Asia Weekly (1/2

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ASIA Indicators
定例経済指標レポート
中国企業は世界経済の底入れを好感(Asia Weekly (1/2~1/6))
~原油相場上昇はインフレ圧力に繋がるも、その影響は国ごとにまちまち~
発表日:2017 年 1 月 6 日(金)
第一生命経済研究所 経済調査部
主席エコノミスト 西濵 徹(03-5221-4522)
○経済指標の振り返り
発表日
結果
コンセンサス
前回
+1.8%
+0.3%
+1.1%
51.9
50.9
50.9
(インドネシア)12 月消費者物価(前年比)
+3.02%
+3.04%
+3.58%
(香港)11 月小売売上高(前年比/数量ベース)
▲5.6%
▲3.0%
▲2.7%
1/4(水)
(タイ)12 月消費者物価(前年比)
+1.13%
+0.98%
+0.60%
1/5(木)
(フィリピン)12 月消費者物価(前年比)
+2.6%
+2.6%
+2.5%
(台湾)12 月消費者物価(前年比)
+1.70%
+2.10%
+1.97%
(中国)12 月財新サービス業 PMI
53.4
--
53.1
(マレーシア)11 月輸出(前年比)
+7.8%
+2.5%
▲8.6%
11 月輸入(前年比)
+11.2%
+2.9%
▲6.6%
1/3(火)
指標、イベントなど
(シンガポール)10-12 月期実質 GDP(前年比/速報値)
(中国)12 月財新製造業 PMI
1/6(金)
(注)コンセンサスは Bloomberg 及び THOMSON REUTERS 調査。灰色で囲んでいる指標は本レポートで解説を行っています。
[中国]
~民間企業も製造業・サービス業ともに景況感が改善、世界経済底入れの動きを好感する動きに~
3日に英調査会社である Markit 社が発表した 12 月の財新製造業PMI(購買担当者景況感)は 51.9 と前
月(50.9)から+1.0pt 上昇し、6ヶ月連続で好不況の分かれ目となる 50 を上回る水準で推移している。足
下の生産動向を示す「生産(53.7)
」は前月比+1.0pt 上昇して生産拡大の動きが続いている上、先行きの生
産に影響を与える「新規受注(53.1)
」は同+1.3pt、
「輸出向け新規受注(50.0)」も同+0.1pt 上昇しており、
内需がけん引役となる形で生産拡大の動きが広がっている。なお、
「受注残(53.0)
」も前月比+0.6pt と順調
に拡大して先行きの生産拡大の追い風になるとみられる上、
「完成品在庫(51.0)」も同+0.4pt 上昇するなど
在庫調整が進んでいるなど、健全な経営を行っている姿勢がうかがえる。これは米国をはじめとする先進国を
中心に世界経済の底入れ期待が高まっていることも影響しているとみられるが、その割に輸出向け新規受注の
回復が遅れていることは、同国内のコスト上昇に伴う価格競争力の低下が少なからず影響を与えている可能性
が考えられる。また、
「雇用(48.0)
」は前月比▲0.2pt 低下しており、製造業においては国営企業及び民間企
業問わず雇用に調整圧力が掛かりやすい地合いであると判断出来、内需の足かせとなるリスクは残る。
5日に Markit 社が発表した 12 月の財新サービス業PMIは 53.4 と前月(53.1)から+0.3pt 上昇した。
足下の状況を示す「業況動向(53.4)
」は前月比+0.3pt 上昇しており、先行きの動向に影響を与える「新規
受注(53.6)
」も同+1.3pt 上昇しているほか、
「将来活動指数(59.4)
」も同+2.9pt と大幅に上昇するなど先
行きに対する楽観的な見方が強いことが示された。他方、「受注残(50.1)
」は 50 を上回っているものの前月
比▲0.2pt 低下しているほか、
「雇用(51.2)
」も依然 50 を上回るなど雇用拡大が期待されるも同▲0.7pt 低下
するなど、頭打ちする兆候も出ている。とはいえ、先行きについても製造業での雇用調整圧力をサービス業で
の雇用拡大が相殺する展開は続くものと期待される。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容
は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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図 1 CN 財新製造業・サービス業 PMI の推移
(出所)Markit より第一生命経済研究所作成
[インドネシア] ~生活必需品を巡る物価はまちまちだが、今後はルピア相場の行方による影響に注意~
3日に発表された 12 月の消費者物価は前年同月比+3.02%となり、前月(同+3.58%)から減速した。前
月比は+0.42%と前月(同+0.47%)から上昇ペースがわずかに鈍化しており、足下の物価は比較的落ち着い
た推移が続いている。このところの原油相場の底入れなどを反映してエネルギー価格の上昇ペースは加速して
いる一方、このところ上昇基調が続いてきた生鮮品を中心とする食料品価格の上昇ペースは鈍化しており、生
活必需品を巡る物価動向はまちまちの状況にある。なお、食料品とエネルギーを除いたコアインフレ率は前年
同月比+3.07%と前月(同+3.07%)から横這いで推移しているものの、前月比は+0.23%と前月(同+0.15%)
からわずかながら上昇ペースが加速している。一部のサービス関連で物価上昇圧力が高まる動きがみられる一
方、消費財価格は全般的に落ち着いているものの、過去のエネルギー価格の上昇を反映して輸送コストが上昇
する動きがみられるなか、先行きについてはこの動きが価格に転嫁される可能性が懸念される。過去数ヶ月の
金融市場の混乱に伴い通貨ルピア相場に調整圧力が掛かったものの、年前半のルピア相場の上昇がその影響を
相殺するなか、先行きのルピア相場の行方は輸入物価の動向などに影響を与える可能性には注意が必要である。
図 2 ID インフレ率の推移
(出所)CEIC より第一生命経済研究所作成
[タイ]
~原油高がインフレの押し上げに繋がる一方、景気不透明感を反映してコアインフレは横這い~
4日に発表された 12 月の消費者物価は前年同月比+1.13%となり、前月(同+0.60%)から加速して 25
ヶ月ぶりにインフレ目標(1~4%)の下限である1%を上回る伸びとなった。前月比も+0.13%と前月(同
▲0.06%)から2ヶ月ぶりに上昇に転じており、このところの原油相場の上昇などを反映してエネルギー価格
の上昇ペースが加速している一方、食料品価格については生鮮品を中心に下落基調が続いており、生活必需品
を巡る物価動向はまちまちである。なお、食料品とエネルギーを除いたコアインフレ率は前年同月比+0.74%
と前月(同+0.72%)からわずかな加速に留まっており、前月比も+0.01%と前月(同+0.03%)から上昇ペ
ースが鈍化するなど物価上昇圧力は高まっていない。消費財全般で物価が落ち着いているほか、景気の先行き
不透明感などを反映してサービス物価も上昇しにくい展開が続いている。このところの金融市場の動揺などに
伴い通貨バーツは対ドルで急速に下落しているが、足下では昨年前半におけるバーツ高の進展がその影響を相
殺するなか、先行きについてはその動向が輸入物価などに影響を与える可能性には注意が必要である。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容
は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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図 3 TH インフレ率の推移
(出所)CEIC より第一生命経済研究所作成
[フィリピン]
~生鮮品を中心に食料品の物価上昇に一服感も、全般的にインフレ圧力が高まる兆候も~
5日に発表された 12 月の消費者物価は前年同月比+2.6%となり、前月(同+2.5%)から加速した。しか
しながら、前月比は+0.34%と前月(同+0.62%)から上昇ペースが鈍化しており、このところの原油相場底
入れの動きを反映してエネルギー価格の上昇圧力が高まっている一方、生鮮品を中心に食料品価格の上昇圧力
に一服感が出るなど、生活必需品を巡る物価動向はまちまちの状況にある。なお、食料品とエネルギーを除い
たコアインフレ率は前年同月比+2.53%と前月(同+2.39%)から加速しており、前月比も+0.50%と前月(同
+0.35%)から上昇ペースも加速している。国際金融市場における通貨ペソ安の進展に伴い輸入インフレ圧力
が懸念されるなか、日用品全般で物価上昇圧力がくすぶっているほか、足下の内需をけん引役にした堅調な景
気を反映してサービス物価にも上昇圧力がくすぶるなど、徐々にインフレ圧力が高まりつつある。
図 4 PH インフレ率の推移
(出所)CEIC より第一生命経済研究所作成
[台湾]
~生鮮品を中心に食料品価格の下落が続くなか、サービス物価の低迷も物価の重石になっている~
5日に発表された 12 月の消費者物価は前年同月比+1.70%となり、前月(同+1.97%)から減速した。前
月比も▲1.00%と2ヶ月連続で下落している上、前月(同▲0.43%)から下落ペースが加速しており、物価上
昇圧力は後退している。なお、足下ではこのところの原油相場底入れの動きを反映してエネルギー価格に上昇
圧力が掛かる一方、生鮮品を中心に食料品価格が下落基調を強めるなど落ち着きを取り戻しており、生活必需
品を巡る物価の動きはまちまちである。また、生鮮食料品とエネルギーを除いたコアインフレ率は前年同月比
+0.81%と前月(同+0.84%)からわずかに減速しており、前月比も▲0.15%と前月(同▲0.24%)から2ヶ
月連続で下落している。衣料品をはじめとする幅広い消費財で物価下落基調が続いていることに加え、サービ
ス物価も下落が続くなど、景気の先行きに対する不透明感が物価の重石になっている様子がうかがえる。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容
は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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図 5 TW インフレ率の推移
(出所)CEIC より第一生命経済研究所作成
[シンガポール] ~世界経済の底入れを受けてリセッション入りは回避するも、通年の成長率は鈍化へ~
3日に発表された 10-12 月期の実質GDP成長率(速報値)は前年同期比+1.8%となり、前期(同+1.1%)
から加速した。前期比年率ベースでは+9.1%と前期(同▲1.9%)から2四半期ぶりにプラス成長に転じてお
り、米国をはじめとする先進国景気の底入れに加え、中国経済の減速懸念の後退などを受けて世界経済の底打
ち期待が高まるなか、同国経済もリセッション入りを免れた。内訳をみると、輸出底入れの動きを反映して製
造業の生産が大きく拡大しているが、輸送用機械や一般機械などで引き続き調整模様が続いている一方、電気
機械やバイオ・医薬品関連などの生産拡大が全体の押し上げに繋がっている。また、サービス関連産業での生
産拡大の動きも景気の追い風となっており、輸出の底入れなどを反映して輸送関連やビジネス関連サービスな
どでの拡大が顕著であった。一方、建設関連の生産は国際金融市場の動揺などに伴う資金調達環境の悪化など
が重石となり、民間部門の住宅投資や企業の設備投資などが下押しされた結果、前期比ベースでマイナス基調
が続いている。この結果、2016 年通年の経済成長率は前年比+1.8%とプラスを維持したものの、前年(同+
2.0%)から減速しており、世界経済の拡大ペースの鈍化が景気の足かせとなっている。
図 6 SG 実質 GDP 成長率(前期比年率)の推移
(出所)CEIC より第一生命経済研究所作成
[マレーシア]
~原油相場の上昇を追い風に輸出は大幅に拡大も、国内の耐久消費財需要の弱さは残る~
6日に発表された 11 月の輸出額は前年同月比+7.8%となり、前月(同▲8.6%)から3ヶ月ぶりに前年を
上回る伸びに転じた。前月比も+11.8%と前月(▲1.1%)から3ヶ月ぶりに拡大に転じており、過去2ヶ月
の減少ペースに比べて大幅に拡大するなど、世界経済の緩やかな回復を追い風に底入れが進んでいる。なお、
財別では主力の電気機械関連や天然ゴム、木材関連に調整圧力が掛かる動きがみられる一方、原油相場の上昇
などを追い風に原油や石油製品、天然ゴムの輸出額が押し上げられたほか、パーム油関連の輸出拡大も輸出全
体の押し上げに繋がっている。国・地域別では、ASEANなど周辺国向けに加え、中国やEU、米国向けな
ど幅広く拡大している。一方の輸入額は前年同月比+11.2%となり、前月(同▲6.6%)から3ヶ月ぶりに前
年を上回る伸びに転じている。前月比も+18.9%と前月(同▲5.8%)から2ヶ月ぶりに大幅な拡大に転じて
いる。これまで長期に亘って低迷が続いてきた食料品をはじめとする内需向けの消費財の輸入額が拡大したほ
か、輸出の堅調さを反映して中間財や資本財の輸入も拡大したものの、輸送用機器については大幅に落ち込ん
でおり、国内の耐久消費財需要の弱さを示唆している。結果、貿易収支は+90.30 億リンギと前月(+97.56
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容
は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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億リンギ)から黒字幅が縮小している。
図 7 MY 貿易動向の推移
(出所)CEIC より第一生命経済研究所作成
[香港]
~本土からの来訪者による高額消費に堅調さも、域内景気の弱さは消費意欲の足かせになる模様~
3日に発表された 11 月の小売売上高(数量ベース)は前年同月比▲5.6%と 16 ヶ月連続で前年を下回る伸
びとなり、前月(同▲2.7%)からマイナス幅も拡大している。前月比も▲4.74%と前月(同+2.65%)から
3ヶ月ぶりに減少に転じており、中国本土の景気減速懸念の後退を受けて改善するかにみられたものの、依然
として一進一退の展開が続いている。百貨店売上高は前年比ベースでプラスに転じるなど、高額品を中心に需
要の底入れを示唆する動きがみられる一方、スーパーマーケットをはじめとする日用品を中心とする生活必需
品に対する需要は依然として弱含んでおり、域内の景気が依然として底打ちしていない様子もうかがえる。足
下では雇用の拡大ペースが再び頭打ちするなど、雇用環境が悪化する兆候もうかがえるなか、先行きの国内市
場については引き続き厳しい展開が続く可能性は高いと見込まれる。
図 8 HK 小売売上高(数量ベース)の推移
(出所)CEIC より第一生命経済研究所作成
以
上
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容
は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。