるために信号伝達損失を低減する
必要が生じており、機器に使用される絶縁材に対しては低誘電率、低誘電正接が求められて
いることを説明した。また、環境問題対応における欧州の化学物質規制(RoHS 規制)によ
り、電子材料に大きな変化が求められていることを説明した。鉛半田に代わる半田は高融点
であり実装材料に対してより高い耐熱性を求める結果となっている。また、臭素系難燃剤の
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横浜国立大学
自主規制により樹脂の難燃性を高める必要が生じている。これらの背景から、次世代の電子
材料用のベースレジンとして、低誘電特性、耐熱性、難燃性、を狙いとして研究開発を進め
ることを述べた。
第二章では、高耐熱性と低誘電特性を兼ね備えた樹脂の研究結果について述べた。分子設
計としては、高耐熱性と低誘電特性の両立を図るためにフェニレンエーテル骨格を用い、2
官能化することで熱硬化型とした。架橋のための反応基として(メタ)アクリル基、エポキ
シ基、ビニルベンジル基を検討し、分極の小さなビニルベンジル基を導入することで、GHz
帯において低誘電率、低誘電正接を有する樹脂を開発することができた。
第三章では、高耐熱性と難燃性を兼ね備えた樹脂の研究について述べた。分子設計として
は、高耐熱性を発現させるために架橋のための反応性基としてシアネート基を選定し、難燃
性を付与するためにアラルキル骨格の導入を行った。フェノールフェニルアラルキル、フェ
ノールビフェニルアラルキル、ナフトールフェニルアラルキルの 3 種のアラルキル骨格を
含むシアネート樹脂を合成し、評価を行った。
第四章では、シアネート樹脂とエポキシ樹脂の反応解析、シアネート樹脂の基礎物性評価、
誘電正接の理論式の検証を述べた。シアネート樹脂とエポキシ樹脂の反応解析は、モデル化
合物としてフェニルフェノールのシアネート化物の 3 量体とフェニルグリシジルエーテル
の反応物の解析を行った。解析の結果、部分的にイソシアヌレート化した中間体を同定し、
異性化が逐次的に進行していることが分かった。自由エネルギー計算をしたところ、2 か所
イソシアヌレート化するとエネルギー的に大きく安定化することが分かった。
第五章では、研究結果の総括を行った。次世代の電子材料のためのベースレジンの研究開
発を進め、各章における成果を整理すると共に、今後の樹脂研究に有用であることを述べた。
以上の内容は博士(工学)論文として価値あるものであると判断した。