巻頭言 大阪大学消化器外科の同窓会(GE SURG)が順調に軌道に乗っ

巻頭言
大阪大学消化器外科の同窓会(GE SURG)が順調に軌道に乗っていることを実感
する今日この頃です。会員の皆様には同窓会運営に関する日ごろのご支援とご協力
に感謝申し上げます。
さて、教室運営の基盤はマンパワーにありますが、来年度は消化器外科学講座
(教室)に入ってくる新人の数に異変がありますので、触れてみたいと思います。土岐
教授と私が教室を担当するようになり、ほぼ 6 年が経過します。この間、仲間(入局
者数)になる人の数は順調に増加し、平成 23 年度は 22 名、24 年度は 23 名、そして
25 年度は 27 名の入局があり、漸増していました。しかし来年度(平成 26 年度)は 18
名とかなり減少する見込みです。マンパワーの減少は人事異動の停滞に直結し、関
連病院全体のレベルの底上げに影響してくることは必然のため、大問題です。
初期研修 2 年と後期研修 3 年を大学外のマッチング病院で行うようになり、卒業 6
年目に初めて大学の門を叩くことが普通になってきました。阪大消化器外科教室に入
局する新人のほとんどは関連病院で後期研修を行っている者です。これまでの実績
をみると関連病院に在籍している卒業 5 年めの外科専攻医の約 6-7 割が教室に入
っているようです。関連病院以外から大学に戻る者はほとんどいません。したがって
卒業後 5 年の専攻医が関連病院全体にどの程度いるかで、翌年の入局者数が読め
ます。平成 26 年度に入局者数が少なくなることは、平成 25 年度の関連病院での 5
年目専攻医が少なかったことから、予想はしていました。ただ、これが現実になると、
前述のように関連病院を含めた人事に大きな影響が出ることは否めません。今後も
順調に発展していくためには毎年 25 名程度以上の入局者数が必要と考えていま
す。ですから関連病院での 5 年次専攻医が少なくても 40 名程度はいて欲しいと願っ
ています。初期研修と後期研修で外科を志す若者を確保することが何より肝要です
が、この点について大学が直接的に関われませんので、関連病院の頑張りに頼るし
かありません。ですから、GE SURG の会員の皆様には是非、若手確保により一層の
具体的な努力をお願い申し上げます。
もちろん大学としても関連病院にお願いするばかりではありません。専攻医を対象
とした消化器外科セミナーを年に数回開催し、専攻医の横の繋がりを図ったり、消化
器外科共同研究会の各分科会に参加を促し、異なる病院の先輩方と触れ合う機会を
設けたりする努力をしています。是非、GE SURG の全員で若手消化器外科医の確保
に努力しましょう。
さて、会員が参加する GE SURG の活動の中で大きなプロジェクトとして消化器外科
共同研究会があります。本会には 5 つの分科会があり、それぞれ活発な共同研究を
進めています。最近、その活動が全国的にも大変な注目を浴びるできごとがありまし
た。それはリスクマネージメント分科会の中で行われた共同研究成果が権威あるジャ
ーナルの Lancet 誌に掲載されたからです。これは腹部手術後の閉腹に際し、ステー
プラーと真皮縫合の比較を行った研究です。全疾患では両者の有意差は見られませ
んでしたが、サブセット解析では特に下部消化管手術、男性、220 分を超える手術、
抗血液凝固治療を受けている患者において、真皮縫合で創合併症が優位に減少す
ることが示されました。計画がしっかりしていること、症例数が十分であること、解析が
客観的で信頼性に長けていること、など、さまざまな条件をクリアーした臨床試験でし
たので、結果の如何に関わらず、信頼性の高い情報が届けられると期待していまし
た。結果的には Lancet 誌という超一流のジャーナルに掲載され、私たちの期待以上
の成果となりました。筆頭著者の辻中先生はじめ、伊藤教授、小林助教、山崎助教な
ど、多くの関係者の努力の賜物と心から喜んでいます。このように研究会で得られた
成果を発表していくことは、世界の医学の発展に寄与するばかりでなく、阪大消化器
外科の力を全国に誇示することにもなり、若い人たちへのアピール度の向上にも繋
がります。是非、他の 4 つの分化会からも続々と良い情報が発信され続けていくこと
を期待しています。
最後になりますが、日本消化器外科学会の評議員の件でお願いしたく思います。阪
大は現在 33 名の評議員を擁しており、実質的には全国 1 位です。しかし、この中に
は間もなく 65 歳の定年を迎える方が少なからずおられます。今、全国の屈指の大学
ではこの評議員数増加を目指して、計画的にことを進めているところがあります。阪
大としても後進の育成に力を注ぎ、今以上の評議員数を確保していく必要がありま
す。各病院の外科部長以上の先生は、是非その観点からもスタッフ教育に尽力をお
願い申し上げます。お願いごとばかりとなりましたが、会員全員の力を結集して、全国
一の強い消化器外科を目指しましょう。ご支援、ご協力とご指導をお願い申し上げま
す。
森 正樹