中学受験新演習 小6上 理科 指導のポイント 1 指導のねらい 生物と自然環境 ★植物の成長と分類について理解を深める。 ★自然界における生命と物質の循環を学び,その役割を理解する。 重要事項の確認 ▼指導ページ P 4 ~ 13 ▼ 補足知識・留意事項など 1 植物の成長と光の強さ 1 植物の成長と光の強さ ⑴ 植物の葉のつき方 ◆植物は光合成により成長に必要な養分(でんぷん)を作り出している。 多くの光を受けるように広がる。→葉が重ならない。 そして光合成には太陽エネルギー(日光)が必要となる。よって,ここ ⑵ 植物の植え方と成長のちがい では成長には日光が必要であるということを,「光合成」という観点 ・まばらに植えると日あたりがよくなり,間をつめ て植えたときより成長がよくなる。 から理解させる。光合成の復習にもつながる。 ・背たけの高い植物を背たけの低い植物といっしょ 2 光の強さと陽生植物・陰生植物の育ち方 に育てると,背たけの低い植物の成長が悪くなる。 ◆陽生植物…タンポポ,エノコログサ,ススキ,ヒマワリなど ⑶ 日あたりと植物の成長のちがい 陽樹→サクラ,マツ,コナラ,クヌギ,シラカバ,ケヤキなど 植え方と 間をつめて植える。 まばらに植える。 日あたり (日あたりが悪い) (日あたりがよい) 陰生植物…コケ,シダ,ヤブラン,シャガなど 草たけ 高い 低い 陰樹→カシ,シイ,ブナ,モミ,ヤツデ,アオキなど 細い 少ない うすい緑 少ない 太い 多い こい緑 多い 2 光の強さと陽生植物・陰生植物の育ち方 【基本1】 ⑴ 陽生植物と陰生植物 ・陽生植物…強い日光が必要。樹木は陽樹。 ・陰生植物…弱い日光でも成長できる。樹木は陰樹。 ⑵ 光の強さとでんぷんの増減 ・補償点…光合成と呼吸の量が等しいときの光の強さ。 3 冬越しのようすや葉の形による植物の分類 【基本2】 ⑴ 草や樹木の冬越しのようす ①種子で冬を越すもの(一年草) …春に芽生え,夏から秋に開花結実。 ②なえやロゼットで冬を越すもの(越年草) …秋に芽生え,翌年春から夏に開花結実。 ③地下のくきや根で冬を越すもの(多年草) …地中のくき,根が生きていて開花結実を何年も 繰り返す。 ④冬の間も緑色の葉をつける樹木(常緑樹) …冬になっても緑の葉をつけている。 ⑤秋から冬にかけて葉を落とすもの(落葉樹) …秋から冬にかけ葉の色が変化し落葉するもの。 ⑵ 葉の形による分類 針葉樹 常緑針葉樹…アカマツ・スギ 落葉針葉樹…カラマツ 広葉樹 常緑広葉樹…ツバキ・クスノキ 落葉広葉樹…サクラ・クヌギ・ブナ ⑶ 森林内の明るさ ・常緑樹は 1 年中暗く,落葉樹は冬に明るい。 4 森林のつくり 【基本1,2】 ⑴ 森林のつくりと植物 ①高木…まっすぐな太い幹。8m 以上に成長。 ②低木…根元から枝分かれ。3m 位に成長。 ③下草…森林内の地表に生える。→陰生植物 ④森林のまわりの植物…乾燥やほこりから守る→陽生植物 ⑵ 森林内の気温・湿度 ・気温の変化は小さく,湿度は高い。 ⑶ 森林ができるまで 裸地→コケ→一年草→多年草→陽樹の幼木→陽樹 →陽樹+陰樹の幼木→陰樹 5 生物どうしのつながり 【基本3】 ⑴ 食物連鎖…生物どうしの食べる・食べられる関係。 ⑵ 食物連鎖の例 陸上…イネ→イナゴ→カマキリ→カエル→ヘビ→ワシ ⑶ 生物の個体数のつり合い ①生産者・消費者・分解者 ・ 生産者 …植物 (光合成により養分をつくり出す) ・ 消費者 …草食・肉食動物 (ほかの生物を食べる) ・ 分解者 …菌 類・細菌類(生物の死がい・ふん を二酸化炭素などに分解する) ②生物ピラミッド…食物連鎖では食べられる生物の 方が食べる生物より多いため,ピラミッド型になる。 ③個体数のつり合い…食物連鎖のつながりのある生 物の個体数は,長い時間で見るとつり合いがとれ ている。 ⑷ 寄生・共生 ・ 寄生 …生物が他の生物を栄養分として生活する。 ・ 共生 …異なる生物が共同して生活し,たがいに 利益を得る。 ⑸ 炭素のじゅんかん 空気中→植物→消費者→分解者→空気中 シイとケヤキの光の強さとでんぷんの増減 1 ケヤキ (陽生植物) 20 15 10 シイ (陰生植物) C 5 A 0 B −5 −10 −15 時間あたりのでんぷんの増減 くきの太さ 枝・葉の数 葉の色 種子の数 0 1000 2000 3000 光の強さ 4000 ・シイの補償点はA点で光の強さは 500。 ケヤキの補償点はB点で光の強さは 1000。 これより,シイは弱い光でも成長できることがわかる。 ・補償点より光が強くないと植物は成長できない。 ・光が強くなると陽樹の方がでんぷんをつくる量が増え,成長し やすくなる。 3 冬越しのようすや葉の形による植物の分類 ◆一年草…アサガオ,イネ,ヒマワリ,ヘチマ,エノコログサ 越年草…アブラナ,ナズナ,タンポポ,エンドウ,ヒメジョオン 多年草…ハス,ジャガイモ,サツマイモ,キク,ダリア,ススキ 常緑樹…マツ,カシ,シイ,スギ,アオキ,ツバキ 落葉樹…紅葉:イロハモミジ,サクラ 黄葉:イチョウ,ポプラ 茶色の葉:クヌギ,コナラ 5 生物どうしのつながり ◆食物連鎖をきちんと理解させる。底辺を植物とし,ピラミッド型は個体 数を表している。これは陸上でも,水中でも,地中でも常に成り立つ。 ◆分解者とは 有機物 を,呼吸によって 無機物(二酸化炭素,水,窒 素酸化物など) に分解する生物であり,光合成はできない。よって,分 解者である菌類・細菌類も呼吸により酸素を取り入れ,有機物中の炭 素を二酸化炭素の形で放出している。二酸化炭素 (無機物)を取り入れ 酸素作り出すことができるのは光合成を行う植物 (生産者) だけである。 発展学習 1 人が食物連鎖をくずした例 ・アメリカの例…シカの保護 (シカを食べるオオカミなどを減らす) →草地 の荒れ (シカの食料) →シカの食料難→シカの減少 オオカミなどは,植物とシカの数のバランスを保っていることがわかる。 2 絶めつ危ぐ種 ⑴ 絶めつ危ぐ種…絶めつのおそれのある生物。 ・レッドリスト…絶めつのおそれのある野生動物のリスト。 ⑵ 日本の絶めつ危ぐ種…人が生物の生息環境を変化させたことが原因。 3 黄葉・紅葉のしくみ ・黄葉…緑がすくなり,カロチノイド(黄色の色素)が見える。 ・紅葉…葉でつくられた糖が日光により分解→アントシアニン(赤い色 素)がつくられ,赤く見える。 中学受験新演習 小6上 理科 指導のポイント 2 指導のねらい 水溶液の性質 ★水にとけている物質の見分け方,水溶液の特徴を理解する。 ★水溶液を識別する方法を理解する。 重要事項の確認 補足知識・留意事項など 1 水溶液 ◆水溶液とは,固体だけでなく液体や気体がとけているものも水溶液と いうことをしっかり認識させる。 ◆ほとんどの水溶液は無色であるが,硫酸銅水溶液のように有色のもの もある。 2 とけている物質による分類 ◆砂糖水を加熱して固体を取り出すと,固体である砂糖がこげるので黒 い固体(もとの砂糖は白い固体)が残る。 3 においによる分類 ◆においがある液体の中でもさまざまなにおいがあり,中でもアンモ ニア水や酢酸水溶液は鼻にツンとくるような特徴のあるにおいがある。 このようなにおいを刺激臭という。有害な場合もあるので,手であお ぐようにしてにおいを調べる。 4 液性による分類 ◆試薬に関しては,さまざまな試薬を用いることが可能であるが,どの 試薬についても反応する色の変化を覚えておく必要がある。特に,B TB液,ムラサキキャベツ液などのように,液性によって複数の色に 変化し,液性の判別がつきやすいものは重要である。 5 電流を通す水溶液と通さない水溶液 ◆電流を通す水溶液の中で,特に塩酸や水酸化ナトリウム水溶液はよく 通す。また,濃度がこくなると電流を通しやすくなる。 6 おもな水溶液の特ちょうのまとめ 水溶液 とけている物質(状態) におい 電流 塩酸 塩化水素(気体) 刺激臭 よく通す ホウ酸水 ホウ酸(固体) なし 通す 酢酸水溶液 酢酸(液体) 刺激臭 通す 炭酸水 二酸化炭素(気体) なし 通す 食塩水 食塩(固体) なし よく通す アルコール水 アルコール(液体) 特有のにおい 通さない 砂糖水 砂糖(固体) なし 通さない 水酸化ナトリ 水酸化ナトリウム(固体) なし よく通す ウム水溶液 アンモニア水 アンモニア(気体) 刺激臭 通す 石灰水 消石灰(固体) なし 通す 重そう水 重そう(固体) なし 通す 酸性 中性 アルカリ性 1 水溶液 【基本1】 ⑴ 水溶液の条件 水溶液…水に物質をとかしてできた液体。 水溶液の共通点 ①透明,とけている物質のつぶは見えない。 ②こさはどこも同じ。 ③ろ過では物質を取り出せない。 2 とけている物質による分類 【基本1~3】 ⑴ 固体がとけている水溶液 ・食塩水 (食塩),砂糖水(砂糖),石灰水(消石灰) ・取り出す方法…水溶液を蒸発させる。 ⑵ 液体がとけている水溶液 ・アルコール水(アルコール),酢酸水溶液(酢酸) ⑶ 気体がとけている水溶液 ・塩酸 (塩化水素),炭酸水(二酸化炭素),アンモニ ア水 (アンモニア) ・液体か気体がとけている水溶液を加熱して蒸発 ⇒固体がとけているときと異なり,何も残らない。 3 においによる分類 【基本1】 ・気体や液体がとけている水溶液 ⇒においがあることが多い。 例アルコール水,酢酸水溶液,塩酸,アンモニア水 4 液性による分類 【基本2,3】 ⑴ 液性 (酸性・中性・アルカリ性)による分類 ①酸性…塩酸,炭酸水,酢酸水,ホウ酸水 ②中性…食塩水,砂糖水,アルコール水 ③アルカリ性…アンモニア水,水酸化ナトリウム水 溶液,石灰水,重そう水,石けん水 ⑵ 液性の調べ方 リトマス紙,BTB液,フェノールフタレイン液など ①リトマス紙 ・手でさわらない,紙にはガラス棒につけた液体 をつける。 ・赤色リトマス紙…アルカリ性だと青色に変化。 ・青色リトマス紙…酸性だと赤色に変化。 ②BTB液 ・酸性 (黄色),中性(緑色),アルカリ性(青色) ③フェノールフタレイン液 ・もとは無色だが,アルカリ性(赤色)に反応する。 ④ムラサキキャベツ液 ・強 い酸性(赤色),弱い酸性(ピンク色),中性 (むらさき色),弱いアルカリ性(緑色),強いア ルカリ性(黄色) 5 電流を通す水溶液と通さない水溶液 【基本2】 ⑴ 電流を通す水溶液 ・電流を通す水溶液…酸性・アルカリ性の水溶液す べて,食塩水 ・電流を通さない水溶液…アルコール水,砂糖水 6 おもな水溶液の特ちょうのまとめ 【基本3】 ⑵ 水溶液のその他の特ちょう ①塩酸…石灰石を加えると二酸化炭素が発生。アル ミニウムや鉄を加えると水素が発生。 ②炭酸水…石灰水を加えると白くにごる。容器に 入った炭酸水をこおらせると,二酸化炭素が出て くるので,容器が破れつする場合がある。 ③食塩水…蒸発させると立方体の結しょうができる。 ④水酸化ナトリウム水溶液…アルミニウムを加える と水素が発生。二酸化炭素を吸収。タンパク質を とかすので,皮ふについたときはよく水で洗い流 す。 ⑤アンモニア水…水にとけやすいので,上方置かん 法で集める。 ⑥石灰水…二酸化炭素を通すと白くにごる。 ⑦重そう水…塩酸を加えると二酸化炭素が発生。加 熱すると二酸化炭素が発生。 7 水溶液を識別する実験 【基本3】 ・試薬の反応結果,におい,加熱後の物質のようすな どから識別をする。 ▼指導ページ P 14 ~ 23 ▼ 7 水溶液を識別する実験 ◆水溶液の識別の問題は,受験で頻出する分野である。板書で説明する ときなど,表にしてわかりやくする工夫があるとよい。 発展学習 1 電解質と非電解質 ⑴ ホウ酸,食塩は電流を通さないが,これらを水溶液にすると電流を 通す。 ・電解質…電流が流れる水溶液にとけている物質。 ・非電解質…電流が流れない水溶液にとけている物質。 ⑵ 水溶液が電流を通す理由 ・電離…電解質が水溶液になるとイオンに分かれる。 ・イオンには+の電気をもつ陽イオンと-の電気を持つ陰イオンがある。 2 pH ・pH … 0 ~ 14 の数値で液性を表す。その値は pH 試験紙や pH メー ターではかる。 ⑴ 水溶液が中性のとき… 7 になる(純すいな水の値)。 ⑵ 水溶液が酸性のとき… 7 より小さくなり,数値が小さいほど強い酸性。 ⑶ 水溶液がアルカリ性のとき… 7 より大きくなり,数値が大きいほど 強いアルカリ性。 ⑷ pH とイオン…水素イオンがあると酸性,水酸化物イオンがあるとア ルカリ性,どちらのイオンもない場合は中性になる。
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