韮崎市立保育園民営化計画 (韮崎市立保育園再編整備計画) 韮 崎 市 平成28年12月 はじめに 平成 27 年 3 月、韮崎市子ども子育て会議が中心となって策定した「韮崎市 子ども・子育て支援事業計画」は、基本目標の一つとして、質の高い教育・保育を 提供できるまちづくりの推進を掲げています。 現在、市内には、幼児を保育・教育する施設として、市立保育園、私立認定 こども園、私立幼稚園がありますが、民間保育園はありません。 県内の他自治体の多くは、民間保育園との共存やそれぞれの園の独自サービスの 提供などにより、保育の選択肢の拡大や保育の質の向上を図っています。 本市においても、子ども達の可能性を引き出すための一つの手段として、民間 保育園を加えることで、選択肢の拡大や、市立保育園と民間保育園などが相互に連 携を図り、協力し合い、各園が切磋琢磨することにより市全体の保育水準が引き 上げられ、質の高い保育・教育環境の提供により、子育て環境の整備につながると 考えています。 また、保護者の勤務実態は、共働き、休日勤務、深夜業務への従事、超過勤務 などが増え、保育に対するニーズは、延長保育、一時保育、土曜日保育など、様々 な充実が求められています。 本市では、これまでも様々なサービスの充実に努めてきましたが、急速に変化 する社会情勢の中で、多様化する保育ニーズに効率的かつ有効的に対応するために、 市立保育園の一部を民営化し、民間事業者独自の保育理念や民間ならではの柔軟で 迅速性のある対応、発想力を活かした質の高い保育を提供するとともに、民間活力 の導入により、削減された経費や人的資源を活用し、市全体の子育て支援体制の 充実を図ってまいります。 目 1.保育園の民営化とは 2.民営化の背景 3.計画の目的等 4.民営化の対象園 5.民営化への移行等 6.事業者の選定 7.引継ぎ 8.移管後の市の役割・責任 9.民営化目標期日 次 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ 1 3 4 4 5 6 7 9 9 1.市立保育園の民営化とは 「民営化」は、今まで市立で行っていたものを民間事業者が行うことを いい、そのパターンにはいくつかの方法がありますが、大きくは「委託」と 「移管」の 2 種類に分けられます。 (1)委託 保育園は市立のまま、保育業務を民間事業者に委託して行わせること で、次の 2 種類の方法があります。 ① 業務委託型(保育業務委託) 保育業務の一部分のみを民間事業者に委託して行わせるものであり、 市が作成する保育業務に関する仕様書に基づいて、事業者が保育事業を 実施していくものです。 施設の管理は市が行います。 ② 指定管理者型(保育業務委託+施設管理委託) 保育業務全般と施設管理業務の全般を民間事業者に委託する制度で あり、平成 15 年に地方自治法が改正されたことに伴い、導入された 制度です。 指定管理者制度では、業務を請け負う民間事業者の創意工夫を活かし た事業展開を図るため、保育方針や保育内容については、市の方針の もとに協議・指導を行い、民間事業者が事業設計をして実施することに なります。 施設の管理も、指定管理者の責任で行います。 業務委託に比べると、事業者に一定の権限(判断)が付与されること になりますが、保育の実施決定や保育料の決定などは市の権限で、市が 実施します。 ただし、指定管理者制度による場合は、指定期間内の事業実施となり ますので、指定期間経過後は、改めて事業者の指定までに必要な手続を 行う必要があります。 (2)移管(韮崎市は移管で計画しています。) 対象となる市立保育園を廃止するとともに、民間事業者が新たに私立 保育園(認可保育園)を設置し、保育事業を引き継いでいくことをいい ます。これにより、移管後は、市立保育園ではなくなり、私立保育園と して運営されていくことになります。 移管後は、市と民間事業者の間で締結する移管協定等に基づき、市立 保育園で行っていた保育サービスの水準を確保しつつ運営を行います。 − 1 − 【民営化により考えられる変更点】 区 分 民営化前 民営化後 保育園の名称 韮崎市立○○保育園 事業者と市が協議し決定 保育園の運営 韮崎市 移管事業者(民間法人) 保育園職員の人数 国が定める基準による配置数 保育料 韮崎市保育料徴収条例に定められた額 (保育料が変わることはありません) 市に申込み 入園・継続の手続 市が選考 市が入園等の決定 県と市で指導・監査を実施 保育園の指導・監督 県・市の研修等 市職員の巡回・訪問等 特別保育 延長保育 一時保育 障がい児保育 市に申込み 申込先は移管事業者 市が決定 民営化前から実施している 特別保育は継続実施、その他 は、移管事業者が決定 移管事業者が料金設定 市が料金設定 民営化前から実施している 特別保育料金は、極力同額に 設定することを要望 保育の選択肢が拡がる。 その他 新たなサービスが提供される可能性がある。 職員が入れ替わる。 市のコスト削減が図られる。 − 2 − 2.民営化の背景 少子化、核家族化の進行や就労形態の変化、ひとり親家庭の増加など子育 て家庭を取り巻く社会情勢の変化により、保育に対するニーズは多様化して います。 また、地域や家庭での子どもを育む力の低下などによる育児に対する負担感、 不安感が増加しており、地域における子育て支援の拠点として保育所等が担う 役割が重要となっています。 このような状況の中、本市においては、平成22年8月、学識経験者、 保護者、福祉・教育関係者からなる「韮崎市保育園再編整備計画策定委員会」 を設置し、平成24年3月、「保育園再編整備にあたっての基本的な考え方」 について提言をいただき、同年9月、 「韮崎市立保育園再編整備計画」を策定 しました。 この再編整備計画に基づき、平成27年3月、竜岡、旭保育園及び休園 していた穂坂、円野保育園を廃園、中田保育園を休園とし、新たにすずらん 保育園を開園しました。 また、再編第 2 園については、平成30年4月の開園に向けた準備を進め ています。第3園以降は、再編整備計画の中で民間活力導入の検討について 触れていますが、限られた財源、人材及び資源を効率的かつ効果的に活用 していく必要があります。 市では、これまで小学校の統合整備や庁舎等の建設を行うとともに、市民 ニーズに応えるため、文化ホール、児童センター、デイサービスセンター、 市営住宅などの「公共建築物」や、道路、水路、上下水道などの「インフラ 資産」を整備し、市民生活の向上に資してまいりました。 これらの公共施設は、老朽化が進行しており、近い将来、多くの施設が 改修・更新時期を迎え、多額の維持・更新費用が必要になってきます。 一方で、少子高齢化に伴う社会保障費の増加と人口減少や長引く景気低迷、 大企業の転出等による税収の落ち込みにより、市の財政状況は厳しさを増し ており、今後、公共施設の維持管理・更新費用を十分に確保することが、 困難な財政状況になっています。 このような状況を踏まえて、効率よく公共施設の維持管理を行うとともに、 長期的な視点をもって公共施設の更新・統廃合・長寿命化などを計画的に 行うための指針として、昨年度「韮崎市公共施設等総合管理計画」を策定 いたしました。 今回、民営化の対象としている韮崎東保育園は築40年、韮崎西保育園は 築29年を経過しており、この2園の建物修繕経費は、数百万円を支出して おり、近い将来、水道配管などの水回り、照明器具、屋根防水などの大規模 改修工事が見込まれ、多額の出費が予測されます。 国においては、三位一体改革により、公立保育園運営費負担金制度は、 地方交付税で措置する制度に変わり、実質的な市の負担は増大することに − 3 − なりました。公立保育園の大規模改修や建替えの際、事業費の 1/2 を国が 施設整備費補助金として市町村に交付する制度が無くなるなど、厳しい財政 事情に加え、複数の保育園で園児入所率が 50%を割るなど、費用対効果の 観点から、より効率的な運営への変革が求められてきました。 一方で、私立保育園の運営費に対する補助金(国 1/2、県 1/4、市 1/4) は継続されており、現在の運営費と民営化した場合の市の負担額を比較すると、 年間数千万円節減できることとなります。 このような保育園を取り巻く環境の変化から、民間活力を活用した保育 サービスの質の向上やコスト削減を図り、削減された経費や人的資源を活用 し、市全体の子育て支援体制の充実を図ることといたします。 3.計画の目的等 この計画は、保育園の民営化についての基準を定め、公表することにより、 民営化に対する保護者や地域の方々の理解を深めるとともに、質の高い 事業者の参入を促すことを目的とします。 また、民営化についての本市の基本的な考え方や民間移管を円滑に行って いく上での最低限の基準、ルールをまとめたものであり、民営化の対象となる 園(以下「対象園」という。)においては、この計画を基本とし、保護者の方々 の意見や要望を取り入れながら実施するものとします。 4.民営化の対象園 (1)対象園 対象園は韮崎西保育園、韮崎東保育園とします。 (2)対象園選定の経過と理由 ① 韮崎市立保育園再編整備計画に基づき、円野・旭・竜岡保育園を ゾーンとした「すずらん保育園」は、大草町若尾地内に有効活用できる 市有地があったこと。 ② 藤井・中田・穴山保育園をゾーンとした「再編第2保育園」は、藤井 保育園を拡張できる用地の取得が可能となったこと。 ③ ①②とも、ゾーン内の保育園を統合して建設することで、補助金的 要素が強い財源が確保できたこと。 ④ 韮崎西・東保育園のゾーンは、2園を統合して建設するには、現状 では有用な市有地がないこと。また、新たに用地を確保することは 厳しい財政状況から困難であること。 ⑤ 韮崎西・韮崎東保育園とも大規模保育園であり、民間移管後も継続的・ 安定的な運営が可能であると見込まれ、将来的な保育ニーズが見込める こと。 − 4 − ⑥ 以上のことから、2園については、地域に馴染んだ現在地において、 社会福祉法人に移管して運営することにより、限られた財源、人材、資源 を効率的かつ効果的に活用するため、民間活力を導入することとします。 5.民営化への移行 市立保育園から民営化への移行にあたっては、園児が引続き安定感と信頼 感をもって活動でき、安心して保育生活が送れるよう、以下のようにスム ーズな移行を目指します。 (1)説明会の実施 以下の点等について、順次、段階的に保護者説明会を実施し、十分な 情報提供に努めます。この他、保護者の意見や要望が実施方法に反映 できるよう、移管準備の進行に合わせ、適宜、情報提供を行うとともに、 必要に応じ個別相談を実施します。 ① 民間移管の概要 ② 園の選定理由 ③ 移管スケジュール ④ 事業者の選定方法 ⑤ 引継ぎ(共同保育を含む。)の実施方法 (2)民営化の際の条件について ア 運営全般 ① 移管先自らが保育園を運営すること。 ② 移管を受けた土地、建物及び備品等は、当該保育園における保育 以外の目的に使用しないこと。 ③ 移管先は、保護者及び地域関係者との話し合いに応じ、地域と一体 となった運営に努めること。 ④ 移管先は、移管前に市が行ってきた通常保育・特別保育を維持した 上で、さらに保育サービスの拡充と民間保育園の持つ柔軟性や効率 性を活かした運営に努めること。 イ 移管する施設・備品等 ① 敷地については、移管後は無償貸与又は賃貸借とする。 ② 建物及び付属設備は、移管先において改修等整備を行うことを前提 として、無償譲渡とする。 ③ 保育用具、備品等は無償譲渡とする。 ウ 職員配置 ① 児童福祉施設最低基準第 33 条第 2 項に規定する数以上の保育従事 者を配置すること。 − 5 − ② 韮崎市で雇用する非常勤嘱託職員等の保育士・調理員で、移管先で の雇用を希望する者については、積極的な雇用に努めること。 a 施設長 社会福祉事業の経験が 15 年以上、保育園の施設長経験が 3 年 以上又は主任保育士経験が 5 年以上の者を配置すること。 b 主任保育士 保育士としての実務経験が 10 年以上の者を配置すること。 c 保育士 保育士としての実務経験が 5 年以上の者を全体の 3 分の 1 以上 配置すること。 d 調理員 保育園や学校等の施設での調理経験を有する者を3分の1以上 配置すること。 エ 苦情解決の仕組みの整備 保護者等からの苦情を解決するための仕組みとして、苦情解決責任 者、苦情受付担当者、第三者委員会を設置すること。 オ 保育 ① 移管前の市立保育園で実施している保育事業(未満児保育・延長 保育・障がい児保育等)は継続し、さらに、保育サービスの向上に 積極的に取り組むこと。 ② 市の子育て支援施策の理解に努め、積極的に協力すること。 6.事業者の選定 (1)選定方法 新たに、保育関係者、財務専門家、こども・子育て会議の代表メンバー や市職員等で事業者選定委員会を設置し、保育園運営に関する提案内容や 運営実績の審査を行います。 また、審査にあたっては、提案書類の審査にあわせ、ヒアリングや実地 調査を行います。 (2)審査にあたっての考え方 事業者の選定にあたっては、単に応募者の中での相対的な優位者を移管 先の事業者とするのではなく、保育の質の維持・向上が期待できる事業者 とします。そのため、以下の点を重視し、保育園運営上の内容(保育の質) を中心とした審査を行います。 また、審査の透明性を高めるために、審査項目は事前に公表します。 ① 児童福祉の理念に沿って、子どもたちの健全育成及び子育て支援 に取り組むことができる事業者であること。 − 6 − ② 子どもたち一人ひとりの育ちを支え、子どもを中心とした保育が できること。 ③ 職員の年齢や経験年数のバランスを踏まえた質の高い職員が確保 できること。 ④ 人材育成が図られ、職員が意欲を持って働ける環境が確保できる こと。 ⑤ 保護者との信頼関係を築き、連携・協力を確保できること。 ⑥ 長期に渡り安定的な保育園経営を行うことができること。 (3)保護者意見の反映 選定にあたって重視してもらいたいことなどについて、必要に応じて 保護者アンケートを実施します。 (4)運営事業者の公表 審査により運営事業者が決定した後は、事業者名及び当該事業者の審査 結果について対象園の保護者はもとより、市ホームページ等で広く市民に 公表します。 7.引継ぎ (1)引継ぎの期間 民間移管による在園児への影響を最小限にとどめるため、事業者職員と 児童・保護者・地域等との関係づくりなどの引継ぎ期間を、1年間設け ます。 (2)引継ぎの準備 対象園の保護者を対象に引継ぎ事項についてアンケートを行い、保護者と 市(保育園を含む)とで、引き継ぐべき事項と改善すべき事項等を調整 します。 (3)三者協議会の設置 円滑な引継ぎを行うため、保護者・事業者・市による「三者協議会」を 設置するとともに、民営化移行後も評価、点検を行います。 (4)引継ぎ計画の策定 事業者は、引継ぎ内容や共同保育の実施体制など、円滑な移管に十分な 配慮をした引継ぎ計画を作成し、「三者協議会」において意見交換を行い、 協議・調整のうえ決定します。 − 7 − (5)引継ぎの内容 ① 児童一人ひとりの状況 児童票や、健康・発育などの記録を基に、児童一人ひとりの生活の 様子や状況などを共同保育により引継ぎます。 ② 保育園運営の状況 保育目標や保育計画及び指導計画、各クラスでの保育や、自由遊び、 子どもの受入れ、引渡しなどの日々の保育の流れ、年間行事、月間行事、 給食、保健衛生、施設管理、安全対策、保護者・地域との関係等につい て、引継ぎを行います。 (6)共同保育 民間移管の際には、保育士等の職員が入れ替わることなどによる保育 環境の変化が、子どもへ及ぼす影響を最小限にする必要があります。 このため、子どもたちが新しい保育士に慣れた段階で移管することが できるよう、引継ぎの内容を踏まえたうえで、対象園に段階的に事業者の 職員(保育士)を配置し、市職員(保育士)と事業者職員が共同で行う 保育(共同保育)を実施します。 この期間は6ヶ月以上とし、対象園の状況を踏まえ、三者協議会で協議 のうえ、決定します。 この期間においては、それぞれの児童の発達段階に応じ、移管後も継続的 な保育が行えるよう、個々の子どもの様子などの把握に努めるとともに、 子どもたちとの信頼関係を構築できるよう、きめ細かく対応しながら共同 保育を行っていきます。 (7)個人面談の実施 子どもたち一人ひとりの状況をよりきめ細やかに把握するとともに、保護 者との信頼関係を深めるために、引継ぎ期間中に、保護者、市職員(保育士)、 事業者職員の三者による個人面談を実施します。 (8)市による進行管理等 市は、事業者の職員採用、共同保育期間における職員配置等、民間移管に 係る引継ぎが計画どおり行われるよう逐次進行管理を行うとともに、問題が 生じた場合には、必要な改善・指導を行います。 − 8 − 8.移管後の市の役割・責任 (1)市の保育士等による保育内容の定期的確認 移管後も、市の保育士等が定期的に移管した保育園を訪問し、移管条件 が守られているかどうかを確認するとともに、必要に応じ指導します。 この期間は、1 年間を目安としますが必要に応じて延長します。 また、その後も担当職員等が保育園を訪問し、必要な助言・指導を行い ます。 (2)民間移管後における三者協議会の開催 移管後も、定期的に三者協議会を開催して情報を共有し、より良い 保育環境を確保します。 また、保護者と運営事業者との間において問題が生じた場合には、 市が間に入り解決を図ります。 (3)民間移管園の評価 移管後における保育内容についての保護者アンケート等を市が実施し、 事業者の保育状況等の評価を行います。 また、保育サービスの質の向上を図るため、自己評価の継続的な実施 とその結果の公表を義務付けます。 9.民営化の目標期日 保護者の皆様や地域の皆様などのご意見を伺いながら、ご理解をいた だく中で、平成30年4月に韮崎西保育園・韮崎東保育園のどちらか1園 を民営化し、その後の状況を検証したうえで、残る1園の民営化を進めて まいります。 − 9 −
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