2016

米国:雇用統計(2016年12月)
―労働需給のひっ迫を背景に、賃金が高い伸びに―
MRI Daily Economic Points
図表1 非農業部門雇用者数
評価ポイント
(前月差、千人)
今回の結果
400
350
300
250
200
150
100
50
0
-50
-100
-150
建設
製造

16年12月の非農業部門雇用者数は、前月差+15.6万人増と、前月(同+
20.4万人)から増加幅がやや縮小した。

内訳をみると、専門・ビジネスサービス(同+1.5万人)で大幅に伸びが縮小
したほか、ここ数ヶ月比較的堅調であった建設(同▲0.3万人)が4ヶ月ぶりに
減少に転じ、全体を押し下げた。小売業(同+0.6万人)や、レジャー(同+
2.4万人)も前月から伸びが低下した。一方、教育・医療(同+7.0万人) が大
幅な増加となったほか、製造業(同+1.7万人)も3ヶ月ぶりの増加となった。

12月の失業率は4.7%と前月(4.6%)から小幅上昇。もっとも、労働参加率
は62.7%と前月(62.6%)から上昇しており、非労働力化していた者が職探
しを始め、労働市場へ再び参入したことが主因。

時間当たり平均賃金は前年比+2.9%と前月(同+2.5%)から上昇。2009
年6月以来の高い伸びとなった。失業率がFOMC参加者の想定する長期均
衡水準(4.8%)まで低下する中、賃金上昇圧力は強まっている(図表2)。
卸・小売・運輸等
専門
金融
情報通信
教育・医療
レジャー
政府
その他
1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11
2014
資料:米国労働省
2015
非農業総合
2016
図表2 フィリップス曲線 図表3 家計の雇用・所得マインド
(時間当たり賃金上昇率、前年比、%)
4.0
長期均衡失業率
(FOMC参加者予測)
3.5
(回答割合、%)
(回答割合、%)
25
25
2009年1月
基調判断と今後の流れ

2016年全体で見ると、雇用者数の増加ペースは、月平均+18.0万人と、
2015年(同+22.9万人)に比べると緩やかながら、失業率悪化を防ぐ水準
(同+13.2万人程度)は上回り、堅調を維持。良好な雇用環境が続いている。

堅調な内需を背景に企業の雇用スタンスは高い水準が持続。労働需給の
ひっ迫により、賃金上昇率が高まりつつある。トランプ新政権の経済政策へ
の期待もあって、家計の先行きの雇用・所得環境に対する見通しも大幅に改
善(図表3)。先行きも内需拡大を背景に、良好な雇用環境が続くと見込む。

ただし、トランプ新政権の拡張的な財政政策は内需を刺激するとみられるが、
①財政悪化の懸念から長期金利が上昇して内需に悪影響が及ぶ場合や、
②ドル高が一段と進んで輸出が下押しされる場合には、企業の雇用スタン
スが慎重化し、雇用の改善ペースが鈍ることも考えられる。
20
20
2016年12月
3.0
15
15
2.5
10
6ヶ月先の雇用改善(左軸)
10
2.0
5
6ヶ月先の所得改善(右軸)
1.5
5
0
1 3 5 7 9111 3 5 7 9111 3 5 7 911
1.0
3
5
January 10, 2017
7
9
(失業率、%)
11
2014
資料:米国労働省、FRB、コンファレンス・ボード
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2015
2016
担当: 政策・経済研究センター 田中康就
TEL 03-6705-6087