14.自然と災害

14.自然と災害
自然災害の誘因は、自然現象でありその対象は人やモノであります。実際にはけがをした
りあるいは命をなくすこともあり、個人的な財産を失うこと、インフラが損壊することなど
あらゆる対象物に大小の被害が及びます。そして、その程度は現象の大きさにもよりますが、
対象物が昔に比べて各段に多くなっていることや土地利用が広範囲に多様化していること
もあって、被害額も大きくなっているように思われます。
一方、自然現象は、種別的には多くなっているわけではありませんが、その発生頻度や大
きさなどは変化しているように思われます。ただ、この実感はいわゆる短期間のもので地球
年代から見ればほんの瞬間なのかもしれませんので、継続性のある傾向ということができ
るのかどうかは判然としません。水害の例でみると、堤防が整備され、河川改修が進んでい
るのに、いまだに洪水、浸水、越流といった災害が、それも今まで履歴的には聞かなかった
ところで、発生しているような気がします。
この日本列島は緑豊かな国土ではありますが、意外と居住に適したところは広くはなく、
限定されているように思えます。生活は、キャンプとは違いますので、居住と生活のための
糧が永続して必要となります。したがって、限られたところになるわけで、最も人口が多い
のは平野部ですが、それは平坦であり、利便性のある交通機関や物流が可能であるという、
いわゆる住みやすいという環境にあります。一方、山間部などでは平地が少ないということ
で、居住する場所は限定され、斜面の裾部や沢部の開かれた個所、河川沿いということにな
りがちです。平野部は水害や地震、津波の備え、山間部は土砂災害への備えが求められると
いうことになります。
ところで、我々の常として、災害が頻度多く発生しているということであれば、ある程度
記憶も連続するということで学習効果も高くなりますが、大規模なものは間隔があり、自分
の代で経験することもそう多くないかもしれない。そういうものをどのようにして次世代
へつないで、備えるのかということは大変難しい。東日本大震災でも、あれだけの被害を目
のあたりにしても復旧や復興が進むのに合わせて、経験が風化しがちになります。それを少
しでも防止しようと様々な試みがなされているし、記録としてアーカイヴ化されてはいま
すが、どんどん遠くなっているような気がします。そう考えると災害発生には空白区域とい
うようなものがあって、そこが一番危険な候補地になるという見方すらあります。つまり、
土砂災害が発生すると、再発するまでにはまたそれなりの時間を要するであろうから、同じ
ようなところで健全なように見えるものが次を待っているのではないかということであり
ます。これは、一概に否定はできませんが、重要なことは地域にどのようなリスクがあるの
か、その要因を確かめておくということが重要なことになる。そして、そのような潜在化す
るリスクがどのような外的作用があれば覚醒するのかということを経験から学び取るとい
うことが大事ではないかと思います。そうすることで、それなりの備えというか、避難する
に当たっても、適切な行動が起こせるのではないか、単に恐れるというのではなく、正しく
恐れるということになるような気がしています。伝えるということの大切さ、そのためには
どう伝えるべきなのかが求められているのだと思います。