GE SURG 巻頭言(2015) 森 正樹 GE SURG(同窓会)会員の皆様による日ごろのご支援とご協力のおかげで大阪大学消 化器外科の同窓会活動が順調に行っていることを感謝申し上げます。 私が消化器外科学講座1を、土岐教授が消化器外科学講座2を担当するようになって 7 年が終了しつつあり、間もなく 8 年目に入ります。二つの講座ですが、実質的には協力 して一つの教室として運営しようとの当初の計画に従い活動しています。もう 8 年目に入 るのかと、「光陰矢の如し」を実感する今日この頃です。大学と関連病院の連携をより一 層強めるために組織した GE SURG の活動は軌道にのり、ますます活発になっていること を喜んでいます。その活動の一つとして本年報を作成しています。これは教室のみの年 報ではなく、関連施設を含めた年報である点が他大学とは若干異なる特徴と思います。 関連施設と一体となって若い外科医を育成している姿勢を示すための報告書と理解して います。関連施設紹介は毎年 10 施設にお願いしています。関連施設は約 50 程度である ため、各施設から見ると 5 年に一回施設紹介の機会が巡ってくることになります。そのた め、執筆担当者は相当に力を入れていることと思います。今後とも良い紹介をしてもらえ ればとお願い申し上げます。 さて、GE SURG の実務的活動の大きな柱の一つ目は人事交流ですが、病院活性化の ためと個人のステップアップのためには欠かせないものです。全員が満足する人事異動 は難しいですが、そうなるように私どもは努力しています。異動が不満の方もいるとは思 いますが、与えられた場所で精一杯努力し、周囲と協調してがんばってください。そうす れば自ずと次のステップアップに繋がると信じています。 二つ目の柱は若手のリクルートです。昨今は各病院での専攻医不足が顕著であり、そ のためにスタッフは苦労していると思います。若手の確保は喫緊の課題ですが、課題解 決のために暗中模索が続いています。是非、会員一同で知恵を絞って行きましょう。本年 報の施設紹介も宣伝の一助になると思いますので、そのような観点からの執筆が大切と 思います。 柱の三つ目は関連病院とともに行っている共同研究です。消化器外科共同研究会を 組織し、5 つの分科会(上部、下部、肝胆膵、内視鏡、リスクマネージメント)を有していま す。参加施設で行われている手術数を合わせると臨床試験が短期間で行える環境にあ り、たとえば大腸癌手術症例数は年間で約 5000 例あります。この豊富な症例を使って各 分科会は前向きの共同研究を複数同時並行で進めています。その成果は次々に英文論 文で情報発信しており、昨年はリスクマネージメント分科会からの成果が Lancet に掲載さ れました。他のプロジェクトも世界の外科学にインパクトを与えられる成果を目指して進行 中で、次はどのような成果が発表されるか、楽しみにしています。 ところで新しい専門医制度がスタートするにあたり、基盤学会である外科学会では外 科専門医制度の構築が行われています。二階建て部分に相当する消化器外科の専門 医制度については消化器外科学会内での議論を踏まえ、基盤である外科学会と消化器 外科以外の二階建て部分の学会とで、連携して制度構築を進めています。これが確定し た後は病院群の設置を急がなければなりません。消化器外科専門医の病院群は外科専 門医の病院群とほぼ連動すると想定されますが、私どもはその病院群の構築を早急に 行う必要があります。五月の連休までには基本案を示せるようにしたいと考えていますの で、会員の皆さんには是非ご協力をお願い申し上げます。また、外科専門医の申請には NCD データの利用が必須となりますので、各病院には NCD 施設登録も合わせてお願い 申し上げます。 さて、教室の最近の動向について紹介します。土岐教授は厚労省科学研究費の中で 特に大型の 2 件のプロジェクトの主任研究者に選ばれました。素晴らしいことで、外科学 の重要なテーマについて、日本発の成果を世界に示してくれると期待しています。また、 日本外科学会の機関誌である Surgery Today の編集委員長を務めており、インパクトファ クターの向上に努力しています。私の方は日本学術会議第 23 期会員に選任していただ きましたので、日本の学術分野の中で、医学、中でも外科学の地位向上に努めたいと考 えているところです。土岐教授と私の夢(課題)の一つは大阪のみならず全国でリーダー として活躍できる人を育てることです。先般、永野浩昭准教授が山口大学の外科学教授 に選任されました。山口大学の外科教室とその同門の皆様のご支援を得て、山口のみな らず日本の、あるいは世界の外科学の発展に大いに貢献できるように精進してもらいた いと思います。永野先生を山口に招聘して良かったと言ってもらえるように頑張って欲し いと思います。GE SURG の若手と中堅の会員は、教室の内にいるか外にいるかに関わ らず、是非永野准教授に続くように努力を継続して欲しいと思います。 昨今は医学以外の科学分野の進歩が急速に進んでいます。たとえば地球環境問題解 決のための研究です。植物が行っている光合成を人工的に行う人工光合成により、二酸 化炭素を出さずに酸素とエネルギーを得る研究が進んでいます。また、石油やシェール ガスなどの資源はいずれ枯渇しますし、原子力エネルギーには大なり小なり反対があり ます。このような中で、宇宙に太陽光パネルを設置し、ここで得られる光エネルギーをマ イクロウェブに変換して地球に送り届け、極めて効率良くエネルギーを得る研究が行われ ています。これらの分野は日本が世界をリードしていると聞いています。このような夢の ある、そして将来の地球環境を救う研究が異分野融合という形で日本において最先端的 に行われていることに勇気を得ます。われわれの医学分野も負けてはおられません。短 期、中期、長期の目標設定を明確にし、癌根治に向けて英知を結集してがんばりましょう。 その基盤を阪大消化器外科で構築する気概が必要です。GE SURG 会員が一丸となり、 臨床、研究、教育のいずれの分野でも日本の外科学を牽引できるようにがんばって行き ましょう。どうぞよろしくお願い申し上げます。
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