インフィニット・セイント ロナード ︻注意事項︼ このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にP DF化したものです。 小説の作者、 ﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作 品を引用の範囲を超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁 じます。 ︻あらすじ︼ か つ て 地 上 で は 女 神 ア テ ナ と そ の 戦 士 で あ る 聖 闘 士 と 刻 の 神 サ ターンとの戦いが有った。その戦いから二十五年ものの年月が経っ た今の世界では女性にしか扱えない世界最強のパワードスーツであ るインフィニット・ストラトス。通称ISが普及した為、女尊男卑の 女性社会となり男性の立場が無くなったパワーバランスが崩壊した 世界となっていた。 そんな世界で最強のIS操縦者を姉に持つ織斑一夏はある日にI Sをも凌駕する力を持った戦士である聖闘士の存在を知る事になる ⋮ 1 目 次 プロローグ 聖闘士との出会い ││││││││││││││ 第1話 一夏、聖闘士になる │││││││││││││││ │││││││││ │││││││││││ ! 15 30 42 第2話 初任務、師の意志を継げ一夏よ 第3話 目覚めろ、セブンセンシズ ! プロローグ 聖闘士との出会い セ イ ン ト かつて、この地上では女神アテナの戦士である聖闘士と刻の神であ るサターンとの戦いが繰り広げられた。 その戦いは聖闘士達の命掛けの奮闘により、サターンは人間に対す る考えを改めたのか、サターンが地上から自らの意志で去った事で終 わりを迎えたのだった。 そして、その戦いから二十五年ものの時が流れた今ではインフィ ニット・ストラトス、通称ISと呼ばれるパワードスーツが世界中に 影響を与えていた。ISを装着した人間が上手く操縦すれば空を自 由に飛び回れる上に、ISがまだ世界に名が知られていない時にとあ る国の軍事基地が何者かにハッキングされ、基地のミサイルが無差別 に地上に放たれた時に初代のISを纏った者が放たれたミサイルを 一つも残さずに撃墜した為か兵器としての能力も高い。 その上、ISには一つの機体毎に違うコアという物が装着されてお り、コアが反応する事でISが展開される。コアは操縦者と共鳴する 事で操縦者毎に違う性能にISを進化させていき、ISは無限大に進 化していくと言っても過言ではないのだ。 しかし、ISを動かせるのは女性だけであり、男性は動かそうにも ISが反応すらしないのだ。おそらく、コアが男性にだけは反応しな い為だろう。 以上の点を踏まえて、今の世界ではISを操縦出来る女性の方が優 遇され、男性の立場が危うくなっている。かつての男社会から逆転し たかの様に世界は女社会に成り果てており、女性は男性を酷く扱う事 も日常茶飯事になるのも時間の問題かもしれない。 ISが世界に知れ渡って数年が経ち、ISを使っての試合を行う世 界大会である第二回モンド・グロッソの決勝戦が始まる少し前に第一 回モンド・グロッソの優勝者である織斑千冬の弟である織斑一夏は、 今回も決勝戦まで勝ち進んだ姉の千冬が勝つだろうと確信して、買い 出しに出ていた時だった。 1 一夏が人気の無い場所を歩いていた時に前から怪しい黒服の男達 が現れると黒服の男達は一夏に近付き、一夏を拘束し目隠しをして車 に乗せて何処かに連れ去ったのだ。そう、一夏は何者かの指示で動い ていた黒服の男達によって誘拐されたのだ。 その瞬間をたまたま遠くから目撃した一人の青年がいた。その青 年は金髪の短髪でややつり目で、その背中には巨大な黄金の箱を背 負っていた。青年は一夏を誘拐した者達の目的を悟ったのか小さく 声に出した。 ﹁くだらん。あらかた前回のモンド・グロッソの優勝者である織斑千 冬を棄権させる為の手段として弟である織斑一夏を誘拐し、織斑千冬 ゴールドセイント そんな方法で勝てて喜ぶ様な大した誇りも が決勝戦を辞退してまで弟である織斑一夏を助ける事を解っての下 種い策か。気に入らぬ 無い輩は少々大げさかもしれぬが、山羊座の黄金聖闘士である俺が目 撃したからには懲らしめてやるべきか⋮﹂ 青年はそう呟いた後、直ぐに一夏を乗せた車を追い掛けた。まるで 一筋の光の軌跡の様に⋮ 誘拐されて街から離れた場所にある倉庫らしき場所に連れて来ら れると、黒服の男達は一夏にしていた目隠しだけを取ると、目隠しを 解かれた一夏は自分を誘拐した者達に何の目的で自分を拐ったのか 問い質した。 ﹂ !? 前回の優勝者である織斑千冬を決勝に出 ﹁お前達、一体何の目的で俺をこんな場所にまで連れ去ったんだ ﹂ ﹁そんな事も解らないのか させない為さ ? と思われる女だった。倉庫の中が暗い為か一夏は女の顔がよく見え ていないが、目付きが鋭い感じの女である事だけは確かだ。 一夏は女の言った答えがピンと来ないらしく、少し困惑した表情を していたので女は呆れながらも説明し始めた。 ﹁まだ解らない様子だから、せめてものの優しさでもう少しだけ教え 2 ! 一夏の質問に答えたのは黒服の男達の後ろにいるこの男達の上司 ! てやるよ。織斑千冬は最強のIS操縦者である事はISに関する者 だが、織斑千冬は弟で ならば誰もが知っている。なら、今回のモンド・グロッソも織斑千冬 の総合優勝で間違いないだろう。本来ならな ﹂ 千冬姉が俺が誘拐されたと聞いたら、決勝戦を辞退 の目的はそんな事じゃないけどな︶﹂ ﹁そういう事だ。やっと足りねえ頭でも理解出来た様だな ︵まあ、真 の敗退扱いとなり、相手の不戦勝になる訳だ⋮﹂ を辞退してまで俺を救出しに向かった場合、当然その決勝戦は千冬姉 してでも俺の救出を優先して動くに違いない⋮もしも、千冬姉が決勝 ﹁そういう事か あるお前が一番理解してしる筈だ、織斑一夏 あるお前が誘拐されたという情報を聞いたら、どう行動するかは弟で ! ! こんな勝ち方して喜べるのかよ ﹂ ! に一夏は自分が情けなく思ってしまう。 ﹁ふざけるな 何の達成感も無いだろ 不戦勝で優勝しても という事を知り、自分のせいで姉である千冬に迷惑を掛けてしまう事 冬が決勝を辞退してでも自分の救出に向かう事を確信しての犯行だ 一夏はこの女と黒服の男達の目的が自分を誘拐すれば、姉である千 ! だからな。私に文句を言っても何も意味は無いさ﹂ どうやら、女の方も更に上の者からの指示で動いているだけの様だ が、それでも自分のせいで姉の不戦敗が決まるのが許せない一夏は自 分の腕を縛っている綱を何とかほどこうとするが、女はそんな行動を 見逃す筈も無く、黒服の男達に指示を出した。 ﹂ ただし、や ﹁簡単にはほどけない様にしてるかもしれないが、もしほどけたら面 倒だ。綱をほどこうとする気力が失せる様に痛みつけろ り過ぎて殺すんじゃねえぞ。あくまでも大事な人質だからな 年の姿が見えた。 山羊の角を思わせるヘッドギアを装着した黄金の鎧を纏う一人の青 で鋭利な刃で切られたかの様に崩れ始めると、扉の先には頭に黄金の 暴力で動けない様にしようと動いた時だった。突如、倉庫の扉がまる 黒服の男達は女の指示を聞き、綱をほどこうともがいていた一夏に ! ! 3 ! ﹁ふん⋮私に聞くなよ。私もただ言われた内容通りに動いているだけ !! !! ファントムタスク ﹁ほ う、ま さ か 織 斑 一 夏 誘 拐 の 首 謀 者 が 噂 に 聞 い た 亡国機業 の メ ン バーであるオータムだとはな⋮﹂ ﹁おい、金ぴか野郎のテメエ⋮何で私の名前を知ってやがるんだ⋮﹂ ﹁こちらが知ってるのに、そちらは俺の纏う物を見て気付かないのか 裏の世界で暗躍している亡国機業ならば知ってると思っていたの カプリコーン だが、そうでもないらしいな。知らぬならば教えてやろう。俺は聖闘 士の一人、山羊座の黄金聖闘士ラインハルトだ。聖闘士の情報網はこ れでもマフィアとかよりは優秀だからな。亡国機業のメンバーの情 確かギリシャ神話の女神であるアテナに忠誠を誓った 報は粗方入手している﹂ ﹁聖闘士だと ﹂ !? 命令し出す。 ﹁お前ら、あの聖闘士を名乗る金ぴか野郎を始末しろ ! ﹂ ! 俺達の鉄パイプがたかが手刀で真っ二つになるだと ﹂ 男達の持つ鉄パイプは鋭利な刃で切られたかの様に真っ二つになり、 ラインハルトは男達の振るう鉄パイプに目掛けて手刀を振るうと、 満のままごとに過ぎぬ ﹁愚かな⋮聖闘士を相手にそんなもので挑んだところでチャンバラ未 鉄パイプで殴り掛かったが⋮ 黒服の男達がオータムの命令通りにラインハルトに向かっていき、 れたら作戦に支障を出しそうだからな﹂ 下手に妨害さ オータムは聖闘士が存在した事に驚きつつも、部下の黒服の男達に オータムだと知ってたので只者では無いと感じた。 ついてこれないが、ラインハルトが女の正体が亡国機業の幹部である アテナに忠誠を誓った戦士である聖闘士の一人だと言うので、話には 一夏は突然現れた黄金の鎧を纏う青年ラインハルトは自分が女神 今こうして貴様の前に立っている﹂ 勘違いしていた様だな。残念ながら、聖闘士は実在する。その証拠に ﹁その様子だと聖闘士の名は聞いた事が有っても、都市伝説か何かと してたってのか 戦士がそんな名前で呼ばれていたと聞くが⋮ば、バカな⋮本当に実在 !? !? 地面に落ちた。 ﹁何だと !? 4 ? ﹁び、ビビるな ﹄ まだ俺達には拳銃が有る。これで奴を殺せば⋮﹂ ﹂ 末する事にした様だ。 ! 自ら金ぴか野郎、テメエを始末してやるよ 来い、アラクネ ﹂ ! このアラクネを見た感想は ? から見れば蜘蛛の怪物が現れた様な感じだ。 ﹁どうだ金ぴか野郎 ﹂ るISはまるで巨大な蜘蛛の如く六本の長いアームを持つので、一夏 クネを装着しラインハルトの前に立ち塞がった。アラクネと呼ばれ オータムが自身が持つISアラクネを呼び出すと、オータムはアラ ! いい、役立たずの男共じゃ殺れないなら仕方無い。このオータム様が ﹁チッ、情けねえ男共だ 所詮は金で雇っただけのチンピラか⋮まあ そんな男達を見て呆れながらもオータムは自らラインハルトを始 ら出て行くと一目散に逃げていった。 男達は未だに腰が抜けているのかふらつきながらも慌てて倉庫か ﹃ヒィィッ と逃げるがいい ﹁安心しろ。俺は無駄な殺傷は好まん。だから、逃げたければさっさ ﹃た、頼む⋮どうか命だけは助けてくれ⋮﹄ た。 まで駄目になった為か腰が抜け尻を地面に付けると命乞いをし始め インハルトが手刀を横に振るうと拳銃の銃口が切られてしまい、拳銃 ンハルトが自分達に近付いて来たので、慌てて銃を撃とうとしたがラ 壁に被弾しただけだった。男達は何が起きたのか解らない中でライ ただけの様にラインハルトをすり抜けていき、ラインハルトの後ろの し、ラインハルトに向けて発砲したが、銃弾はまるで立体映像に撃っ れを抱きつつも、ラインハルトを始末する為に懐から拳銃を繰り出 男達は手刀で鉄パイプを真っ二つに切り裂いたラインハルトに恐 ! ! ﹁ケッ、調子にのるなよ。金ぴか野郎、テメエのその余裕ぶっこいた態 か見定めてやろう﹂ 悪くないと思うが、果たして貴様の様な輩が使いこなせる代物かどう 物アラクネをモチーフにしたISか。機体としては手数が多そうで ﹁ギリシャ神話に出てくる上半身は人間の女だが、下半身は蜘蛛の怪 ? 5 !!? 度がいつまで続くか見物だな ﹂ 見せてやるよ、男であるお前じゃ扱え ない最強の兵器であるISの力をな ﹁バカな⋮何故、当たらないんだ これでもこのアラクネは亡国機業 かすり傷すら与える事が出来ないのでオータムは焦りを感じていた。 き刺そうとしてくるが、アームによる攻撃は全て避けられてしまい、 オータムはラインハルトに向けてアラクネの六本有るアームを突 ! ! !? ほう、ISとやらでも最低基準の聖闘士のスピード の手で改造されて全てのスピードがマッハ1に到達してるんだぞ⋮﹂ ﹁マッハ1だと か ﹂ ﹁何だと ブロンズセイント マッハ1のスピードが聖闘士の中でも最低基準だと言うの に着いてこられる様だな﹂ ? を移動出来るスピードを持つ﹂ ﹂ ﹁三十万kmだと⋮地球を軽く七周半出来るスピードじゃねえか まり、テメエは光速で移動出来るっていうのか !? ﹂ そんなスピードで動けるなら何故、さっさと光速のス ピードで私を倒さねえんだ !? だ﹂ したのだろう。そのスピードが速すぎて常人には見切れない為に片 おそらく、ラインハルトはマッハのスピードで瓦礫を攻撃し、粉々に 腕を挙げると瓦礫は木端微塵に粉々になり、風に飛ばされていった。 れ、瓦礫がラインハルトに降り注ぐがラインハルトは微動だにせず片 た事に腹を立てたのか、アラクネのアームで天井を貫くと天井が崩 オータムはラインハルトが自分を本気で倒すにも価しないと言っ ﹁ナメるな ﹂ ﹁簡 単 な 話 だ。貴 様 の 様 な 輩 は 本 気 を 出 す に も 価 し な い 相 手 だ か ら ? ﹁ふざけるな ﹁その通りだ。計算はちゃんと出来る様で何よりだ﹂ !? つ 俺を含める黄金聖闘士だ。黄金聖闘士は一秒間におよそ三十万km 次第ではそれ以上のスピードで動けるがな。そして、聖闘士の頂点が ハ2以上5以下のスピードで動ける。と言っても、青銅も白銀も実力 1 の ス ピ ー ド で 動 け る。続 い て 真 ん 中 に 位 置 す る 白銀聖闘士 は マ ッ シルバーセイント ﹁そうだ。聖闘士にはランクが有り、まず下の青銅聖闘士でもマッハ !? !! 6 !? 腕を挙げただけに見えたのだろう。 ﹁テメエ⋮いい加減にふざけるのは止めやがれ 私は亡国機業のオー アラクネの全リミッ テメエみてえな金ぴか野郎とは違う、絶対的な強者だぞ ぶっ壊してやらぁ ﹂ ﹂ 正真正銘アラクネのフルパワーでテメエを微塵も無く テメエだけは本気の本気でぶっ壊してやる タム様だぞ !? !! !! ! ﹁シャイニングインパルス ﹂ つ光速のスピードで出される技の前では無力に過ぎなかった。 攻撃はラインハルトに当たる前に指一本と言えどラインハルトの放 が溢れ、光の刃となりラインハルトに向けて振るわれる。だが、その ワーを解放するとアラクネの六本のアームから高密度のエネルギー オータムはアラクネのリミッターを全て解除し、アラクネがフルパ ﹁そうか。なら、俺も指一本で光速の技を見せてやろう⋮いくぞ !! ターを解除 ﹂ 人に向けて指を指すなって教わらなかったのか ラインハルトは腕を降ろすと直ぐにオータムに向けて、右手の人差 し指を向けた。 ﹁何の真似だテメエ ﹂ ﹂ ﹁一本だ﹂ ﹁はあっ ? ﹁貴様の様な輩を相手に片腕では勿体無い。この指一本で十分だ ? 後に倒れ気絶した。ラインハルトはスコールが気を失った事を確認 で気を失う直前に自分の上司である者に向けて謝罪の言葉を発した のISであるアラクネはコアを残して崩れさり、オータムはダメージ ラインハルトの放ったシャイニングインパルスによってオータム えない男ごときに負けるとは⋮すまねぇ、スコール⋮﹂ ﹁バカな⋮このオータム様が⋮ISを持たない奴に⋮しかもISを纏 か見えなかった。 切れない一夏とオータムには巨大な光の光線が放たれたかの様にし が光速で人差し指による連続突きであるのだが、光速のスピードを見 差し指から巨大な光の光線が放たれたのだ。正しくはラインハルト 一夏はラインハルトの出した技を見て驚いた。ラインハルトの人 ! 7 ! ! ? !! すると、今の戦いの一部始終を陰から隠れて見ていたある者に向けて 発言した。 ﹁悪党と言えど、大した根性だった。ソコだけは評価してやる。だか ﹂ らこそ今回だけはコイツの身柄を返してやる。居るのだろ、亡国機業 の幹部スコール ﹁あら、流石は黄金聖闘士と言ったところかしら。隠れていた私の気 配に気付くなんてね﹂ 一夏はラインハルトが視線を向けた先にスコールとは違う女性の 姿が有ったのに気付いた。その女性の見た目は美しいが何処か危険 な雰囲気も感じるので、スコールより格上の存在だと直ぐに解った。 その女性は気絶したスコールに近付くとISを展開して、ISでス コールを抱え、スコールのISのコアも回収すると一夏とラインハル トに向けて発言した。 ﹁織斑一夏、あなたの姉である織斑千冬は残念だけどモンド・グロッソ の決勝を辞退してあなたの救出に出たと聞いたわ。本当なら、今回の 作戦はあなたの姉のISの実戦データを取る為の手段だった訳なん だけど、黄金聖闘士がいる以上は難しそうだし、モンド・グロッソの ﹂ 千冬姉のデータが欲しいなら、わざわざ俺を誘拐せず 試合でのデータだけで我慢するわ﹂ ﹁ふざけるな とも自ら試合を申し込めば済む話だろ データな訳。只の試合じゃ意味無いのよ。本気の本気で相手を倒し にくる織斑千冬のデータが欲しかったの。でも、それは無理そうだか ら織斑千冬の戦闘データについては諦めるし、これからは金輪際織斑 千冬と織斑一夏には手を出さないと約束するわよ。その代わりにス コールの事は見逃してくれるのよね、黄金聖闘士のラインハルトさ ん﹂ ﹂ ﹁ああ。本当に二度と貴様らが織斑姉弟に手を出さないと言うのなら ば、見逃してやる。この約束は守れるのだろうな しね。私とオータムを含めた私の部下は二度と織斑姉弟には手を出 ﹁ええ、守るわ。流石に私は聖闘士を敵に回す様な事だけは避けたい ? 8 ! ﹁違うのよ、私達が欲しいのは本当に実戦的な織斑千冬とそのISの ! ! さないと約束するわ。でも他の亡国機業の面子が何かしてくる可能 性は有るから警戒してなさい﹂ スコールは自分と自分の配下が織斑姉弟に二度と手を出さない事 をラインハルトに約束するとオータムを連れて何処かへ飛び去って いた。 スコールがオータムを連れて去っていた後、一夏はラインハルトに よって拘束を解かれた。一夏はラインハルトがオータムとの戦いで 見た実力は本物だと思い彼に助けてくれた事へのお礼をすると同時 に尋ねた。 ﹁ラインハルトさん、助けてくれてありがとうございます。それと聞 ﹂ きたい事が有ります。ラインハルトさんが所属する聖闘士はどの様 な力であんなスピードで動けるんですか コ ス モ ﹁まあ、見せてしまった以上は隠すのが無理と言うものか。俺を含め た聖闘士は小宇宙と呼ばれる人間の身体に眠る宇宙的エネルギーを ﹂ 燃やして戦う﹂ ﹁小宇宙 重ねて己の中に眠る小宇宙を解放させる事で初めて扱える力だ。そ れ故にその力に気付かずにいる者が多いのも事実。それに小宇宙に 目覚めても上手く扱えなければ只の宝の持ち腐れだ。だが、上手く扱 えれば先程オータムに言った通りにマッハのスピードで動く事が可 能となる﹂ ﹁ええと、正直まだちんぷんかんぷんな感じですけど⋮何となく小宇 宙の事は解った気がします。もう一つ気になった事が有るんですけ ﹂ ﹁そうですか。わざわざ俺の質問に答えてくれて感謝します﹂ 態で纏えば重たいだけのプロテクターになるがな﹂ 小宇宙を高める効果も持っている。ただし小宇宙を全く使えない状 ば聖闘士の証であると同時に身を守るプロテクターでも有り、更には ﹁俺が今纏っているのは聖闘士の証である聖衣だ。聖衣は簡単に言え クロス れど、その鎧みたいなのは一体何でしょうか ? 9 ? ﹁小宇宙は誰もが持っているが、その力を使うには厳しい修行を積み ? ﹁では俺はここで失礼させて⋮﹂ 一夏の質問に答えた後、ラインハルトはこの場から去ろうとしたの だが、とんでもないスピードで何かが迫っている事に気付いた一夏と ラインハルトは同時に上を見上げるとISを装着した黒髪の女性の 姿が見えた。その女性に一夏は見覚えが有った。無理もない、それは 間違いなく自分の姉である織斑千冬なのだから⋮千冬はラインハル トの姿を捉えると、ラインハルトに向けて突っ込んでいく。ラインハ ルトは千冬に敵意が無い事を伝える為か回避だけを行い、千冬が落ち 着くのを待つ事にした様だ。 ﹂ ﹁一 夏、助 け に 来 る の が 少 し 遅 れ て し ま っ た が 今 直 ぐ に そ の 男 か ら 救ってやるぞ ﹁千 冬 姉 ⋮ 落 ち 着 い て よ く 聞 い て く れ。そ の 人 は 俺 を 誘 拐 し た 犯 人 じゃなくて俺を助けてくれた人なんだ。誘拐した犯人はとっくにそ の人が懲らしめたよ⋮﹂ ﹁そうか⋮すまない、私とした事が⋮頭に血が昇っていたようだ﹂ ﹁気にする必要は無い。人間ならば、誰しもそういう時が有るものだ﹂ 千冬は一夏の言葉でラインハルトが敵では無いと知り、ISを待機 状態にした後に一夏とラインハルトから詳しい話を聞いたのだった。 話を聞いた千冬はラインハルトに感謝の言葉を送った。 ﹁偶然と言えど、一夏が連れ去られた瞬間を見たから救出しに向かっ てくれた事には本当に感謝する。それにしても聖闘士か⋮そんな者 達がいたのだな。しかも任務終わりのところで助けに向かったのだ ろ﹂ サンクチュアリ ﹁礼などいい。俺が一夏の救出に向かえたのは任務が終わり、聖闘士 の本拠地である聖 域に戻ろうとしていた頃だったのも有るからな。 もし任務中だった場合、一夏誘拐の瞬間を見て任務を放り出して助け に向かったかどうかは定かではないからな⋮では、そろそろ俺は聖域 に戻りたいと思う。これにて失礼する﹂ ラインハルトは聖闘士の本拠地である聖域に戻ろうとする中、一夏 はもし自分が強ければ今回の様な事件は起きなかったのではないか 10 ! と思っていた。ラインハルトが助けてくれたとは言えど、結局は千冬 は強くなりたい、もう姉である千冬の手を煩わせる様な事だけは二度 としたくない⋮ そんな弟の考えを読み取ったのか千冬は去ろうとするラインハル トを呼び止めた。 ﹁待って貰おうか、ラインハルト殿﹂ ﹂ 千冬に呼び止められたラインハルトは千冬の話を聞く為に止まっ た。 ﹁どうした、まだ何か有るのか 千冬姉⋮﹂ ﹂ ﹁一夏を連れて行けか⋮それはつまり、一夏に聖闘士としての道を進 ﹁えっ て行ってくれないか﹂ ﹁ラインハルト殿、お忙しい中で一つだけ頼みが有る。コイツを連れ ? コイツを立派な聖闘士になれる様に育て上げてもらいた ませたいという事か ﹁そ う だ い﹂ ? ろ﹂ ラインハルト殿に着いていき、聖闘士になる道を選ぶかお前が選択し うする一夏、お前はここに残って私に守られながら平凡に生きるのと 様になるのなら、私はお前が私から離れる事になっても構わない。ど 訳では無いしな⋮お前が強くなって私の手を借りずとも生きられる が、私がお前を守ってばかりいるのは必ずしもお前の為になるという ﹁お前の思った事など姉である私には直ぐに解る事だ。寂しく感じる で千冬は一夏の肩に手を乗せると、一夏に静かに耳打ちする。 で、まさか自分の考えてる事を読み取っての行動なのかと思い驚く中 一夏は千冬がラインハルトに自分の事を連れて行く様に頼んだの て行こうとは思えない。﹂ なりたいと思ってたらの話だ。一夏の意志を聞かなければ俺は連れ 連れて行っても構わないが、それは一夏自身が自分の意志で聖闘士に ﹁了解した。一夏は見た限りでは聖闘士としての素養は十分に有る。 ! 一夏は姉である千冬を守れる様な力をずっと欲しがっていた。も 11 !? しラインハルトに着いていき聖闘士になれれば、姉を守れる力は手に 入れられるだろう。でも、それは自分勝手な気もすると一夏は思って いた。聖闘士は女神アテナに忠誠を誓い地上の平和を守る為に戦う 存在だ。なのに、姉を守る為の力を手に入れる為に聖闘士になろうと 思うのは自分勝手なのではないかと思ってしまった。 そんな一夏を見たラインハルトは一夏に発言した。 ﹁織斑一夏よ、おそらくお前は姉である織斑千冬を守れる力を得る為 に聖闘士になろうと思うのは自分勝手な事だと思っているのだろう。 だが安心しろ。最初からアテナに忠誠を誓って聖闘士になった者な ど、そんなに多くはないのだ。伝説となった聖闘士達ですら、最初は 半ば強制的に自分の意志とは無関係に聖闘士としての修行を強い出 されて聖闘士になった者達なのだ。その者達の中には流氷が溢れる 海の底に沈んだ沈没船に眠る母に会う為に聖闘士になった者もいれ ば、聖闘士になったが復讐の為にその力を利用した者までいる。だ 総本山である聖域にな ﹂ ﹂ は姉の千冬に自分に聖闘士になる道を薦めてくれた事に感謝すると 同時に一時の別れの言葉も送った。 12 が、そんな彼らも後にアテナに忠誠を誓って地上の平和を守る為に戦 う立派な聖闘士になった。つまり、俺が言いたい事は聖闘士になろう と 思 っ た の が ど ん な 些 細 な 理 由 で 有 ろ う と も 構 わ な い と い う 事 だ。 ﹂ お前が誰かを守る為に戦えるのなら構わん。話は以上だ。後は聖闘 士になりたいのかなりたくないのかを自分の意志で決めろ 分勝手な理由で有ろうとも 聖闘士になれたら誰かを守る為にその力を使いたい。例え、それが自 に困っている誰かを助けられる様になりたいとも思っていた。もし、 ﹁俺は千冬姉を守れる様になりたいと前から思っていた。それと同時 自分の意見は一つだ。一夏はラインハルトに自分の意志を伝えた。 を守る為に戦える力を手に入れる為に聖闘士になってもいいのなら、 一夏はラインハルトの話を聞き、どんな些細な理由でもいい。誰か ! ﹁それがお前の意志か。いいだろう、連れて行ってやろう。聖闘士の ! 一夏の意志を聞いたラインハルトは一夏を連れて行く事にし、一夏 ! ﹁千冬姉、ありがとう。聖闘士になる道を薦めてくれて⋮本当にあり がとう、俺が千冬姉を守れる様になった時にまた会おうな⋮﹂ ﹁生意気な事を言うな。聖闘士になろうが、お前は私の弟だ。簡単に お前に守られる様になる訳にはいかんからな。期待せずに待ってい てやろう﹂ 一夏は千冬としばらく会話した後、ラインハルトの後を着いてい き、彼が所有するプライベートジェット機に乗って聖闘士の総本山で ある聖域が有るギリシャに向かったのだった。 聖域に着くと、直ぐにラインハルトの案内で聖域のトップである教 皇がいる教皇の間に案内され、ラインハルトが一夏の事を教皇に紹介 した後に教皇は口を開いた。 ﹂ ﹁話は解った。織斑一夏、つまりはお前は姉を守れる力を手に入れる 為に聖闘士になりたいという訳か ﹁そうです。本当に自分勝手な理由かもしれませんが⋮それでも俺は 聖闘士になりたいんです。千冬姉だけじゃない、俺が知ってる人達、 ﹂ こう見えて私も血気盛ん これから出会うで有ろう人達を守れる様になりたいんです ﹁自分勝手な理由か⋮フフ、面白い弟だな ! ﹂ う、聖闘士になれる様に鍛えあげてやれ、ラインハルト が連れて来た訳だしな いいだろ 元々はお前 ! ! からは私も少しばかり礼儀が良くなってしまったからな る教皇になってしまった。本当に不思議なモノだな。教皇になって 為という訳では無かったのだ。まあ、そんな私も今では聖闘士を束ね こそ真に自分勝手な理由で聖闘士になった者だ。お前の様に誰かの で人の骨が折れる音を聞く為に聖闘士になった様な奴でしてな。私 ! ﹂ ラインハルト、お前は織斑千冬に弟の事を任されたのだろ 鍛えるべきでは ﹁黙れ はあっ、本当に滅茶苦茶な方だ⋮﹂ 13 ? ﹁ですが、聖闘士の候補生を鍛えるパライストラが有る以上はソコで ! ﹁分かりました⋮俺が織斑一夏に聖闘士になれる様に修行させます⋮ ? ? なら、お前が責任持って鍛えてやるべきだろ﹂ ! ラインハルトは溜め息を吐きながらも、一夏の修行は自分が責任 持って面倒を見る事を了承した。 教皇に挨拶を済ませた後、一夏はラインハルトの守護する宮である 磨羯宮に招かれ、ラインハルトに寝床を用意されて夜遅くになったか ら寝る様に催促されたので眠りに着いた。 一夏が眠りに着いた後、ラインハルトは再び教皇の間に行き、任務 の報告を行った。 スペクター ﹁教皇、任務の報告ですが⋮日本にて、かつて倒された筈のハーデス率 いる冥王軍の戦士である冥闘士の一人であるガルーダの冥闘士と戦 い撃破しましたが、撃破したガルーダは死体が残らずにまるで水面に ピスケス 写った影だったかの様に液体となり姿を消しました﹂ ﹁やっぱりか⋮この間は魚座の報告では私が現役の頃に倒された筈の パラサイトであるダガーを武器とすると聞いた当たりハティと思わ れる者と戦い、倒した後に液体になり消えたと言うからな⋮おそら く、今回の敵はハーデス同様に死者を蘇らせる力を持っているか、死 体を操る力を持った邪悪な意志かもしれないな⋮﹂ 教皇はこの地上に新たな邪悪な意志が動いている事に気が付き、日 本に不穏な何かが有る気がした教皇はラインハルトを派遣した訳だ が、相手が最早存在しない筈のハーデスが率いていた冥闘士だったと 言うのでハーデス同様の力を持った邪悪が存在すると確信するので あった。 14 サンクチュアリ 第1話 一夏、聖闘士になる セ イ ン ト 一夏が聖 域に来て早くも二年が経ち、今なお聖闘士になる為の修 行を続けていた。今、一夏は聖域の近くの裏山にてラインハルトと模 擬戦を行っていた。 ﹁ラインハルトさん、今日こそはあなたのボディに一発でも拳を当て てみせますよ﹂ コ ス モ ﹁その台詞は今のを入れて679回目だ。何度同じ台詞を聞かねばな らないのだ俺は⋮﹂ ﹁じゃあ一発だけは喰らって下さいよ﹂ ﹁いや、わざと当たったら意味が無いだろ。これは一夏、お前が小宇宙 に目覚めて相手に一撃を与える為の修行の一つなのだからな。お前 は素質は確かに有るのだ。そろそろ小宇宙に目覚めて俺に一撃を与 える位の事をしてくれないと後先が心配なんだがな⋮﹂ いいな﹂ にお前の場合は気持ちを落ち着かせる事も大切だろう。分かったな ら、休め 告げた後に自分の守護宮である磨羯宮に戻っていたので一夏も聖域 に戻ろうと山を下っていた時だった。 一夏の前から白いシャツを着た一夏と同年齢と思われる紺色の髪 の少年が登ってくるのが見えたので、その人物に一夏は声を掛けた。 ﹁おーい、わざわざこんな所に何しに来たんだ祐介﹂ 15 一夏は何とかラインハルトに拳を当てようとするが、ラインハルト は簡単に一夏の動きを読み一発一発を軽々と避けていく。ラインハ ルトが言う様にこのままだと本当に後先が心配になってきたので、尚 更一夏は必死に拳を当てようと頑張った。 しかし、一刻経っても当たる素振りは無く模擬戦は終了し、今日の ﹂ 修行は終わりだとラインハルトは告げた。 俺はまだやれます ﹁本日の修行はここまでだ。﹂ ﹁待って下さい ! ﹁いや、今日はもう休むといい。適度に身体を休める事も重要だ。特 ! ラインハルトは一夏に休んで気持ちを落ち着かせる事も大切だと ! ﹁一夏か。何、ちょっと時間が有るからな。この裏山から見る景色を キャンバスに描こうと思ってな﹂ 一夏が声を掛けた少年の名前は祐介。一夏が聖域に来て出来た友 人の一人である。祐介は腕にイーゼルとキャンバスを抱えており、祐 介本人は言う通り、絵を描きに来ただけの様だ。 ﹁聖闘士の訓練所に使われている裏山でスケッチをしようと思うなん て⋮さすがは狐座フォックスの聖闘士って事だけは有るな﹂ ﹁何を言うか。俺が先に聖闘士になったと言えど、お前も俺に負けな い程の素質が有る筈だからな。早く聖闘士になって、お前も心に少し ゴールドセイント の余裕を得られる様に頑張ればいい話だ。お前の師は俺の師である 蟹座キャンサーのカブキと同じ黄金聖闘士のラインハルト殿なのだ からな。ちゃんと言われた通りの修行をこなせさえすれば、自然に小 宇宙に目覚める筈だ﹂ ﹁俺は言われた通りに修行しても、今日までラインハルトさんとの模 擬戦で拳一発当てられずに終わっているけどな⋮﹂ ﹁そうか⋮とりあえずは少し休んで気持ちを落ち着かせてみると良い かもしれん。気持ちが落ち着いてリラックスした状態の方が力を発 揮出来るかもしれないからな﹂ ﹁ラインハルトさんも気持ちを落ち着かせる事も重要だって言ってい たし、祐介もそう言うなら少し休んで気持ちを落ち着かせてみる事に するか﹂ ﹁そうした方がいい。さてと、俺は絵を描くのに専念したいから一夏、 お前は早く聖域に戻って休むといい﹂ 祐介は一夏に聖域に戻って休む様に言った後、イーゼルを立たせ キャンバスを設置すると絵を描き始めたので一夏は祐介の邪魔にな らない様に静かに裏山を降りていき、聖域に戻り身体を休めようと就 寝所で眠りにつこうとするが⋮ ﹁は あ っ、休 も う と し て も 体 力 が 有 り 余 っ て い る か ら 寝 れ な い な ⋮ ちょっと、身体を動かすか﹂ 休もうにも気分が乗らない一夏は就寝所を出ると、聖域の近くに有 る森の中に入ると拳や蹴りを森の木に向かって放ち、ラインハルトと 16 の模擬戦に備えてのイメージトレーニングを合わせた自主トレを行 うが、小宇宙に目覚めていない自分では一本の木を倒すのにも時間が 掛かってしまうので、本当に自分に聖闘士としての素質が有るのか不 安に思えてきた。 そんな一夏の様子を森の奥から見ていた者が一夏の後ろから彼に 近寄ると一夏に声を掛けた。 ﹂ ﹁相変わらずぶきっちょな奴だな⋮お前は﹂ ﹁その声は、まさか ﹂ ﹁よう、久しぶりだな一夏﹂ ﹁やっぱりお前か、紅蓮 ﹁えっ⋮﹂ ﹁どうしたんだよ紅蓮 ﹂ 何か様子が変だぞ⋮﹂ 一輝も来ているんだよな ﹁紅蓮、お前がいるという事はお前の師である鳳凰座フェニックスの いると思い、一夏は紅蓮に尋ねた。 そんな彼がここにいるという事は彼の師である人物も聖域に来て ライバルであると同時に友でもあるのだ。 で、たまに顔合わせする程度だが一夏と紅蓮は互いに認め合っている 聖闘士の候補生であり、彼の師が聖域に行く時に一緒に来ているの んでいる訳ではなく、絶海の孤島と言える様な場所で修行をしている と思える容姿をしている。紅蓮は一夏や祐介とは違い聖域に住み込 紅蓮は少しツンツンした黒髪でルックスの良い誰が見てもイケメン 一 夏 に 声 を 掛 け た の は 紅 蓮 と い う 赤 い コ ー ト を 着 た 少 年 だ っ た。 ! ? ﹁一夏、俺の師であるフェニックス一輝は⋮ある奴との戦いで致命的 思ってしまう。紅蓮はそんな一夏の考えを理解してか話し出す。 変だと思った一夏はもしかすると一輝に何か合ったのではないかと ているのではないかと尋ねたのだが、紅蓮の反応からして何か様子が 一夏は紅蓮に彼の師であるフェニックスの聖闘士である一輝も来 ? 伝説の聖闘士である不死身と呼ばれるフェニックス一輝 17 !? なダメージを受けてしまい、聖闘士として再起不能の怪我を負ってし まった⋮﹂ ﹁何だって !? を再起不能にまで追い詰める様な奴がいたっていうのか ﹂ ﹁ああ⋮事の八反は四日前、デスクィーン島で何時も通りに一輝の指 導の下修行していたんだが⋮その日は一輝がいきなり修行を一時中 止すると俺に言った後、デスクィーン島の奥深くにまで一人で向かっ ていたんだ。それで様子が変だと思った俺はこっそりと一輝の後を 追ったんだ。一輝の姿が見えた時、既に奴と対峙していた⋮一輝は奴 と対峙し、互角の戦いを繰り広げていたんだが⋮奴は何処からか拐っ ていたまだ幼い子供を盾にして、一輝が攻撃出来ない様にしたんだ。 一輝は自分が技を放てば無関係な子供を巻き込んでしまうから下手 な攻撃は行えなくなったところを奴は躊躇なく人質にしていた子供 を引き裂き殺すと、引き裂いた子供の亡骸を自身が持っていた大砲の 様な物の中に突っ込むと、小宇宙を蓄積させた弾丸として一輝に放っ たんだ⋮﹂ ﹁子供を盾にした上に子供を殺して亡骸を弾丸として扱ったっていう のか、ソイツは⋮﹂ ﹁そして、弾丸となった子供の亡骸は強力な一撃を持っていて一輝の 片腕を吹き飛ばし、再起不能の大怪我にまで追い込んだんだ。その 勝てば正義、負け 後、奴は﹃愛を守る聖闘士はやはり幼い子供を巻き込む様な真似は出 何故なら勝った方が正義なのですから て何者なんだ ﹂ 衣と共に奴を倒してみせる ﹂ 手で倒さないと気が済まない ! ﹄と高々に言った 奴だけは絶対に俺の ! 一輝から託されたフェニックスの聖 た鎧を纏い、その上にローブを羽織った大男だ 覚えている。奴は大きな単眼のマスクを被って素顔を隠し、聖衣に似 ﹁すまないが一夏、奴の名前だけは解らない⋮だが、姿形はハッキリと 紅蓮は首を横に振る。 一夏は紅蓮が奴と呼ぶ存在が気になり、どんな人物なのか尋ねたが ? ! 18 !? それだけの簡単な理屈です。どんな事をしてでも勝てばい 来ない様ですね。戦いに綺麗事は無用なのですよ れば悪 いのです ! ! ﹁そうだったのか⋮ところで紅蓮、少し悪いけどそのお前が言う奴っ 後に姿を消したんだ⋮﹂ ! ! 紅蓮はそう発言すると、コートのポケットから赤い結晶が付いたペ ﹂ ンダントを取り出すと一夏に見せた。 クロストーン ﹁それはフェニックスの聖衣石か ﹂ ﹂ もし一輝さんを追い詰めた奴と戦う事に なった時には俺も一緒に戦ってお前を手助けするって約束するぜ 前の力になってみせる ﹁そうか。お前が一輝さんの後を継いで戦うって決めたなら、俺もお る れたからには俺はフェニックスの名に恥じない聖闘士になってみせ にこのフェニックスの聖衣石を俺に託したんだ。この聖衣石を託さ ﹁そうだ。一輝がグラード財団の経営する治療所に連れて行かれる前 ? じゃあな ﹂ は 教 皇 に 会 っ て フ ェ ニ ッ ク ス の 聖 闘 士 に な っ た 事 を 伝 え に 行 く。 せさえすれば、きっとお前も聖闘士になれる筈だ。さて、そろそろ俺 来ているのに、心の何処かで慌てている感じだから気持ちを落ち着か ﹁まあ、お前はぶきっちょだからな。小宇宙に目覚める前段階にまで かったな⋮﹂ ﹁ははっ⋮確かにまだ小宇宙にも目覚めてない俺が言える台詞じゃな も自分の聖衣を持ってから言おうな﹂ ﹁そうか、お前が協力してくれるのなら有り難いな。でも、それはお前 ! ! ある人物が彼に近付くと彼に向けて発言した。 自分の今やっている自主トレじゃ力不足に思えた一夏を見かけた んて到底なれる筈も無い⋮﹂ ﹁ダメだ⋮一本の木を倒すのにこんなに時間が掛かる様じゃ聖闘士な 情をしていた。 いき、何度も繰り出している内に一本の木が倒れるが一夏は険しい表 一夏は再び自主トレを再開し、木に向かって拳や蹴りを繰り出して か﹂ だかがさっぱり解らないんだよな⋮とりあえず、自主トレを再開する ﹁気分を落ち着かせるって言ってもな⋮どうすれば気分が落ち着くん を継いでフェニックスの聖闘士になった事を伝えに向かった。 紅蓮は一夏に気分を落ち着かせる様に告げた後に教皇に一輝の後 ! 19 ! ﹁確かにね。それじゃ只の環境破壊だし、木一本を倒すのに時間が掛 かる様じゃ聖闘士への道は遠いかな。それにそんな荒い動きじゃ、体 術の訓練にもならないと思うかな﹂ そう一夏に少々厳しい言葉を送ったのは、少し青みが掛かった長い 黒髪を持つ一夏と同年齢の少女だった。その少女の発言を聞いた一 夏は少し苦笑いをしながらも彼女と話し出した。 ﹁相変わらず厳しいな⋮お前はさ⋮﹂ ﹁まあね。実際、私はあなたが聖域に来る前から聖闘士になっていた し、同じ歳と言っても私の方が聖闘士としては先輩になるからアドバ イスをしてあげてるんだよ。それにしても本当に変なところで不器 ﹂ 用だよね、一夏は。聖闘士としての素質は確かに有るのに未だに小宇 宙が目覚める事が無いなんて⋮﹂ ﹁うるさいな。嫌味を言いに来ただけなら帰ってくれないか まあ、君 ﹁そんなつもりは無かったんだけど⋮ええと、とりあえずは聖闘士で ある私が小宇宙に目覚めるコツを教えてあげてもいいかな る ね が頭を地べたにつけて必死に頼むなら考えてあげても構わないかな﹂ ﹁ゼッテェお前だけには頼まねえからな⋮龍座ドラゴンの龍音、お前 ﹂ が例え伝説の聖闘士である紫龍さんの息子である龍峰さんの娘であ ろうとな 伝説の聖闘士である紫龍の孫だ。かつては女性の聖闘士は仮面を付 けて素顔を隠す掟が有ったが、今では現在の教皇がそんな古臭い上に 性別で差別する様な掟など消してもいい筈だという事で教皇の圧力 でもみ消したらしい。 彼女が一夏に嫌味っぽく話すので一夏は不 快に思い、彼女に教えられるのはごめんだと告げるが、龍音は自分が 一夏の発言の一部が気に入らないらしく機嫌が悪くなった様だ。 もう ! 別に言わねえから大丈夫だ ﹂ ! ﹂ 後で﹃やっぱりコツを教えてくれません 一夏の様な朴念仁に教えてあげる事なんて何も無いもん ﹁別に私は父様とお祖父様の名前を利用するつもりは無いから いいもん じゃあ、私は行くからね ! 20 ! ? 今、一夏の目の前にいる少女の名前は龍音。龍座の聖闘士であり、 ! ! か﹄って言われても絶対に教えてあげないからね ﹁ああ ! ! ! ﹁えっ 大丈夫 あ、あれ ﹂ ここは普通は必死に頼むところじゃない 本当に ? ﹂ 結局は俺がやって損してるだけじゃねえか ﹂ さすがに頭を地べたにつけているのを見ると私退いちゃうし⋮﹂ ﹁おい ! ソコは女子力が高いって言ってよ 私は女の子なんだか さすがは龍座の聖闘士だけあるな龍音。よっ、男前 ﹁ごめんなさい⋮本当に簡単なコツを教えてあげるからさ﹂ ﹁本当か龍音 ﹂ ﹁ちょっと らね ﹂ 言ったつもりなんだけどな⋮とりあえず、頭を上げてくれないかな。 ﹁ええっ ほ、本当に地べたに頭をつけて頼むなんて⋮それは冗談で ﹁仕方無いか⋮龍音、俺に小宇宙に目覚めるコツを教えてくれないか 頼み込んだ。 宙に目覚めるコツを教えてもらう事にした様で頭を地べたにつけて そんな一夏だが、さすがに今回はしびれを切らしたので彼女に小宇 に来る奴としか思っていないので、彼女の本意を見抜けずにいた。 がそれに気付かないので一夏は龍音が自分の事をわざわざからかい めたくなるというモノであり、龍音は一夏に好意を懐いているが一夏 らないだけだが龍音が一夏にキツイ態度を出すのも好きな子はいじ くないのかはっきりしないので困惑しているが、一夏が鈍いだけで知 一夏は龍音が自分に小宇宙に目覚めるコツを教えたいのか教えた ﹁お前、俺に教えたいのか教えたくないのかどっちなんだよ⋮﹂ ? ⋮﹂ 一夏の手助けをしたくて来たのについ、からかいたくなっちゃてさ ﹁それはそうだけど⋮ええと、確かに私の方が悪かったかな。本当は ﹁まあ、先に失礼な事を言ったのはお前なんだけどな﹂ ﹁本当だよ。失礼にも程が有るんじゃない﹂ ﹁わりぃ、すまねえな⋮女の子に向かって男前は無かったよな⋮﹂ 言ってしまった事に気付いたので彼女に謝罪する事にした。 は彼女に誉め言葉を言ったつもりだが彼女を不快に思わせる言葉を 龍音が一夏に小宇宙に目覚めるコツを教えてくれる様なので、一夏 ! ! !? ! ! ! 21 ? !? !? ? ﹁何か今になって急に冷静になれたんだけどよ、俺とお前って結構下 らない理由で口喧嘩してたよな⋮﹂ ﹁そうだね⋮教えてあげたいなら素直に教えてあげればよかったのに ね⋮﹂ ﹁まあ、俺も売り言葉に買い言葉を返してしまったから人の事を言え ないけどさ⋮本当に俺とお前は会う度にこんな感じになっちゃうよ な﹂ ﹁そうだね。よく思い返せば、一夏が聖域に来たばかりの時から私と ﹄って怒られたよね﹂ あなたはすれ違う度に口喧嘩ばかりしては父様に﹃喧嘩するなら聖域 から出てからにしてくれないか ﹄って言われて、俺と ﹁その後、お前と口喧嘩した件を聞いたラインハルトさんからは﹃口喧 嘩する元気が有るなら聖域中の床磨きをしろ お前はやらされたよな⋮﹂ ら俺はここまで焦っていたのか﹂ えられる様にも早く聖闘士になりたいと思ったんだ⋮そうか だか 思っての事だって解っているから、俺はラインハルトさんの期待に答 ﹁本 当 に ラ イ ン ハ ル ト さ ん が 一 番 厳 し い よ な ⋮ で も、そ れ は 俺 達 を 問題が書かれた用紙を持ってきては勉強を強いられたしね⋮﹂ の様に凄い形相で説教された後に聖域中の床磨きをされたり、難しい 厳しいけど、ラインハルトが一番厳しいよね⋮まるで鬼神が宿ったか ﹁本当にそれが一番大きなペナルティだったよね⋮父様は厳しいには ! ﹁えっ 何の事なのか解らないけど、力になれたのなら良かったかな﹂ さてと、今日はもう休む事にするか ちょっと、私に小宇宙に目覚めるコツを教えてもらうつもり って事で俺は失礼するぜ﹂ ﹁ああ。本当にお前のお陰だよ ﹁えっ 気がする﹂ ﹁龍音、ありがとな。お陰で今の俺に足りないモノが何なのか解った 龍音に向かって発言する。 何故、聖闘士に早くならないとと思い焦っていた理由に辿り着くと、 ばかりしては怒られていたなという話をしていく内に一夏は自分が 一夏は龍音との口喧嘩を終えると、互いにこうして会う度に口喧嘩 ! 22 ! ! ? !? ! じゃなかったの ﹂ ﹂ ﹁私が可愛い ﹃今気付いた﹄って部分が少し気になるけど、可愛いっ たんだけど⋮龍音って結構可愛い顔してたんだな﹂ ﹁それについては本当に悪く思っているよ。それにしても、今気付い ﹁そんな事言われたって⋮私はとっくに教える気満々でいたのに⋮﹂ 場合って事で わ。悪いけど、それは明日以降に小宇宙に目覚める事が出来なかった ﹁すまねえな。さっきまではその気だったんだけど、事情が変わった !? て言われて悪い気はしないかな﹂ 一夏は純粋に思った事を口に出したのだが、龍音は一夏が自分の事 を好いているのではないかと考えてしまうが、龍音が我に帰った時に は既に一夏は聖域の就寝所の中に移動して眠りに着いていた訳だが、 それは全く別の話。 次の日、一夏はリラックスした状態でラインハルトとの模擬戦に備 えて準備運動をしていた。今日こそはラインハルトに一撃を与える 事が出来る筈だと確信した一夏は準備運動を終えると、ラインハルト と模擬戦を行う為に何時も通りに裏山に移動をしようとした一夏を 見かねた茶髪のロングヘアーをした女顔の少年が彼に声を掛けてき た。 ﹁イッチー、今日もラインハルト様との模擬戦に向かうみたいだけど、 今日は何時もと違ってリラックスした様子だね﹂ ﹁まあな。今日はラインハルトさんにきっと拳を一発当てる事が出来 るって確信してるんだ。それよりも⋮その﹃イッチー﹄って呼び方は 止めてくれないか⋮仔馬座エクレウスのフィリス。俺とお前は同じ 歳で男同士だし、さすがにその呼び方は色々と誤解を招きそうだから 止めてくれない⋮﹂ ﹁まあまあ、そう言わないでさ。僕は友達を親しみ込めて呼びたいだ けなんだから﹂ ﹁解ったよ⋮お前がそう思っているなら無理に呼び方を変えるのも悪 23 ! !? いから、俺が我慢すればいいや⋮﹂ ブロンズセイント シルバーセイント 一 夏 声 を 掛 け た の は 仔 馬 座 エ ク レ ウ ス の 聖 闘 士 で あ る フ ィ リ ス。 一応、こう見えても青銅聖闘士でありながら白銀聖闘士と互角に渡り 合える程の実力を持つ侮れない男だ。 ﹁今日のイッチーは何時もとは違って、リラックスした状態だから⋮ もしかすると、小宇宙に目覚める事が出来るかもしれないね。心の中 で焦っている状態と比べればリラックスした状態の方が小宇宙に目 覚める可能性が高いからね﹂ ﹂ ﹁フィリスがそう言うなら、絶対に今日で小宇宙を目覚めさせてライ ンハルトさんに一発当ててみせるぜ ﹁その調子でいなよ、イッチー。イッチーは何時もどこか焦ってた感 じに思えていたんだけど、今日のイッチーからはそんな感じはしない し、きっと大丈夫だよ﹂ 一夏はフィリスの言葉を聞き、尚更確信を得た一夏は裏山に向かっ て 走 っ て い た。フ ィ リ ス は そ ん な 一 夏 の 姿 が 見 え な く な る ま で 見 送った。 裏山の頂上に着くと、何時もの様にラインハルトが待ち構えてい た。 ﹁一夏よ、今日は昨日までと違い落ち着いてリラックスした状態でい 俺はラインハルトさんや他の聖域の人からの期待に答えよう るな。ふっ、どうやら昨日の内に何かを掴んだみたいだな﹂ ﹁はい は俺が聖闘士になろうと決めた時の思いが薄まっていたのも有った からだと思ったんです。俺が聖闘士になろうと思ったきっかけは⋮ 守られるばかりだった俺が今度は千冬姉を守れる様になりたい、千冬 姉だけではなくて理不尽な理由で傷付く様な人達を一人でも多く守 りたいという思いが有って聖闘士になろうと決めたのに⋮俺はそれ を聖域で修行している内にいつの間にか忘れていたんです。ですが、 昨日の模擬戦の後に俺は友と出会い話をし、その中の一人と口喧嘩も しましたけど⋮その何気無い一時で俺は思い出せたんです。聖闘士 24 ! と一刻も早く聖闘士になろうと心の何処かで焦っていました。それ ! になろうと思ったきっかけを ﹂ 一夏は自分が見失い欠けていたモノを見付け出し、その答えにたど り着いた事をラインハルトに語った。ラインハルトはそんな一夏の 目を見て、まるで懐かしく感じたのか、思わず笑みを浮かべた。 ﹁ふっ、お前のそんな目を見たのは初めて会った時以来だな。どうや ﹂ ら今日のお前は昨日までとは違って少しは期待出来そうだな﹂ いくぞ一夏 ! ﹂ ﹁はい、今日はその期待に今度こそ答えられる様にします ﹁その言葉が本当か確かめさせてもらうぞ ! ︵ラインハルトさんの動きは捉える事が出来た。だけど、ラインハル からこそ、一夏はここで小宇宙を目覚めさせようとしていた。 覚め、ラインハルトの動きと同等の速さで攻撃を放つ必要が有る。だ を捉えても意味は無い。ラインハルトに拳を当てるには小宇宙に目 動きは捉える事が出来たが、自分の攻撃を当てられない様では動き は聖闘士になれないという意味も兼ねているのだと一夏は考えた。 と鈍る瞬間を作っているんだろうが、その動きを見極められない様で きが鈍る瞬間が有るのを感じ取った。おそらくラインハルトがわざ 一夏はラインハルトの動きを心の目で観察すると、一瞬だが彼の動 て心の目で⋮︶ ︵落ち着いてラインハルトさんの動きをよく見るんだ。肉眼ではなく た。 ラックスした状態で慎重にラインハルトの動きを捉える事に専念し 出来ずに闇雲に攻撃するばかりだったが、今日の一夏は落ち着いてリ 等で一夏を試す様に動き回る。これまで一夏はこのスピードに反応 で木の上に移動し、違う木の上へと飛び越えたり、地面に着地したり ラインハルトは一夏を翻弄するかの様に常人では見切れない速さ ピードで動くラインハルトに拳を当てる事が可能だ。 動いている。もし、一夏が小宇宙に目覚めさえすればマッハ1のス 為、ラインハルトは青銅聖闘士の基準値のスピードであるマッハ1で 夏が小宇宙に目覚めて上手く扱えるかどうかを確かめるモノである ラインハルトが合図を出すと模擬戦を開始する。この模擬戦は一 ! トさんに拳一発を当てるには俺が小宇宙に目覚める必要が有る。小 25 ! 俺は千冬姉を守れる様になりたい 宇宙は身体の奥に眠る宇宙的エネルギー⋮それを目覚めさせ、扱うに は俺自身の心に語り掛けるんだ も俺は聖闘士になるんだ ︶ その為にも今こそ目覚めろ、俺の小宇宙よ 千冬姉だけじゃない、この世界で理不尽に傷付く人達が出ない為に ! 一夏が自身に思いを語り、自分の中の大きな何かにその思いが届い ﹂ たのか、一夏は自分の身体の奥から大きな力が溢れてくるのを感じ た。 ﹁俺の中から溢れてくるこの力⋮これが小宇宙なのか そ見せろ。お前の小宇宙を使った一撃を ﹂ ﹁その通りだ一夏。お前は今、遂に小宇宙に目覚めたのだ。さあ、今こ ? ︵何だ 俺に語り掛けるこの声は⋮いや、声じゃない。まるで何か映 夏は自分の心に何かが語り掛けてきた。 インハルトに向けて小宇宙を込めた一撃を放とうと構えを取ると、一 宇宙を使った一撃を自分に放つ様に告げる。それを聞いた一夏はラ ラインハルトは一夏が小宇宙に目覚めた事を感じ取ると一夏に小 ! ︶ ! 技と同じ構えだったからだ。 ? 構えを知ってるのだ ﹂ う瞬間を見れる機会は無かった筈⋮偶然とは到底思えん。何故、その の聖闘士がかつて使っていた技を放つ時と同じ構えだ。その技を使 ﹁一夏、その構えは⋮その構えを何処で見た その構えは今の射手座 有った。それは間違いなく今の射手座の聖闘士がかつて使っていた その構えを見たラインハルトは一夏が放とうとする技に心当たりが え を 取 る。そ の 動 き は 天 馬 座 の 星 の 並 び を 連 想 さ せ る 動 き だ っ た。 一夏は今の映像で見えた技を放つ為に、映像で見えた動きと同じ構 まあ、とにかくやってみるか 使った一撃を放てって言ったし、これも一応は一撃って事でいいのか 上手く出来るかどうか自信は無いけど、ラインハルトさんが小宇宙を ないけど、何となく俺に今の映像で見た技を使えって言ってるのか⋮ 像みたいに俺の頭に誰かの記憶が流れ込んでくる⋮誰の記憶か解ら ? ﹁今、俺の頭の中に映像が流れ込んできたんです。その映像で見えた !? 26 ! ! !! ? 技を今から放とうと思っての構えです﹂ ﹁頭の中に映像が流れ込んできただと⋮まさか、一夏の守護星座は⋮ ﹂ だとすれば納得だな。面白い、そのお前が見たという映像の技を俺に ﹂ 遠慮せずに放たせてもらいます 向けて放ってみせろ ﹁はい ﹂ るで流星の様に多数の拳がラインハルトに向けて放たれた。 ﹁ペガサス流星拳 ﹁やはりか⋮だが、俺は流星拳を全部受けてやる程甘くは無いぞ ﹂ ラインハルトに向けて一夏は映像で見えた技を放つ。その技はま ! ! ﹂ 次の日、一夏が目覚めると磨羯宮に聖域のトップである教皇が来て で眠りについたのだった。 に磨羯宮で休む様に言われた以上は仕方無いので、磨羯宮に有る寝床 入って直ぐ有る就寝所の方が良かったと思ったのだが、ラインハルト で休息をする事にした。正直、遠い磨羯宮に行って休むなら聖域に われた通りに今日は休む事にして、初めて聖域に来た時以来に磨羯宮 ので聖闘士になる資格を得る事が出来た。一夏はラインハルトに言 一夏は小宇宙に目覚め、ラインハルトに拳一発を当てる事が出来た ﹁はい。そうさせてもらいます﹂ る磨羯宮で休んでもらおうか﹂ もう休むといい。今日は初めて聖域に来た時の様に俺の守護宮であ 式に聖闘士の一人として迎える様に教皇に申請してこよう。今日は 一発をようやく当てる事が出来たのだ。本日をもって一夏、お前を正 ﹁ああ、見事だ。確かにお前はかすり傷程度とは言え見事だ。俺に拳 たよね ですけど、頬に僅かにかすった程度と言えど俺の拳一発は当たりまし ﹁さすがに全て受ける程、甘くは無いというのは分かっていましたよ。 剣で切り落とすかの様に防いでみせたが⋮ 無い。ラインハルトは両腕両足を使い、一夏の流星拳をまるで銃弾を 一夏が放つペガサス流星拳を全て受ける程、ラインハルトは甘くは ! !! いたので驚いた一夏は慌てた様子で教皇に挨拶をした。 27 ! ? ﹁おはようございます教皇⋮まさか、磨羯宮に来るとは思いもしませ んでした⋮﹂ さすがに寝過 そう言えば、ラインハルトさんの姿が見えない ﹁おはようと言うには既に遅いな。もう昼間だぞ一夏 ぎだ﹂ ﹁すみません⋮あれ ﹂ すと一夏に手渡した。 ﹁そうだ。それがお前の守護星座である天馬座ペガサスの聖衣石だ ﹁教皇、これって聖衣石ですか ﹂ 皇は自分のローブの中から透明な水晶が付いたペンダントを取り出 訳ないと思う中で、教皇は一夏への用件を済ませる事にしたのか、教 一夏は本当に朝早くから自分が起きるのを待っていた教皇に申し う。一夏よ、お前にこれを渡す﹂ ﹁まあ、構わん。お前が起きた事だし、さっさと用件を済ませるとしよ ﹁わざわざすみませんでした⋮﹂ だから仕方無いと割り切る事にした﹂ く小宇宙に目覚めたのだと聞いたからな。小宇宙に目覚めたばかり 見送った後に待っていたら、まさか昼間になるとはな⋮昨日はようや ﹁全くもってその通りだ。お前が起きるのをわざわざラインハルトを か俺に何か用事でも ﹁そうなんですか。ところで教皇は一体何をしにこの磨羯宮に⋮まさ 発したからな。少なくとも一週間は戻ってこないな﹂ ﹁ラインハルトなら、昨日私が命じた任務を遂行する為に朝早くに出 んですけど⋮﹂ ! ﹂ ! のか⋮﹂ ﹁昨日の俺の頭の中で流れた映像はこのペガサスの聖衣の仕業だった かったのかもしれん﹂ 映像として見せた辺り、お前はペガサスの聖闘士としての素質が高 ﹁そうか。そのペガサスの聖衣は昨日お前の頭に前の所有者の記憶を ﹁勿論です。絶対に無くす様なへまはしません﹂ だからな。くれぐれも無くしたりするのではないぞ 聖闘士に成り立ての新米が運びやすい様にわざわざ聖衣石にしたの ! ? 28 ? ? ﹁それほどお前にペガサスの聖衣も期待してるという事だろうな。せ いぜいペガサスの聖衣に愛想を尽かされない程度には頑張るのだな﹂ そう言って教皇は磨羯宮から出ていき、教皇の間に戻っていた。 一夏は自分に渡された聖衣石を見て、改めて決心した。 ﹂ 千冬姉や仲間達に、そして理不尽に傷付けられ ペガサスの聖闘士として ! ﹁俺は守ってみせる る人達を⋮俺は絶対に守り抜く ! こ う し て 本 格 的 に 始 ま っ た の だ。一 夏 の 聖 闘 士 と し て の 戦 い の 日々が⋮新たなペガサスの聖闘士の物語が今動き出す 29 ! ! セ イ ン ト 第2話 初任務、師の意志を継げ一夏よ 一 夏 が ペ ガ サ ス の 聖闘士 に な っ て 早 く も 一 ヶ 月 の 月 日 が 流 れ た。 この一ヶ月の間、一夏は聖闘士になったからと言っても修行を疎かに はせずに続けており、小宇宙の扱いにも慣れてきた頃なのだが⋮一夏 が聖闘士になった日に任務に向かったラインハルトが一ヶ月経って も聖域に戻ってこないので、一夏はラインハルトの安否が気になって いた。そんな一夏の元に伝達係の者から教皇が教皇の間に来る様に と伝えられたので、一夏は急いで教皇の間に向かった。 教皇の間に着くと、教皇の間には当たり前だが教皇が玉座に座って おり、その前に祐介と龍音にフィリスの三人がいるので一夏は三人の 横に着くと、教皇が一夏達四人に向けて発言した。 ﹁お 前 達 四 人 を 急 に 召 集 し た の は お 前 達 四 人 に 頼 み が 有 る か ら だ。 一ヶ月前、ちょうど一夏がペガサスの聖闘士になった日に私が命じた シルバーセイント 任務を受けたラインハルトなのだが⋮アイツにしては帰りが遅いと 思った私が先週に白銀聖闘士で構成した捜索班を派遣してラインハ ﹂ ルトの捜索をした結果、残念な事が判明した⋮﹂ ﹁ラインハルトさんがどうしたんですか がエーゲ海の沖合いに浮かぶ人影を見つけ出し、その人影の正体はラ インハルトの遺体だった⋮そう、何者かとの戦闘で倒れラインハルト は戦死したのだ⋮﹂ 今は教皇から話を聞くのが先決だ﹂ ﹁嘘だ⋮ラインハルトさんは簡単に倒されて死ぬ様な人じゃない⋮﹂ ﹁落ち着け一夏 げられ、彼の強さを弟子である自分だからこそ一番知ってるのでとて も信じられない話だった為に取り乱したので、そんな一夏を祐介が宥 めた。今は教皇の話を聞くのが先決だと祐介に言われたので、一夏は 大人しく教皇の話を聞く事にした。 ﹁ラインハルトが戦死したとは信じられないの私も同じだ⋮だが、捜 索班が彼の遺体を連れて戻っていた為、その遺体を確認した結果、確 30 ! ﹁一夏、彼の弟子であるお前には一番辛い報告かもしれんな⋮捜索班 !? 一夏は教皇から捜索班の報告からラインハルトが戦死した事を告 ! ゴールドセイント かにラインハルトだった⋮ラインハルトの遺体には黒く焦げていた 箇所も有った⋮おそらく、ラインハルトが戦った相手は黄金聖闘士と 互角かそれ以上の実力を持った雷か炎を操る強敵だったと思われる﹂ ﹂ ﹁雷か炎を操る奴がラインハルトさんを殺したのか⋮ソイツを見付け たら、俺が絶対に倒してやる 怒りで我を忘れるな なのだからな ﹂ ろで勝てる相手である筈が無い 怒りをちゃんと力にして戦えるのな 何せ、ラインハルトを倒す程の強敵 ら構わないが、実戦経験の無いお前が怒りに満ちた状態で戦ったとこ ﹁バカ者 ! ! ! ﹂ !! なる。 ﹁バカなの 相手の実力を考えずに敵討ちという名目で怒りで自分を が強力な平手打ちを与えると怒りに満ちていた一夏の頭は真っ白に て敵討ちをする事しか考えられなくなった様で、そんな彼の頬に龍音 怒りが混み上がってきた一夏はラインハルトを殺した相手を倒し をしなきゃ、誰がラインハルトさんの敵を討つと言うんですか ﹁だけど、俺はラインハルトさんの敵を⋮弟子である俺が師の敵討ち ! るって思っているの 冷静になって考えてみてよ 怒りに満ちた状 ! るの そうじゃないでしょ ラインハルトがあなたに教えてきたの 態で戦って、仮に敵討ちが成功したところでラインハルトが浮かばれ ? ! く事じゃなかったの ﹂ 一夏は龍音の言葉を聞き、ラインハルトの教えを思い出した。ライ いを踏みにじるところだった⋮﹂ されたんだ⋮なのに、俺は怒りで我を忘れて、ラインハルトさんの思 自分はそういう信念で動いているんだとラインハルトさんから聞か れても、残った者達がその思いを受け継いでくれさえすればいいと⋮ 私利私欲には使わず、他の人を守るためだけに使い、自分が傷付き倒 わったんだ。ラインハルトさんは聖闘士としての力を決して自分の としての心構えだけじゃなくて⋮ラインハルトさんが抱く理想も教 ﹁そうだったな⋮ラインハルトさんが俺に教えてくれたのは、聖闘士 ! 31 ! コントロール出来ない状態で戦って一夏、あなたは自分が生きて帰れ ? は怒りで我を忘れて戦う様な事じゃなくて、誰かの為に戦って守り抜 ? ンハルトは自分の力を私利私欲の為には使わず、他人を守る為に使う 信念を。例え、その信念を貫いた結果、自分が傷付き倒れる事になっ ても残った誰かが継いでいきさえすればいいと聞かされた。そんな ラインハルトの信念を自分は怒りで忘れるところだった。 それを思い出させてくれたのは龍音だった。彼女が自分に大切な 事を思い出させてくれたのはこれで二度目だ。だからこそ、一夏は彼 女に感謝の言葉を送った。 ﹁ありがとな龍音。俺はラインハルトさんから教わった信念を忘れる と こ ろ だ っ た。お 前 が ビ ン タ し て く れ た お 陰 で 怒 り に 満 ち た 頭 が 真っ白になって冷静になれた。本当に面倒ばかり掛けてすまねえな﹂ ﹁そんな事無いよ。私は怒りで我を忘れた一夏が放っておけなかった だけだから、別にあなたを落ち着かせる為にやった訳じゃないんだか らね﹂ ﹁相変わらず素直じゃない奴だな⋮でも、一つ文句言わせてくれ。冗 ごめんなさい⋮思わず力加減を考えずに手を 32 談抜きで俺の奥歯が二本折れたぞ⋮﹂ ﹁そんなに強かったの 祐介は鈍感過ぎる一夏と素直になりきれない龍音に呆れ果て、フィリ 教皇は自分の前で独特な空気にした二人に呆れ半分で少し困惑し、 は見ていて飽きないよ﹂ ていい距離なんだろうけどね⋮本当にイッチーとルーちゃんの二人 ﹁イッチーとルーちゃんも相変わらずだな⋮まあ、それが二人にとっ い龍音も龍音だ⋮さっさと、告白すればいいものを⋮﹂ ﹁全く、この二人は⋮気付かない一夏も一夏だが、素直に思いを言えな やって話を戻せばいいんだ⋮﹂ ﹁教皇である私の前でどうして⋮こんな空気に出来るモノだな⋮どう た事を口に出す。 いた教皇と祐介にフィリスの三人はこの空気に対してそれぞれ思っ たので龍音は素直に謝罪した。そんな一夏と龍音のやり取りを見て 放った平手打ちが思った以上に強かった様で一夏の奥歯が二本折れ 一夏は自分を冷静にしてくれた龍音には感謝こそしてるが、龍音が 出しちゃったみたい⋮﹂ !? スは敢えてそういう距離感なのだと認識しており、そんな二人を見て 楽しんでいる様子だ。 一夏と龍音が三人の視線に気付くと、二人は教皇の話が終わってな いのに話を遮ってしまったのを謝罪した。 ﹁すみません、教皇⋮俺が怒りで我を忘れるばかりに⋮﹂ ﹁話を遮ってしまって申し訳なく思います⋮本当にごめんなさい⋮﹂ ﹁全くだ。私が話をしているのに、一夏は怒りに捕らわれるわ、龍音は そんな一夏を平手打ちで引き留めるわで話が大分拗れたな。そもそ もラインハルトをやった相手が誰かすら解らない状態でよく怒り任 せに突っ走ろうと思うところが一番理解しづらいな﹂ 一夏は教皇から敵討ちする相手すら知らない状態で突っ走ろうと 思えたのが理解しづらいと言われ、本当に怒りで冷静な判断が出来な くなっていた事を恥ずかしく思った。 ﹁さて、話を戻すとしよう。ラインハルトが何者かの手で戦死してし まったのは残念だが、ラインハルトは死亡する前に任務自体は終えて いた。私がラインハルトに命じていた任務はアテナの祈りが込めら れた宝珠である〝アテナの瞳〟の捜索だ。ラインハルトはアテナの 瞳を見事に見つけ出し、このアテナの瞳を死んでも離さずに手に握り しめていた﹂ 教皇は手に握っていたアテナの瞳と呼ばれる宝珠を四人に見せた。 アテナの瞳は透き通った水色の綺麗な宝珠であり、その宝珠からは不 思議な力を感じる。 ﹁アテナの瞳を捜索させたのはちゃんとした理由が有る。今の聖域に はアテナの化身だった城戸沙織は既にいない。新たなアテナの化身 が誕生するのは少なくとも二百年後の筈だからな⋮それ故に今の聖 域はアテナの化身である城戸早織がいなくなる前に加護を受けた聖 域の中でしかアテナの力を借りる事は出来ないと言っても過言では ない状況だ﹂ ﹁確かに今の聖域は何とかアテナがいなくなる前に受けた加護だけで 凌いでいるに近い状況なのは薄々と解りきっていたが⋮教皇が言う となると、下手すれば一大事な事になりえると考えていると見て、い 33 いのでしょうか ﹂ ﹁確かに祐介、お前の言う通りだ。聖闘士の勝利にはアテナの加護も 有ってこそだ。聖域の中とその近くでは残ったアテナの加護によっ て、聖闘士の能力は高まるが⋮それはアテナの加護が届かない領域で 戦うとなると⋮下手すれば、全滅する可能性も考えなければならな い。だからこそ、敵に先手を打たれる前に先手を打つ事にしたのだ。 ラインハルトが命を掛けて守ったアテナの瞳を使えば、聖域に残った ﹂ アテナの加護が届く範囲を数十年程度だが地上全体に届かせられる かもしれない﹂ ﹁それは本当なのですか、教皇 受けてくれないか ﹂ 達四人はこの重大な役目を担う覚悟が有るというのなら、この任務を 否定は出来ない。その為、何者かの妨害も有るかもしれないが⋮お前 しかすると、ラインハルトを殺った者はこの作戦を知ってる可能性も な事なのだ。そんな重大な役目をお前達四人に任せるとしよう。も が⋮これは聖闘士が出来る限り力を発揮出来る様にする為にも必要 上全体に及ぶまでに拡大する。しかし、加護の力が弱まるかもしれぬ の火口にアテナの瞳を放り込む事で聖域に残ったアテナの加護が地 の火口は聖闘士が傷を癒す為に使う神聖なる場でも有るからな。そ き、火口にアテナの瞳を放り込んできてもらいたい。カノン島の火山 ﹁お 前 達 四 人 に は こ の ア テ ナ の 瞳 を カ ノ ン 島 の 火 山 に ま で 運 ん で い 話を続ける。 する策が有るらしく、それを聞いた龍音が少し驚いた様だが、教皇は の聖域に残っているアテナの加護を地上全体にまで効果が及ぶ様に 教皇が聖闘士の勝利にはアテナの加護も有ってこそだと言うと、今 !? ﹂ ! ﹁私も引き受けるよ。ラインハルトが命を掛けてまで守ったアテナの その任務引き受けよう ﹁俺はとっくに任務を受ける気でいました。このフォックスの祐介、 四人は迷い無く任務を受ける事にした。 囲を拡大出来るかもしれない重要な任務を受けてくれる様に頼むと 教皇が一夏と祐介に龍音、フィリスの四人にアテナの加護が届く範 ? 34 ? ﹂ 瞳だもん。絶対に残された私達が彼の代わりに引き受けなきゃ、ライ ンハルトが浮かばれないよ 俺は狐座フォックスの祐介だ 僕も引き受ける事にするよ﹂ ﹁誰がお稲荷だ ﹂ ﹁しかも今、何気に自分が一番強い発言してたよね ﹂ ﹂ ﹁本当の事じゃない。それでイッチー、君はどうするの かないの 行 ? ! 龍音に言いたい事は言われたけど 行くの の時の為にこの中で一番強いであろう僕がいないと困るだろうから、 ﹁お稲荷とルーちゃんが受けるって言うんだし、僕も行くよ。もしも ! ﹁勿論、行くに決まってるんだろ ? ? !? なら、そのチャンスを無駄にしない為にも俺はこの任務を受け ﹂ ? 例え、その任務が ! ﹂ ! ﹂ 技を放ったのか掛け声が聞こえた。 ﹂ ﹁ネイチャー・ユーニティ ﹁誰の声だ ! ! 早くジャンプして ! 素早くジャンプすると、一夏が立っていた場所から巨大な植物の根の 立ち止まった一夏に龍音がジャンプする様に指示したので、一夏は ﹁止まらないで一夏 ﹂ ン島の火山に向かい、もうすぐで火口に着くと思われた時に何者かが 一夏達がカノン島に着くと念のために聖衣を纏い、真っ直ぐにカノ 向かったのだった。 様に告げた後、一夏達四人は聖域に有るモーターボートでカノン島に 教皇が一夏達四人に無事に任務を終えて結果報告しに戻ってくる らぬ様に気を付けて行くのだ 戻ってくれさえすればいいのだ⋮絶対にラインハルトの二の舞にな 失敗しようともお前達四人が無事に戻って、任務の結果を報告しに て戻ってほしいが⋮くれぐれも無茶だけはするな な。ならば、お前達四人にこのアテナの瞳を託そう。出来れば成功し ﹁ど う や ら 全 員 が こ の 任 務 を 引 き 受 け る っ て 事 で 構 わ な い み た い だ る だろ よ、ラインハルトさんが命を掛けて作ってくれた最大のチャンスなん ! ? ? 35 ! 様な物が突き出てきたので一夏は助言してくれた龍音に感謝した。 ﹁ありがとな龍音、お陰で助かった﹂ ﹁礼には及ばないかな﹂ ﹁植物を操る技か⋮まるで魚座の黄金聖闘士みたいだな⋮﹂ ﹁お稲荷、魚座の黄金聖闘士が使うのは薔薇だけだよ。今の様な趣味 ﹂ それよりも龍音、お前はこの技を知ってるみたいだ の悪い技は魚座の聖闘士が好かないと思うよ﹂ ﹁誰がお稲荷だ が⋮どういう訳だ ﹂ 隠れてな ? ﹂ この私の技を話を聞いただけで避ける様に指示を出せるとは ! 聖闘士じゃないよな ? ロテクターを纏っていた。 ﹁誰だお前は ﹂ は臼桃色の髪をしており、水晶髑髏をイメージした様な聖衣に似たプ 龍音に言われて今の技を放った張本人である男が姿を見せた。男 ⋮流石はあの紫龍の孫だけあるな ﹁ほう いで出てきなさい てる奴はとっくにいない筈なんだけど⋮どういう事かな ていたから一夏が回避出来る様に助言出来た訳だけど⋮今の技を放 ﹁今の技は私がお祖父様から聞いて知っていたから、どんな技か知っ ? ! ﹁神闘士だと ﹂ ﹂ 確か極寒の地アズガルドを守護する神であるオーディ ンに仕える闘士の筈だ⋮そんな奴が何故、俺達をいきなり襲う ﹂ 何故、死んだ筈のお前が 生きて私達の前にいるのか聞かせてくれないかな ! れる神がいたのだ 私はその神に忠誠を誓い、新たな肉体を得て新た れ死んだ⋮だが、そんな私に自分に忠誠を誓えば新たな命を与えてく ﹁ククク⋮紫龍の孫娘よ、お前の言う通りだ。私は紫龍との戦いに敗 ? 祖父様との戦いに敗れて死んだ筈だからね ﹁ええ、 ﹃だった﹄筈だよね。だって、アルベリッヒ。お前はかつてお に仕える闘士の事だ。私はその神闘士の一人だった⋮﹂ ﹁狐座の聖闘士よ、お前の言う通り神闘士はアズガルドでオーディン ? ベリッヒだ 知らぬのなら教えてやろう。私はデルタ星メグレスの神 闘 士 アル ゴッドウォーリアー ﹁ふん。先程と言い、この時代のペガサスも単細胞の阿呆の様だな。 ? ! !? ! 36 ! ? な命を与えられ甦ったのだ 最早、私はオーディンに仕える神闘士で 私を甦らせてくれた大いなる神に忠誠を誓った戦士なのだ は無い ! ﹂ ! ﹂ ファンタジスタ ルアっていう神が目覚めてしまい、アルベリッヒを甦らせたってのか ﹁フィリスの話が本当ならつまり、千五百年も封印されていたハイド されていた⋮﹂ 界を張って何とか千五百年の間は何も出来なくなる様にしたと記述 士だったという記録が残っていた⋮ハイドルアはアテナが強力な結 識、幻影、そして命の四つを司る神ハイドルアに仕えていたのが幻闘 ス、女神パラスとの戦いの連鎖で疲れ果てていた時に現れた水と知 有るよ。それは千五百年も前のアテナがアレス、ポセイドン、ハーデ ﹁幻闘士⋮僕はかつての聖戦での記録を見た時にその名前を見た事が 幻闘士ウォーロックのアルベリッヒだ ﹁今の私は新たな命を与えてくれた神に仕える幻 闘 士の一人、一つ星 るで水晶の身体を持った悪魔の様であった。 禍々しさと神々しさを漂わせる鎧へと変貌を遂げたのだ。それはま ア ル ベ リ ッ ヒ の 纏 う 神 闘 士 の 証 で あ る 神闘衣 が 姿 形 を 変 え て い き、 ゴッドローブ かつて紫龍との戦いで死んだ自分がある神の手で甦ったと言うと、 ﹂ からな ! フィリスの話を聞いた一夏はアルベリッヒは千五百年前の戦いで アテナに封印された神ハイドルアが目覚めた事でハイドルアによっ て、新たな肉体と命を与えられ、ハイドルアに仕える戦士である幻闘 士になったという事になるので、この地上に脅威が生まれつつある事 ハイドルア様は千五百年ものの時を得て復活しつつあ を知り、改めて聖闘士としての自覚をした。 ﹂ ﹁その通りだ るのだ ! ﹂ ﹁その口振りだと、まだハイドルアは完全には復活してないみたいね ! 今の地上にアテナがいない以 ﹁確かにハイドルア様はまだ完全に目覚めてはいない。だが、ハイド ルア様の復活は最早、時間の問題だ 上、聖闘士の力は弱まっている筈だ。それは聖闘士であるお前達こそ ! 37 ! !? ! だからこそ、お前達はこのカノン島で何か が一番理解している筈だ わ ﹂ シルバー ゴールド 奴らを散り散りに分散せよ た顔をしながらもアルベリッヒは口を開いた。 ﹂ ﹁異次元に住む精霊達よ ンホール きゃああぁぁっ ﹂ 空に黒くて大きな穴の様な物が⋮うわぁぁっ ﹁これって、まさか ﹁何だ ! するよ﹂ ﹁誰がお稲荷だ じゃないな⋮﹂ 何度も言わせるな ディメンジョ ﹂ いや⋮そんな事を言ってる場合 ! ﹂ ! ﹁先程の台詞を聞く限り、貴様は精霊使いか⋮成る程、確かに俺の方が 座の聖闘士よ、お前を倒して私の手柄にしてくれよう ﹁さて、私の取り分がお前だけになってしまうが⋮まあ、良かろう。狐 と龍音にフィリスをカノン島の違う場合にそれぞれ飛ばした様だ。 を違う場所に飛ばすディメンジョンホールと呼ばれる技を使い、一夏 アルベリッヒは異次元の精霊達に空間に大きな穴を開かせて相手 ! いだね。とりあえず、お稲荷。アルベリッヒの相手は君に任せる事に ﹁成る程ね⋮僕達を一人一人違う所へ飛ばして分断させるつもりみた !! !? ! ! 事を目論んではいた様だが、そうはいかない事情が有るらしく、渋っ アルベリッヒは一夏達を倒して、自分が幻闘士の上へと上り詰める と言いたいところだが⋮そうはいかない事情が有るのでな⋮﹂ か⋮今は一つ星だが、私はお前達を倒して二つ星に昇格してみせよう ところの青銅、二つ星で白銀、三つ星で黄金のレベルと言ったところ ブロンズ い雑兵はアンノウンと呼ばれ、一つ星の幻闘士はお前達聖闘士で言う 士の証明でもある幻衣も協力な物を渡されるのだ。まず星を持たな ホロウ 星が多い程にランクが高いのだ。ランクが高い程、ハイドルア様の戦 良かろう。冥土の土産に教えてやろう。幻闘士にはランクが存在し、 ﹁ペガサスはやはり阿呆なのか⋮少し考えれば解る話だろうが、まあ ? ! ﹁一つ星やら二つ星って何の話だよ ﹂ 貴様らの首を手土産にして、一つ星より上の二つ星に昇格してやる 残念だが、その目論見は潰させてもらうぞ しようとしているのだろ ! !? !? 38 ? ! コイツの相手には向いているのかもしれんな。それを考えてフィリ ﹂ 狐座フォックスの祐介、いざ 戦う気が無いのかお前は スめ、わざと飛ばされる様な真似を⋮全く、相変わらず侮れない男だ な﹂ ﹁何をごちゃごちゃ言ってる ﹂ ﹁安心しろ。ちゃんと戦う気は有るさ 参らん ? ﹁イテェな⋮下手すれば俺の身体が真っ二つに斬られていたな⋮まる の様な鎧を纏った男だった。 一夏に闇討ちを仕掛けてきた者は山羊座の聖衣を漆黒に染めたか 度肝が冷えた気がした。 に受けていたら自分の身体は真っ二つにされていたと思うと一夏は の亀裂した箇所から一夏の血液が吹き出したので、今の攻撃をまとも た聖衣のパアームが鋭い刃で斬られたかの様な亀裂が入り、その聖衣 相手の攻撃を咄嗟に両腕を盾にして防ぐが、一夏の腕に装着されてい 何者かが自分に闇討ちしようとしてきたのに気付いた一夏はその てきたので、洞窟から出ようと駆け出した瞬間だった。 し始めた。一夏は洞窟に流れる風を頼りに進んで行くと出口が見え 一夏は洞窟を抜けてカノン島の火口へ向かおうと洞窟の出口を探 合流出来るよな﹂ かった方がいいだろうし、どのみち皆が火口に向かうんだから自ずと 火口に放り込む事を優先すべきだな。俺が持っている以上は俺が向 ぐれてしまったけど、今は合流より先にこのアテナの瞳をカノン島の 思ってなかったぜ⋮後で覚えていろよ、アルベリッヒの野郎⋮皆とは ﹁い つ つ っ ⋮ ま さ か、い き な り こ ん な 洞 窟 の 中 ま で 飛 ば さ れ る と は の中で目を覚ました。 ジョンホールで飛ばされた一夏はカノン島の火山の近くに有る洞窟 祐介とアルベリッヒの戦いが開始した頃、アルベリッヒのディメン ! ? 俺の腕は貴様が言う通り、山羊座の聖闘士のエクスカリ でラインハルトさんが使う技に有ったエクスカリバーみたいだ⋮﹂ ﹁そうだろ ? 39 ! バーと同じく研ぎすさまれた刃なのだ な⋮﹂ ﹁ブラックカリバーだと ゴールドクロス お前は何者だ それにしても、よく俺のブ 纏っているプロテクターは ラックカリバーを受けたにも関わらず、両腕が切断されていないとは ! ? ﹂ ラインハルトさんの山羊座の黄金聖衣に似た感じはするけどよ、どう ? ただし、聖闘士と言ってもアテナや聖域に従わない 考えてもお前は聖闘士じゃないよな ﹁いや、聖闘士だ ブラックセイント 暗黒聖闘士だがな ﹂ ! 確か⋮聖闘士としての力を正義の為じゃなくて、 !? ! ﹁その通りだ 俺は聖闘士の力を俺の為にだけ使う暗黒聖闘士だ ﹂ 俺 ! !! ﹂ は山羊座の暗黒聖闘士、差し詰めブラックカプリコーンという訳だ ! から聞いた事が有る⋮お前がその暗黒聖闘士の一人だと言うのか 己の欲を満たす為だけに使う聖闘士の面汚しだとラインハルトさん ﹁暗黒聖闘士だと ? 一夏を襲った男の正体は聖闘士の力を己の欲を満たす為だけに使 う暗黒聖闘士と呼ばれる者達の一人だった。しかも、一夏の前に現れ ブラッククロス たのは皮肉にも自分の師であるラインハルトと同じ山羊座の お前みたいな聖闘士の力 暗黒聖衣を纏った暗黒聖闘士であるブラックカプリコーンだった。 ﹁ブラックカプリコーンだと⋮ふざけるな それにだ、さっ !! 前もハイドルアって神の手下の筈だ ﹂ れたんだ。ソコでお前がこの洞窟で待ち構えていた事を考えれば、お き俺は幻闘士として甦ったアルベリッヒって奴にこの洞窟に飛ばさ 衣を纏うっては山羊座の聖闘士だと語るんじゃねえ を己の欲を満たす為だけに使う様な奴が紛い物と言えど、山羊座の聖 !! 聖闘士がハイドルアを倒して地上の支配者になるのだ その計画の のこの紛い物の聖衣ではない、本物の聖衣を手に入れた後、俺達暗黒 聖闘士を滅ぼした後、俺達暗黒聖闘士が聖域に残ったお前が言う通り イドルアに従うふりをして、ハイドルアが率いる幻闘士が聖域にいる ルアの手下だからという訳ではない。俺を含めた暗黒聖闘士達はハ ヒが飛ばしてきたお前を待ち構えていた。だが、それは決してハイド ﹁ふん。確かに俺はハイドルアという神に言われた通りにアルベリッ ! ! 40 ! 一 端 と し て 今 は 敢 え て ハ イ ド ル ア に 従 う ふ り を し な け れ ば な ら ん。 ついでに、そのペガサスの聖衣も俺が貰ってやる ﹂ その為にもペガサス、お前を倒してその首をハイドルアに差し出させ てもらうぞ ていても所詮は紛い物 ﹁ブラックカプリコーン 実力も黄金聖闘士には程遠い筈だ ﹂ テメェが例え、山羊座の聖闘士の格好をし 姿をしてるのが許せなかった。 夏は尚更、ブラックカプリコーンが紛い物と言えど山羊座の聖闘士の ふりをしてる様だが、その真意がやっぱり只の私利私欲だったので一 ブラックカプリコーンを含めた暗黒聖闘士達はハイドルアに従う ! 光速の ! ブラックカプリコーン ﹂ 知った時には既にあの世に行ってるかもしれぬがな ﹂ 所詮は青銅であるお前ごときが俺に勝てないという事を教え てやろう ﹁あの世に行くのはテメェの方だ !! ! らな スピードはさすがに無理だが、それでも白銀聖闘士より早く動けるか からと言って油断してると足下を巣食われるぞペガサスよ だけの紛い物よ。本物の山羊座の聖闘士には程遠い。だが、紛い物だ ﹁確かにこの山羊座の暗黒聖衣は所詮は山羊座の黄金聖衣を模造した ! !! ! との戦いが始まった。果たして、一夏は紛い物と言えど山羊座の聖衣 を纏うこのブラックカプリコーンに勝てるのだろうか⋮ to be next 41 ! こうして、一夏と山羊座の暗黒聖闘士であるブラックカプリコーン ! ! ! ブラックセイント 第3話 目覚めろ、セブンセンシズ ﹁一気に決めてやる ペガサス流星拳 ﹂ ガサスの聖闘士の代名詞である技を放つ。 ス モ す事にした一夏はブラックカプリコーンに向けて小宇宙を高めてペ コ 上は様子見してる余裕は無いだろうと判断し、最初から己の全力を出 なった一夏は相手が例え、紛い物と言えど山羊座の聖闘士を名乗る以 セ イ ン ト 山 羊 座 の 暗黒聖闘士 で あ る ブ ラ ッ ク カ プ リ コ ー ン と の 戦 う 事 に ! ブラック 教えてやろう、ペ 流星が放たれる様に見えるのだろう。だが、俺にはこの一発一発全て ﹁今のが流星拳か⋮確かにマッハ1で放つ拳の連撃は素人には拳から 己の両足で引っ掛けるとそのまま一夏を勢いよく空中へ打ち上げた。 嘲笑うかの様に軽やかに避けると一夏の懐に潜り込み、一夏の両脇を れるが、ペガサス流星拳の一発一発をブラックカプリコーンは一夏を 一夏が放つペガサス流星拳がブラックカプリコーンに向けて放た ! がスローモーションで動いている様にしか見えぬ ﹂ ! ! ローによって、空中へ打ち上げられた事で洞窟の天井に背中を強打す ると、そのまま地面へと落ちると腹部に落下の衝撃が伝わり、そのダ メージによってか一夏は口から吐血し、少し苦しみながらも何とか立 ち上がり、ブラックカプリコーンを睨み付ける。 ﹁ほう。今のを受けて立ち上がるとは⋮根性だけは有る様だな﹂ ﹁ああ。それが取り柄みてえなものでね⋮俺がここで諦めたら、他の 皆に合わす顔が無いしな。それに今回の任務で必要な物は俺が持っ ﹂ お前は自ら重 ている以上は何が何でもこんな洞窟から出ねえといけないんだよ ﹁ふん⋮お前は今、俺に何を言ったか解っているのか ! ここから無事にお前を出すとでも思っているのか ﹂ 要な物を持っている事を俺に教えたのだぞ。それを知った以上、俺が ? ﹁思ってねえよ。ブラックカプリコーン、お前を倒さないとこの洞窟 ? 42 ! ガ サ ス よ。決 定 的 な 攻 撃 と は こ う い う も の を 言 う の だ ﹂ レッグスロー ﹁なっ ! 一夏はブラックカプリコーンが放った技であるブラックレッグス !? から出れないって事は承知の上さ。だから、俺はお前を倒してこの洞 ﹂ 先程、お前の放った流星拳は全て俺に見切られたのだ 窟から脱出してやる ﹁忘れたのか ! ﹂ ブラックカリバー ﹂ ﹂ せめてものの情けで苦しまずに死ねる様にこの右腕 の一振りで終わらせてくれよう ﹁ふざけるなよ、まだ終わってやる訳にはいかないんだ !! ﹂ ブラックカリバーを避けた上に俺の背中を取るだと⋮﹂ ﹁言っただろ。俺はお前を倒してこの洞窟から出てやるってな ﹁何っ 回り込んだ。 リバーを避けると今度は逆に自分がブラックカプリコーンの後方へ われ当たるかと思われた瞬間、一夏は紙一重でしゃがんでブラックカ ブラックカプリコーンの放つブラックカリバーが一夏の首に振る !! ! れで終わりだ ﹁いくらしぶとくても、首を切り落とされたら何も出来ずに死ぬ。こ 夏の首へ目掛けて振るった。 が捉えきれないスピードで一気に一夏の後方へ回り込むと、右腕を一 ブラックカプリコーンは立ち上がった一夏に引導を渡す為に一夏 るまでだ とも俺のブラックカリバーがお前の五体をバラバラに斬り刻んでや げ飛ばして天井にぶつけてやるだけだ。例え、お前が何を仕掛けよう ぞ。それに闇雲に突っ込んできても、ブラックレッグスローで再度投 ? ! ンを羽交い締めするとそのまま空中に回転しながら飛び上がり、回転 ﹂ をし続けた状態で落下し始めたところでブラックカプリコーンを離 ペガサスローリングクラッシュ !! すとブラックカプリコーンを地面へと叩き付けた。 ﹂ ﹁これで終わらせてみせる ﹁ぐうぉぉぉっ ! 一夏が放ったペガサスローリングクラッシュの威力は地面に大き ラックカプリコーンの背中を取り、この技を放ったのだ。 てペガサスローリングクラッシュの存在を知り、この技を放つ為にブ た時、かつてのペガサスの聖闘士だった者の記憶が突然流れ出してき 一夏は先程、ブラックカプリコーンのブラックレッグスローを受け !!? 43 ! ブラックカプリコーンの背中を取った一夏はブラックカプリコー ! !? なクレーターが出来る程、強力な威力だったので技を放った一夏自身 が何より驚きを隠せない中、一夏はさすがに今のを喰らえばブラック 俺は今のを喰らった程度でくたばる様な カプリコーンは倒れた筈と思い、洞窟の出口へ向かおうとしたのだが ⋮ ﹂ ﹁何処へ行く気だペガサス 相手では無いぞ 今の一撃をまともに受けて、ぴんぴんしてやがるのか⋮﹂ ? 所詮はお前 見せてやろう、小宇宙を上手 ! ﹂ ブラックカリバーは小宇宙を少しでも高めて ! 放てば、離れたところの相手も真っ二つに出来る。この様にな ! 出口が⋮瓦礫で塞がっちまった !? を何とか回避したが⋮ ﹁しまった ﹂ がると一夏に向けてブラックによる衝撃波を放ち、一夏はその衝撃波 シュを受けたのに大したダメージが入っていないのか、平然と立ち上 ブラックカプリコーンは一夏が放ったペガサスローリングクラッ ! く扱っての攻撃をな など、俺の敵では無かったという事だ 宇宙を使ってダメージを減らせば大した事は無い技だ 放った技は確かに強力だが、小宇宙が大した事無い以上は俺が高い小 ﹁残念ながら、お前より俺の小宇宙の方が遥かに上なのでな。お前の ﹁なっ !! ﹂ ! ブロンズセイント ゴールドセイント 所詮、青銅聖闘士であるお前では俺に勝 ﹁今更気付いたか。そうだ ! スピードは黄金聖闘士と同じく光速の速さなのだ ﹂ 実力だと言ったが⋮あれはお前を油断させる為の嘘だ。本当は俺の 俺は先程、自分の事を黄金聖闘士に劣る てる見込みは無かったのだ ! 持っている⋮最初から俺が勝てる相手じゃなかったっていうのか⋮﹂ どブラックカプリコーンの強さは俺より数段⋮いや、桁違いの強さを ﹁クッ⋮所詮は山羊座の聖闘士の紛い物に過ぎないと思っていた。け 倒すのは確実に無理だと思うがな されるか俺を倒すまで永遠とこの洞窟を出られぬ運命だ⋮最も俺を た以上、お前は遂に逃げる事も出来なくなった。最早、お前は俺に倒 ﹁今のブラックカリバーを避けた事でこの洞窟の出口を塞いでしまっ まったのだ。 洞窟の出口が衝撃波の余波で天井が崩れ、その瓦礫で塞がってし !? ! 44 !? ブラックカプリコーンは一夏に自分の言葉が嘘偽りではない事を 伝えるかの様に洞窟を光速の速さで移動し、一夏から見るとブラック ﹂ カプリコーンが光って移動してる様に見えるので光速で動けるのは 信じざるを得なかった。 ﹁それにだ、俺は小宇宙も黄金聖闘士に劣らない程だ ﹂ 小宇宙は潜在的なモノで全く同じ様な 俺はラインハルトさんの意志を継いで、この任務をやり遂 げないといけないんだ 認識した しな。それにだ、今ので俺はまだ諦める訳にはいかないんだって再度 前がラインハルトさんと同じ小宇宙を持っているなんてあり得ない し、俺の感覚が変になっただけかもな。ってか、暗黒聖闘士であるお んだけど。まあ、確かにさっき思い切り身体を打ち付けられたんだ ﹁いや、別に俺はそんなに弱ってはいないし⋮むしろ、まだまだやれる 見間違える程に弱ってきている様だな﹂ ﹁むっ⋮どうやら、ペガサス。お前は自分の知り合いと俺の小宇宙を 小宇宙は双子とかじゃない限りは無いと確か聞いた気が⋮﹂ ⋮同じに思える程の小宇宙 聖闘士だった俺の師と同じに思える程の小宇宙を持っている様だな ﹁だろうな⋮認めたくないけど、確かにお前の小宇宙は山羊座の黄金 ! 務をやり遂げると誓った事を思い出すと、一夏は再び小宇宙を高める とブラックカプリコーンの腹部に思い切り小宇宙を込めた拳の一撃 を与えると、ブラックカプリコーンはその衝撃で後ろに押し出される が、ブラックカプリコーンにダメージは無いに等しく一夏は唇を噛み 締めた。 ﹂ ﹁さっきと比べれば、小宇宙が高まった様だな。だが、俺に決定的なダ メージを与えるにまでは相変わらず達していないがな いからだ ﹂ ス、お前が小宇宙を司る第七感であるセブンセンシズに目覚めていな ﹁俺 に 有 っ て お 前 に 無 い モ ノ か ⋮ 確 か に 存 在 す る な。そ れ は ペ ガ サ プリコーンに有って、俺に無いモノが有るっていうのかよ⋮﹂ ﹁ちっきしょー⋮これでもまだ小宇宙が足りないのかよ⋮ブラックカ ! 45 ? 諦めかけていた一夏だったが、ラインハルトの意志を継いでこの任 !! ! ! ﹁第七感セブンセンシズだって⋮﹂ ﹁セブンセンシズは今言った様に小宇宙を司る第七の感覚の事だ。黄 金聖闘士は全員がこのセブンセンシズに目覚めているからこそ、高い ﹂ つまり、お前に無い 小宇宙を扱い光速のスピードで戦える訳だ。俺もそのセブンセンシ ズに目覚めているからこそ、光速で動けるのだ モノとはセブンセンシズに目覚めていないという事なのだ ばお前を倒せるって事だよな ﹂ ﹁セブンセンシズ⋮要するにだ、そのセブンセンシズに俺も目覚めれ ! ! ﹂ 事に気付き、その倒れていた者の顔を見た一夏はブラックカプリコー 思った時、一夏は瓦礫で塞がった洞窟の出口付近に誰かが倒れていた 倒せる方法を考えるが思い付かず、闇雲に戦い続けるしかないのかと で、一夏はセブンセンシズに目覚めなくてもブラックカプリコーンを でセブンセンシズに目覚める事が出来るのかさえも定かではないの ブンセンシズに目覚めるのかも解らない上に、そもそもこんな土壇場 言う通り、セブンセンシズに目覚めた場合の話なので、どうすればセ に勝てるかもしれないと考えたが⋮それはブラックカプリコーンの 一夏はセブンセンシズに目覚めさえすれば、ブラックカプリコーン た場合の話だがな ﹁倒せるかもしれんな。最も、それはお前がセブンセンシズに目覚め ! 何であそこに龍音が倒れているんだ ンに向けて鋭い威圧感を放つ眼差しで睨みながら尋ねた。 ﹂ ﹁おい、ブラックカプリコーン アイツに何をしたんだ !! !! 来る前に俺と戦い敗れた雑魚だ ﹁ああ あの女は俺と戦い、お前と同じ様に ﹂ ! 死んだ後は徐々に死体が腐敗しては腐肉を食らいに虫やら烏 ﹁龍音が死ぬだと⋮﹂ るが、あの様子だともうすぐで死ぬかもな 洞窟の外に出ようとしていたが俺に敗れ、あの様だ。まだ生きてはい ! 戦う聖闘士の末路が畜生に生きる虫やら烏の餌よ。考えただけで哀 るのだろうな。そうなったら、惨めなものよ。地上の愛と正義の為に が寄ってくるかもしれぬな。腐肉を食い尽くされた後は骨だけが残 ! 46 ! ﹁あのドラゴンの聖闘士である女の事か⋮あの女はペガサス、お前が ? れ過ぎて思わず笑ってしまうな ﹁どういう事だ ﹂ 何が愛と正義の為に戦う聖闘士だ ﹁ブラックカプリコーン⋮真に惨めなのはお前だぜ﹂ るモノであった。 その怒りは一夏を逆に冷静にし、一夏の中に眠る何かを目覚めさせ 様な感じも含めた怒りだ。 の力を自分の為にだけに使うブラックカプリコーンに対して哀れむ ルトの戦死の報せを聞いた時の様に我を失う様なモノでは無く、自分 りが込み上がってくるが、その怒りは聖域で見せた師であるラインハ を含めた聖闘士の生き様をバカにした事が許せなかった。一夏は怒 一夏はブラックカプリコーンが龍音を追い詰めた上に、龍音と自分 だ、あの女と今から俺に殺されるお前がな ﹂ 所詮、自分の力は自分の為にだけに使うべきだったと思い知る筈 ! ﹂ ﹂ 俺が惨めだと⋮俺の力を俺の為にだけに使う事の何処が惨 ! 俺達聖闘士は地上の愛と正義の為に ! ﹂ !! それを知 ! じゃねえか ﹂ が解るかブラックカプリコーン ? お前なら、これが何なのか解るん ﹁俺の中で何かが目覚め、俺の小宇宙がどんどん膨れ上がっていくの 構えを取る。 いた一夏はペガサスの星座の並びを思わせる動きをし、技を放つ為の 何かが目覚めると自分の小宇宙がどんどん高まっている事に気が付 一夏は自分が信じる真の力というモノを語ると、一夏は自分の中で らないお前なんかに俺は負ける訳にはいかないんだよ る力、他者を守る為に戦う力こそが真の意味での力なんだ 戦う為に自分達の力を使うんだ。同じ意志を持った仲間達と合わせ なんて真の意味の力じゃない 一回しか言わねえからな。自分の力を自分の為にだけに使う奴の力 ﹁知らねえなら教えてやるよ。耳の穴をかっぽじてよく聞いとけよ、 めだと言うのだ ﹁何だと 自分の為にだけにしか使う事が出来ないお前の方だと思うぜ お前の言う通りかもしれねえけど、俺は真に惨めなバカは自分の力を ﹁お前は俺と龍音を含めた聖闘士の生き様をバカにしたよな。確かに ? ? !? ! 47 ! ! ﹁これは間違いなくセブンセンシズ⋮ペガサス、お前が怒りを力に代 え、お前が信じる答えにたどり着いた事でセブンセンシズが目覚めた 様だな⋮﹂ ﹁これがセブンセンシズなのか⋮これが目覚めたからなのか、俺の身 ペガサス これでお前に引導 これで決めてみせる 体もさっきまでと比べて軽くなった気がするぜ ﹂ を渡せるな、ブラックカプリコーン 彗星拳 ! ! ま、まさか⋮あなたは本当に⋮﹂ コーンの力をな シャイニングインパルス ﹂ !! 一夏が放つペガサス彗星拳に向けて、ブラックカプリコーン︵ ︶が に 目 覚 め、放 っ た 全 力 の 一 撃 に 応 え、俺 も 見 せ よ う。本 当 の カ プ リ ﹁すまないな一夏⋮詳しい話は後でしてやる。お前がセブンセンシズ ﹁えっ ﹁見事だ一夏よ⋮よくぞ、ここまで短期間で強くなったな﹂ 拳に小宇宙を集中させ始めた。 撃を放つ様になった事を嬉しく思う様に笑みを浮かべると、自分の右 ブラックカプリコーンは一夏がセブンセンシズに目覚め、強力な一 プリコーンに向かっていた。 の通りに彗星の如く小宇宙を込めた拳が大きな塊となり、ブラックカ 拳を一ヶ所に集中させて放つ強力な一撃を持つ拳だ。その拳は名前 た技、ペガサス彗星拳はバラバラの箇所に打たれていたペガサス流星 一夏はセブンセンシズに目覚め高まった小宇宙を全て込めて放っ !! ︶はマス ︶に駆け寄ると 彼の顔を確認しようとしたので、ブラックカプリコーン︵ ? ﹁ああ。そうだ、俺は生きている。俺がそんな簡単に死ぬ様な奴だと ﹁生きていたんですね、ラインハルトさん⋮﹂ 山羊座の黄金聖闘士ラインハルトだったのだから。 えが止まらなかった。何故なら、彼は間違いなく死んだと聞かされた クを取ると素顔を見せた。彼の素顔を見た一夏は嬉しさの余りに震 ? 砂煙が消えると、一夏はブラックカプリコーン︵ ス彗星拳とぶつかり合うと威力が相殺し、洞窟内に砂煙が舞った。 シャイニングインパルスだった。シャイニングインパルスがペガサ 放ったのは山羊座のラインハルトの使う技で最も強力な技である ? ! 48 !! !? 思っていたか ﹂ 俺はラインハルトさんが戦死したって報せを聞いてもいま 確かに遺体は聖域で見たんですけど ? ﹂ ? にホッとした。 ! 明してくださいよ ﹂ ﹁そういう事だったのか⋮ラインハルトさん、本当にどういう事か説 為にやらせたんだと思う﹂ てところかな。多分、今の戦いの中でセブンセンシズを目覚めさせる んできたの。それで理由が解らない状態で倒れた演技をし続けたっ 驚いてる私にラインハルトがいきなり倒れた演技をする様に頼み込 んだと思っていたラインハルトが生きていると知った時は驚いたよ。 ﹁まあね。一夏が来る前に私がラインハルトと合流したんだ。私も死 ﹁龍音、無事だったんだな ﹂ の龍音が屈伸しながら立ち上がったので一夏は龍音が無事である事 ラインハルトが倒れていた龍音にそう呼び掛けると、倒れていた筈 技はもうしなくて構わんぞ﹂ ﹁それについては今から説明しようと思う。その前に龍音、倒れた演 て来なかったんですか ⋮何か色々と複雑で解りませんけど、生きていたら何故、聖域に戻っ たんですよ⋮それなのに何故 いち信じられなくて⋮でも、遺体を確認したので信じざるを得なかっ ﹁いいえ ? ﹁い き な り 襲 い 掛 か っ て き た 者 は ハ イ ド ル ア と い う 神 の 戦 士 を 語 る ﹁その襲い掛かってきた奴って一体⋮﹂ 現れたのだ﹂ 終えた俺が帰還しようとした時だった。俺に襲い掛かってきた者が 経った時にシベリアの奥に有る秘境にてアテナの瞳を発見し、任務を 教皇に命じられた任務を受けアテナの瞳を捜索しに向かい、1週間が ﹁事の始まりは1ヶ月前、お前がペガサスの聖闘士になった日に俺は と戦う様な真似をしたのか、その理由となる話をし出した。 聖闘士の格好をして、セブンセンシズを目覚めさせる為とは言え一夏 ラインハルトは一夏と龍音に何故、自分が戦死した事になって暗黒 ﹁ああ、そのつもりだ。龍音も一緒に聞いてくれ﹂ ! 49 ! ファンタジスタ 幻 闘 士の一人、三つ星幻闘士スルトのドゥークと名乗っていた男だ﹂ ラインハルトは任務を終えた時に幻闘士の一人であるドゥークと いう者と戦っていた事を語った。 ﹁俺はドゥークを撃退する為にエクスカリバーによる衝撃波を飛ばし たのだが⋮ドゥークが放つ炎の壁によって防がれてしまい、ダメージ を与える事は出来なかった上に俺はその炎の壁から放射された炎に 当たってしまい、小宇宙を使って致命的なダメージは避けたが⋮脚が 火傷してしまい、俺の動きが鈍ったのをドゥークは見逃す筈も無く、 ドゥークが追撃として放った炎を受けてしまった。俺はその衝撃で 吹っ飛ばされ海に落ちたのだが⋮俺はこれを利用し、海中に沈み姿を 隠す事でドゥークに俺が海の藻屑になったのだと思わせる事に成功 し、ドゥークはその場から姿を消した後、陸に上がった俺はドゥーク との戦いで聞いた情報により、幻闘士と協力関係を結んだと知った俺 は暗黒聖闘士から情報を聞き出す為に、本物のブラックカプリコーン を倒して剥ぎ取った暗黒聖衣を纏って暗黒聖闘士の中に内部潜入し て情報を得る為に動く事にした﹂ ラインハルトはドゥークとの戦いの後、幻闘士の情報得るべく協力 関係になったという暗黒聖闘士に成り済ました事を語ると、次は自分 が戦死したという偽りの報告を流す事にした理由を語りだした。 ﹁俺は暗黒聖闘士の中に紛れ込んで十日が経った時に暗黒聖闘士から 幻闘士の情報を聞き出していると、ドゥークが俺が海に落ちた程度で 死ぬのを不自然に思った様で俺が本当に死んだか確かめる為に ドゥークは俺の遺体を探している事を知った。もし、俺が生きていて 暗黒聖闘士の中に紛れ込んでいるのを感付かれたら、幻闘士の情報を 得る唯一のチャンスを無にしてしまうと考え、俺は自分の死を偽造す る事にした。その為にまず俺は俺そっくりに作り上げた人形に自分 ゴールドクロス の血液を流し込み、血が固まらない様に特殊な加工も施した。その人 間に俺は小宇宙を溜め込んだ黄金聖衣を纏わせて、海に放り込んだ。 小宇宙を溜め込んだ黄金聖衣を纏わせる事でよりリアルに俺の遺体 と見間違える様にな。それに俺が念じさえすれば、黄金聖衣は直ぐに 俺の前に戻ってくるから聖衣を無くす事はないから出来た策な訳だ。 50 人形が海に浮かんだ様子をドゥークが目撃し、俺の思惑通りにドゥー クは俺が死んだと思わせる事に成功した。後は勝手に人形が海の底 に沈んでくれる事を祈っていたのだが⋮﹂ ﹁白銀聖闘士︽シルバーセイント︾達がその人形が沈む前に見付けた事 でラインハルトさんの遺体と思って回収してしまったってところで すか⋮﹂ ﹁ああ。味方にまで俺が死んだと思わせる必要は無かったからな⋮そ の人形を俺の遺体と思って回収した白銀聖闘士達には本当に悪い事 をしてしまったな⋮それに聖域の中まで俺が死んだと思って混乱さ せてしまったに違いない⋮﹂ ラインハルトはどうやら偽りの死を偽造したのはドゥークの目を 欺く為にやったのだが、それが味方にまで伝わるとは思いもしなかっ た様でラインハルトは己の詰めが甘かったのを悔いていた。 ﹁じゃあ⋮ラインハルトさんは聖域にまで自分の偽りの死を広める気 ﹂ 黄金聖闘士の名が泣くよ⋮﹂ 少しは連絡ぐらい つ合った事は前から感じていた。その正体を探るべく俺はどうして も敵に俺を死んだと思わせる必要が有ったのだ﹂ ﹁だからと言って、いくら何でも無茶苦茶ですよ してくれてもよかったんじゃないですか⋮﹂ ! 51 は無かったんですね⋮意外に詰めが甘いんですねラインハルトさん は⋮﹂ ﹁本当に何やってんの あなたが俺に詰めが甘いと言ってたクセ あなたが戦死したと聞いた時は本当に怒りで頭 の中がいっぱいでしたよ じゃないですか にラインハルトさんも詰めが甘かったんですから、俺の事を言えない ! ﹁本当にそうですよ いだったと龍音から聞いたからな⋮﹂ のはお前だろう⋮俺が死んだと聞いた時には頭の中が怒りでいっぱ かったと思っている。俺が死んだという報告を聞いて一番辛かった 混 乱 さ せ る 事 に な っ て し ま っ た の は 申 し 訳 無 い。特 に 一 夏 に は 悪 ﹁正論だからグゥの音も出ないな⋮本当に味方であるお前達までをも ? !! ﹁本当にすまなかった。俺は聖闘士として地上に新たな脅威が現れつ ! ﹁連絡は一応、教皇に伝書鳩で俺の作戦を伝えておいた。敢えて、聖域 にまで俺が死んだと思っている状態をキープした状態でお前達にこ の任務を受けさせる為に手紙と一緒にアテナの瞳も伝書鳩に運ばせ てな﹂ 一夏と龍音はラインハルトが教皇に伝書鳩で作戦は伝えていた事 を知ると、一夏と龍音は互いに目を合わせて話す。 ﹁お い、も し か し て 教 皇 は ラ イ ン ハ ル ト さ ん が 生 き て い る と 知 っ て たって事か⋮﹂ ﹁そういう事になるね⋮どうやら私達は最初から教皇とラインハルト の思惑通りに動かされたみたいだね⋮﹂ 一夏と龍音はこの任務自体がラインハルトの仕組んだものだと思 うと、自分の失敗をも利用するとんだ切れ者だと認識せざるを得な かった。 ﹁話を続けるぞ。俺は暗黒聖闘士に紛れ込み続けた結果、幻闘士を束 ハイドルアの居 ﹂ ミューダトライアングルの中に隠された異大陸ムー大陸の中に有る 魔城アトランタの奥に有る王室だ﹂ ﹂ ﹁バミューダトライアングルって確か⋮ソコに入った飛行機や船が謎 の現象でいきなり沈んだりしたって言う海域だったよな ﹂ ? で一夏はラインハルトに尋ねた。 方法も知る事が出来た様だが、その顔は何処か気苦しそうに見えたの ラインハルトはハイドルアがいる場所を知る事が出来た上に行く ﹁ああ⋮何とか行く方法だけは掴めた⋮﹂ ﹁でも、さすがにそこまで行く方法も当然知っていますよね 有る魔城アトランタも見付けないといけないって難題続きね⋮﹂ に、その中に隠された異大陸ムー大陸を見付け出した上にムー大陸に ﹁そ の バ ミ ュ ー ダ ト ラ イ ア ン グ ル の 中 に 入 る の さ え 難 し い と 思 う の ? 52 ねる神ハイドルアの居場所を突き止める事に成功した﹂ ﹁それは敵にとっても一番知られたくない情報の筈 ﹂ 場所を突き止めるなんてさすがですよ、ラインハルトさん ﹁それでラインハルト。ハイドルアの居場所って ! !? ﹁あ あ。ハ イ ド ル ア の 居 る 場 所 は 魔 の 三 角 地 帯 と 呼 ば れ た 海 域 バ ? ﹁もしかして、その行く方法が問題なんですか ﹂ ﹁そ の 通 り だ。ま ず バ ミ ュ ー ダ ト ラ イ ア ン グ ル が 問 題 な の だ。バ ミューダトライアングルはその海域に入った飛行機や船が謎の現象 の影響で沈む原因はバミューダトライアングルの中はハイドルアの 力に満ちた危険地帯なのだ。ハイドルアが封印されて眠っていた間 でも、その力は強く残っていた為に何も知らずに入り込んだ飛行機や 船をハイドルアが自分の縄張りを荒らした存在と認識し沈めたのだ ろう⋮﹂ ﹁つまり、俺達が迂闊にバミューダトライアングルに飛び込むとその 二の舞となるかもって事ですか⋮﹂ ﹁そうだ。言わばバミューダトライアングルの中はハイドルアに敵対 する俺達聖闘士にとっては最悪の環境だ。分かりやすく言えば、常に 俺達だけに有害な毒ガスが満ちた中で動くに等しいのだ。まずはバ ミューダトライアングルの中で少しでも動ける様になる為にも今回 のお前達の任務の成功が必須だ﹂ ﹂ ﹁このアテナの瞳を使ってアテナの加護を受けられる範囲を地上全体 にする事がですか ないからな⋮本当ならアテナの血を受けた聖衣や宝具が有れば、完全 な状態で動けるのだが⋮アテナがいない今の状態では、最早アテナの 瞳で常に加護を受けられる状態にするのが精一杯だ⋮﹂ 今の話を聞いて、バミューダトライアングルの中で少しでも動ける 様になる為にも今回の任務は絶対に成功させなければと一夏と龍音 は強く決心した。 ﹁続いて、ムー大陸に行く方法は一つ星幻闘士以上の幻闘士が持つミ ラージュピースと呼ばれる宝石を手に入れさえすればいい。ミラー ジュピースを一個でも持ってさえすれば、ムー大陸に続く道を知る事 が出来る様だ。ただし、ミラージュピースは幻闘士が何処に隠し持っ ているか解らないから、手に入れる為にはミラージュピースを壊さな い様に戦う必要が有る。それにだ、ムー大陸に有る魔城アトランタに 入る条件はミラージュピースを十五個所有した状態でないと入口で 53 ? ﹁アテナの加護を受けられる状態なら少しはまともに動けるかもしれ ? ある門が開かないらしい。その為に幻闘士達も魔城アトランタに入 れるのは幻闘士が集った時のみだ﹂ ラインハルトはミラージュピースが無いとバミューダトライアン グルに入ってもムー大陸は見付からない上、ムー大陸に着いてもハイ ドルアの居場所である魔城アトランタに入るには十五個もののミ ラージュピースが必要だというので、ハイドルアは一筋縄ではいかな い相手だと一夏と龍音は認識した。 ﹁つまり、ミラージュピースを手にしないとまずハイドルアの居場所 にさえ行けないのか⋮しかもそれが十五個も必要なのか⋮﹂ ﹁本当に一筋縄ではいかない相手ね⋮さすがは神ってところかな﹂ ﹁確かにハイドルアは一筋縄ではいかない。だからこそ、俺は自分の 死を偽造して敵の目を欺き、それが味方も混乱させてしまったのは俺 の失敗では合ったが、その失敗を逆に利用してお前達をこのカノン島 に呼び出した。幻闘士の一人であるアルベリッヒがお前を俺の前に 54 飛ばす様にしたのは敵側の作戦だったが、俺はそれを逆に利用した。 その上で俺は暗黒聖闘士の一人として一夏の前に立ちはだかり戦っ た。その甲斐有って、一夏は俺との戦いでセブンセンシズに目覚める 事が出来た﹂ ﹂ ﹁その戦いで万が一、一夏が死んでたら⋮どうしていたのか聞きたい かな ﹁俺はお前達を呼んだのはアテナの瞳を無事にカノン島の火山の火口 だやらねばならない事が有るのを一夏と龍音に告げる。 る事に成功した。ここまではラインハルトの思い通りの結果だが、ま 闘士として振る舞い一夏と戦い、一夏をセブンセンシズに目覚めさせ ラインハルトは敵側の作戦を逆に利用して一夏の前に現れ、暗黒聖 殺させた程だったからな。これは嬉しい誤算だった﹂ め放った一撃は俺の力の七割で放ったシャイニングインパルスを相 ﹁とにかく俺の期待以上に一夏は強くなった。セブンセンシズに目覚 ﹁笑えない冗談は止めてください⋮ラインハルトさん⋮﹂ な⋮﹂ ﹁その時は⋮所詮はその程度の者だったと開き直って話を進めていた ? に放り込める様にする為だけな訳ではない。アルベリッヒともう一 ﹂ 人の幻闘士が持つミラージュピースを確実に奪い取る為にも俺はお 前達を呼んだのだが、祐介とフィリスの二人もいるのだな ﹁おそらく、大丈夫だろう﹂ ﹁何でだよラインハルトさん 足だ⋮﹂ ﹁﹃天災﹄ ⋮﹂ ま、まさかね⋮あの人がフィリスの産みの親な訳無いよね 能力の高さは圧倒的かつ最強故に本気を出せば、暗黒聖闘士では役不 その﹃天災﹄と呼ばれた女のクローンだからなのか、聖闘士としての だというよりは⋮ほぼそのままと言った方がいいのか⋮フィリスは な。その生まれ故か、あの﹃天災﹄と呼ばれた女の血を濃く受け継い る人物が自分のDNAを元に作り出した存在⋮いわゆるクローンだ 出してないだけにすぎない⋮お前達は知らぬだろうが、フィリスはあ スは聖域の中では、聖闘士同士による模擬戦では本来の実力を敢えて ﹁フィリスは白銀聖闘士と実力は互角⋮それは大きな誤解だ。フィリ かったら⋮﹂ 龍音の言う通り、いくら何でも数が多 悪い筈だから助けに向かわないと⋮﹂ 渡り合えるからって十人ものの暗黒聖闘士が相手じゃさすがに部が ﹁じゃあ、フィリスを助けに行かないと⋮いくら白銀聖闘士と互角に な﹂ るからな⋮おそらくだが、フィリスは十人の暗黒聖闘士と戦っている ﹁多分、違うだろう。二人の幻闘士の他にも暗黒聖闘士が十人来てい ﹁まさかフィリスはそのもう一人の幻闘士と戦っているんじゃ⋮﹂ 何処に飛ばされたか解らない⋮﹂ ﹁ええ。おそらく祐介は今もアルベリッヒと戦っていて、フィリスは ? の D N A か ら 作 り 出 し た 存 在 だ と 聞 い て 驚 い た。何 故 か と い う と、 フィリスを作り出した﹃天災﹄と呼ばれた女に心当たりが有ったから 55 !! 一夏とはラインハルトからフィリスが﹃天災﹄と呼ばれた女が自分 !? だ。 一夏と龍音がラインハルトから話を聞いていた頃、フィリスの目の 前では十人の暗黒聖闘士の内、八人が息絶えて倒れていた。残った二 人の暗黒聖闘士はフィリスの圧倒的強さに驚愕しながらも同時に攻 撃を仕掛けた。 ﹂ 喰らえ、ブラックユ ﹁噂に聞いた暗黒聖闘士⋮大した事無いね。所詮は力を己の為だけに ブラックギャロップ まだ我ら二人が残っているのだぞ しか使えない雑草の集まりだった訳か⋮﹂ ﹁うるさい ニコーンの一撃を ﹂ 仕方無いや、イッチー ブラックハンギング 君達程度じゃ僕には敵わないよ ﹁受けよ、ブラックベアーの剛力を ! ﹂ ﹂ ギャラクシアンエクスプ それは僕が天才の中の﹃天災﹄だからさ 黄金聖闘士の技すらも⋮﹂ ﹁何故かって ﹂ ﹁意味が全く解らぬぞ⋮グォォッーー ﹁この化け物がぁぁっ しかも、他の ﹂ !? !! ﹁なのに何故、たかが青銅のお前がこの技を使えるのだ ﹁バカな⋮それは双子座ジェミニの聖闘士の最強技の筈⋮﹂ ロージョン ﹁星々が砕ける様を見届けて散るといいよ 宇宙を高めて星々をも砕く最強の技を放つ。 フィリスは二人の暗黒聖闘士の最後の抵抗となる技を避けると、小 で決めようかな﹂ とお揃いの技で決めるのも悪くないけど⋮敢えて、見よう見まねの技 ﹁失せなよ !! !! !! の場を後にした。 ﹁さてと、イッチーとルーちゃんの二人と合流しようっと ! ルーちゃんも心配だしね⋮聖闘士の敵は僕の敵さ。 イッチー お稲荷の元に向かってアル何とかを潰す事にしようっと ! ? てやりたいぐらいに大嫌いだけど、それは私怨だから聖闘士の信念を 僕を産み出しといては勝手にいなくなったあの女は憎くてぶっ殺し は大丈夫かなぁ その後に 塵すら残さずに消滅した。フィリスは暗黒聖闘士を倒し終えるとそ 二人の暗黒聖闘士はフィリスの放った星をも砕く最強の技を受け、 !!? !!? ? 56 ! ! ! ! ! !! 潰す様な行為だからやらないけどね⋮まあ、あの女には感謝してると ころも有るけどね。僕の居場所になったイッチー達のいる聖域に来 それでも、あの女は見たら殴ってやりたいぐらいに大 れたのはあの女に置いてきぼりにされたところを教皇に引き取られ たからだしね 嫌いだけどね⋮あの頃の楽しかった記憶の出来事も僕が作られたの も所詮はあの女の気まぐれなんだろうね⋮﹂ そう言いながら、フィリスは一夏と龍音を探しに向かったのだっ た。その内面に自分を産み出した女と暮らした時の楽しかった記憶 と突然、いなくなった女への怒りに板挟みされながら⋮ 57 !
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